まちづくり・再開発

2024年9月18日 (水)

身の丈再開発『みなてらす河原町』

 先日の新聞記事にて知った、地下鉄南北線河原町駅近くで行われていた小規模な再開発事業(優良建築物等整備事業 )のうち、第一期部分が竣工したというニュース。

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 地下鉄河原町駅は駅上をかなり交通量が多い昭和市電通り(旧4号)が通っていますが、一歩入ると細い道が多く、そのコントラストに驚きます。

 仙台駅から3駅5分と至便な距離で、街中と自転車でも余裕で行き来できること、学院大五橋キャンパスも近いこと、古い物件も多く家賃の手ごろさから、学生をはじめとした若者の一人暮らしも多いエリア。以前はコンスタントにあった小規模分譲マンションの供給が近年止まっているので、ファミリー世帯というよりは、夫婦のみのディンクス世帯の住居としても選ばれている印象。

 小規模ながら河原町商店街が組織されイベントも行われているし、10年近く前に商店街入口に竣工した小規模再開発がありましたが、今回の再開発はその並びで程近い場所になります。似たような再開発だなぁと思ったら、地権者兼事業者は同じようです。

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関連記事

 以下は、地元紙の記事です。


仙台・若林の河原町商店街に、複合施設「みなてらす」が8月4日誕生 地域輝く、にぎわい拠点に

 仙台市若林区の河原町商店街通りに8月4日、新たなにぎわい拠点がオープンする。スーパーや病院、多目的スペースなどで構成される複合施設「みなてらす河原町」。整備に携わった商店街関係者は「住民が集う地域の顔となり、交流人口の増加を促す役割も果たしてほしい」と期待する。

「みなてらす河原町」(中央右)とマンションの完成イメージ

 みなてらす河原町は市地下鉄河原町駅から徒歩2分、商店街通りの中心に立地する(地図)。鉄骨3階建てで、延べ床面積は計2091平方メートル。内外装は白を基調とし、明るく開放感のある空間を演出した。

 隣のビルで営業する地元スーパー「ワコー」が1階に移転する。2、3階にはクリニックや調剤薬局が入る予定。3階のレンタルの多目的室では、地域の会議やサークル活動での利用を想定する。

 2階の一部には屋外テラス(192平方メートル)を設けた。いすやテーブルを置き、買い物や通勤通学で気軽に立ち寄れるゾーンにする。キッチンスタジオも併設し、料理教室や飲食イベントを開催できる。備蓄倉庫もあり、災害時に一時避難所となる機能を持たせた。

 事業主体は商店街の店主らで組織する南仙台振興ビル(若林区)。総工費は約16億円で、国土交通省の「優良建築物等整備事業」の助成を受けた。

 南仙台振興ビルはみなてらす河原町に隣接する自社ビルを今冬までに解体し、1階にテナントが入る鉄骨6階建てマンションの建設に着手する。敷地内にはマルシェやフリーマーケットができるイベント広場や駐車場を配置し、一体開発は2026年春にも完了する見通し。

 南仙台振興ビル取締役の高橋理武さん(42)は「『地域のみんなを照らす』という思いを込めた施設が地元を盛り上げる起爆剤になるとうれしい。ここを起点に人の交流が生まれていくことを願っている」と話す(7/18 河北より引用)。

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第一期の核店舗はスーパー「ワコー」

  河原町の商店街には、七十七銀行河原町支店、スーパーワコー、そして約10年前に完成したイガストゲートを中心に、八百屋、魚屋、和菓子屋と小規模な個店が点在しています。駅利用者もまぁまぁ多く周辺人口は少なくないのに、買い物機能はそれほど充実していなのも、それほど多くない若いファミリー世帯も、ヨークのあすと長町店や若林店、遠見塚店など周辺のクルマでまとめ買いできる郊外型スーパーに流出しているのでは。古城方面の大規模マンション住人も然り。


 4号バイパスへ向かうところの(若林区)若林地区は長町一丁目の駅勢圏で、さらに毎時4本通る沖野方面への市バスの利用者も多く、南側を広瀬川が遮っている河原町駅の駅勢圏はそれほど広くないことも。河原町駅は都心部210円均一区間内で、北四番丁駅や国際センター駅まで210円で利用できる恵まれたエリアに入っているのにもったいない。


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 よって、クルマを持っていない一人暮らしの若者、高齢者を中心に、地下鉄駅を降りてちょっと足りないものを補充という最低限の需要で成り立っている商店街のため、このような機能の維持を図り、さらに選択肢を増やして行ければという印象を受けました。

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 一昔前のコミュニティロードとして、歩きやすい街に整備され、クルマの一時駐車スペースも設置されていますが、いかんせん地下鉄の出入口が交差点向かいになり、足が向きづらい印象で、人通りはそれほど多くないながら、休日夕方でも駅への行き来や商店街目的でコンスタントに通行人はあり。

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 仙台市や地元の商店街組合が関わる事業主体も、この再開発を通じて、既存の老朽化したスーパーワコーの引き留めと支援を図ったような構図。ワコーはもはやこの河原町の1店舗しかなく、もともとは破綻したファルの後に入居して早20年。お互いの利害が一致した印象が。

 近隣にまとまった土地がない河原町だけに、このような地道な小規模再開発の効果が大きいと。

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 テナント入居は途上のようですが、核店舗のワコーは買い物にちょうど良いサイズのスーパー。価格帯も総菜は安め。そして魚の鮮度が良さそうでした。22時と遅くまで開いており、近隣住民にとっては助かりますね。店内の買い物客も、比較的若い女性の比率が高く、そして高齢者が少々。ターゲットが明確に分かります。

 2階は、テラスとコミュニティスペースも。

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イベントなどで活用が見込まれます。ビアガーデンとか良さそう。

このコミュニティスペースは昼間の時間帯自由に入れるようです。

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隣接地に元々入居していたスーパーワコーを先に移転させ。玉突き的に第二期の再開発として、既存ビルが解体されています。。

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賃貸マンションと広場が整備されるようで、再開発はこの2棟のセットで一区切りのようです。

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 このような小規模再開発は、なぜか河原町のみ。他の地下鉄駅前でも(例えば連坊や薬師堂など)応用できるような仕組みに感じますが、河原町は音頭を取る商店街組織(振興組合)の存在が大きいのかも。

地下鉄駅近くの商業環境

 東西線開業を経て、以前に比べると多少は改善はされてきました。駅近に郊外型のスーパーやドラッグストアが立地しているところもあり、都市型ではイオンエクスプレスのような小型店でカバーされているところも。そうはいっても、店舗の老朽化や駅から離れた郊外型店舗との競争は激しく、見た限りでも、スーパーなどがない地下鉄駅前はそれなりにある。東西線の西側は経緯やもともとの地域の性格から、やむを得ない面もあるけど。南北線でも愛宕橋、台原(やや南に行くと生協あり)などが駅前の買い物機能が弱い。愛宕橋はやや北に最近学院大の門前町として復活気味の荒町商店街がありますが。

 地下鉄が開業した時代から一気に郊外化が進み、駅周辺の地価高騰もあり、新たなスーパー立地が難しかった印象があります。

 これまでたまに記事にしていた時の状況とあまり変わっていないなぁと。


関連記事


順調に工事中の新宮沢橋

 宮沢橋の上流側に新たな橋がだいぶ姿を現してきました。この宮沢橋の架け替えで、国道286号の西多賀方面から昨年開通した旧国道(昭和市電通り)以北の区間を経て、仙台駅東口、そして国道45号の小田原付近まで一直線で結ばれることになります。

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 穀町周辺の旧奥州街道は昭和市電通り以北に開通済の宮沢根白石線に交通量が移行し一時的に車の交通量が減ってきていますが、この区間の全通によりこのエリア一帯の交通量の増加、生活環境の悪化が予想されます。店舗やサービス施設の立地に関しては、開通済の宮沢根白石線の用地買収に伴い、中途半端な空き地が沿道に見られるのでそのような土地の有効活用、沿道の老朽化建物の建替えによる新規立地は考えられるかもしれません。

 都市計画道路の開通が、古くからの商店街に好影響を与えるとはなかなか言い難いですが、河原町商店街付近では、駅前の古い建物の建替えも徐々に進んでおり、吉野家のあたりに美容室やバイク店など、どちらかというと若者向けの小規模な店が増えている印象です。

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この道路に3方を囲まれた区画にも動きがあります。

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交差点に面し、30年以上前からあった居酒屋ごん太が取り壊され、建て替えの動きが。再出店するのかどうか(Googleでは臨時休業扱い)。

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クルマを持たな住民が増えているのを逆手に取って、歩いて面白い街を目指して少しずつ機能更新が進み、面白い店が増えればよいなぁと思います。そういえば、この付近には有名な地ビールの「穀町エール」もありますね。

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2024年9月16日 (月)

九州旅行編(その3) 街中の驚異的な賑わい 政令市熊本

 九州旅行編の続きです。


前回記事


街中が元気な九州の都市

 福岡をはじめ、その他の都市も軒並み街中の賑わいを保っていることに改めて驚きました。

 東日本は、首都圏は別格として、東北地方だと仙台市以外は盛岡市位、北関東は東北並みのクルマ社会で駅前や繁華街の賑わいが正直厳しい状態で、しいて言えば高崎駅前位。ライトライン開業1周年で改めて注目されている宇都宮市も旧来の駅西は商業施設の撤退が相次いてきた歴史が。

 新潟市は前の記事で取り上げたとおりで、従来型の繁華街が衰退し相対的に新潟駅や万代の大型商業施設に賑わいが移っているという形ですが、九州の都市は従来型の繁華街に加えて中心駅に新たな賑わいが生まれ、また郊外に大型モールが出店しても街中が対抗出来ているという、東北人からすると信じられない光景が広がっていました。

 街中の賑わいを保てる人口規模を有している(県庁所在地は概ね40万人以上)ということもありながら、非県庁所在地の佐世保のように20万人規模で活力を維持しているところもあり、本当に面白い。

 この写真は福岡市の天神。

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 福岡市は別格として、熊本市や佐世保市も郊外に大型SCが生まれ、以前よりは賑わいが薄れている面もありますが、それでもアーケードをはじめとした中心街の賑わい、そして都心部の再開発が進み、都市のハレの場としての役割を担い続けていることに関しては、本当に羨ましいと感じました。

バケモノ都市熊本(誉め言葉)

 熊本市は人口73万人。県全体で174万人なので、県庁所在地を除いた人口は宮城県も熊本県と同程度と考えれば分かりやすい(宮城県は225万人のうち仙台市は110万人)。 熊本県には、天草の方に松島があったり、台湾の半導体工場の進出など、宮城県との不思議な共通点も?大地震があったという嫌な共通点もありますが、県自体の人口規模が倍以上で政令市を2つ持つ福岡県よりも参考になりそうな要素は多かったり。 

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 震災で被害を受けた熊本城も修復途上ながら、街中のすぐ隣にあり存在感の大きさに驚きました。

疑似的な2核1モール 

 下の案内図のオレンジ色がアーケード。線が市電で、下通アーケードの両端が「市電の駅」そして「大規模商業施設」という集客動線的には理想的な交通環境。市電沿いには多くの平行バス路線がひっきりなしに。

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 下通の南端付近には、辛島町電停と 巨大複合再開発『サクラマチくまもと』で、高速バスを含む巨大バスターミナルも。

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 下通と上通の結節点には通町筋電停があり、その近くには熊本県唯一の巨漢百貨店「鶴屋」が。

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 下通と上通の結節点付近に位置し、以前よりは減ったとはいえ500億弱を売り上げる地方百貨店屈指の鶴屋。2015年に現サクラマチくまもとの場所にあった県民百貨店が閉店し、熊本県で唯一の百貨店となっています。

 目の前の電車通りには市電とひっきりなしに通る路線バス、空港リムジンバスなどで、本当に賑やか。

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 本館、東館、Wing館とあり、建物は老朽化しているようですが、とにかく横に長い巨漢店で複数棟に及び売り場面積は7万平米強と藤崎の倍以上と存在感が凄い。まぁ藤崎は売り場面積半分以下でほぼ鶴屋に匹敵する売り上げなので、藤崎も売り場面積が小さい割には健闘しているともいえます。時間がなく外から眺めるのみでした。なお、電車通り向かいにも別館(New-S) あり。

