他都市比較

2025年6月22日 (日)

課題満載 仙台東道路の4ルート案公表

 ルートが具体化しつつある仙台東道路。過去記事として10年以上前に記事にしていたので、雑感などはそちら参照。


過去記事


 東北道の仙台宮城ICから都心部を結ぶ仙台西道路は昭和58年度に全通し、東北道からに限らず愛子地区からのアクセスを革命的に短縮した無料の高規格道路として欠かせない幹線道路となっていますが、その西道路に対する東部道路方面の仙台東道路、そして泉方面の仙台北道路、長町方面への仙台南道路は構想路線として30年以上前から存在しながら、事業化に至っていない仙台都心部に向かう高規格道路群。その中で、西道路に対して整備されればバランスの良い仙台東道路の4つのルート案が国土交通省から出されました。

仙台東道路計画段階評価第3回説明資料

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 そもそもルート沿いに整備された東部道路のコロナワールド付近から広瀬通へ繋がる元寺小路福室線は、基本的に片側3車線で都市計画決定され、中央分離帯への高架橋建設も十分可能は幅員であり、近年は架け替えられた宮城野橋から仙台駅東口第二土地区画整理事業部分が立派に整備されました。仙台医療センター東側のJR貨物線をくぐる部分のみ片側1車線になっていますが、一応全線通れるようになっています。

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 なので、ルートはこの元寺小路福室線沿い一択かと思っていたところ、今更4つのルート案が公表され、正直ずっこけました。

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 都心部は、3通り、仙台駅以東は、4通り ですが、基本的なルートは都心部の3通りに対応しています。

都心部(仙台駅西)

  仙台駅東~東部道路

①定禅寺通経由

45号線経由

②広瀬通経由

元寺小路福室線経由

元寺小路福室線+原町岡田線経由

③青葉通経由

産業道路経由

 そもそも仙台東道路は、東部道路から元寺小路福室線の仙台駅東(アンパンマンミュージアム付近)が終点であれば、整備の困難度はそれほど高くないですが、そのような形にしてしまうと、西道路から吐き出され、東道路に向かう大量のクルマとトラックが広瀬通を経由し、今以上に都心部の幹線道路が麻痺してしまうことが容易に予想されることから、東道路は西道路と直結させて、一般道への影響を極力小さくするして整備することが前提とされ、一気に整備のハードルが高くなってしまいました。

地下前提の都心部エリアも困難だらけ

 そうすると、仙台駅東方面は整備費から高架道路一択ですが、仙台駅西口エリアは正直首都高のような高架道路はちょっとあり得ない。 


 例えば、定禅寺通や青葉通を高架道路が走る形になるのは、仙台市のシンボルケヤキ並木への影響が大きく、仙台市や市民が許すわけがない。この2つの通りとの比較で、広瀬通はまだイチョウ並木なので、まだ伐採して中央分離帯に高架道路を整備するのは不可能ではないでしょうが、それでも沿道にビルが立ち並び4~5階の高さに高架道路がというのはほぼ商業・業務系のビルとはいえ、杜の都のイメージを棄損することになり、簡単ではない。

 広瀬通では、アエル近辺の車線増のために中央分離帯のイチョウを10本伐採した際に、結構問題になった覚えもあります。広瀬通でさえなので、定禅寺通と青葉通は不可能でしょうね。


 そうなると、地下トンネルしかないにせよ、広瀬通は地下鉄南北線広瀬通駅と駐輪場が一部地下に位置していること、さらに青葉通は地下鉄東西線と、青葉通地下道、駐輪場、そして仙石線あおば通駅と、ほぼ全線にわたり地下に構築物があることから、広瀬通より条件は厳しく、大深度でなければ無理じゃない?

 そうなると、地下の構築物が勾当台公園付近で地下鉄南北線をくぐる部分のみとなる定禅寺通の条件が良さそうですが、それも地下鉄東西線青葉通一番町駅建設の際に多くのケヤキ並木が伐採され、いつぞやの市長がケヤキの精発言をしたり、地下鉄反対派が乗ってきてケヤキ伐採反対運動を繰り広げるなどした記憶が思い起こされ、地下を通すにしても結構大変そうです。

 定禅寺通自体は、車道減少で歩行空間拡大に向けた再整備を実施しているところで、その計画にも大きな影響が出てしまう。このシンボルロードの地下に時代遅れの地下道路を通すということが許されるのか。

 どのルートであってもそれに地下を通す場合、それなりの大深度が前提となることから、西口側(特に仙台駅付近)で地上への出入口が設置可能な場所も限られ、換気口の設置場所を含め、どのような手法になるのか想像がつきません。

東側は高架一択にしても。。。

 そもそも国道45号線ルートが出てきたのがよく分からない。幅員も狭く、仙台港北IC付近で三陸道に接続するにしても、現道の幅員が狭く曲がりくねった区間もあり、このルート沿いで整備できるイメージが湧かない。もっとも整備距離が長く、三陸道松島・石巻方面に向かうのであれば距離が短縮されるにせよ、空港や常磐道方面との行き来を考えると、非常に遠回りになり、需要が見込めない。地下が最も通しやすい定禅寺通りとセットで検討した結果なのかもしれませんが。。。

 また、地下整備が最も困難な青葉通に対応して、産業道路(新寺通)へつなぐルートを見る限りは、地下鉄南北線が通る愛宕上杉通と上に在来線と新幹線が通る新寺ガードが含まれ、正直あり得ないルートとしか思えない。

 なので、結局整備するとしたら②の広瀬通⇔元寺小路福室線(or原町岡田線)しかないのでは。

 元寺小路福室線がネックになるとしたら、防衛上、自衛隊苦竹駐屯地を見下ろす形となる高架道路を整備することの妥当性や、新県民会館への振動の影響などが考えられますが、他のルートよりは解決が容易。先日交差点立体化工事が終了し開通した4号線バイパスの箱堤交差点との接続の困難さを考えると、平面交差の卸町交差点へ接続するために1本南側の原町岡田線にルートを振るという可能性もあるのか。

 インターは、西道路終点付近、仙台駅西口付近に1か所、広域防災拠点付近に1か所、国道4号バイパス交差点に1か所、あとは東部道路へJCT形式で直接接続が前提でしょう。

事業化へのハードル

 正直、構想が出てからの検討時期が長過ぎ、建設工事費の高騰が進んでいる今、整備の時期を逸してしまったという感想になってしまいます。

 約20年前工事が行われた秋田中央道路(片側各1車線、秋田駅の東西を地下トンネル構造、2.55㎞で事業費約700億円)を考えると、仙台都心部の地下トンネル工事のみで1,000億円は下らない。20年以上前に整備された仙台東部道路の高架区間(仙台東IC⇔仙台港北IC:5.2km)が520億の整備費とのことなので、仙台駅東側を高架で5㎞以上をこれから整備する場合はゆうに1000憶は超えるだろうし、そうなると全線で地下鉄東西線を超える2500憶~3000憶程度のビッグプロジェクトになってしまう。

 そうなると当然ながら無料通行を前提にはできず、都市高速的な有料道路としての整備が前提となるでしょうが、普通車通行料を仮に5~600円としてどの程度の利用が生まれるか。西道路との直結を前提とするのであれば、西道路を組み込み有料化し、料金収入を上積みすることも必要になるかもしれない。また、仮に2030年頃に事業化されても全通まで15年程度はかかるだろうから、そのころには交通需要も低下し、事業として成り立つかどうか、見通しは暗いのでは。

 そもそも、幹線道路が各2本以下と限られる北・南・西方面と異なり、東方面は利府街道、国道45号、元寺小路福室線、産業道路と、都心部からの幹線道路が4本整備され、整備水準は高い状況。

 今回のルート案公表で正直事業が前に進むのかと思ったら、まだこの段階の検討だったのかと拍子抜けとなってしまい、事業化されれば嬉しいにしても、ここまでのルート条件、事業採算性の厳しさから、トーンダウンしてしまいました。

 そもそも、仙台市は、地下鉄東西線を整備することで、都心部を含めた自動車交通量の減少を見込んでいたはず。定禅寺通りの車線減少もその一環。その前段で都心部を取り囲む自動車専用道路を整備し、通過交通の排除を進めていながら、環状道路は有料道路であることから、結局、仙台宮城IC⇔西道路⇔広瀬通 という無料ルートに大型車が流入してしまっています。この東道路を進めることで、都心部へのクルマの流入を促進することとなり、これまでの流れに逆行することとなるのでは。

 福岡や広島のように、都市高速が整備され都心部への自動車アクセスが向上することで、高速バスの定時性も高まるなど、良い効果は見込めるにしても、正直これから改めて事業化を進めるのは厳しいなぁと改めて感じた次第。

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2025年6月14日 (土)

仙台と福岡(その3)福岡市地下鉄各路線について


仙台と福岡(その2)地下鉄直結!福岡空港からの続編です。


 福岡市地下鉄3路線目として、2005年2月に天神南ー橋本間の12㎞が開業した七隈線。

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  事業化のためには、コスト削減で断面積の小さいリニア地下鉄が採用され、既存路線との直通を当初から断念することとなった上、開業前には、幾度となく需要予測が下方修正され、ようやく開業にこぎつけた感があった路線。この紆余曲折ぶりは、「仙石線相互直通+モノレール南西線」計画撤回により生み出された、仙台市東西線とも共通するところ。同じリニア地下鉄というところも。

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 将来の延伸を見据えて、天神の駅位置が天神地下街を挟んで南側に置かざるを得ず、既存の地下鉄空港線乗換のためには、その天神地下街経由で10分弱の改札外乗換を強いられ、地下鉄で博多駅や空港方面へ行くには、非常に遠回り感が生じていました。

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 博多駅へは途中の薬院駅で博多駅行のバスに乗り換えるか、それであれば、最寄りのバス停から直接博多駅行に乗った方が楽という、中途半端さがあだとなり、開業後も西鉄バスが真っ向勝負で博多駅直行バスをバンバン出し続けたため、当初は、七隈線の一日の利用者数が4万人台(需要予測11万人)と惨憺たる利用状況となっていたとか。

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 もともとの構想は天神南・中洲川端駅経由ウォータフロント方面と、途中の薬院駅で分岐して博多駅延伸という路線が考えられていましたが、ウォータフロント方面構想は中洲川端駅で既存2路線に乗り換えできるというメリットの反面、採算性に難があり、天神南行と博多駅行を分岐させる運行体系は無駄が多いということで、延伸計画は決まるまで時間がかかりました。