驚異的な賑わい 下通アーケード

 仙台もアーケード商店街が賑わう代表的な都市と言われ、6つのT字型の商店街合計で全長1.5㎞で店が連なり、七夕の主会場であることをはじめ街の中心軸、ハレの場として市民・県民にも旅行者にも認知されているのは自慢できるものですが、上述の2核を繋ぐ歩行者モール(アーケード)である熊本市の下通~サンロード新店街もなかなかのものでした。

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 噂では聞いていましたが、まずはアーケードの幅の広さにびっくり!幅は15m以上と車道上下1車線ずつに幅の広い歩道が両側にある標準的な都市計画道路と同幅員。天井からも光が差し込む構造で、アーケードの高さも2~3階レベルでゆったりしており、ここに人が集まるのも納得。

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 それに、下通は幹線道路などで約600mのアーケードが分断されることがなく歩きやすいこと、アーケードに接続した路地にも飲食店などが連なり、更に平行して飲食店中心の別の片アーケード(駕町通り)もあり、面的にも楽しめる街ということを感じました。

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 テナント構成は、どちらかというと飲食店が多め。仙台でいうと名掛丁や一番町4丁目を合わせたような雰囲気。でも、何でもあり。

 旧ダイエー跡が再開発された「COCOSA」。1F~4Fがガラス張りで高級感のある新しい商業施設です。

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低層階がファッション、飲食店、上層階が無印、ニトリDECOホーム、セリアなどの雑貨店、ABCストアなどで構成され、身の丈に合ったテナント構成という感じ。


COCOSA HP


 

 下通付近が現在も賑わっている秘訣として、核となる商業施設は、上述の鶴屋百貨店の存在感だけでなく、この『ダイエー⇒COCOSA』以外にも撤退商業施設の後が建替え、リニューアルで基本的に商業施設として残り、商業床があまり減少していないことも。『県民百貨店⇒サクラマチくまもと』で魅力アップしている施設もあるなど、都心部を取り囲む郊外に出店しているイオンモール熊本やゆめタウン光の森などの影響を感じさせない賑わい。

これは、『寿屋⇒カリーノ下通(蔦屋書店を中心とした専門店ビル)』 で建物をリニューアルしたタイプ。

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左側が下通の北端に2023年にオープンした『熊本パルコ⇒ HAB@熊本 』。

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 立地条件の良さからか2020年の閉店後すぐ建替えられ、、B1F~2Fの3フロアはSTANDARD PRODUCTSなどの専門店と飲食店街、3階以上は星野リゾートのOMO5が出店しています。商業施設としてはダウンサイジングですが、何というスピード感。引き続きパルコが運営とのこと。


HAB@熊本 HP


 

上通と並木坂

 下通と比べると幅も狭く地味な印象の上通とそれに続く並木坂。

 熊本電鉄の都心側のターミナルで市電の通町筋電停からは徒歩10分程度の「藤崎宮前駅」に向かう通り道でもあります。

 この写真は、アーケードとしての北端で並木通りに路地を挟んでそのままシームレスに繋がっています。

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 下通がバケモノ級なだけで、上通が地味と言っても仙台でいうとサンモールよりは賑わっています。雰囲気はマーブルロードおおまちに似てい落ち着いた印象。店舗については、地元の店が多く、飲食店も目立ちます。

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 鶴屋百貨店本館の道路向かいで、上通アーケード入口に面する別館(New-S)。上階はホテル日航や美術館も。

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 気付いたこととして、このように仙台ではアーケードから姿を消した地元書店が数軒まだアーケード内に残っていたこと。この向かいにも別の店がありました。仙台ではアーケードに面する書店は、先日金港堂本店が閉店となり大きな衝撃をもって受け止められたニュースとなり、残るは一番町四丁目のあゆみブックス(≠地元)のみ。

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 上通に繋がる並木坂には、センスの良い飲食店や衣服店などが並び、藤崎宮前駅に繋がる通りだけに、それなりに人通りはありました。

 アーケード周辺に関しては、空き店舗やシャッターだらけで厳しい一角というところもなく、空き店舗があっても新陳代謝があり、それが熊本市中心部の強さだなぁと感じた次第。

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巨大複合再開発 サクラマチクマモト

 2019年にオープンし、先日5周年を迎えたサクラマチクマモト。

 何で、地方中枢都市でもない新興政令市でこのような巨大な複合再開発が実現したのかと不思議に思っていいながら、ようやく訪問することができました。基本的に九州産交の巨大バスターミナルと県民百貨店跡の再整備であり、土地の権利関係が比較的シンプルだったこと、隣接地にあった熊本市のホール機能を拡充しMICE機能として熊本城ホールを整備するなど、熊本市も協力的だったのかと感じました。

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サクラマチクマモト HP


  中心駅と都心部が離れた都市が多く、都心部直行のバスと鉄道が鎬を削る九州ならではという、このような街中の巨大バスターミナルの存在があり、再開発の拠点施設として再整備することができたのではと。


 地元のバス会社が中心となったバスターミナル併設型都心部集客施設といえば、以前取り上げた新潟交通の新潟の万代シテイが50年前から存在し、今や都心部随一の集客力を誇る場所となっていることを連想しましたが、一方仙台ではと考えると悲しい限り。

 宮城交通は、一応広瀬通の高速バスターミナルの再整備として、土地売却先の東京建物の協力で、オフィスビルの1階部分に小規模なものは確保しています。これまで、北仙台ターミナルも長町ターミナル敷地も土地売却や再開発で高層マンションになっていますが、基本的に資産の切り売りをし続けてきたのに、今やその蓄えもなく、現在の減便一辺倒の状況に至っているのは悲しい限り。近年は仙台市営バスの営業所運営受託という安定収入を得てしまっただけに、自社路線を犠牲にしてでも運転手を市バス路線の運行に回していたり。そもそも泉区の路線は地下鉄開業に伴うバーター策などでパークタウン線など市バスからの移譲路線も多いながらも、うまく生かせなかった印象。一時期は泉中央駅を発着する路線で深夜帯のバスなど積極策に出ていたのは今や昔。


 約10年以上かけた再開発で、着工後に熊本地震が起こり完成が1年半遅れ、設計見直しなどで総工費も1.5倍以上の800億円弱に跳ね上がり、紆余曲折ありながらも完成にこぎつけましたが、その後もコロナに見舞われる時期もありながら、現在では賑わいを見せています。さらに整備が遅れていたら総工費は1000億円は下らなかったでしょう。

 時代は違うけれど、約800億の総工費はバブル崩壊後ながら豪華な作りと総事業費で批判を浴びた再開発ビル仙台駅前アエルとほぼ同じと考えると、サクラマチクマモトは同程度の総工費で済み時代が良かったと。それはリーマンショックの辺りに入札で事業者を決めた仙台市地下鉄東西線も同じことが言えますが。逆にどの都市でも、これからの再開発は資材高と職人の取り合いで大変。東北電力が中心の電力ビル再開発はなんとかなりそうですが、これからのさくら野跡やオリックス再開発、藤崎を中心とした大町再開発はなおさら。

 仙台市の今後整備される公共施設でも市庁舎が500億、音楽ホールが350億と総事業費が軒並み想定の1.5倍に。市庁舎は震災対応で計画が先送りとなり、音楽ホールはもともと20年以上前から計画がありながら、候補地が移ろい(長町モール横⇒あすと長町⇒都心部⇒国際センター北側)、そして県民会館との役割分担の議論などもありここまで遅れてしまった結果。それでも、市庁舎も音楽ホールも仙台市は様々な意見を聞きながら丁寧に施設内容を詰めてきており、先日の藤本壮介氏の設計に決まった音楽ホールのコンペも公開で実施され、斬新な設計が評価されました。遅れながらも素晴らしい施設となりそう。

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構成される機能として

  • 熊本桜町バスターミナル(29パース:高速バスと路線バス)
  • コンベンション施設(熊本城ホール)
  • 商業施設(B1~3階:約150の専門店)
  • シネコン(TOHOシネマズ)
  • ホテル(KOKO HOTEL Premier 熊本)
  • 分譲マンション(マリモ)
  • オフィス

と、てんこ盛りの再開発。総床面積が16万平米超えは、地方都市としてはバケモノ級です。

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2階以上のバルコニー部分は、緑豊かなテラスが。当日は天気が悪いながらも、それなりにくつろいでいる利用者が。

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 2階部分の広々とした通路は、1階バスターミナル相互を結ぶコンコースを兼ねています。

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 商業施設(シネコン含み)は、延床面積で4.5万平米。売り場面積で2.8万平米。結果的に県民百貨店の再出店ではなく、専門店の集積というのはこの施設の性格に合っていたのではと。百貨店斜陽の時代で、地域一番店の鶴屋百貨店との消耗戦を招かなかったことも。

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 このバスターミナルという性格からか、熊本への旅行者風の方が多く、レストランやフードコートの充実ぶりにうなずけます。

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 バスターミナルは、29パースと巨大。これでも事業者や路線再編により再開発前より縮小されたとか。

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 発車案内もLCDで経由地も含め非常に分かりやすく

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バス乗り場の通路はちょっと狭め。

高速バス等公共交通全般については、別記事で。

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街中のコンベンション施設 熊本城ホール

 3000人規模の大ホールや展示施設、会議施設などもこの再開発の肝であり、熊本市も多くの負担をして整備されました。単独施設ではなく、ホテルや交通ターミナルも含めた複合再開発の一部として整備した相乗効果は大きい。当然整備費用も節減されるし。使い勝手が良くなり稼働率にも好影響が。稼働率については7割程度とそれなりに健闘しているのではと。こういう件には必ず噛みつく某政党が文句言っているようですが。

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ちょうど、訪問時には医療系の大規模な学会が開催されていました。

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 天気が悪い中で、半日で駆け足で回ったので、鶴屋をはじめ都心部の商業施設、市電沿線の街の広がり、豊肥本線沿線のTSMCの好影響などまでは確認できませんでしたが都心部を見るだけでも熊本市の勢いは十二分に感じることができました。

 このような賑わう大都市で生活しながら、週末は福岡という大都会にもバスで往復5千円以内で気軽に出ることができるとは、恵まれた環境の都市に感じました。この規模で九州内で3番手の都市というのも、九州のポテンシャルの凄さかと。

 もう1日余計に滞在し、周辺も含めていろいろ回りたかったのですが、先の行程もあり泣く泣くこの地を離れました。

 なお、この勢いのある熊本市。順風満帆に見えながら、特に都市交通面では渋滞で悩まされているとか、バス・市電の乗務員不足による減便、JR熊本駅が郊外で利用者が少ないことなど、訪問して見えてきた面も。この件については次回に続きます。

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2024年8月 3日 (土)

続 新潟編 厳しい古町の現状

 さて、新潟訪問の続きです。


前回記事


 わずか2時間余の滞在時間で、2年前にバスで通過しただけだった古町を訪れました。

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 今は亡きかつてはBRTと称された萬代橋ラインにて、古町へ向かいましたが、雨と寒さでテンションが低くなっている中、お目当ての連接バスも来ず、そして知ってはいたけれど、均一料金が210円から260円にアップしており(新潟駅ー万代間を除く)、全線に乗るんだったらともかく、たった5分ちょっとの乗車でとがっかり感。そもそも快速便なのに5人程度しか乗っておらず、万代から多少は乗ってきましたが、平日の昼間とはいえ確かに連接バスにする必要もない乗車状況。仙台市地下鉄の昼間10分間隔もがっかりですが、新潟市の幹線系統と位置付けられている街の中心に向かう基幹系統バスで10分間隔、そしてガラガラという状況を目の当たりにすると、何ともいえない気分。

かつての古町の中心

 古町モールを横目に見ながら、まずは新潟三越跡とNEXT21、新潟大和跡の再開発ビルである「古町ルフル」が集まる西堀交差点に。

   交差点を取り囲む建物からは街の中心地という賑やかさを感じます。

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 その3つの核的な施設を結んでいた、地下街西堀ローサにまずは潜りました。前回震災前に来た時でも、結構厳しい状況ながらも、それなりに店は並び、そのご大規模なリニューアルでテコ入れされたと記憶していました。