 せっかく整備した七隈線の利用促進のために、
2011年に実際開業した現ルートの整備が決定し、天神南駅からキャナルシティ博多経由で博多駅乗り入れ工事を開始したものの、記憶に新しい平成28年の工事中道路陥没事故で開業が2年程遅れ、令和5年3月26日にようやく博多延伸開業にこぎつけたとのこと。

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 七隈線雑感については、過去記事と重複するので、こちらを。

 開業前の低利用率から一転、博多駅延伸開業後の混雑状況が話題になっていた七隈線に初めて乗車しました。あえて朝ラッシュ時をめがけて、宿泊していた天神の宿を朝早く出て、終点の橋本駅まで向かって、平日の8時頃に博多駅に到着する電車に乗ってみました。

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 仙台の東西線で乗り慣れているリニア地下鉄の車両サイズですが、やはり窮屈感は否めません。向かい側の席が目の前に感じます。

 下りは6時台だったため、当然ガラガラで25分の道のりを橋本まで。この駅は、日本最西端の地下鉄駅とか。

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 一旦改札の外に出て、駅周辺を観察しましたが、幹線道路沿いで上空には都市高速環状線が走っており、向かい側には「木の葉モール橋本」というそこそこのサイズの郊外型SCが。かなりの郊外を感じるエリアで、この光景見覚えあると思ったら、仙台の三井アウトレット仙台港と産業道路・上空に東部道路という組み合わせに似ている。

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 橋本駅周辺は住宅密集地という訳ではなく、発展途上な印象で比較的低密な土地利用が広がる中、周辺の丘の上に見えるニュータウンからの乗り継ぎバスターミナルがありました。地下鉄で博多から30分の終点なので、郊外なのは当たり前にしても。

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広々とした橋本駅構内です。

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 7時29分発博多駅方面の朝ラッシュ時の電車に着席乗車でしたが、発車後3~4駅でようやく空席が埋まり、福大前駅あたりからは多少混雑してきました。

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 六本松と薬院の間の数駅はドア付近はかなりの混雑で積み残しも多少あるようでしたが、座席に挟まれた通路の部分は2列でつり革をゆったりとつかめるような混み具合で、足元もかなり余裕あり。ピークはもう少し後だったのかもしれませんが、最高140%の乗車率という前評判?に対し、多少拍子抜け。一応夏休み前の学生も多い時期でした。確かに、リニア地下鉄の小型車両では2列ではゆったりつり革をつかめるけど、3列になってまで中に詰めるのは困難という中途半端な車幅ではある。

 予想通り、西鉄乗換の薬院駅で混雑が緩和され、天神南駅で過半数が降り、あとは立ち客がパラパラ状態で博多駅方面へ。仙台もですが、実際混雑が激しい区間は数駅だけという感覚は同じでした。

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 一般的な地下鉄は都心部を貫通して双方向の利用がありますが(空港線はこのパターン。仙台の南北・東西線も。)、七隈線は博多・天神南・薬院という繁華街や乗換駅が終点寄りに固まっており、片道28分の片輸送気味で、福大輸送はあれども路線としては効率は良くないと感じました。延々と住宅地から小型車両4両編成で20分以上も乗客を集めていけば、さすがに車内が混雑するのは当然で、仙台の東西線でさえ、東の終点荒井から片道10分を超える仙台駅直前はかなりの混雑になる。

 ミニ地下鉄では大江戸線は8両編成で乗客を詰め込んでいるなど、1両当たりの輸送力が小さい分を編成を長くして対応するしかない。


 そもそも西鉄バスが地下鉄へのシフトに協力的であれば、七隈線は博多延伸時に6両編成への増結が可能になる程度の利用者数と経営状態にもなり得たと考えます。郊外からの片輸送を少しでも軽減させ、利用者数を確保するために、沿線のマンモス大である福岡大学を経由させ、車両基地設置の都合で引っ張った橋本方面へはかなりの遠回りの線形となるなど、苦労がしのばれる計画でもありました。

 西鉄バスとしても、当時真っ向から勝負に出たのは、元々経営していた路面電車が廃止を強いられ、市営地下鉄空港線・箱崎線への移行に協力したという背景から、これ以上ドル箱の沿線の乗客が根こそぎ奪われるのを避けるためというのは、民間企業の判断として分からなくもないですが、結局博多駅延伸されれば勝ち目がないと、乗務員不足もあり白旗を上げるタイミングは結果論ではあるとしても、悪すぎるとしか。


流石の空港線ラッシュ

 一旦ホテルに戻ろうかと思いながらも、せっかく博多駅まで行ったので、空港線に乗り換え、姪浜方面へ乗車。大濠公園を散歩しようと思ったら、大雨が降ってきたので、とんぼ返りで大濠公園駅で8時半頃のラッシュ状況を観察しました。

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 3分間隔で、6両編成の車両が双方向に行き交い、どの電車もかなりの混雑。入口付近はもちろんのこと、七隈線と異なりドアとドアの間もそれなりの混雑であることが感じられました。また、当然ながら、空港線なので福岡空港に向かう大きなスーツケースを持った乗客も目立ち、ラッシュ時に乗り込もうとすると結構辛そうでした。

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 特にJR筑肥線直通のJR車両の混雑が激しいことは、一見して分かりました。

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 糸島市や西区からの郊外電車の役割を担いながら、学生街でもある副都心西新、赤坂から天神までのビジネス街、繁華街中州、新幹線では西日本随一の大ターミナル博多駅、便利過ぎる福岡空港を貫通する効率の良い路線ということを実感。さらに、箱崎線にも昼間に15分毎に分岐する直通が走るなど、空港線については、50年前にこのような路線網と輸送体系を計画した福岡市は流石としか。ただ、西鉄との関係や、貝塚線との直通が実現せずに、結果的に箱崎線を持て余している反面、七隈線の低輸送力など、苦労しているところもありますね。


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 これは、訪問時の福岡空港駅の時刻表ですが、朝の8時台だけはJRからの博多駅乗換客対応かやたらと多く16本/h と仙台の南北線と同じ本数ですが、その他の時間帯は概ね7~9分間隔。夕方もそれほど多い訳ではない。空港発ということを考えると6両編成なので十分な本数と輸送量ですが、当然2駅先の博多駅ベースで考えると同じ本数でもやや少なく感じました。2年前の七隈線博多駅延伸で、天神方面へは七隈線利用という選択肢も出来たとはいえ実質別の駅であり、JRからの乗り換えを考えると空港線乗換よりプラス2~3分多くかかるので、空港線ホームで次の電車を待った方が早いという状況。

 空港線は、博多駅から2駅先(天神の1駅手前)の中洲川端で箱崎線から天神方面へ乗り入れる電車が昼間で15分おきにあるため、パターンがバラバラになっているという理由もあります。


 注)訪問時に抱いた感想に対し、今年の3月から地下鉄空港線で一気に19往復の増便が行われ、朝の7~9時台や夕方の17~19時台も毎時数往復ずつ増発されました。

地下鉄空港・箱崎線のダイヤ改正を実施します!

仙台市地下鉄は、平日昼間及び土日終日の減便で該当時間帯は10分間隔と、正直悲しくなります。

過去記事


 相互乗入がない仙台の地下鉄と比較すると、JR筑肥線及び箱崎線2路線からの乗り入れがあり複雑に感じます。

 筑肥線は地下鉄開業時に単線非電化で地上を走り踏切だらけの並行部分(姪浜~博多)を廃止したということで、実質地下鉄空港線が旧筑肥線の連続立体交差化のような複雑な経緯を持つとはいえ。

 仙台で例えると、仙山線の北仙台~仙台を廃止し、南北線に乗り入れているようなイメージか。その筑肥線を過去に廃止したエリアに地下鉄七隈線を整備したとか、都市の発展に合わせて苦労したところがあるように感じました。


存在感が薄い箱崎線

 大動脈の空港線から中洲川端駅で分岐する4.7㎞の枝線的な箱崎線。終点の貝塚駅で西鉄貝塚線に乗り換えができます。

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 福岡市地下鉄の最初の開通区間は、室見ー天神という中途半端な区間で、博多駅乗入れも仮駅を設置して段階的に実施したというように、いろいろ苦労してきたようです。意外だったのは、博多駅までの開通より前に、天神から分岐駅の中州川端駅を経由して箱崎線の呉服町駅までが第二期延伸区間だったこと。現在は大動脈である空港線に対し存在感が薄い箱崎線ですが、中洲川端駅で2層でホームが設置され、建設時から2路線が一体的に整備されていたんですね。

 地図をみると、中洲川端駅から東にまっすぐ進む箱崎線がメインで空港線が南に分岐するようにも見えます。というのも、西鉄が運営していた路面電車では、姪浜から九大箱崎キャンパス付近までがメイン路線だったようで、その代替として箱崎線計画されたこともあるのかと納得。

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 沿線には、箱崎に県庁や九大のキャンパスなどの目的地となる施設も点在していましたが、平行してJR鹿児島本線も走っており、県庁と九大病院はJR吉塚駅、箱崎キャンパスはJR箱崎駅からも徒歩圏。さらに、地下鉄・西鉄の貝塚駅近くに、JR新駅の設置が決定しており、更に競合が激しくなります。

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 それに、九大は、医学部のキャンパスと大学病院は残っているものの、箱崎キャンパスは六本松キャンパスと合わせて伊都キャンパスへ移転したため跡地となってしまい、利用者である学生・教職員はごそっといなくなってしまいました。


ただ、跡地の約28haについては、住友商事を中心とするグループが落札し、再開発が始まります。

 規模とすると、東北大学農学部(雨宮キャンパス)跡地が9.3haなので、約3倍の面積に、居住、商業、医療機能が整備されるということなので、内容も雨宮キャンパスの拡大版というイメージですね。9.3haの雨宮キャンパスでも15年以上かけて今秋のイオンモールオープンでようやく完成となることを考えると、10年以上かけて徐々に整備していくことになりそうですね。住居も2000戸とあすと長町の高層マンション群に匹敵する戸数が徐々に整備されるとなると、利用者も徐々に増えていくことが見込まれます。

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 天神方面へはこの箱崎線各駅から一部直通(毎時3~4本)で行けますが、博多駅方面は中洲川端駅で乗り換えが必要。

 よって、博多駅などJR鹿児島本線沿線は、JR箱崎駅から2駅5分で博多駅と、利用者はJRと地下鉄に分散しています。利用者目線では地下鉄もJRも(そして西鉄バスも)使えて便利ですが、 福岡市交通局としては、地下鉄開業後に国鉄からJRになり本数が激増し、また駅高架化により駅が使いやすくなるなど競合路線の利便性が高まったため、利用者が伸び悩んだことは誤算でしょう。朝ラッシュ時も昼間も変わらず毎時7~8本の運行というのは、空港線優先ダイヤとなっていることと、JRと並行していることで、この本数でも十分に運べるということか。

 とはいえ、上述のJR貝塚新駅は、キャンパス跡地の利便性を高めることになるでしょうし、箱崎線にとっても、最大60円の乗継割引はあるとはいえ、これまで、乗換駅の千早と貝塚で「JR⇔西鉄⇔地下鉄」と乗り換えるのは3社を経由して割高なため利用を敬遠していた天神方面との利用客が、JRから直接この貝塚新駅で地下鉄に乗り換えることも想定され(混雑する博多駅乗換からのシフト)、多少は箱崎線の活性化にも多少寄与することに。

 また、西鉄貝塚線と地下鉄箱崎線の乗換駅である他、物流系の事業所や公営住宅が点在するエリアとしての位置付けで、駅前には空き地と自転車置き場が目立つような貝塚駅周辺ですが、箱崎キャンパス跡地開発のエリアにも含まれ、JR新駅との間も整備され、新駅開業後は大きく印象が変わることになりそうです。

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 写真は西鉄貝塚線と乗換できる箱崎線貝塚駅改札です。

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 地下鉄ですが地上駅で、振り返ると西鉄の改札が。平面で1分程度で乗り換えが可能です。

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(おまけ)地下鉄直通構想頓挫&輸送力不足 貝塚線

 朝夕でも概ね10分間隔、昼間や休日は約15分間隔です。概ね地下鉄が昼間7.5分間隔なので、接続する地下鉄は2本に1本の空港線直通に合わせているようです。

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 2両編成のレトロな電車で、最近置き換えのニュースがでたようですが、昼間では6両編成の地下鉄からの乗換者でさらっと埋まる程度。

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 朝夕は、千早駅近辺の再開発地に林立するマンションからの利用者でかなりの混雑になっているようですが、そもそも2両編成かつ朝夕でも単線約10分間隔という輸送力不足が理由。せっかく20年以上前に香椎副都心土地区画整理事業のJR線と合わせて西鉄香椎以西が高架化された際に、地下鉄直通にも対応できるような設備にはなっているようですが、2007年の末端区間の一部廃止(西鉄新宮ー津屋崎駅)、交換設備の撤去などで朝晩の本数が減っています。

 以前は、博多駅近くの千鳥橋まで乗り入れしていた西鉄宮地岳線の貝塚以西が西鉄市内電車に組み込まれ、結果的に廃止→箱崎線代替となってしまったことで、中途半端な位置づけとなってしまった現西鉄貝塚線。地下鉄箱崎線が開通した1980年代から、アイランドシティへの鉄道乗り入れ構想に組み入れられるなど長年検討が進められていた、地下鉄箱崎線との直通計画についても、基本的に西鉄側が消極的だったこと、貝塚駅を挟んで輸送力に差があることから、直通方法や乗り入れ区間、両数など市を中心に様々な検討が行われてきましたが、B/Cの低さから事業化に踏み切れず、結局霧散してしまったようです。

 西鉄としても、貝塚駅まで200円程度しか収入が得られないのであれば、都市高速経由で天神まで送り込んで4~500円程度の客単価の路線バスを走らせた方が得策というのも分からないではないですが、ここも七隈線と共通するような、連携の悪さを感じさせるエピソードだったりします。

競争による高い利便性の確保

 まぁ、このように地下鉄と西鉄、そしてJRが緩い協調状態を保ちながらも、競争で乗客を獲得してきた結果、都市への人口集中と相まって、高いレベルでの複数の交通サービスが提供されているので、福岡という都市にとっては結果オーライではありますが、今後さらにバス運転手不足が進んだ時に、西鉄バスの高い利便性がどれだけ維持されるかというところは気になります。JR九州も値上げが進み、初乗り200円と地下鉄に近い水準となっている他、福岡近郊でも減便が行われており、限られた交通サービスの資源を協調して効率的に維持して良く必要があるでしょうね。

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2025年6月 9日 (月)

仙台と福岡(その2)地下鉄直結!福岡空港

 


仙台と福岡(その1)究極のコンパクトシティ福岡 からの続編です。


最高のアクセス!福岡空港

 まずは今回初めて利用した福岡空港の感想から。

 過去2回の九州上陸の際は鉄道を利用したので、飛行機で入るのは初めて。

 よって、福岡空港利用も初めてで、都心部からの地下鉄直結でのアクセスの良さは耳にタコができるほど聞いていながらも、実際どんなものかと楽しみにしていました。

 仙台からの約2時間10分のフライトで、北側のアイランドシティ方面からの着陸でしたが、港と街と空港が狭い範囲に集まっており、集合住宅が広い範囲に立ち並ぶ市街地に囲まれた空港の立地条件を実感しました。

 行きは荷物は特に預けなかったので、すぐに到着ゲートを通過できました。

 到着ゲート前には高速バスの案内もあり、コロナで路線が減っているようでしたが、久留米や熊本、日田には1時間毎、その他佐賀方面にも路線があるようでした。これは国内線ターミナル経由の高速バスですが、その他に国際線ターミナル経由は長崎や湯布院など、多くの路線があります。国内線ターミナルから国際線ターミナルへは滑走路を挟んだ位置関係なので、無料バスでの連絡です。

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地下鉄への案内に沿って、吹き抜けのエスカレーターを降りた先には。。。

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地下鉄の改札が現れました!ターミナルビル直下なので、確実に仙台空港と空港駅の距離よりも近い。新千歳空港とも同じようなイメージですね。

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博多駅まで5分、天神駅まで11分。ともに260円と早くて安い!

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 それに、地下鉄空港線は、概ね地下鉄線内折り返しとJR筑肥線直通が交互に発着するパターン。

 空港線の終点姪浜より先はJR筑肥線に乗り入れ、昼間は大部分が途中駅の筑前前原駅までですが、唐津方面まで直行できる電車もあります。

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 本当に、着陸して10分後には地下鉄に乗っているというのもあながち大げさではない利便性です。

 今回は、平戸方面が最初の目的地だったので、10時9分発の貴重な快速西唐津行を待って乗車しました。

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地味な福岡市交通局の車両と異なり、JR九州の電車はデザインが独特で目立ちます。

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 車内も、ビビッドな赤色ドアに対し、落ち着いた緑色の座席。1席ずつモケットが分かれているのが定員着席を促せて良いですね。

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 空港発では、6両編成の先頭だったためガラガラでしたが、博多駅で立ち客が出る位乗ってきて、天神で入れ替わりながらも、それなりに埋まった状態で姪浜でようやく地上にでました。その後筑肥線に入ってからは、徐々に降車していき、大部分の電車が3両編成の区間電車に系統分離されている筑前前原駅以西は車両で5~6人という状況。朝晩はともかく、昼間は6両編成での唐津までの直通は無駄が大きいため、徐々に減らされているのでしょう。

 筑前前原の直前の九大学研都市駅。九大が箱崎と六本松キャンパスからの移転先で、大学名を称した駅からさらにバスに乗らなければならないという、アクセス面ではいろいろ言われていますが、それでもこの博多駅から30分という乗車時間の新駅前にこれだけマンションが林立していることに驚きました。福岡市の西端にあたる場所のJR沿線ですが、地下鉄直通で沿線からはみ出た住宅需要を受け止めているのでしょうし。
 また九大の教授や職員向けの住居需要もあるのでしょうが、中心駅から30分圏のJR西条駅からバスで10分圏という同じような遠隔地に移転している広島大学と比較してしまいます。都市の勢いと大学の成り立ちの差があるとはいえ。イオンのそこそこの規模のSCも立地し、利便性の高い駅となっています。

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 唐津までの車窓は、見事な快晴のなか綺麗な海を眺めながら、遠くに来たという旅情を感じていました。自宅を出発して4~5時間後に味わうこの日常とのギャップはいつもたまらない。

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(おまけ)お土産探しの失敗

 5年前の北海道旅行の時は、札幌駅で概ねお土産を購入し、あとは新千歳空港で買い足してという感じだったので、博多駅でいろいろとお土産を探したのですが、ほとんど福岡・博多のお土産かつ、苦手なめんたいこ・たらこ攻撃に一気に意気消沈。長崎や熊本のお土産は極わずか。荷物になるからと現地では買わなかったんですよね。

 せめて福岡空港に行けば何かあるかなと思い、地下鉄で空港へ移動しましたが、結局博多駅と同じような感じで各県のお土産は2割程度と唖然としました。

 北海道を代表する空港である新千歳空港とは異なり、各県ごとに空港があるので、ターミナルビルで扱うお土産も基本”県ごと”ということを実感。

 ということで、結局博多駅に地下鉄で戻って、駅ビルで買い残しのお土産を購入し、また空港に戻りました。

 こんなことが普通にできるのも、この福岡空港の立地条件故!思い立って10分後には博多駅に戻れたのですから。地下鉄の博多駅もJR駅の真下なので、改札抜けてすぐに駅ビルやJR改札の近くに出ることができるのもすごいと思ったところ。

 それに、地下鉄なので安定した運行で、いざというときには路線バスやタクシーで行けるという安心感も大きいですね。

 仙台空港アクセス線は、地上を走るJR線区間(南仙台付近や仙台駅付近)での踏切事故などで、月数回はストップしており、離陸ギリギリの時間の利用は怖くてしょうがないという状況なので。


仙台と福岡(その3)福岡市地下鉄各路線についてに続きます。


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仙台と福岡(その1)究極のコンパクトシティ福岡

 昨年の九州旅行編も、途中で更新が止まっていましたが、福岡についてはほぼ丸1日しか滞在しなかったのに、余りにも印象が強すぎて、どのように取り上げれば良いか考えていたら、そのままになっていました。

 今年は何度か遠出することになりそうなので、その前に記録としてできる限り更新しておこうかなと。九州編から独立させて福岡編としてまとめます。

コンパクトシティ福岡

 一昨年に、地方中枢都市3都市と仙台の比較シリーズ記事を書きました。

 福岡を訪問したのは、以前の記事のとおり20年以上前以来でしたが、その時点でさえ、11月末なのに天神のお祭りのような賑わいに愕然とした覚えがありました。

 その時点からのインフラ面の大きな変化は、  


地下鉄七隈線開業(2004年)・博多駅延伸(2023年)