 まるで地下鉄に入るような不思議な感覚で地下に潜ると、こんなレトロな地下街が。

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 訪問したのは冬でしたが、暖房もバッチリで通路としては使い勝手が良いと思いながらも、地下街の店舗は正直厳しい。

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 結構な長さがありますが、半分以上の店舗名がテープで覆われているように、結構な歯抜け状態。

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 端から端まで10分くらいかけて歩いてみましたが、ため息しか出ませんでした。

 この地下街の店舗がかつては全て埋まっており、新潟の最先端のストリートとして人でごった返していたという情報からすると、なんとも言えない。地上の賑わっていたアーケードがシャッター街になった状態は見慣れていますが、それでも人が住んでいたりでここまで寂しい雰囲気にはならない。入居しているのはチャレンジショップ的なもの、飲食店、そして消費生活相談所のようなもので、正直まともに商売になっているところはあるのだろうかと思わせる位の状況。

 この地下街も全店舗を撤退させて運営会社が2025年で解散するとの発表がありましたが、地下駐車場や周辺施設との連絡機能もあることから、通路自体の閉鎖はしないようですが、どのような未来が待っているのでしょうか。

 そのような西堀ローサからの薄暗い連絡通路が、NEXT21に繋がっていました。

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ファッションビルからお役所ビルへ(NEXT21)

 地下1階からセブンイレブンが、1階を含め、クリニックや薬局などで埋められています。

 1階から上空に広がるアトリウムについては実質無料休憩所で、外で買った弁当を広げる市民が多し。

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 建物の2〜5階は、新潟市中央市役所として活用されていましたが、正直仙台のアエルのようなガラス張りの吹き抜けもある高層ビルが区役所として活用されていることについては、石巻市役所の旧さくらの百貨店の建物は閉じられた建物で「これもありかな」と思わせたのに対し、更に役所らしくなさを感じました。

 中心市街地活性化として、行政機能の街中移転という施策はよく使われますが、大和、三越という百貨店2店舗、そしてラフォーレというそもそも買物する場所がなくなった古町。飲食などは期待できるのでしょうが、人を集めさえすれば良いという訳でもないよなとも。でもやらないよりはマシとも。 


なお、このNEXT21は、かつて移転した新潟市役所跡地の再開発と聞いて、頭が痛くなりました。役所跡を再開発したけれどうまくいかず、結局役所機能を戻すという例を聞くのは初めて。。。

 そもそも郊外の新光町の現地に移転した県庁跡地に、かつて玉突き的に新潟市役所が移転したとか。県のしりぬぐいをさせられて、結果的に中心部が衰退し、二重の意味で労力を掛けざるをえなかったということには気の毒な面も。


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 上階はフィットネスクラブ、オフィス、レストラン街ですが、レストラン街はほとんど営業していません。仙台のSS30やアエル、アジュール仙台(現大樹生命仙台本町ビル)もですが、地方都市の超高層ビルの飲食店街は長続きしない印象。

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 NEXT21は震災前にまだファッションビル「ラフォーレ原宿新潟」が入居していた時にを見に来たことがありましたが、その時は、仙台駅前のEーBeansのようなレディースファッションの集積地という華やかさを感じたものでしたが、ハコは一緒とはいえ全く雰囲気が変わっており驚きました。

 屋上の展望スペースも雨ながら眺めは良かったのですが、そこの無料休憩スペースには区役所やオフィスに勤務されていると思われるかなりの方々の昼食スペースに変身していました。皆、弁当やサンドウィッチを慌ただしげに食べており、居心地の悪い視線を感じ全く落ち着くことができず、さっさと退散せざるを得ない状況に。

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 前回新潟を訪問した際に寄った、新潟日報メディアシップでも感じましたが、1階の一等地が休憩スペースに解放されており、あらゆる年齢の方々が長時間滞在しコンビニやパン屋で買った物を食べていること。これが仙台であれば、ちょっとした待ち合わせに短時間使用するような使われ方をしていたり、うまくお金を落とすためのカフェなどが設置されている印象ですが、一等地の使い方として勿体無いというか、違和感を感じる場所が多かったと感じました。


過去記事


百貨店からお役所ビルへ(古町ルフル)

 そして、また西堀ローサに戻り、向かい側の再開発ビルの古町ルフルへ向かいました。綺麗な連絡口が整備されています。

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エスカレータと立派な階段が整備されており、地下街の現状との落差にびっくりしました。

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ガラス張りで今風の再開発ビルです。

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NEXT21展望台から。

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 低層部は商業施設、上層部はオフィスと思ったら、3階から6階までが何と新潟市役所ふるまち庁舎とか。その上も公共系(金融・産業関係)の団体が入居しているなど、公共施設ビルになっているではないですか。

 低層部もドラッグストアとコンビニエンスストア、そして金融機関。正直百貨店跡地に再開発ビルとしてわざわざ作る必要があったものかは疑問に思いました。まぁ、リーシングがうまくいかずに、後戻りできなかったパターンと思われます。

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 入り口部分のオブジェというか見事な意匠です。

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 建物の前面とバス停との間には、北国での冬の寒さを避けるためにイベント広場として使えるスペースが整備されていました。

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 新潟駅方面へのバス停が目の前なのは良いですね。

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 キッチンカーが出店し、ここにも無料休憩スペースがありましたが、お金をかけずに休憩する場所がここまで整備されている都市は中々見ない。ある意味周辺の専門学校の学生などにとっては居心地がいいのかもしれない。一方、カフェが見たかぎりドトール1店舗のみでしたが、スタバもNEXT21から撤退しているなど、大手チェーン店の出店対象から外れてきている危機的な状況。マックも無くなったのでしょうか。個人の喫茶店は点在しているのが救いですが、気軽に入ることができるチェーン店もあると良いのに。


 先日行った、長崎市の浜町アーケードは、長崎駅から市電やバスで10分以上かかる場所にあるどちらかというと地元民向けの商店街なのに、ドトール、マック、コメダ、サンマルクなどチェーン店のカフェがこれでもかと出店しており驚いたもの。


 そういう意味で、この一体は、NSGグループが経営する専門学校を集積させ、街中に若者を集めるという施策を長年とっており、これまでは比較的評価されていたという印象でしたが、高齢化が進み新潟島の人口が減少し、街の中心が新潟駅や万代へ移っている中で、外から集めているのがその購買力の小さい学生だけでは、街を維持するのは難しい。大和と三越の閉店で、百貨店の客層である高齢者も万代の伊勢丹に移ってしまったのか。

 それに加えて公共系の就労者を集めて飲食店などのある程度の下支えにはなるでしょうが、それにしても隣接する古町モールの衰退ぶりには驚きました。商店街の方がバス通りからの入り口でさえ、空き店舗が目立っている状況で、古町ルフルの1階部分の店舗も正直魅力的な店舗を入れられていない。

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 NSGグループの奮闘ぶりは非常に感じました。

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 厳しいふるまちモール

 震災前に新潟訪問した際には、三越、ラフォーレ、大和とまだ大型商業施設が健在の頃で、とにかくふるまちモールの元気さと長さとには驚きました。バス通りに近い部分は全蓋式、離れたところは一番町4丁目のような片側アーケードがどこまでも伸び、チェーン店から、地元の味がある店舗や飲食店などに徐々に移り変わっていく様子が非常に新鮮でした。

 5年位前には、カミフル(上古町)と呼ばれる白山神社寄りの商店街を見学する機会があり、商店街の端っこで苦しんでいるアーケードの維持、テナントリーシングや運営の工夫について話を聞くことができ、ほとんど空き店舗がないということでした。

 この長いモールが結果的に機能分担して頑張っていることについては、仙台のアーケードのように地価や賃料が高すぎて、ほとんどがチェーン店の集まりとなってしまい、通行量が多いけれど面白みのない街並みになってしまっていることの良い意味でのアンチテーゼとも。


 仙台市役所が中心となって、東北芸術工科大学の馬場教授に協力を得て「リノベーションまちづくり」として、肴町、立町など、アーケードから程近くながら、古い建物が生かされていないエリアに家賃の安い面白いビジネスを生み出すプロジェクトをここ10年進めていますが、地価が高すぎる仙台では中々進まない弱点が。地価が安く実験的な店舗を若者の多いエリアに出しやすくなっているというのは大きなメリット。


 今回、カミフルまでは時間がなく、天気も悪く回ることができませんでしたが、平日の昼過ぎとはいえ、古町の厳しい状況を十分に感じました。本当に歩いている人がほとんどいない。雨かつ、専門学校が休みに入り、オフィスワーカーが働いている時間帯と言ってもここまでになってしまうのか?

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 今回は雨で諦めましたが、並行してふらっと本町にも庶民的なアーケード街が伸びており、今度閉店しロピアが入居することになったイトーヨーカ堂丸大新潟店が位置しているなど、古町といえばアーケードと商店街というイメージがあっただけに、核となる大型店舗がほぼ失われると、街中の買い物は万代シテイ、そして、今後は新潟駅ビル、そもそも、郊外のショッピングモールや郊外型専門店で十分となってしまっているのか。買回り品のふるまちモールよりは、イトーヨーカドー丸大がある食料品などのふらっと本町の方が人通りが多いという印象でした。

 確かに、新潟市中心部は、前回記事で取り上げた新潟駅新駅ビル、そして衰退気味とはいえ誰もが認める街の中心である万代シテイに専門店が集積し、古町の立ち位置が厳しくなっていますが、やはり街の軸として打ち出して投資を促すには、バスでは不十分で効果を発揮しないということを改めて認識。

 新潟市の前に訪問した宇都宮市、そして今回九州で訪問した長崎市、熊本市という政令市、中核市を見ても、街中の路面電車のシンボル性、沿線の市街地形成における信頼性は圧倒的です。

 白山駅から古町、万代、そして高架化された新潟駅を貫通させ、駅南のビッグスワン方面といったような、中心地と郊外をバランスよく結ぶLRTは新潟にはピッタリと考えられており、政令市化に向けた21世紀初頭は「政令市でJR以外の軌道系交通機関がないのは新潟市だけ」という現状から、行政も地元団体も積極的にLRT導入に向けた提案をしており、宇都宮市よりも新潟市での導入可能性が高いと思われていましたが、2015年に開業した実験的なBRTもK産党や地元マスコミの餌食となり骨抜きされ、LRTまで昇華させることはおろかただのバスになってしまいました。

 もはや、手遅れ状態に。


過去記事


三越跡地の再開発計画

 新潟三越は、同じグループの伊勢丹が万代に百貨店を構えており、新潟での2店舗は維持できなかったのか、実質的に伊勢丹新潟店に統合されました。この跡地は37階建てのオフィス、マンションを含む東京建物による再開発が行われるとのことで、街中に居住者を集める流れからも、再開発が成功して欲しいと思いますが、商業機能は古町ルフルの二の舞になりかねない。写真は、店舗跡。

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 閉店すると、当然寂しげな光景になりますが、前向きな閉店であることをアピールするような掲示物がありました。

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 「みーつ」とは、meetsと三越を掛けているのでしょうか。

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 仙台でも、耐震工事やリニューアルの必要性を見極めるために一旦閉店したフォーラス前にもこのようなメッセージがありますね。

新潟市と熊本市

 このような古くからの繁華街の古町は厳しい状況ですが、そうはいっても新潟市全体が衰退しているわけではなく、前回取り上げた新潟駅周辺や都市型大型商業施設が集積する万代シテイに商業機能が移ってしまったという面が大きく、街の新陳代謝の一環と言えるかもしれません。


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 今回の記事を書くにあたり、3月の新潟市訪問時よりも更にネガティブなトーンになった理由としては、同日に訪問した宇都宮市のライトラインを目の当たりにしてということもありましたが、同じく新興政令市である熊本市に先日訪問した際に感じた賑わいの度合いの違いからです。