JR博多駅再開発&九州新幹線全線開業(2011年)

都市高速環状線開通(2012年)天アイランドシティ線開通(2021年)


 ですが、その他商業面でも旧岩田屋本店がパルコになったり、天神地下街の拡大、そして、天神ビッグバンのために商業施設の新陳代謝が進んでいるなど、細かいところの変化が多数ありました。人口もこの20年で30万人増加していると、地方都市では別格の成長ぶり。

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 都心部の人口密度と七隈線延伸開業を中心とした軌道系交通機関についての多少の考察は、上記記事で触れていますが、特にもともとドーナツ化が進んでおらず、都心部周辺に高密な住宅地が広がっているところが特筆すべきところ。天神と博多駅の都心部商業の核に加え、キャナルシティ博多、ゆめタウン博多、マークイズ福岡ももち、そして近年オープンしたららぽーと福岡というように、2大都心部から数キロ圏にこれだけの郊外型も含めた大規模商業施設が集積しているのに、どの施設も共存しているというのは、後背地の広さだけでなく、都心部の足元人口の多さ故なのでしょう。

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福岡については、いろいろと他都市と比較すると、独特な要素が盛沢山です。

  •  都心至近の国際空港(地下鉄で博多駅から5分、天神から11分)
  •  西鉄バス王国(都市高速経由で鉄道に真正面から対抗)
  •  博多と天神の2眼レフ構造(地下鉄2路線で接続)
  •  アジアの都市への近さ(ソウル・上海等が東京より近い)

 20年以上前のブログ始めた直後に記事にしていましたが、今見ても都市の勢いという点では加速しているところが凄いですね。

 人口も20年間で25万人以上の伸びで、同時期で仙台は8万人ほど。これでも震災後の流入でピークが後ろ倒しになりプラスの影響もあったのに。


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 改めて、シリーズで記事にしてみようと思います。



 

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2025年5月25日 (日)

スターフライヤー 福岡ー仙台便 10月就航へ

仙台空港は、空港利用者数や仙台空港アクセス鉄道の利用者が過去最高を更新するなど、遅ればせながらインバウンドの効果もあり、コロナでのダメージからようやく脱しつつあります。

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 仙台空港は、昨年末からの不思議な香港便3社就航ラッシュ(妙な噂で予約が急減し、夏季期間は運休や減便が生じるのは残念ですが)、タイガーエア台湾の7月高雄便新規就航など、国際線中心に路線網が拡大している状況です。

アクセス鉄道の混雑問題

 インバウンド利用者は、分かりやすい公共交通機関である鉄道の利用率が高いためか、国際線の到着直後の便を中心にアクセス線の混雑が激しく特に2両編成の電車の混雑が問題になっています。

 地元マスコミで記事やニュースになり、仙台空港鉄道の運営会社でも、「これ以上の増便は難しく、JRと協議して極力2両編成を4両編成にしたい」とのコメントを出していますが、空港鉄道株式会社単独での車両増備は難しいようで、JRと協議するとのこと。

 そもそも、特に積み残しが発生しているのはJR東北本線名取ー仙台間であるので、JRに対応してもらうのは理にかなっており、JRの車両をあてにするとすれば、電車区で昼間寝ている車両を1編成持ってくればとのことなので、不可能ではないにしても、仙台地区のJRはもともと車両の余裕がなく、最低限の配置数になっていることから、JRが首を縦にふるかどうかは分からない。

 また、全て4両編成になっている分、概ね30分間隔の朝夕時間帯を、昼間ど同様に20分毎にするためにも、JRの車両をあてにするしかないですが、6両編成を増やすべき東北本線の朝夕ラッシュ時で4両編成を走らせ混雑している状況からすると、これ以上東北本線の車両を減らし、空港線を優先というわけにもいかないのでしょう。アクセス線利用者数でいうと、開業当初の目標である1日1万人はクリアしながらも、例えば、東北本線の岩沼駅1駅だけでアクセス線内3駅合計を超える利用者がいますし。


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まさかのスターフライヤー就航

 このような状況の中、突然飛び込んできたのが、北九州空港を本拠とするANA系のスターフライヤーの福岡ー仙台便新規就航。

10月以降に2往復での就航という内容で、プレスリリースがなされました。

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 現在は、仙台ー福岡便は、仙台空港を本拠とするIBEXが5往復と、JALが2往復、計7往復と、地方空港同士を結ぶ路線としては、IBEXがボンバルディアの70人乗り、JALが95人乗りと、小型機で多頻度運行を行っていることで、IBEXとJALを合わせて座席数として540席/人 と中型機だと3~4便相当となるので、7便というのは比較的利便性が高い状況です。

 特に、仙台空港を本拠とするIBEXの路線の中で5往復を飛ばしているのは福岡空港のみで、同社の主力路線であり、朝の7時35分仙台空港発で福岡空港には10時前に到着することができ、帰りも19時過ぎの便で仙台空港着が21時前の到着と、滞在時間が長くとれるのがメリット。なおIBEXは福岡空港でも夜間駐機しているので、福岡→仙台の利便性も同様に高いことも、利用率が高く5往復をキープしている要因と思われます。

 自分も、昨年の九州旅行で利用しましたが、ANAのコードシェア便としてセール対象になっている時は片道1万5千円以上で、他のセール対象路線と比較するとやや高め。先日のANAセール時に、伊丹や広島便が1万円を切っていたのと比較すると。

 このような状況の中、中型機で運行するスターフライヤーが2往復というのは驚きました。


 以前、元祖格安系のスカイマークが仙台ー福岡便を2013年春から中型機(177人乗り)で2往復運行していたことがありましたが、2015年のスカイマーク破綻のため2年程度で運行停止になってからは、基本的に小型機のみの運行になっており、運賃も高止まりしています。ピーチの路線開設に期待していましたが、IBEXとの関係なのか、これまで就航はかなっておらず、そもそもピーチは仙台空港での路線展開は小休止で夜間駐機も廃止している状況。一応空港運用時間の条件付き24時間化は実現しましたが、福岡、那覇、新千歳など、他の有力空港での拠点化が次々と実現した今、仙台空港の優先順位は低くなってしまいました。


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 スターフライヤーは黒づくめと航空機としては異色かつ重厚なデザインと、革張りのシートが売り。24時間運用の北九州空港を本拠地とし、羽田22時頃で北九州空港に23時40分に到着する便を運航するなど羽田便を11往復運行していますが、北九州空港からは羽田便以外の運行は厳しいようで、それ以外は、近隣の福岡空港や山口宇部空港発着便というのは、厳しい現実。

 この仙台便も北九州ー仙台として、福岡空港発着の既存2社の路線と差別化する方向性もあったかと思いながらも、やはり、目的地が福岡市内もしくは、博多駅乗換で他の県庁所在地(熊本、鹿児島、長崎等)であれば、九州新幹線や乗換となり博多駅から地下鉄で5分という驚異的なアクセスの福岡空港に対し勝ち目はない。福岡空港へは各都市からの高速バスも経由しており、博多駅までで出なくとも移動できるし、都市高速も直結しているので、レンタカーでも移動が容易。

 そうなると、北九州空港発着であれば、運賃で訴求しないと厳しく、それであれば、競合がありながら、多くの需要が見込める福岡空港を選択するのは当然ながら、本拠地空港なのに運行路線が1路線のみというのは、地元の北九州市としては歯がゆいでしょうね。

 もちろん、この仙台便開設の背景として、福岡ー中部便が6往復から3往復に減便した分の発着枠と機材を活用してということがあるので、その合間の就航ということからすると、福岡空港発着というのが自然ではあります。

 ただ、気になるのは、中型機の162席の便で運航することから、2便で324席と、従来の7往復で540席から864席と約1.6倍に増え、供給過多が予想されます。もちろん、運賃競争が激しくなれば、他路線の運賃からすると最安9,600円から九州に行きやすくなり(昨年IBEXで行った際は、セール以外の2か月半前予約で往復4万円程度)ますが、気になるのはスターフライヤーもIBEX同様ANA系で、コードシェア対象になりそうなこと。そうなると、IBEXが5往復そのままというのも考えづらく、3往復程度に減便し、差し引き変わらない7往復という可能性が高いのではと。それでも、180席/日 程度は供給数が増える(計724席)ので、十分かと。

 IBEXが減便するとしたら、その分をスターフライヤーが3往復減便した福岡―中部便(現在IBEXも同路線を1往復のみ運行)の穴埋めをするか、IBEXとして仙台空港発着の新路線(鹿児島?)を新規就航するなど、ANA系としての路線再編成の一環なのではと、勘ぐってしまいます。

 というのも、運営会社の仙台国際空港では、昨年路線拡大の構想を表に出しており、過去就航路線の再就航として、南九州(鹿児島?)や四国(松山か高松?)あたりを想定し、航空会社に働き掛ける意向があることが判明しているためです。

 スターフライヤーの就航は10月以降とのことで、冬ダイヤからの運行でしょうから、IBEXの冬ダイヤがどうなるかも注視して行こうと思います。

 

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2024年12月26日 (木)

九州旅行編(その4)課題満載の公共交通  政令市熊本

夏の旅行記事で積み残していた、政令市熊本編の続きです。


前回記事

前編では、街中の商業集積と賑わいの凄さについて記事にしたところですが、都心部に集まる人達の足となる都市圏内の公共交通網について。

 

賑わう都心部への集客手段

 都心部が賑わっている都市の特徴として、やはり軌道系交通機関が発達し、大量の都心部への来訪者を短時間で運ぶことができること。

 東京大阪名古屋そして福岡のような、JR・大手私鉄のみならず地下鉄が発達しているような都市は、都心部の中心駅は数十万人規模以上の乗降客数を数えており、就業者、買い物客など多くの輸送需要をまかなっています。

 札幌や仙台は、大手私鉄は存在しませんが、JRと地下鉄で都心部にダイレクトに短時間でアクセスできる路線網で、複数路線が乗り入れる札幌駅(8方面)、仙台駅+あおば通駅(10方面)は地下鉄とJRを合わせた乗降客数がコロナ前で30万人以上、大通駅(地下鉄6方面+市電)などは、乗降客20万人弱と、都心部の賑わいを生み出す人の流れも納得できるところです。

 一方、熊本市は、都心部の軌道系交通機関は市電と街外れにターミナルを持つ熊本電鉄のみ。広島市と同様、JRの中心駅と都心部が離れており、15分程度で路面電車で結ばれているのは共通ですが、新幹線の通るJR中心駅の利用者数として、熊本駅は新幹線を含めても乗降客数で約3万人、広島駅の約15万人と比較しても1/5。

 その熊本市電は全線で利用者数3万人/日、熊本電鉄はターミナルの藤崎宮前駅の利用者数は2,000人台/日とローカル線並と、鉄道は存在していても輸送力が貧弱な故に、路面電車で運びきれないor路面電車沿線外との需要が多いのか、5社がひしめく路線バスは広島と共通する面があるかもしれませんが、利用者数もそれほど多くない。

 なので、公共交通機関を利用せずに済む近隣の住民が一定数いるとはいえ、都心部に公共交通機関で流入する人数が1桁少ないのにも関わらず、この都心部の賑わいを維持していることが不思議でたまりません。クルマでの流入が多いとしたら、郊外の大規模SCとの競争の中で街中も選ばれているということに。

 

サクラマチクマモトバスターミナル

 前回記事でも取り上げた複合施設サクラマチクマモト内の巨大バスターミナル。路線バスは熊本駅からこのターミナルを経由し、各方面に向かっている便が多い印象。

 高速バスで存在感が大きいのは、やはり福岡とを約2時間で結ぶ高速バス「ひのくに号」。大きなライバルとなった九州新幹線の開業後に高速バスの利用者が増えたというのは驚き。

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 博多駅・天神までの約2時間強の直行便は概ね平日毎時2~4本、休日は毎時3~6本。

 それとは別に、途中インター経由便と、福岡空港行きがほぼ毎時各1本と、両都市の都心部直行というメリット。

 片道2700円、そしてスマホ4枚回数券だと最安片道2000円と、新幹線料金の半分で気軽に行ける運賃です。

 高速バスは、九州道のインターまで多くのバス停を経由する反面、乗り換えなしのメリットが。

 新幹線は博多駅ー熊本間最短35分とはいえ、熊本駅までのアクセス、そして天神までの移動を考えると、発着地によってはバスもそれほど変わらないことで、新幹線開業前と比較すると全体のパイが拡大しているとか。そうはいっても、コロナや御多分に漏れず乗務員不足でピーク時と比較するとこれでもバス本数は減少傾向。 


 東北地方では仙台ー山形線が約 1時間強で80往復程度運行しており、本数の多い路線の代名詞となっていますが、在来線が不便で本数が少ない故。

 福岡ー熊本線は、2時間超の所要時間で新幹線も毎時3〜4本運行しているのに、その仙台ー山形線を超える本数というのは正直すごい。新幹線が平行する同じような関係だと、仙台ー福島は、新幹線が毎時2〜3本でもバスは毎時1本程度まで少なくなっており、仙台ー盛岡線も同程度。


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 人口規模は倍以上違うとはいえ、両政令市間の旺盛な移動需要を垣間見ることができました。これだけ福岡の吸引力が強くても、賑わいを見せる熊本市。本当に良い意味で理解し難い。

 それ以外で本数が多いのは、熊本空港リムジンバスで、都心部から空港行は15~20分間隔で運行しています。その他は本数が少ないながらも由布院方面への九州横断バス、天草方面への特急バス、長崎、鹿児島方面へのバスが発着しています。

輸送力不足に苦しむ熊本市電

 熊本市中心部の賑わいを産んでいるのは、この市電という分かり易い軌道系交通機関が残っていることも大きいでしょう。

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 熊本駅方面から、中心部を通り豊肥本線新水前寺駅を経由し、健軍町までの1号線と、中心部手前で分岐しJR上熊本駅を結ぶ2号線が残っており、比較的高頻度で運行されています。一乗車で180円均一と、長崎よりは高いにせよ十分使いやすい運賃。バスは距離制で健軍方面の遠距離で市電が競争力を持つなど、常に混雑しています。

 ただし、昔ながらの単車が中心で輸送力の高い連接車の導入はごく一部と、JRからの乗換需要があり(熊本駅、新水前寺駅、上熊本駅)積み残しも生じているのに、運転手不足で減便を強いられるなど、この残った路面電車を活用しきっているとはいえない状況。それにいかんせんバスよりも遅く、遅れも多いというデメリット。

 訪問の際はほぼ半日しか時間がなく、バスのフリー切符があったこと、翌朝市電に乗ろうと思ったら大雨でおっくうになり結果的に市電の乗車は断念しましたが、熊本駅と都心部の間はバスの方が本数が多く地元民は使い分けている印象がありました。

 市の運行ということで、採算性にある程度目をつぶって連節車両のさらなる導入や電停の改修などを政策的に進め、利用者を増やす取組を図れないものかと思いましたが、公営企業ということで、多額の赤字を出せないことから縮小均衡に陥っているといのは、仙台市バスも同じ。

 特に、熊本は市電もバスも運転手不足に陥っているようですが、原因としてTSMC進出での都市圏全体での賃金アップ圧力の影響もあるのでは。特にバスは工場と駅とのシャトルバス運転手需要も高そうだし、そもそも新規採用で集めるにしても他業種と比較して賃金が見劣りしてしまう。

 都市圏としての発展が続いている反面、全国有数の渋滞都市という汚名返上のために、切羽詰まって公共交通機関の利用促進に県と熊本市が協力して取り組んでいる方向性を示していながらも、課題が大き過ぎて、どの方面も中途半端な取組となっている印象を持ちました。

 そして、道路整備は続き、交通量の増加といたちごっことなるので、せっかくの軌道系既存インフラを活用する方向が望ましいのでしょうが。

個性的な熊本電鉄

 都心部の上通商店街の先には、いろいろ複雑な経緯があったようですが、かつて市電に譲渡した路線が廃止されたことで接続が切られ孤立した、熊本電鉄藤崎線(本線)都心側ターミナルの藤崎宮前駅。この都心部の手前にターミナルが残されているという中途半端さは、金沢市の北陸鉄道石川線野町駅ともイメージが被る。

 非常に中途半端な場所にありながらも、上通と並木通りで繁華街に徒歩10分程度で繋がっていることもあり、ギリギリ及第点の立地条件。ただし、建設から30年もたっていない駅ビルの奥に駅が位置していながら、11階建てのビル自体が廃墟化しており、外来者にとっては非常に場所が分かり辛い。

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 ターミナル駅で1日の乗降客が2000人台というのは正直厳しいながらも、朝夕は15分間隔、基本的に30分間隔で23時台まで運行されるなど、地方都市の鉄道としては十分頑張っています。

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 人口が増加傾向で渋滞が激しい合志市方面との足でもあり、有効活用が期待されながら、御代志駅から藤崎線と分岐する北熊本駅を経由し上熊本駅を結ぶ菊池線と一体での運用となると、都心部側の行き先が2つに分かれるのは本数上も不利。検討されたバス転換も棚上げ状態で、利便性向上のため事業者側から都心部延伸LRT化や市電への再接続なども提案しながらも、熊本市側が乗り気ではなく実現は困難に。

 なお、熊本駅方面には上熊本駅経由でJRで行けるというのも、上述の北陸鉄道と被る不思議な共通点(西金沢駅でIRいしかわ鉄道乗換で金沢駅に行ける)。経営が厳しいながらもバス転換も厳しい規模というのも。
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 改札もホームもローカル感満載ながら、LCDでの案内が設置されています。

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熊本の副都心?JR熊本駅前

 熊本市の都心部の強さは、かつてはJR熊本駅周辺の集積の弱さ故というところがありましたが、2011年3月の九州新幹線全通により、博多駅を越えて山陽新幹線方面(小倉、広島、岡山、新大阪)までの直通が実現し、都市間の交通拠点としての位置付けが一気に高まりました。新幹線の開業に遅れながらも熊本駅の前後では在来線も高架化が実現し、その在来線の高架化で生み出された広大な駅前広場の再整備、そして博多駅に次ぐ巨大な駅ビルアミュプラザの開業と、都心部に対抗する副都心的な位置付けとして、生まれ変わったようです。

 横長で黒基調、存在感が半端ない新熊本駅舎。駅前広場とバスターミナルも広々しています。 

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 駅前広場の北側には、ビックカメラが低層階に入居するJRのオフィスビルが。

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そして、駅前広場の南側には、巨大駅ビルのアミュプラザくまもとが。駅前広場には2階レベルで歩行者デッキが整備されています。

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 このデッキは、市電乗り場や、駅真正面に整備された「くまもと森都心ビル」に接続しています。

 この高層ビルは、行政中心で建設されたよくある再開発ビルですが、駅直結ではないので、マンションやサービス機能が中心と控えめな機能。でも存在感は大きいです。

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 JR九州肝入りの「アミュプラザくまもと」。入り口付近の開放的な吹き抜けに滝が流れているのには度肝を抜かれました。

 イオンモールのようなファミリー向けに振った意匠ではなく、百貨店にあってもおかしくない高級感のある雰囲気づくり、そしてテナント群に驚愕。少なくとも、仙台の駅ビルエスパルの1.5倍を超える規模、入居テナントの質共に陵駕されています。熊本駅前はこのアミュプラザしかないとはいえ、

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 熊本駅前からは市電が街中方面に運行されていますが、徐々に連節車両が導入され初めているとはいえ、基本単行で輸送能力は大きくはないのがもったいないところ。それを十二分にカバーしているのが、ひっきりなしに発着する路線バス。充実した情報量のデジタルサイネージで直近の行き先と時刻、系統のほか、従来型の時刻表と、経由地マップを一目で確認することができ、デジタルとアナログ的な情報の両方から確認することができ、利用するに当たり安心することができました。

 市電と路線バスの輸送力を総動員して需要に対応していることを感じました。ただ、運賃が市電が均一なのに対し、バスが距離制で市電と同一の区間でも異なることの分かりにくさもあるようです。まぁ、市電は観光客など、外部からの利用者には分かりやすいため、混雑を招きやすい一方、バスが比較的余裕がある利用状況だったり、広島で進められているような路面電車とバスの共通運賃制度も導入の余地はありそう。