 新潟市は人口77万人。熊本市は73万人とほぼ人口規模としては同規模。もちろん合併前の人口が約50万人都市だった新潟市と、もともと周辺市町村合併前も65万あり市域も比較的コンパクトだった熊本市ではおかれている条件に違いはありますが、九州新幹線開業後のJR熊本駅周辺開発と、熊本城至近の従来の中心市街地の賑わいを両立させていることに、驚きを感じたものでした。

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賑やかなアーケード。幅の広さにもビックリ。

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バスターミナルやホール、ホテルなどの超大規模複合開発の「サクラマチくまもと」

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 熊本は、近年近郊自治体である菊陽町への台湾半導体企業のTSMCが進出することで、盛り上がっていますが、そもそも渋滞が激しく、バイパスを作って一旦解消しても、クルマが増えいずれ元通りに元通りになってしまうことの繰り返しであること、公共交通機関は、以前からの市電を生かし街中の求心力を保っていますが、JRや私鉄(熊本電鉄)などの軌道系が弱く、JR熊本駅の乗降客が3万に留まっており(新潟駅は乗降客で6万人を超え熊本市の倍以上)、複数社運行する路線バスの存在感が大きいですが、公共交通機関の分担率は実は熊本市よりも新潟市の方が高いということに驚きました。

 このような状況の中、熊本県と熊本市が協力して、渋滞解消と公共交通の改善に向けたメッセージを発しています。

 やはり、クルマ社会の限界を感じないと動かないというのは、宇都宮市もインターパークなど商業の郊外化でオリオン通りなど都心部の空洞化が進行し、また鬼怒川以東の工業団地への渋滞解消策が限界に達したこと。LRTの導入が発表された那覇市も同じでしょう。


 その点、新潟市は高規格バイパス網の整備が進み、さらに都心部に向かう栗の木バイパスの立体化も進むなど道路交通網に恵まれ、公共交通機関への理解が集まらない状況というのが、持続的な都市構造を作り上げるためにはあだになってしまった印象。やっぱり、「バイパスサイコー」というメンタリティが市民、県民、そして行政にしみ込んでしまったか。


 しかし、この政令市ワーストの公共交通分担率の中、街中に驚愕に賑わいを保っている熊本市。仙台も負けてしまうのではないかと思わせるものがありました。

 次回記事は、この点について深めて行きたいと考えています。

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2024年7月26日 (金)

JR南仙台駅 西口改札設置なるか?(その2)

 前回の続きです。


前回記事

JR南仙台駅 西口改札設置なるか?(その1)


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 理想は高架化ですが

 仙台市の都市計画図を加工してみました。範囲は西の県道仙台館腰線から、東の国道4号仙台バイパスまで。

 朱色の二重線は都市計画道路のうち完成済の部分です。左下の網掛けの部分(西中田)は区画整理事業で面的整備済の範囲。逆に、それ以外は昔からの自然発生的な市街地で、都市計画道路なども後追いで整備せざるを得なかった範囲となります。

 長町に次ぐ南部の拠点となり得る南仙台駅エリア【大きな赤丸】で、東北本線線路の東西に市街地が広がる一方、特に旧市街地の東側を太子堂駅から名取駅方面に貫く旧国道4号線【縦赤細線】は狭隘で一部歩道もほとんどない片側1車線で、右左折レーンも限定的で右左折待ちの際には渋滞が慢性化しています。

 南仙台駅東口から袋原までを結ぶ都市計画道路は立派に完成していますが、計画されている東西を結ぶ3本の都市計画道路のうちの中央の1本でしかなく、南北に計画されている残りの2本【黒太線】については未完成で、そもそも線路を超える部分は鉄道高架化が整備の前提です。それも、特に北側の都市計画道路は当然ながら新幹線高架が近接し、道路単独での立体交差が困難であることが理由の一つ。南側の都市計画道路も多少距離があるとはいえ、新幹線高架の存在は同じ。

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踏切渋滞の代名詞。。。

 そして、上図の×3か所は踏切です。高架化された長町・太子堂エリア、そして名取駅の南北に線路をまたぐ陸橋で線路の東西を行き来できる周辺部と異なり、南仙台エリアは鉄道高架化も道路単独の立体化も進んでいないため、都市計画道路も進まず、既存の道路の踏切3か所に集中してしまうという現状。特に南仙台駅北側の中田西浦踏切は、アクセス線開業時にも問題になったところで、踏切制御の改善で多少は遮断時間が短くなったとは聞いていますが、基本的に前後の取り付け部分も含めこの20年間何も変わっていない。


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 都市計画でも整合性がとれていないのは、その南北の都市計画道【黒太線】が線路を超える部分はあくまでも高架化された線路の下をくぐるという想定で線が引かれています。一方、鉄道の高架化については「都市計画決定」さえもされていないという宙ぶらりんな状態。

高架化の可能性

 なので、建前的には鉄道高架化が大前提となっている計画のエリアなのです。

  • 〇 南仙台駅周辺の線路の高架化と駅舎を高架下に整備
  • 〇 線路東西の都市計画道路整備

 を進めなければならないけれど、鉄道高架化の予算確保も難しく、そもそも都市計画道路の用地買収が進んでおらず、南仙台駅北側は徐々に進められていますが、南仙台駅南側は全く進んでいないという現状です。道路のみの立体化をするには、前後の取り付け部も指定しなければならず、大きな都市計画変更となるために道路の単独立体化も難しい。それも、住宅地の中での陸橋整備になると、騒音や日照制限などで反対運動が大きくなると思われる。

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 そもそも、県内での鉄道立体交差化は、一番大規模な仙石線仙台地区の地下化の後、長町、多賀城駅(参考写真)と続いた後は、仙台市としては、仙山線の中江駅周辺などが検討はされていますが止まっており、結局国の補助金も他の地域にいってしまうことから、空白期間が生じるのはもったいない。そもそも、JR東日本エリアでは鉄道高架化の熱意が低いという傾向があるなぁと、先日の記事にも書いてますが。

そもそも駅橋上化は?

 こんな都市計画道路と絡み合った状況であれば、名取駅、そして同じ仙台市内の郊外駅である岩切駅でも実現した「橋上駅化」のみを進める方向が現実的だと思っていますが、上述のとおり、都市計画道路が「鉄道高架化」を前提に都市計画決定されているため、橋上駅化=鉄道高架化の断念=都市計画道路の見直し に結び付くことが膠着状態になっている要因と推測します。誰もパンドラの箱を開けたくないと。

 とはいえ、岩切駅は2018年に完成した駅舎で、そもそも2001年の国体や2002年のワールドカップの時に、この駅があの忌々しいグランディの最寄り駅になり得ながらも、駅構内通路が地下でバリアフリー対応がなされていないなど、イベントの大量の利用者をスムーズに処理できないとの課題があり、本数の少ない利府駅や新設された国府多賀城駅を最寄にせざるを得なかったこと、駅前を中心とした区画整理事業が行われ玄関口の整備が必要とされたことから、長年の課題が解決された駅整備事業です。

 これはメイン口の北口。ロータリーが整備され、送迎によく使われています。

 グランディなど利府町側住宅団地の利用者もパークランドライドで大いに利用しているようです。

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こちらは、これまで狭隘な県道のガード経由で遠回りを強いられた多賀城市側の南口。劇的に駅が近くなりました。

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ホームが4番線まであり、自由通路もけっこうな長さです。

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昼間の本数の少なさは残念でしかないですが、朝晩のラッシュ時は毎時5~6本の本数があり、概ね10分に1本とそこそこの利便性が確保されています。

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高架化された名取駅に関しては、こちらの記事を。 


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 膠着状態にある都市計画道路の整備をあきらめる訳には行かないにせよ、南仙台駅一帯の再整備を進めるためには、 橋上駅化に向けてすぐにでも動く必要があるのではと思っています。

 しかし、橋上駅化は5年スパン、高架化は10年スパンの話になるので、今回仙台市が説明会を行い、地元紙の記事になったような一時的な改善策はやむを得ないのかもしれない。

今回の新改札設置案について

 このような状況の中、先日の河北新報朝刊に悲願の南仙台駅西口改札設置に向けた仙台市の動きが取り上げられました。


JR南仙台駅に新改札なるか 仙台市が検討、西側住民の利便性向上へ

 仙台市太白区のJR南仙台駅で、改札口の新設に向けた検討が具体性を帯びてきた。現在の改札は東口の1カ所だけで、駅西側に住む利用者は長年、高架の自由通路を渡る遠回りの不便を強いられていた。市は今春、新改札口の設置場所について地元説明会を開催したが、住民の望みはあくまで線路の高架化。市は「利便性向上が最優先」と慎重な姿勢だ。(せんだい情報部・藤原佳那)

現在の改札は東口の1カ所だけ

 今月上旬の午前中。西口から仙台方面に向かう女子大学生(21)は「ホームまで4分くらいかかる。夏は自由通路も蒸し暑く、階段の上り下りはつらい」と汗をぬぐった。改札の新設については「ずっと願っていたので、できたら便利になる」と期待した。

 市によると、新改札口の設置場所は自由通路の途中と、3番線西側の2パターンを想定。3番線西側の場合、改札を入ってホームまでの動線として構内に踏切か陸橋、新ホーム-のいずれかを整備する必要がある。

 利用者の安全確保や列車運行上の課題を踏まえ、市は(1)自由通路と仙台方面のホームに直結させる案(2)3番線西側から既設の陸橋に接続させる案(地図)を「現実的」と判断。この2案を軸に、手法や費用負担などの詳細をJR東日本と詰める方針だ。改札は交通系ICカード専用の簡易式を予定する。

 市は5~6月、地元説明会を9回開き、延べ200人を超える住民が参加した。中田西部町内会連合会の石田優光会長(73)は「非常に明るい見通しとなってきた」と喜びを口にする。

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一番の願いは線路の高架化も…市は慎重姿勢

 住民を中心とした市への改善要望は1999年から。仙台空港アクセス線が2007年に開業し、踏切の遮断時間がより長くなり、駅周辺の渋滞は激しさを増した。

 石田会長は「全てゼロの状態だったが、やっと少しずつ動き始めた」と評価するが、一番の願いは線路の高架化だ。

 2駅隣の長町駅(太白区)は土地区画整理事業の一環で06年に高架化された。東側のあすと長町と西側の商店街をつなぐ道路も立体交差で整備され、線路で分断されていた東西の一体的なまちづくりが進んだ。

 石田会長は南仙台駅周辺も高架化すれば東西の交流促進とにぎわい創出につながると強調。「地域住民の悲願。次世代のためにも要望を継続したい」と語る。

 市公共交通推進課の担当者は「高架化や橋上駅化は事業費や工期も相当かかる。議論は継続しつつ、駅の利便性向上に向けて西口改札の設置を最優先に課題解消を目指したい」と話す。(7/22河北新報朝刊より引用)


[南仙台駅] 1924年9月に「陸前中田駅」として開業し、今年100周年を迎える。現在は東北線と常磐線、仙台空港アクセス線が通る。JR東によると、1日の平均乗車人員は2022年度、9003人。仙台市内では仙台駅、あおば通駅に続き3番目に多い。市が22年7月6日に行った調査では、駅利用者は東口6576人、西口5541人だった。


 4つの案が検討された中で、

  • ①案 自由通路の途中に設置する案
  • ②案 3番線西側に設置して陸橋を延長させる案

に絞られたとのこと。まぁ、妥当でしょうね。

 実際に南仙台駅の仙台方面は2番線利用なので、3番線は待ち合わせ(退避)などで1日数回程度活用されるのみ。

 よって、いちいち陸橋に上がってもらうのではなく、地上に構内踏切設置というのは楽で利用者にとってはありがたい話ながらも、利用者が多い南仙台のような駅での新設は非現実的かと。

 そうなると、3番線西側に設置して陸橋を延長させる②案しかないのではと思います。

 ②の3番線西側に設置して構内陸橋を延長する案については、朝の仙台方面に行く場合は階段の一度の上り下りで済むし、帰りも1番線から構内陸橋を上って西口改札に向かうことができることから、①よりも動線は短くなることが考えられる。ただ、ボロボロの構内陸橋を延長して設置といっても、一応エレベータは設置されているにせよ幅も狭く拡幅が必要なのを含め、従来部分のリニューアルも同時に行う必要があるのではと。