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半導体特需に沸く豊肥本線沿線

 熊本周辺のJRは、複線電化の幹線である鹿児島本線が福岡方面からから八代までを結ぶほか、熊本と大分を結ぶ横軸である豊肥本線、そして盲腸線の三角線と、それほど充実している訳ではなく、中心駅の熊本駅が都心部から南東方向に寄っており、これまでは街外れというような見方をされていたこともあり、上述のとおり乗降客数は3万人前後と、同じ新興政令市の新潟、岡山、静岡と比較しても少ない状況。

 そのうち、南北に走る幹線の鹿児島本線は、特急が新幹線に移行し線路容量に余裕ができたとはいえ、朝晩は毎時4本程度ながらも昼間になると毎時2本程度、それに短編成の2両編成などと、正直設備を持て余しているのは、仙台近郊の東北本線下り(松島・小牛田方面)とも共通するような状況。

 一方、同じ熊本駅から内陸に伸びる豊肥本線沿いは、熊本市に隣接する菊陽町に台湾半導体大手のTSMCが第二工場までの進出を決め、全国的にも有名な半導体バブルに沸いているエリアで、不動産価格の高騰や通勤ラッシュの激化、人手不足など、住民の生活にとっては痛し痒しの面もあります。

 全国の政令市の中でも交通渋滞が激しく自動車交通の分担率の高い熊本都市圏で、自動車専用道路をはじめとした道路新設を図っており、熊本空港まで都心部から20分というキャッチフレーズで建設を進めようとしていたり、工業団地周辺道路の拡充を図っていますが、そうはいっても交通需要の増加に対して焼石に水。近くを走る豊肥本線の増発などの強化を図ろうとしていますが、そういう路線に限って「単線で設備が貧弱」で抜本的な改善が難しいという点は、仙台でも仙山線が思い浮かびます。

 仮に鹿児島本線筋であれば、特急が新幹線へ移行し持て余している複線設備を活かした増発も容易なところ、そのような本線筋はある程度開発が進んでいて、企業誘致に適したような土地が少なかったりという面もあったりします。なかなかうまくいかないもので。

 また、JR九州にとっても、福岡都市圏でも減便や短編成化などコストカットを進めているのに、都市圏規模の小さい熊本に自前では積極的な投資をするつもりはなく、行政の補助金次第で協力するかという状況なのか。大雨被害で寸断された肥薩線も行政の補助金で復活を決めたところだし。まぁ、活用できる路線があるだけ良かった。


 9月末に突然の破談が報じられた、宮城大衡のPSMC計画。正直あんな危なっかしい計画がそのまま進まなくて良かったと今では感じています。工場の用地や工業用水など従来型の工場を誘致できる基盤はあれども、熊本のTSMCのように既存の核となる街は20km離れた泉中央しかなく、工業団地近辺には鉄道も走っていない。

 仮にその計画がうまく行ったとしても、トヨタの時のように、大和町、富谷市エリアのニュータウンに人口が広く薄く張り付き、数十年後には高齢化が進んだお荷物住宅地化の可能性が高いとしか。

 熊本のように、空港から近いわけでもなく、母都市の仙台との交通アクセスも車と、一日10往復の大衡村役場行きの高速バスのみ。以前から提案している大衡ICにバス停を設置し県北方面への高速バスを停車させるなどでの仙台や古川・栗原・登米方面との公共交通の足交通確保など、既存の資源を有効活用した改善策もなし。通常の2次産業の従業員とは異なり、専門的な知識を持つ技術者集めにも苦しむでしょうし、ここが永続的に上手くいくイメージがどうしても沸いてこなかった。

 進出発表時の記事に書いた通り、仮に候補地が名取の館腰駅・杜せきのした駅近辺であれば、既存の鉄道沿いで4号線や東部道路も南北に走り、仙台空港も近くという事なし。土地も広大な農地が広がっています。杜せきのした駅近辺のイオンモール南側かつ名取中央SIC周辺で広大な区画整理事業を前提に市街化区域編入が行われますが、この50ヘクタール規模の開発地を半導体工場用地として活用するようなイメージであれば、まちづくりにも好影響で大賛成。(ただ、半導体工場に求められる水や地盤の強固さなどがクリアできるかという問題も)



 

大丈夫?熊本空港アクセス鉄道

 この豊肥本線絡みのプロジェクトでは、県が進めている熊本空港アクセス鉄道計画があります。


リンク

 熊本空港は、大部分を羽田との利用者が占めながら年間300万人台の利用者と、仙台空港に匹敵する利用者があります。

 熊本空港は、このTSMCが立地する菊陽町に隣接する益城町に位置し、熊本市からは約20kmと、仙台駅と仙台空港との位置関係とはそれほど変わらないながらも、都心部からはリムジンバスで45〜60分という所要時間というのは、アクセス鉄道が開業する前の仙台空港よりも時間がかかっている状態。

 熊本空港アクセス鉄道は、JR九州が協力可能とした肥後大津駅ルートでも熊本駅から44分と、多少は短縮されますが、そもそも乗り入れる豊肥本線のルートが熊本駅からS字を描くような遠回りルートなので、時間短縮効果は限定的。また、全線乗り入れ先の豊肥本線と新たに建設するアクセス鉄道は全て単線であり、少しの遅れが交換待ちを招き、雪だるま式に遅れが積み重なることが想定され、定時性や信頼性にも疑問。 


 末端部分のアクセス鉄道を三セクで建設し、JR路線に乗り入れさせて乗り入れ先路線も利便性UPを目論むのは仙台と一緒ですが、そもそも乗り入れ先の豊肥本線が線路容量が限られ、現在の設備ではこれ以上の増発が難しいところは、複線電化の東北本線に乗り入れることで空港行が純粋に44往復の増発となったた仙台との違い。そのように条件は良くないですが、「アクセス鉄道の整備のためには、乗り入れ先の豊肥本線の改善を図ることが必要」という論理で両者をセットで進めているのでしょうね。

 仙台空港は、東部道路経由のリムジンバスで仙台駅から40分だったのが、鉄道開通で各駅停車25分(記録用の快速で17分)に改善され、時間短縮と渋滞での遅れがないという安心感は大きいもので、今となれば、仙台空港にはなくてはならない公共交通機関としてみなされていますが、現在でも課題満載です。

 市営リムジンバス時代の仙台駅発15分間隔、空港発は到着便に合わせた運行から、鉄道では双方向20〜30分間隔と、昼間は改善されましたが運行頻度では必ずしも便利になったとは言えず、空港に早めに行かざるを得ないことや、到着後は空港での電車待ちを強いられるなど、特に30分間隔となる朝晩は不便さを感じます。

 1日の利用者は開業時の目標である1万人を超えましたが、仙台空港駅の利用者は半数強で、なとりりんくうタウン内の2駅の利用者増が寄与しているところ。それでも震災の被害やコロナ禍でのダメージと紆余曲折が続き、設備の公有化により運営との上限分離を図ったり、累積赤字の増大により運営会社の大幅減資を決定した上で、2030年頃の運賃値上げが最近アナウンスされるなど、持続的な運営のために、四苦八苦しています。


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 それに、熊本では、熊本駅よりも都心部への需要の方が大きい状況から、仙台のように基本的にリムジンバスを廃止して、鉄道に需要を一本化する形ことは困難と思われます。


  • 目的地の利用者が分散(熊本駅と都心部)
  • 既存バス経路上の利用者への利便性確保。
  • 将来的にはライバルとなる高速道路の整備構想あり(都心部まで20分)

 というのもアクセス鉄道から途中駅のJR新水前寺駅から輸送力の低く遅い市電乗り換えは、時間短縮効果が打ち消され、3社(アクセス鉄道、JR、市電)の初乗り運賃の支払いと割高感を感じること、荷物の多い旅行者ということを考えると、乗り換え前提は到底無理。それに、現在のリムジンバス沿線の県庁前などからの需要も残る。

 しかし、利用者を一本化できないと、鉄道利用者も確保できない。並行して構想されている空港までの自動車専用道路が開通したら、都心部まで20分と、時間的な優位性もなく根こそぎ利用者を奪われる可能性が高い。

 さらに、仙台のように沿線開発での利用者確保が見込まれず、空港利用者のみということであれば、空港自体の利用者数が仙台と変わらないことから、無謀としか思えない計画に思えます。

 そもそも熊本駅からであれば、九州新幹線経由で博多まで最短で35分。博多駅で地下鉄に乗り換えて同程度の時間帯で便数も段違いに多くLCCも多数就航している福岡空港利用も可能と、四面楚歌のような悪条件ながら、これを事業化しようとしている熊本県の執念は凄い。もちろん、根元路線であるJR豊肥本線の輸送力増強と一体で進めるための手段としての役割も期待されているのでしょうが、それであればアクセス鉄道に投資する500億規模のうち豊肥本線の強化に回すだけでも、かなりの効果が見込めるのでは。アクセス線への膨大な投資を行なった他に豊肥本線の輸送力強化まで金が足りるのか?

 この成功が困難に思われる新規事業に数百億を投資するのであれば、補助制度など予算の出所の違いがあるのは承知ながらも、需要があるのに応えきれない市電と、潜在需要はあるのに活用しきれていない熊本電鉄の有効活用に少しでも回せないのかなとも思いました。 

 

バブル状態

 イケイケドンドンバブル状態に見える熊本都市圏で進む様々な構想で、このような地方都市は中々ないので、仙台から見ると羨ましいところもあります。せっかくの機会を生かして、交通環境の改善を進めることは賛成ですが、市営の路面電車の強化という市内交通の地道なところがおろそかになり、県が採算性が厳しい空港アクセス鉄道に注力しているところは噛み合わなさと危なっかしさを感じますが、このご時世で景気の良い話が飛び交う地方都市圏は少ないので、宇都宮と並んで引き続き興味深く追っていきたいところです。

 


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2024年12月25日 (水)

ようやく仙石線新型車両投入!

 しばらく仙台関連のあまり良いニュースがなく、来春のJRダイヤ改正でも仙台エリアの在来線にほぼ動きがないなど、特にネタがなく更新が途絶えていましたが、久々に朗報です。

 故障続きで現在の205系の限界が囁かれるどころか声高に叫ばれている状況の中、車両置き換えについては首都圏からの車両改造転用説や都市郊外線区用のE131系の導入など様々な噂や情報が出ており、最終的に、E131系14編成の導入に落ち着き、ようやくJR東日本から昨日公式に発表されました。

  


プレスリリース

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 この車両は、4ドアで2〜4両単位が基本で、房総地区を皮切りに近年日光線、宇都宮線(宇都宮ー黒磯)、相模線、南武線支線などに様々なアレンジが行われながらも導入が続いてきました。

 仙石線導入にあたっては、

  • 従来どおりの4両固定 or 2両編成×2 (末端での2両編成運転を可能とするため)にするか
  • 従来の205系と比較しての拡幅車体が入線できるか
  • 4両×14編成と噂された編成数で運用が可能か

 など、待望の新車導入の方向性への期待の反面不確定要素があり、他線区でも導入時には短編成化や車両の削減からの減便、ワンマン化対応などのコストダウンの取り組みが含まれていることから不安もありました。結果的に現在と同じ4両固定ながらも編成数が減る形となります。

 ほぼ1年後の2025年冬からの置き換え開始とのことで、全編成置き換えの後はワンマン運用が行われるのは省力化の流れです。

 仙台市地下鉄南北線の車両置き換えは2024年度は1編成のみで、5年位のスパンで全編成置き換えとなることと比べると、JR東日本の資本力と自前の車両製造工場の製造能力の違いを感じます。

 

編成数の減少の影響

 上述の仙台市地下鉄南北線は同じく4両編成で21編成の置き換えを予定しているのに対し、仙石線は2/3の14編成。現在の編成数16→14と、既報通り2編成も減少となります。

 運行時間も、南北線の全線28分と対比すると、高頻度の複線区間(東塩釜ーあおば通)の所要時間が約30分で対応しますが、さらに東塩釜以北の石巻までの区間で少なくとも毎時1往復することを考えると、実質的に、南北線の半分程度の頻度で運行している現在の本数を確保するのが精一杯。一定の予備編成を確保することになるので、朝ラッシュ時の減便がセットになることは確実かと。

  南北線 仙石線(複線区間)
朝ラッシュ 3〜4分毎 6〜9分毎
昼間 8〜10分毎 10〜20分毎
夕ラッシュ 5〜6分毎 約10分毎
夜間 8〜12分毎 15〜20分毎

 正直、沿線人口および駅利用者数を考慮すると南北線の2/3程度の本数が適正なのでしょうが、沿線人口の高齢化が進み、新規の開発余地も小さくなっています。沿線の中では新しい街と思われている小鶴新田駅エリアで駅前に久々に大規模マンションが分譲されましたが、新駅開業から20年も経過している現実。ここ10年で、高齢化に加え、仙石東北ラインの開業による沿線通過人員の減少の影響もあるのでしょう。

 朝ラッシュの仙石線(多賀城以西)はかつて東北本線(仙台ー岩沼)と同様に5分間隔ダイヤを実施した時期がありましたが、現在は南部方面はアクセス線分で名取以北は更に最短4分間隔と増便になってる一方、仙石線は6〜9分間隔と徐々に減便傾向となっていることも、多少南側に並行して運行する東西線と比較して、運行の安定性、駅や車両の古さ、本数の少なさ故、比較して新たな転入者が仙石線を選ばなくなってきていることの影響が生じていますね。

 新型車両の導入で、少なくとも故障運休の多発を含む車両への不満は改善されるのに、編成数の減少から減便が確実視されるのは残念な限り。せめて、多賀城以西の本数は維持して欲しいもの。

 そして昼間の松島海岸まで20分毎のダイヤも、仙台近郊の利用者にとっては非常に使いづらい状態が続いていますが、増発は期待薄。


過去記事


 新型車両への置き換えとはいえ、仙石線は石巻側が仙石東北ラインのハイブリッド車両も乗り入れていること、利用者減から本数が整理される可能性もあることから、それを踏まえての新型車両の2編成減なのかも。仙石線全体で仙石東北ラインと合わせた適正な車両運用を模索していくことになるのでしょう。

JR東日本 運賃値上げについて

 先日、令和8年からのJR東日本の運賃値上げが発表されました。

 ドル箱区間、特に東京都心の電車特定区間の廃止による幹線料金への統合による大幅値上げがニュースになった反面、それ以外の地域の値上げ幅については、妥当な範囲に感じました。

 仙台近郊の主要区間は概ね切符購入で10〜20円アップ、ICカードで概ね10円未満のアップととなり、ICカードの方が必ず安くなるように改正されます。


  •  150円→160円[IC155円](あおば通↔︎宮城野原)
  •  190円→200円[IC199円](仙台↔︎長町・北仙台・小鶴新田・東仙台)
  •  200円→210円[IC209円](仙台→南仙台・国見・中野栄・岩切)
  •  240円→260円[IC253円](仙台↔︎名取・陸前落合・多賀城・塩釜)

 と、初乗り210円、次の区間250円の地下鉄と比較しても、十分安いレベルは保たれます。

 競合区間の仙台↔︎長町・北仙台では、運賃差が約60円→約50円に縮まるとはいえ、JR200円、地下鉄250円と大きく変化はありません。

 さらに通学定期は据え置きと、かなり影響が小さくなるよう配慮した運賃値上げだったように感じます。

 JRの運賃が安い水準に保たれているのは有難い限りですが、正直この運賃では首都圏はともかく、地方部では利益が出るはずはない水準です。

 JR東日本の職員の給与水準は基本的にエリア内でほぼ変わらないでしょうから、コストは相対的に地方部が高くなるのに対し、運賃が市地下鉄よりも安くては、残念ながらも運行水準が低くなるのは当然なのでしょう。


 JR九州における福岡、JR北海道における札幌は、各会社のお膝元であり、ここで儲けなければということになり、運行水準は快速の運行、新駅の積極的な設置と、本州会社のエリアの仙台や広島と比べ力を入れていながらも、それでも大幅な利益が出ていたわけでもなく、駅ビルなどの不動産業を積極的に展開しており、それでも厳しい分は2025年4月から民営化後実質2回目の大幅運賃値上げを強いられます。JR北海道は初乗り210円、JR九州は200円と、それ以上の距離帯も市営地下鉄と同水準まで値上げするとか。


 

 利益確保に必死な3島会社でこのような状況であり、JR東日本エリアの地方路線は、首都圏や新幹線の利益で成り立っているのは変わらず、コストを回収するために地方部で公営地下鉄レベルへの大幅な運賃値上げを図ってもその分利用者が減ってしまい、運行本数の増加、新駅の設置、設備改善などを図ってもらうほどの利益が出るわけではない。 なかなかうまく行かない未来になってしまう。

 そうすると、行政側の支援でサービス水準の底上げを行う手段もありますが、JRは県を超える広域エリアを運行しており、仮に仙台市だけで車両購入や運行費の支援するのも難しい。そうすると、新駅設置や高架化・橋上化など駅設備の更新などのインフラ整備位ですが、運行本数の増までには至らず、路線として劇的な利便性アップには至らない。仙台市も予算に限りがあり、以前は岩切駅の橋上化、現在は福田町駅の移転、南仙台駅の西側新改札開設に向けた調整で精一杯で、仙山線の高架化などは優先順位が後回しと、できることからやって行くしかなく、利用者の大幅増を図れるような切り札はそもそもない。

 仙台近郊での行政の投資が有効だった実例は、県を中心とした第三セクターを設立して建設した、仙台空港アクセス鉄道。名取↔︎仙台 が東北本線への乗り入れ前提だったため、アクセス線の40往復以上が純粋に増発され、東北本線部分の利便性は大幅に高まりました。運行本数増を図るにはこのような方法しかないかと。仙台市は、自前の交通局でJRと競合する路線を運行・維持するのに精一杯で、なかなかJRへの直接的な支援も行いづらい状況にあったりします。


 富山県では、北陸新幹線開業で三セク化されたあいの風とやま鉄道を核に、飛地で残るJR城端線、氷見線の運営を受け入れ、利便性アップを図ろうとしています。富山市では、旧JR富山港線の運営移管とLRT化(現在は富山地鉄市内電車と一体化)の実績があり、引き続き市域で完結するJR高山本線の運営移管の動きもあります。

 これは、JR西日本としてもエリアの端っこの運行効率の悪い赤字ローカル路線の運営移管というメリットがあり、WINーWINの関係になるでしょうが、仙台は新幹線を含めて東北エリアの路線網の中心でJR東日本が東北本部を置いているなど、関連事業運営を含め重要拠点であり、県内でJRが名指ししている陸羽東線や気仙沼線、石巻線の行く末が不明な中、阿武隈急行に対しても非常に冷淡な知事が大荷物を背負う選択を積極的に進めるわけもなく。


路線バスの値上げも

 仙台市営バスと宮城交通グループの運賃も平均15%程度の値上げを計画しているとのニュースが出ています。

 先にニュースになっていた市営バスが2026年10月からの値上げ計画であるのに対し、宮交バスは2025年3月からとすぐに値上げされることに。ついこの前値上げしたばかりのような気がしますが、値上げ後も減便と終バスの繰り上げが続き、泉区のパークタウン、富谷方面、南では山田方面以外の宮交バス沿線では、21時頃に終バスと大幅前倒しになっており、正直通勤で使うには厳しい状況になっています。知り合いで終バスの大幅前倒しで「まともに残業できない。毎晩駅からタクシー」と、宮交沿線からJR沿線へ引っ越した人を知っています。そのように住宅地の価値も落とし続けることになるでしょう。

 今回発表された情報からすると、初乗りが200円と大幅値上げとなり、ほぼ確実にJR線や地下鉄よりも高くなり、客離れが進む一方でしょうね。

 市営バスの値上げが行われる26年10月までの1年半は、並行路線でも著しい運賃差が生じることとなり、特に、市主導で運行間隔の調整を行い実施にこぎつけた「八木山ライン」は、極端に宮交を避ける動きが起こり、せっかくの取り組みが無駄になってしまうことが予想されます。


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 運転手不足を理由としていますが、前回値上げしてからもひどくなる一方。政令市の民営バス会社でこんなひどい状況のところはないのでは。地元紙もこれに関しては事実を淡々と報じるのみ。 市バスには、住民の感情的な意見をぶつけるのに。

 正直宮交バスは、公共交通機関としての役割を放棄しつつあるように感じます。値上げをしても、とても状況が改善するように思えない。県外名古屋系の名鉄資本に任せ続けるのではなく、栃木、福島や岩手のバス会社を買収しているみちのりHDの傘下になった方が、よっぽど永続的な運行につながるように思える。