 JRの仙台地区では、自由通路と構内陸橋を接続させたパターンでの新改札設置が多いですが(岩沼、船岡、槻木など)、結局その新設された改札は既存の改札口側に設置されるので、反対側からの利用者にとっては、それほど動線が短縮されないパターンが多いことが欠点。

 ①の自由通路の途中に設置する場合、朝の仙台方面への利用時は新設された階段経由で一度の上り下りで済みますが、帰りは1番線に到着し、これまでどおりの東口改札ー自由通路を経由して西口にということで、結構遠回りなのは変わらず中途半端。ただ、この案のメリットは、西口からの利用者は仙台方面2番線ホーム南側に着くので、北側に溜まりがちな東口利用者とホーム上で分散できるということはありそう。南仙台駅朝ラッシュのホーム混雑は、かなりのもので、ホーム上に一杯に待っている乗客が、混雑した電車に吸い込まれていく様子は見事なもの。

 なおICカード専用簡易改札とのことですが、岩沼駅西口改札や仙台駅に設置されているような、一応通常の自動改札でのIC専用が望ましいと。無人駅用のものだと、多くの利用者を処理するのが難しいのと、不正乗車を誘発することにならないかなと心配。

暫定措置でも念願の改善

 不満はあれども、駅の半数の利用者が遠回りを強いられる状況は改善するに越したことはなく、遅ればせながら動きが出てきて良かったと思っています。②の案であれば、あえて橋上駅化を図らなくとも駅両側の利用者の利便性は図られるし、次のステップに向かうのはいつかは分かりませんが、中途半端な①の自由通路案ではないことを祈って。。。

 

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2024年7月24日 (水)

JR南仙台駅 西口改札設置なるか?(その1)

 先日発表された、令和5年度の乗車人員でも9,518人と、県内のJR駅で名取駅に次ぎ4位の乗降客数を誇る太白区の南仙台駅。

 コロナ前の令和元年度は、乗車人員10,017/日 人と1万人越えを一瞬達成しながら、そこからコロナ禍で2割も利用者数が減少し、5類移行後に回復しつつありながらも、ピーク時には届いておりません。

 JR長町駅の猛迫をかわしつつありながらも、長町駅は9413人で105人差とだいぶ差は縮まってきており、まだ新築マンションの分譲が進んでいる開発余地のある長町駅周辺の状況からすると、逆転される未来もありそう。ポテンシャルは大きいのに、もったいないと思いながら長年見ています。

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県内ベスト10利用者数のJR駅について

 先日発表されたJR東日本2023年度駅乗車人員に基づき、宮城県内で利用者が多いJR駅ベストテンの中で、立体交差化、駅の橋上化など駅の整備がなされているものが大部分。


参考リンク


 特に仙石線は都心部の5駅分が地下にて連続立体交差化され、多賀城や塩釜地区でも高架化済。残る地平区間でも比較的橋上駅化が進み、地上駅は陸前高砂のみですが駅舎は建替え済(駅前広場も整備済)と、駅や線路インフラとしては、更新整備が進んでいます。加えて、40年位前に橋上駅化された福田町駅が老朽化とバリアフリー化で駅舎移転・改築が計画されているなど、現在も地道に改善の動きが続いているのは、一応市地下鉄南北線・東西線と並んで、福田町駅までは都市計画上都市高速鉄道の位置付けだけあります。

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 仙石線沿線の市街化も、小鶴新田~福田町 以外は東塩釜駅まで市街地が連続し、沿線人口は稠密で短い駅間ながらもコンスタントに数千人規模の乗客数を誇る駅が続きます。

 駅間が短い割には、各駅の利用者数が多く、県内のJR線の中では都会的なイメージが強い路線です。一方、東西線沿線に新住民を取られがちであり沿線の高齢化が進み本数が減少傾向なのと、しょっちゅう故障し限界がささやかれている205系車両の古さという課題から、車両はE131系に更新という噂があり、そろそろ発表されるのではと思われています。それでも2025年以降でしょうね。

  地下駅 高架駅 橋上駅 地上駅
仙石線

(①仙台駅)

②あおば通

⑨宮城野原

⑧多賀城

⑦小鶴新田

⑩中野栄

なし
東北本線 なし ⑤長町

(①仙台駅)

③名取


④南仙台

⑥岩沼

 一方、東北本線は、長町地区のみは連続立体交差で高架化されていますが、他は線路は地上のままで高架化の計画もなし、名取駅が橋上化されていますが、その他の南仙台と岩沼駅は昔ながらの地上駅。

 そのうち、岩沼駅はメイン改札がある東口の他、構内こ線橋と自由通路を結んで西口改札を設置し、疑似橋上駅として新興住宅地の土ケ崎・松ヶ丘・たけくま方面の利便性を高めています。

 よって、純粋に駅の片側にしか改札がなく、自由通路経由での連絡とはいえ反対側の利便性が極端に低いのは、乗降客数第4位の南仙台駅のみという現状。


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南仙台駅の置かれている現状

 東西の駅前広場のロータリーは今世紀にはいってから、そして東西自由通路は1981年に整備されており、しっかりした作りに見えますが、自転車対応のスロープが整備されている一方通路自体の高さや長さがあり、上り下りは結構大変。ホームからも見える規模の大きい東口駐輪場の存在は袋原、四郎丸方面まで含まれる広大な駅勢圏を現わしています。

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 しかし、問題はこの東口にしかない駅舎。これ自体は少なくとも自分が子供の頃から40年位は変わっていないはず。キオスクからNewDaysへの転換、自動改札や電光掲示板の設置はありながら、ほとんど待合スペースがないなど狭隘な駅舎、そして、仙台方面の2番線に向かうこ線橋は狭くてボロボロ。岩沼駅のこ線橋と同じ位の年代物で、エレベーターを設置してバリアフリー対応としていますが、整備計画が停滞していたからこその放置状態ともいえました。
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 到着する時は目の前の1番線で便利ですが、仙台方面はこ線橋を渡った向かい側の2番線から。

 西口から2番線ホームは目と鼻の先なのに、河北の記事にもありますが、自由通路を上り下りし、改札入って狭いこ線橋を上り下りしてやっとたどり着くというのは、精神衛生上良くない。

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東口駅舎直近にコンビニがないためか、比較的品ぞろえの良いNewDays。

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 駅の東側がバイパス東側の一部を除き、基本的に区画整理事業ではなく街道沿いや田んぼを埋める形で自然発生的な住宅地化が進み、田んぼも一部残っている他自動車学校、流通・業務など準工業地域のような沿道系の土地利用が多く、立地条件の良さの割には駅前に商業施設や分譲マンションも少なく、非常に物足りない街並みを形成しており、商業施設は主に駅から離れた4号バイパス沿いと、袋原地区と南仙台駅を結ぶ都市計画道路沿いに広がっています。

 一方、駅西側は1970年代から、駅西口一体の区画整理事業(中田第一土地区画整理事業)が開始され、県道仙台館腰線までの一体が西中田という住居表示となり、県道以西の柳生地区の区画整理も太白大橋が完成した1994年頃までに概成するなど、概ね30年前までに計画的な市街化が進んだ地域。駅西側もバブル期からの分譲マンションが点在し、西友やコンビニの立地はあるなど東口よりは便利な状況で、東口よりは不動産的に人気が高い状況とはいえ、いかんせん駅に直接入れる改札口がないことからもったいない状況です。西側も商業施設は県道仙台館腰線沿いや仙台岩沼線沿いに飲食店を中心とする郊外型店舗が立ち並んでおり、それぞれ郊外部が地域の中心的な位置づけとなっています。

 駅の東西の状況からすると、県内4番目に利用者の多い駅には見えません。

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 せっかく20年位前に整備された東口ロータリーですが、タクシーとバス停、そして送迎用の乗降場としての役割は果たしていながらも、駅前としての利便施設の立地が全くないのはもったいない。これだけ朝は5分に1本、夕方以降は5~10分に1本、昼間も概ね10分毎に発着するコンスタントに乗降客がいる駅なのに、幹線道路がロータリーで行き止まりで交通量が少ないためとはいえ、まるで郊外の3万人都市の駅前のような光景。橋上化された名取駅前が再開発ビルや分譲マンションなどあれだけ整備されているのと比較すると、残念でしかない。

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 東口駅前を発着するバスも、全て地下鉄長町駅方面発着の経由便で、四郎丸・袋原とJR南仙台駅とを結ぶ役割(上)と、南仙台駅〜太子堂駅間の住民利用+地下鉄長町駅やザ・モール、市立病院まで運ぶ役割(下)を併せ持っています。

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 駅を発着する本数は、基本毎時2~3本程度で、決して便利とは言えません。四郎丸方面はさらに系統が2つに分かれるため1時間に1本しか使えないエリアも多い。この不便さから高校生だけでなく社会人も平らな道を自転車で駅まで向かう方が多く、それ故の巨大な駐輪場の存在。

 南仙台駅始発着に短縮し、JR接続に特化しバス本数を増やす方法もあるでしょうが、市営バス故に同じ市交通局運営の地下鉄に乗客を送り込む役割も放棄することはできず、本数的に非常に中途半端な状態が続いています。

 なお、南仙台駅前を経由しない長町直行便も他に毎時1本程度あるので、四郎丸・袋原地区を発着するバスは毎時3本という本数となり、エリアの人口からすると、ちょっと物足りない本数となっています。バス通りも基本細いセンターラインもない道路も多く、自家用車メインとなっていますが、うねうねと細い道を経由してバイパスに抜けることとなり、そのバイパスに入る交差点で渋滞と長い信号待ちを強いられ、袋小路感は否めません。

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 いつも引用させていただいている、人口密度マップですが、区画整理された西口は8,000人/㎢以上(オレンジ色)の比較的高密度な住宅地が面的に広がっている反面、東口はそのオレンジ色は大規模マンションや市営住宅が集まっている部分に限られ、かつ点在している状況。

 そうなると、西口側の西中田・柳生の高密度な市街地の利便性を高めるために、南仙台駅西口に改札を設けるという議論は至極自然な話となります。

 仙台市においても、ようやく改札設置案について説明会を実施する段階に至ったとのことで、この件については、次回に続きます。


次回記事


 

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2024年6月 4日 (火)

東北大学片平キャンパスへ

 仙台を代表する存在感を持つ東北大学。

 先日、青葉山新キャンパスと川内南北のキャンパスを散歩し、気持ちの良い空間を味わうことができました。


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 そして、雨宮キャンパス跡の厚生病院訪問と、最近東北大学のキャンパスシリーズとなっているので、久々に片平キャンパスにも行ってみたくなり、寄ってみました。

 

東北大正門 なのに。。。

 片平キャンパスへの公共交通機関でのアクセスは、仙台駅から徒歩15分と歩ける距離ですが、最寄地下鉄駅は東西線の青葉通一番町駅から徒歩6~7分、そして南北線五橋駅から5~6分と、アクセスは良好です。

 一方、いわゆる八木山ラインと呼ばれる、御霊屋橋経由向山方面のバス停として、「東北大正門前」があるためか、知らない人はこのバス停を使いがちですが、かなり遠回りなうえ、裏門のような場所に連れていかれびっくりします。

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 開いているのは右側の歩行者通路のみで、真ん中の門は常に閉ざされ、文化財的な存在なのでしょうか、威厳はありますね。

 

重厚感のある本部棟

 門を入って静かな並木道を進むと、左側に本部棟が見えてきます。

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 ここは総長室があるなど、東北大の本丸です。古い建物ですが、昔の雰囲気を残しながらもリニューアルしており、素敵な建物です。

 その向かい側には、魯迅の像があります。訪問時でも中国人観光客がおり、お花が供えられていました。

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 本部棟の裏側には、有名な魯迅の階段教室があります。自分も10年位前に一度入って話を聞いたことがある以来でしたが、こんなひっそりとした場所にあり、積極的には見学できないのが勿体なく感じます。

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 本部棟のこのアールの曲線がたまらなく美しい。

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 本部棟の奥には、東北一の高さを誇る仙台トラストタワーが借景としてなじんでいます。右の建物は法科大学院が入るエクステンション教育棟。

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 本部棟の裏には、サンモール方面からの近道である、北門があり、片平キャンパスの実質的なメイン入口となっています。

 片平キャンパスは、コンパクトに見えて、通研(電気通信研究所)がある片平南キャンパスまで、意外な広さにびっくりします。

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その他、レトロな建物が残っている多元研(多元物質科学研究所)

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同じくレトロな建物の東北大学史料館。

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 小規模なイベントや講演会の開催場所として使用される片平さくらホール。

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 近所の方や観光客と思われる方々も通るものの、人通りは多くはなく、ゆったりした時間が流れていました。

 

青葉山への移転集約は幻に

 片平南キャンパスを抜けると、新しい建物が。よく見たら、東北学院大学のホーイ記念館で、この部分は東北大から学院大が購入した場所と気づきました。

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 当初は、片平キャンパス全体を、雨宮キャンパスのように完全売却して、青葉山新キャンパスに移る構想もありましたが、地価の下落などで青葉山新キャンパスへの移転費用が賄えず、通研がある片平キャンパスのみの移転に一旦計画が縮小されました。

 その際には学院大が片平キャンパス全体を購入してキャンパス集約用地とする計画が、大震災の影響で結局片平キャンパスの移転も大幅に縮小され、通研もキャンパス内に新棟を建てることとなり、残された学院大側の約8千平米のみが学院大へ売却されました。

 東北大としては、雨宮キャンパスこそ青葉山新キャンパスに集約できたものの、それでも片平、川内(南北)、青葉山、星稜と市内中心部4か所にキャンパスが分かれている状態が残り、非効率さは否めないものの、それでも、レトロな建物が数多く残る東北大発祥の地である片平キャンパスが結果的に残ったことは、良かったと思います。

 ここは雨宮キャンパスのように幹線道路に直接面している訳ではなく、学院大も隣接する文教地区ということから、超高層マンションなどのような再開発は困難で、雨宮ほど高地価で売却することは難しかったことが、結果的に幸いしました。写真は学院大の土樋キャンパスです。

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 ただし、学院大が片平キャンパスを購入できなかったために、五橋アーバンキャンパスが生まれたことは一長一短で、五橋の校舎は地下鉄直結でアクセスは良くても学生にとっては土樋と片平南が一体でキャンパス集約された方が、授業への移動もキャンパス環境も良かったのかなと感じました。

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2024年6月 2日 (日)

新築移転 仙台厚生病院へ

 ゴールデンウイーク明けに、市内上杉エリアの旧東北大学農学部(雨宮キャンパス)跡地へ、仙台厚生病院が移転新築開院しました。

(注:6/2 写真を追加し、内容を追記の上、東北大学青葉山新キャンパスの記事を分離しました)

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仙台厚生病院移転開院

 病床数は、広瀬町の旧病院と同じ409床ながらも、病室の全てが個室となり、駐車場も従来の3層自走式立体駐車場(200台)から、平面で400台と、収容台数は倍増しました。平面駐車場は南と北に分かれており、北の方が広め。ただ、以前は立体駐車場で雨の日などは殆どぬれずに病院の建物に入れましたが、動線としてちょっと長くなりました。なお、診療を受けた際の駐車場料金は300円(以前は200円)。

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 公共交通のアクセスも、旧病院と変わらず至近の幹線道路(北六番丁通)にバス停(堤通雨宮町)が設置され、東仙台営業所や鶴ケ谷団地方面の市バスが利用可能で、従来の八幡町、愛子方面からの利用者も、北四番丁駅前のバス停でカバーしています。

 そもそも、地下鉄駅からのアクセスは格段に向上し、これまでの北四番丁駅徒歩20分程度から徒歩6分程度に劇的に短縮しました。

 仙台厚生病院は、約10年前の県内への医学部設置構想に乗って東北福祉大や東北学院大学と組んでの附属病院化を模索しながらも組み合わせに迷走し、宮城大学栗原キャンパス構想を経て、最終的には当時の東北薬科大学が採択された経緯があります。その後、病院の土地建物をリースバックの形で病院運営していましたが、仙台都心部の総合病院として生き残っていくために、イオンモールやマンションを中心とする9.3haの複合開発地の約半分の敷地を活用できるより良い立地条件の場所に移転することとなりました。

 雨宮キャンパスの再開発については、先陣を切って野村不動産の「プラウドシティ仙台上杉山通」、続いて住友不動産の「シティハウス堤通雨宮町」と合計400戸規模の中層マンションが分譲済で、マンションに続き仙台厚生病院が立地します。

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なお、土地を東北大学から購入したイオンモールのSCは来年秋の開業に向けて着工したばかり。

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イオンモール開業段階で、移転構想段階から20年近く経過することとなりますが、中心市街地に近接した最初で最後の以上のまとまった面的な再開発となりました。

厚生病院の内部へ 

 先日、病院に用があり、初めて中に入りました。

中に入ると、広々とした吹き抜けのロビーがありました

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ホワイトと木目調の落ち着いたデザインです。

主な診察のフロアは1~2階。3階は手術室、4階にレストラン、5階以上は入院病棟となります。

各診療科の受付書類を挟むクリアファイルの裏面がに、平面図がついており、移転後初めてながらも分かりやすかったです。

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1階には病院にはよく入っているローソンが。

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 なお、以前にあった七十七銀行のATMは廃止され、ローソン内のローソン銀行ATMを利用する形になります。

以前2階にあったレストランは4階へ。ラーメンやうどん、どんぶりもの、定食など、選択肢は豊富です。ガラス張りで明るい印象でした。Img_9612_20240601234501Img_9618

 そして、屋上庭園に面し、南側の県庁、ドコモビル方面の眺めも良かったです。なお、屋上庭園は訪問時はまだ閉鎖されており、屋内からの撮影です。

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 なお、再診の受付も、支払いも機械化され、スムーズに。診察券を入れると自動的に受付してくれます。

 また、診察待ちの状況や薬の準備具合も大型モニターに受付番号が表示され、分かりやすくなりました。

とにかく、以前は混雑しすぎて座る場所がなく、立って待つことも多かったことと比較し、診察待ちスペースが広々としてストレスをあまり感じることはありませんでした。

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総合病院移転新築の流れについて 雑感

 この10年、仙台市では総合病院の移転新築が続いています。

 10年前の2014年には、仙台市立病院(若林区清水小路⇒太白区あすと長町)、2019年に仙台医療センター(宮城野原内で移転)、2021年にJCHO仙台(青葉区台原⇒泉区紫山)、2022年に仙台徳洲会(泉中央駅西側⇒駅東側の高玉町)が移転しました。

 これだけ主要な病院が建て替えをしていると、残された病院としても設備の高度化を進めて行かないと、患者獲得に後れを取り、経営的にも経ちいかなくなる不安が出てくるのでしょう。もちろん病院の新築サイクルは30~40年なので、そのサイクルでやむを得ず移転した病院が大部分ですが、この厚生病院はまだ30年経たない中で、東北大雨宮キャンパスの移転に伴う再開発に参加する形で早めの移転にこぎつけたのは、そういうライバル病院との競争から、より街中に近い一等地への移転を決断したものと思います。民間ではないにせよ財団法人という経営形態から、そのような判断をしやすい面も。

 一方、現在県が進めている4病院移転は、公営もしくは公的な性格を持つ病院で、全て築30年を超え、日赤病院と労災病院は40年を超えており、いずれにせよ建物や設備の更新は必要な時期となっています。とはいえ、公的な病院としての重要性はあれども、公的であるだけに、昨今の緊縮財政もあり、そのままの建替えは難しい状況であることは認識しています。

 公的病院は政策的に必要な分野を優先し、民業圧迫しないようにという原則があり、その点県立がんセンターと日赤病院の統合移転は、名取以南の総合病院の少なさという、地域的な医療資源のバランスを整える意味から、進めても良いものではと考えています。


 そもそも、日赤病院は現在の福祉プラザの場所にありました。市立病院が現在のタワービルの場所から昭和55年に東北学院大学五橋キャンパスの場所に移る際に、道路向かいの目の前にあった日赤病院を仙台市が八木山の市有地に追い出す形で移転されられた経緯があるようです(病院HPから)。そして、現在の日赤病院は、あすと長町へ移転した新市立病院に患者を取られ経営難になったという因縁もあります。地下鉄東西線もモノレール計画の時には日赤病院付近駅が設けられるはずが、手前の動物公園駅までになってしまったことで、日本赤十字社としては仙台市に良い思いはしていないでしょう。


 なお、その日赤病院はかつては県立病院でもあった(仙台赤十字病院併設県立仙台病院)という背景もあり、県の求めに応じて県立がんセンターとくっつくのは先祖返りというか自然なことかもしれません。国道4号バイパス沿い、館腰駅からも遠くはなく、東部道路の名取中央スマートインターにも近接しているので、アクセス的には十分な場所にはなります。進め方は強引とは感じていましたが、協定も締結され、淡々と進められていくでしょうね。

 一方、労災病院の富谷移転は、労災病院と新厚生病院が直線で1㎞ない位近くになってしまったこと、老朽化が進んでいることから移転は必要になるでしょうが、名取からの県の精神医療センターの移転を合わせ技にしたこと、公共交通の便の悪い場所に無理やり移転させる形になり、医療スタッフも十分に移ることができない場所であること、そして、富谷市に総合病院はなくとも、近接する泉区に2つの総合病院(JCHO,徳洲会)が近年移転新築され、その点が無視されていることから、この計画については賛成はできません。

 いずれにせよ、高齢化による人口減が進み、急性期患者の減少とともに、医療スタッフの確保も難しくなることから、医療の世界だけを聖域として守っていくことはできないでしょう。

 それにしても、病院に限らず公共施設の再編の際に必ず出てくる県と仙台市の争い。本来は県と市で協議しながら進めて行く話であり、それができないのは残念ではあります。


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2024年5月18日 (土)

東北大青葉山新キャンパス散策

※仙台厚生病院の記事は、再編集の上別記事(新築移転 仙台厚生病院へ )としました。

 

東北大青葉山新キャンパスへ

 閉鎖された雨宮キャンパスに位置していた東北大農学部ですが、2016年に青葉山ゴルフ場を買収して造成した青葉山新キャンパスへ移転済です。この青葉山新キャンパスへは、2015年の地下鉄東西線の開業日に来て以来しばらくぶりでしたが、地下鉄の一日乗車券があったので、当てもなく向かってみました。

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広々としたプロムナード

 ゴールデンウィーク中の休日で当然講義もない中で、新緑の中小鳥がさえずる気持ち良い日でした。

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日本人学生は帰省しているためか少なく、通りかかるのは外国人留学生が多く、聞こえてくる言葉はインターナショナル。市内に居ながらも外国にトリップしたような感覚を覚えました。

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 キャンパスモールの突き当りには、移転した農学部新キャンパスの建物がありました。南側の農場を含めても雨宮キャンパスよりも狭いというのは意外。

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農学部の記念碑がありました。

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 青葉山駅付近から新キャンパス方面を見渡すと、キャンパスモールの南側の丘の上に集合住宅が立ち並ぶ一角が。留学生宿舎を中心とした青葉山ユニバーシティ・ハウス青葉山。

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 以前は東北福祉大学近くの三条町にしかなかった留学生宿舎ですが、新キャンパス内に752戸という規模で設置され、総戸数は倍になりました。日本人学生でもインターナショナルな環境で住むことができ、地下鉄駅から徒歩10分圏ということから、川内キャンパスや仙台駅方面への移動も便利で、素晴らしい環境です。ただ買い物はプロムナード沿いの青葉山コモンズ(生協売店)や青葉山みどり厚生会館(ローソンなど)のみでちょっと不便そうですが。あと夜はちょっと怖いかなと。

ナノテラスへ

 ユニバーシティ・ハウスを越えて、サイエンスパークの一角へ。この4月に供用開始したという「国際放射光イノベーション・スマート研究棟」と「青葉山ユニバース」の建物がありました。

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 ただ、 この写真のようにサイエンスパークへの企業の研究拠点の集積はまだまだこれから。

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 さらに奥に行くと、見えてきました。休日なので全く人気はなく、駐車場にはクルマは殆どありませんでしたが、さすがの存在感です。

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 国内最先端の放射光施設で、東日本では茨城県に続き整備され、最北の施設となりました。

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 これまで有名だった兵庫県佐用町のスプリング8が既存都市から離れた播磨科学公園都市に立地しているのと比較すると、最寄り駅まで徒歩15分(学内キャンパスバスで9分、タクシーだと5分程度)、そこから地下鉄東西線で仙台駅まで乗車10分と、仙台駅と30分以内で行き来することができるなど、アクセスは国内の他の施設と比べ物になりません。何と青葉山駅方面へのキャンパスバスは23時まで運行しています。
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構想段階では、東北六県の国立大学連名での誘致という背景から、福島大学の先生が先頭に立って、東北大学は半歩引いた立場で誘致活動に加わっていましたが、その時の候補地は丸森町、大郷町、松島町(松島町の候補地は現在イノベーションヒルズという工業団地として造成中)。県外では青森県内に候補地がありました。

 その後、東北大学キャンパス内を候補地として立候補することに。他の県内の候補地に勝ち目がある訳がないし、ヘビーユーザーは東北大と共同研究する企業がメインになるでしょうから、紆余曲折ありながらも、このキャンパス内に立地することができて良かったと。この立地でも運営費が厳しいと言われていますが、土地の造成やアクセス道路の整備など周辺投資がほぼ不要だったことは大きく、仮に他の候補地であれば土地造成費用やアクセス道路の費用でプラスで数百億は必要だったはず。さらに、多少でも地下鉄東西線の利用促進にもつながります。


 

川内キャンパスへ

 青葉山駅に戻りましたが、まだ時間があったので、1駅仙台駅寄りの川内駅で下車し、東北大の文系や全学教育(いわゆる教養課程)がある川内キャンパス内を散策しました。

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 広大な青葉山キャンパス(新キャンパスを含む)は青葉山駅1か所でカバーしているのと異なり、コンパクトな川内キャンパスは、川内駅と国際センター駅の2か所に挟まれ、行先によって駅を選ぶことができます

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 川内駅はホームは地下ですが、駅改札階は地上で国際センター駅ほど立派ではないですが駅舎が存在しています。

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 コンパクトと言っても非常に緑豊かというのは変わらず、キャンパス内の建物や緑にも歴史を感じることができました。

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適当にさまよっていたら、東北大学植物園にたどり着きました。本当に気持ち良い季節で、時間があれば中に入ってみたかったのですが、時間がなかったのでまたの機会に。

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その先には、川内萩ホールが。ここに来たのは初めて。

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 青葉山エリアといえば、カフェモーツアルト。現在、県美術館のフィガロは休業中ですが、この川内萩ホール内のクレール、東西線国際センター駅2階のメトロに続き、この4月にリニューアルした仙台市博物館にもカフェモーツアルトテオがオープンしたようです。

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国際センター駅方面に向かう前に、眺めの良い場所があったので、しばし休憩を。

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国際センターやトラストタワー方面が一望です。

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国際センター展示棟ではクラフト系のイベントが開催されていました。本当に緑豊かで気持ちの良い空間です。

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 現在市民が寄ることができる施設は、この国際センターと緑化フェア跡地の青葉山公園、リニューアルした仙台市博物館だけですが、すったもんだの挙句現地存続となり改装中の宮城県美術館も令和7年度中に再開予定で、国際センター駅北側には仙台市の音楽ホールが令和13年にオープン見込み。市民が集える施設がこの界隈に集まることに。

 都心部にこんなに近い空間を味わっているのがほぼ学生だけというのは本当にもったいないところ。本当に気持ち良い時間を過ごすことができました。

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2024年5月 7日 (火)

複合施設アオーレ長岡と仙台市役所新庁舎

 現在、議会棟と低層棟の取り壊し工事が進められ、15階建ての新庁舎建設に向けて着々と進んでいる仙台市役所。

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 かなり前の新庁舎検討段階に、市役所と集客施設の複合事例として新潟県長岡市のアオーレ長岡を取り上げていました。


過去記事

仙台市役所建て替え本格検討再開(2016.02.21)

宇都宮にLRT ライトライン開業 その4(ゆったり観察 復路編)(2024/4/8)


 市役所とアリーナ機能、屋根付き広場機能を上越新幹線が停車する長岡駅前に整備した先進的な事例で、ぜひ行ってみたいと思っていながら、前回の新潟行きの際には新潟市から先に行くハードルが高く、行く機会が作れませんでしたが、先日のきゅん❤パス期間に寄ることができました。

東北新幹線⇒上越新幹線へ乗り継ぎ

 宇都宮はライトライン往復のみでの駆け足となり、滞在時間はぴったり2時間でした。

 9時19分のやまびこに乗車し、大宮までは30分弱であっと言う間。

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 そこから上越・北陸新幹線ホームへ移動すると大行列があり、ちょっと焦りましたがその行列は前後に発車する北陸新幹線のかがやき・はくたかのもの。上越新幹線の9時52分発「とき」自由席は数人しか並んでおらず、楽勝で座席を確保できました。

 そもそも宇都宮駅9時19分発に乗れないと長岡行きはあきらめるつもりでしたが、復路のライトラインが遅れずに済んだので、無事長岡に寄ることができました。

 上越新幹線に乗ったのは、出張で富山に行った際以来でちょうど10年ぶり。その時は北陸新幹線延伸前で越後湯沢乗り継ぎ。越後湯沢以北に乗るのはこれも新潟市への出張以来で15年ぶり。

 その後、熊谷⇒高崎⇒越後湯沢と停車し、1時間10分ほどで長岡駅へ到着。

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新潟県第二の都市 長岡へ

 流石、細長い新潟県の中央部である中越地方にある新潟県第二の都市で、本来であれば県庁があってもおかしくないような地理条件。そのために田中角栄が長岡ニュータウンや幹線国道整備しまくって夢を見たのでしょうが、それが市街地のスプロール化に繋がり、駅前は駅ビル以外は厳しい状態のようでした。

 駅自体には、COCOLO長岡というそこそこ充実した駅ビルもあり、ファッション系は弱いものの、ロフトや無印良品、スタバ・タリーズなどのカフェ、新潟市まで行かなくとも地元の若者を多少は引き留めることができるラインナップを揃えていました。

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 駅前あるあるですが、イトーヨーカドー丸大長岡店が撤退した跡にDiaPlaza長岡というテナントビルがあり、そこまで寄る時間はないながらも、スーパー機能やツルハ、学習塾などが入居しているようです。しかし半分以上は空きフロアで、限られた高感度のテナントは駅ビルに集まり、その他の書店などは東口の旧ダイエーが撤退したという越後交通が経営するE ・PLAZAにそこそこ集まっている模様。

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 滞在時間が正味1時間だったため、アオーレ長岡見学と昼食のみで、その周辺をゆっくりすることはできませんでしたが、 以前は賑わっていたのでしょう。郊外のモールに勝ち目がない。というのは中都市あるあるで、正直街中の商業施設が勝負になるのは40~50万人規模以上の都市に限られる。

街中の再開発が進行中

 このように、商業に関しては厳しい状況で、再開発ビルで商業機能を入れようとしてもテナントが集まる訳はない。

そうはいっても、合併時に30万人近くいた人口が25万人強に減少しているとはいえ、新幹線が通り、県の中央部に位置する拠点都市で条件としては恵まれています。宮城県では第二・三の都市が合併しても12~14万人の石巻市や大崎市であることから、仙台市一極集中の色が強いのに対し、新潟県は長岡市、上越市と広い県土でバランスよく拠点都市が点在しています。

 よって、この立地条件を生かし、行政機能や集客施設機能を街中に再度集める取り組みを図っていると見聞きしていました。

 今回見に行けなかった「米百俵プレイスミライエ長岡」という、銀行オフィス、図書コーナーなどの情報スペース、交流スペースが集まった再開発ビルがオープンしており、隣接して分譲マンションやクリニック・駐車場ビルも整備されました。

 令和8年度には東館として、長岡市商工会議所や長岡市の産業部門も入居するとのことで、再開発ビルとしての成否は不明ですが、中心市街地に人を集める努力を続けています。

市役所とアリーナの複合施設アオーレ長岡

長岡駅からは、屋根付きペデストリアンデッキというか空中回廊がアオーレ長岡まで直結しているのには驚きました。

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 長岡駅前でほぼ隣接しています。市役所アオーレの本庁舎の他、近隣にも大手通庁舎と市民センター庁舎に分散しているようですが、基本的にこの大手通り沿いに集めています。合併特例債を活用して中心市街地へ移転を行ったとのこと。

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 空中回廊の先には、2階のシンボル的なこの空間が。

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 一階に降りてみましたが、広大な屋根付きの土間的なイベント空間が広がっていました。当日は平日で、市役所の職員向けのお弁当などの販売があった位で、賑やかさは感じることができませんでしたが、2階には市役所の執務スペースがガラス張りで、オープンなつくりになっていることが分かります。

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アリーナ部分は、もともと存在した厚生年金会館の機能代替の意味も持たせているようで、Bリーグ2部の新潟アルビレックスBBの本拠地として活用されています。

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 新潟アルビレックスは県名を名乗っているので、サッカーと野球の本拠地は新潟市ですが、バスケの本拠地は長岡市と結果的にうまくバランスを取っていますね。

 当日はアリーナ部分を見学したかったのですが、アルビレックスBBの非公開練習を行っていて覗くことも叶わず。

 Bリーグプレミア参入を目指し、5000人規模のキャパシティーでとのこと。見た目ではゼビアリの方が大きく感じましたが、アオーレ長岡の方が若干キャパが大きいようです。なお、ライブ会場としては長岡規模の都市としては大きすぎるからか、年数回程度のよう。アリーナ部分は体育館やイベント会場としての活用が中心なのでしょうね。

仙台市役所新庁舎の広場機能

 なお、仙台市役所新庁舎では高層棟の1~2階部分は市民利用・情報発信機能を設けており、屋根付きのスペースのようながらも、アオーレ長岡のようなダイナミックな屋内空間という訳ではなさそう。

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 新潟県ほどではないにせよ、冬の気候が厳しい仙台市。稼働率の高い市民広場は11月中旬~3月までは光のページェントなどを除きほとんどイベント活用がされないことから、冬の賑わいづくりのためにより広々とした空間があると良いなと思っていますが、通路部分を屋根付き空間として活用できるというイメージのようです。

 まぁ、春から秋の約8か月間は屋外の市民広場でのイベントが開催されており、春や秋のように屋外でも良い気候の時期もあるので、屋根付き広場は必須という訳ではなく、プラスアルファとして冬に少しでも活用されれば御の字なのかな。 


なお、南北線の勾当台公園の地下コンコースから、一応地下通路で新庁舎の東端に繋がる地下通路が設置され、エレベーターで1・2階に接続される模様です。一般の来庁者や職員は従来の市役所口である長いエスカレーター出口から地上の大屋根下通路で新庁舎に結ばれる模様。さすがに高層棟まで地下通路を直結するには距離が長すぎるためか。なお、南北線開業時にも市役所地下直結を検討しながらも、「市職員のための通路は反対」と文句を言う方々がおり取りやめになったとか。大体想像つきますが。今回はバリアフリー名目で整備できるのかな。その地下通路整備のため、市民広場の一部が工事スペースとなり、イベント利用に大幅な制約が生じてしまう模様で、勾当台通向かいの勾当台公園いこいの広場をつぶして暫定的にイベントスペースにするとか。


慌ただしく新潟駅へ

 アオーレ長岡は20分少々の駆け足の見学で、その後近くのラーメン屋で昼食を20分少々でとり、雁木風の古いアーケードが張り巡らされた通りを経由して、長岡駅に戻りました。

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 12時10分発の新潟行に乗らないと次は72分後で新潟市での滞在時間が極端に減ってしまうので、泣く泣く新潟市に向かいました。


 なお、12時10分の前は11時55分発もありながら、基本的には昼間毎時1本と、宮城県内であれば古川駅や白石蔵王駅並みの本数というのは同じJR東日本なのでやむを得ないながらも、理想は30分に1本程度あると便利だなぁと。


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 一方、在来線も、朝晩は本数が多くなりながらも、昼間は新幹線と同じ程度の本数。在来線の所要時間は新潟駅まで75分程度と、感覚的には福島駅と仙台駅との時間距離と同等です。そうすると、在来線で乗り通しよりは新幹線、そして高速バスの方が新潟県庁・古町・万代シテイなどの途中バス停をこまめに経由するため競争力を持ちそうな区間に感じました(高速バスだと1000円で90分)。

 新幹線では、新潟駅まで20分少々と、途中駅の燕三条に停車しながらもあっという間。新装となった新潟駅に到着しました。

 

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2024年4月 8日 (月)

宇都宮にLRT ライトライン開業 その4(ゆったり観察 復路編)

 宇都宮にLRT ライトライン開業 その3(ようやく初乗車!往路編)の続きです。

芳賀・高根沢工業団地到着

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 終点の「芳賀・高根沢工業団地」は、本田技研の研究所やテストコースに隣接というか、それしかない場所。

 奥の歩道橋を右側に行くと業務棟などが点在しています(左側は広大な駐車場)。

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 だったら、停留所名を「本田技研前」にして、ネーミングライツ料をホンダからもらった方が分かりやすく収入もあるしで良いのではと思いましたが、公共交通の駅名なので、特定の民間施設名を避けたのでしょうね。同じように、清陵高校前でなくよりネームバリューのある「作新学院大学前」とか、宇大陽東キャンパスでなく「ベルモール前」の方が分かりやすいにせよ。移転や撤退したら駅名も変えなければとなるのを避ける意味合いもあるのか。私鉄ですが、都立大や学芸大という駅名を頑なに変えない(変えれない)東急電鉄の例もあり。その駅名になっている清陵高校も、2027年度に全日制課程の募集を終了するとか。校名変更は分かりませんが、施設名を付すると、分かりやすさの反面後で悩ましいケースも。

 仙台の東西線でも、副駅名はともかく、正式な駅名では国際センターという公共施設以外は名称に使用するのを避けています。川内や青葉山などは東北大の名前を冠した方が分かりやすいところもありますが。


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昼間の時刻表はほぼ12分間隔で毎時5本。4月のダイヤ改正でも変わっていないようです。

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復路は貸し切り状態

 なお、終点に到着後、「向かい側のホームに停まっている8時16分発に乗れれば、宇都宮駅9時19分発の東京行きやまびこに間に合う!ただ、もう少し観察したい」と思っていたら、電車が動く気配なし。そしたら、前の電車が車両故障で出発が遅れるとのこと。旅程崩壊がちらつく中、すぐに発車しないのであればと開き直り、駅ホームや車内の観察を。

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現金客向けの整理券発行機が先頭車両近くにありました。

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 帰りは、予想通りこのようなガラガラな状況なので、後ろの車両まで行ってみました。行きは混んでいて全く見通せなかったのですが、結構長さを感じますね。天井からぶら下がるビジョンが新鮮。分かりやすい案内でした。

 先頭部分以外のドアは互い違いになっています。3両編成で片側4か所の出入口というのは不思議な配置。停留所によってはホームが左右どちらにあるかまちまちで、ドアの近くと思っていたら開かず焦るということもありそう。

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 バスのような運賃支払い機。運転手がいない場合でもICカードへのチャージができるとか。

 天井からぶら下がっているLCDの他、ドア上にも案内が完備されています。

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 さて、幸いにも前の電車の車両故障が解決したのか、不安になりながらも4分程度の遅れで発車。始発時点で乗客は自分を含め3名。工場ではなく研究所なので、深夜勤務明けの方が乗ってくるということもなく、往路と打って変わってゆったり乗車することができ、観察し放題。

ロードサイドにLRT

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 ゆいの杜付近は、ロードサイド店舗が立ち並ぶ光景で幹線道路のど真ん中を路面電車が走るという光景は珍しそう。昔ながらの路面電車では商店街など小規模店舗が立ち並ぶ狭い道路沿いということはあっても、カインズやヤマダデンキ、ダイソー、そして富沢西にあるような新しい飲食店を中心とした郊外型店舗の集積が新鮮。良く取り上げられるスタバも、ドライブスルー店舗ながらライトラインでも行くことができる立地。

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 ゆいの杜を過ぎた野高谷交差点。ライトライン側も高架線で交差点を豪快にオーバーパスして左折していますが、幹線道路側も立体交差が進行中。この整備中の道路は常磐道の谷和原ICと東北道の矢板ICを結ぶ国道294号(408号?)と気づきましたが、若い時に帰省ルートとしてたまに通っていたころの面影はなく、ところどころ高規格化されており、栃木県の道路整備への力の入れようを感じたところ。この辺は工業団地なので、産業道路的な位置づけなのでしょうが。

遅ればせながら、スタジアム近接停留所誕生

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 J2栃木SCのホームスタジアムの一つである、グリーンスタジアム近くに新設された停留所。駅の案内にもスタジアム写真が。

 ライトライン開業後に昨季も数試合開催し、今季も秋に2試合が予定されているようですが、東武宇都宮線の西川田駅徒歩圏に国体用のカンセキスタジアムがオープンし、本拠地は屋根付き陸上競技場のカンセキに移っていることから、せっかくのサッカースタジアムのアクセスが改善しても使われないのはもったいない。

 まぁ、収容人員とか屋根の有無などで、総合的にはカンセキスタの方が観戦環境は良いかもしれませんが。なお、ベガルタの試合もカンセキで開催予定。この駅は、快速運転時の緩急接続にも使える2面4線の設備があります。

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課題となる学生の通学需要獲得(スクールバスとの共存)

 清陵高校前は、副駅名になっている作新学院大学・短大のPRも。

 ライトライン開業前は宇都宮駅から無料のスクールバス頼みの学生輸送でしたが、ライトライン開業により、どの程度転移したのか。新年度は朝夕のピーク時には毎時最大4本のスクールバス運行ですが、ピーク時以外は毎時0~1本の時間もあり、学校的にこの立地条件であれば完全にライトラインに移行させたいと思っていそう。企業と異なり自らの通学定期代の負担はないし。逆に、学生からするとライトラインはバスの時間に縛られることない反面、定期代負担が大きく、その兼ね合いでの様子見なのかな。

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 途中の飛山城跡か平石か忘れましたが、停留所横にパークアンドライド駐車場が大盛況でした。どの駅も駐車場不足で増設の動きとのことですが、無料にできる程度の地価としても、P&R駐車場は100台分でもかなりの面積確保が必要で、ライトライン誘導にしても駐車場有料化は図って需要と供給のバランスを取っていかないと、いざという時に停められないということがありそう。北陸新幹線の越前たけふ駅でもそのような事態が開業早々起こっているとか。まぁ、有料にすると、街中の駐車場に停めた方が安くなるというジレンマも出てくることと、料金徴収のコストを考えると、ライトライン利用促進のために割り切った対応か。

延伸区間の要 ベルモール

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 復路はしとしとと雨が降ってきて、良い写真が撮れていませんが、往路は反対側でよく見れなかったベルモールを。時間があれば寄ってみたかったのですが、いかんせん9時前だし先もあるので、車窓から規模感を把握。

 今、首都圏や関西などの3大都市圏以外から撤退戦真っ最中のイトーヨーカドーですが、栃木県は残す模様。ここは仮にヨーカドーが撤退したとしても、五所川原エルムのように競争力があるSCなので、後釜もすんなり決まるでしょうが。SCの運営デべ自体は地元企業で、市街地の工場跡地に開発されたというのも、東北特殊鋼の跡地に開発され西友が入っているSCである長町モールに似ています。

 ヨーカドーの他シネコンのTOHOシネマズ、ケースデンキ、スーパー銭湯等が出店しており、市街地近くでそこそこの規模感。5000台収容の駐車場と支持を集めているのが分かります。

 ライトライン開業により、宇都宮駅東口から10分150円でベルモールに行くことができるようになったことで、郊外の商業施設から、中心市街地を担う商業施設的な位置づけに多少シフトしたのかな。バスではなく鉄道でSCの目の前に行くことができるのは、分かりやすさから他のSCと比べて強みが。

 それに、平日はホンダ方面への通勤客で1.3万人程度を見込んでおり、ほぼ予定通りの利用状況ですが、週末はその需要がなくなるため当初は硬めに3000人台の利用者しか見込んでいなかったとしても、ベルモールやJリーグ、イベントなどの需要が加わればコンスタントに1万人を超えているのは凄いとしか。とはいえ、これがなかったら週末はほぼ空気輸送だったでしょうし、定期外客の利用促進の意味でも、大規模SC近くにルート設定し駅を設置した効果が大きいことを感じました。


 なお、長町モール最寄の南北線長町南駅でも、夕方は仙台駅方面に1電車概ね50人以上が程度がコンスタントに乗っていきますが、地下鉄でも南北線直結のワンストップ型のSCがこの「ザ・モール仙台長町+ララガーデン長町」しかないことから根強い需要を感じ、週末の利用促進に貢献しています。来秋に北四番丁駅徒歩圏にできるイオンモール雨宮の影響がどの程度になるかが気がかり。売り場面積は長町モール勢の半分とはいえ。


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 なお、宇都宮駅東口に到着するまで乗客は10人とおらず、ラッシュ時を過ぎたとはいえガラガラ状態でちょっと心配でしたが、理由としては車両故障で遅れていた前の電車がつっかえて、乗客を根こそぎ乗せて行ったためと思われます。よく団子状態のバスであるパターン。

 おかげで、当方の乗っていた電車は乗降がほとんどなかったため、後れを多少取り戻す勢いで9時過ぎに宇都宮駅東口へ到着する直前に前の電車が見えていたので気付いた次第。新幹線乗換に15分程度余裕が生まれ、宇都宮スクエアなど東口、そして西口付近を眺める時間が取れました。

西口延伸への期待

 2030年代前半と目される西口延伸の際には、この大通の真ん中にライトラインが通ることに。そのころまでに西口方面の繁華街が持ちこたえていれば。期待感で延伸に向けて再開発が浮上しているようなので、少なくとも居住者は増えそうで、中心部にとっては間違いなくプラス要素。

 まとまった需要が期待でき、鬼怒川以東への渋滞解消という長年の課題解消効果のあった東口部分の整備に続き、本来であれば路線バスが数珠つなぎとなるほどの需要が見込める西口への延伸はもう少し早くても。

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 高校が集まっている教育会館までの5㎞ほどの延伸ルートは決定し、その先東北道を越えて大谷石で有名な大家観光地までは延伸検討区間とのこと。また将来を見据えることのできないクルマ脳のかなり年配の方々が「バスの街にはLRT不要」と反対運動を続けているようですが、開業前は疑心暗鬼だった市民のコンセンサスは推進の方向に変わっており、あとは高騰する事業費や工期を踏まえ、どのように進めて行くかというところ。


 なお、この動きに乗っていくのは良いこととはいえ、隣接の鹿沼市議有志が、西口延伸区間の見通しがつかない段階で、「わが市へライトライン延伸を」と言い始めましたが、その前に、JR日光線という既に通っている宇都宮駅に直結するインフラ活用を考えた方がと思いました。距離がわずかだった芳賀町でも立地企業で財政が豊かだったから出せたという事情があり、鹿沼市域分の距離から言っても200億以上の負担は必要。日光線と共倒れの可能性も高いし。仮に実現しても20年後というのがどう判断されるか。


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次の目的地へ

 宇都宮での滞在時間はちょうど2時間ジャストでしたが、ライトライン初乗車という密度の濃い時間を過ごせました。

東京行きのやまびこながら、こまち型車両併結だったので、そちらを選んだところ、やはり2人掛けを1人で使える程度の混み具合でした。

 乗換の大宮駅までは25分程度で、あっと言う間。仙台駅と福島駅もしくはくりこま高原駅間の時間距離。ホンダの社員が大宮付近に多く住んでいるというのも分かる。両方遠いとはいえ、芳賀も寄居も両方通えるという意味で。

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次は、上越新幹線に乗り換えて先を目指しました。

 

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