 一方、市バスは、責任を持って夜間帯の運行本数を確保してきましたが、減便はやむを得ない状況にはなっています。それでも公営交通としての責任感からなるべく22時頃までは終バスを確保すべく努力しています。市バスについては、住民や市議会の反対から大規模な路線見直しが難しい状況であり、特に東西線のフィーダー路線など、ほとんど1〜2人しか乗っていないような路線を廃止するなど、悪平等となる平均的な減便は避け、鶴ヶ谷、桜ヶ丘などの主要路線への資源集中を図る方向性の方が望ましいと思っています。

 市バスの値上げは、おそらく地元紙が反対意見を煽って、予定通りにはならないでしょうが、消費税を除いた実質的な値上げは25年ぶりとなり、これはやむを得ないのではと考えます。

 公共交通全体として、特に乗合バスは厳しい状況が続きますが、仙石線の新型車両導入という、クリスマスプレゼントのようなニュースのほか、ちょっと前に東西線の利用者が順調に増え、R5年度はコロナ前を超えて過去最高を記録したというニュースもあり、人口が頭打ちになる中で基幹系交通機関としての鉄道の優位性が増していく流れになっているのは、悪い話ではないように思えます。

 

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2024年9月16日 (月)

九州旅行編(その3) 街中の驚異的な賑わい 政令市熊本

 九州旅行編の続きです。


前回記事


街中が元気な九州の都市

 福岡をはじめ、その他の都市も軒並み街中の賑わいを保っていることに改めて驚きました。

 東日本は、首都圏は別格として、東北地方だと仙台市以外は盛岡市位、北関東は東北並みのクルマ社会で駅前や繁華街の賑わいが正直厳しい状態で、しいて言えば高崎駅前位。ライトライン開業1周年で改めて注目されている宇都宮市も旧来の駅西は商業施設の撤退が相次いてきた歴史が。

 新潟市は前の記事で取り上げたとおりで、従来型の繁華街が衰退し相対的に新潟駅や万代の大型商業施設に賑わいが移っているという形ですが、九州の都市は従来型の繁華街に加えて中心駅に新たな賑わいが生まれ、また郊外に大型モールが出店しても街中が対抗出来ているという、東北人からすると信じられない光景が広がっていました。

 街中の賑わいを保てる人口規模を有している(県庁所在地は概ね40万人以上)ということもありながら、非県庁所在地の佐世保のように20万人規模で活力を維持しているところもあり、本当に面白い。

 この写真は福岡市の天神。

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 福岡市は別格として、熊本市や佐世保市も郊外に大型SCが生まれ、以前よりは賑わいが薄れている面もありますが、それでもアーケードをはじめとした中心街の賑わい、そして都心部の再開発が進み、都市のハレの場としての役割を担い続けていることに関しては、本当に羨ましいと感じました。

バケモノ都市熊本(誉め言葉)

 熊本市は人口73万人。県全体で174万人なので、県庁所在地を除いた人口は宮城県も熊本県と同程度と考えれば分かりやすい(宮城県は225万人のうち仙台市は110万人)。 熊本県には、天草の方に松島があったり、台湾の半導体工場の進出など、宮城県との不思議な共通点も?大地震があったという嫌な共通点もありますが、県自体の人口規模が倍以上で政令市を2つ持つ福岡県よりも参考になりそうな要素は多かったり。 

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 震災で被害を受けた熊本城も修復途上ながら、街中のすぐ隣にあり存在感の大きさに驚きました。

疑似的な2核1モール 

 下の案内図のオレンジ色がアーケード。線が市電で、下通アーケードの両端が「市電の駅」そして「大規模商業施設」という集客動線的には理想的な交通環境。市電沿いには多くの平行バス路線がひっきりなしに。

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 下通の南端付近には、辛島町電停と 巨大複合再開発『サクラマチくまもと』で、高速バスを含む巨大バスターミナルも。

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 下通と上通の結節点には通町筋電停があり、その近くには熊本県唯一の巨漢百貨店「鶴屋」が。

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 下通と上通の結節点付近に位置し、以前よりは減ったとはいえ500億弱を売り上げる地方百貨店屈指の鶴屋。2015年に現サクラマチくまもとの場所にあった県民百貨店が閉店し、熊本県で唯一の百貨店となっています。

 目の前の電車通りには市電とひっきりなしに通る路線バス、空港リムジンバスなどで、本当に賑やか。

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 本館、東館、Wing館とあり、建物は老朽化しているようですが、とにかく横に長い巨漢店で複数棟に及び売り場面積は7万平米強と藤崎の倍以上と存在感が凄い。まぁ藤崎は売り場面積半分以下でほぼ鶴屋に匹敵する売り上げなので、藤崎も売り場面積が小さい割には健闘しているともいえます。時間がなく外から眺めるのみでした。なお、電車通り向かいにも別館(New-S) あり。

驚異的な賑わい 下通アーケード

 仙台もアーケード商店街が賑わう代表的な都市と言われ、6つのT字型の商店街合計で全長1.5㎞で店が連なり、七夕の主会場であることをはじめ街の中心軸、ハレの場として市民・県民にも旅行者にも認知されているのは自慢できるものですが、上述の2核を繋ぐ歩行者モール(アーケード)である熊本市の下通~サンロード新店街もなかなかのものでした。

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 噂では聞いていましたが、まずはアーケードの幅の広さにびっくり!幅は15m以上と車道上下1車線ずつに幅の広い歩道が両側にある標準的な都市計画道路と同幅員。天井からも光が差し込む構造で、アーケードの高さも2~3階レベルでゆったりしており、ここに人が集まるのも納得。

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 それに、下通は幹線道路などで約600mのアーケードが分断されることがなく歩きやすいこと、アーケードに接続した路地にも飲食店などが連なり、更に平行して飲食店中心の別の片アーケード(駕町通り)もあり、面的にも楽しめる街ということを感じました。

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 テナント構成は、どちらかというと飲食店が多め。仙台でいうと名掛丁や一番町4丁目を合わせたような雰囲気。でも、何でもあり。

 旧ダイエー跡が再開発された「COCOSA」。1F~4Fがガラス張りで高級感のある新しい商業施設です。

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低層階がファッション、飲食店、上層階が無印、ニトリDECOホーム、セリアなどの雑貨店、ABCストアなどで構成され、身の丈に合ったテナント構成という感じ。


COCOSA HP


 

 下通付近が現在も賑わっている秘訣として、核となる商業施設は、上述の鶴屋百貨店の存在感だけでなく、この『ダイエー⇒COCOSA』以外にも撤退商業施設の後が建替え、リニューアルで基本的に商業施設として残り、商業床があまり減少していないことも。『県民百貨店⇒サクラマチくまもと』で魅力アップしている施設もあるなど、都心部を取り囲む郊外に出店しているイオンモール熊本やゆめタウン光の森などの影響を感じさせない賑わい。

これは、『寿屋⇒カリーノ下通(蔦屋書店を中心とした専門店ビル)』 で建物をリニューアルしたタイプ。

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左側が下通の北端に2023年にオープンした『熊本パルコ⇒ HAB@熊本 』。

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 立地条件の良さからか2020年の閉店後すぐ建替えられ、、B1F~2Fの3フロアはSTANDARD PRODUCTSなどの専門店と飲食店街、3階以上は星野リゾートのOMO5が出店しています。商業施設としてはダウンサイジングですが、何というスピード感。引き続きパルコが運営とのこと。


HAB@熊本 HP


 

上通と並木坂

 下通と比べると幅も狭く地味な印象の上通とそれに続く並木坂。

 熊本電鉄の都心側のターミナルで市電の通町筋電停からは徒歩10分程度の「藤崎宮前駅」に向かう通り道でもあります。

 この写真は、アーケードとしての北端で並木通りに路地を挟んでそのままシームレスに繋がっています。

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 下通がバケモノ級なだけで、上通が地味と言っても仙台でいうとサンモールよりは賑わっています。雰囲気はマーブルロードおおまちに似てい落ち着いた印象。店舗については、地元の店が多く、飲食店も目立ちます。

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 鶴屋百貨店本館の道路向かいで、上通アーケード入口に面する別館(New-S)。上階はホテル日航や美術館も。

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 気付いたこととして、このように仙台ではアーケードから姿を消した地元書店が数軒まだアーケード内に残っていたこと。この向かいにも別の店がありました。仙台ではアーケードに面する書店は、先日金港堂本店が閉店となり大きな衝撃をもって受け止められたニュースとなり、残るは一番町四丁目のあゆみブックス(≠地元)のみ。

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 上通に繋がる並木坂には、センスの良い飲食店や衣服店などが並び、藤崎宮前駅に繋がる通りだけに、それなりに人通りはありました。

 アーケード周辺に関しては、空き店舗やシャッターだらけで厳しい一角というところもなく、空き店舗があっても新陳代謝があり、それが熊本市中心部の強さだなぁと感じた次第。

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巨大複合再開発 サクラマチクマモト

 2019年にオープンし、先日5周年を迎えたサクラマチクマモト。

 何で、地方中枢都市でもない新興政令市でこのような巨大な複合再開発が実現したのかと不思議に思っていいながら、ようやく訪問することができました。基本的に九州産交の巨大バスターミナルと県民百貨店跡の再整備であり、土地の権利関係が比較的シンプルだったこと、隣接地にあった熊本市のホール機能を拡充しMICE機能として熊本城ホールを整備するなど、熊本市も協力的だったのかと感じました。

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サクラマチクマモト HP


  中心駅と都心部が離れた都市が多く、都心部直行のバスと鉄道が鎬を削る九州ならではという、このような街中の巨大バスターミナルの存在があり、再開発の拠点施設として再整備することができたのではと。


 地元のバス会社が中心となったバスターミナル併設型都心部集客施設といえば、以前取り上げた新潟交通の新潟の万代シテイが50年前から存在し、今や都心部随一の集客力を誇る場所となっていることを連想しましたが、一方仙台ではと考えると悲しい限り。

 宮城交通は、一応広瀬通の高速バスターミナルの再整備として、土地売却先の東京建物の協力で、オフィスビルの1階部分に小規模なものは確保しています。これまで、北仙台ターミナルも長町ターミナル敷地も土地売却や再開発で高層マンションになっていますが、基本的に資産の切り売りをし続けてきたのに、今やその蓄えもなく、現在の減便一辺倒の状況に至っているのは悲しい限り。近年は仙台市営バスの営業所運営受託という安定収入を得てしまっただけに、自社路線を犠牲にしてでも運転手を市バス路線の運行に回していたり。そもそも泉区の路線は地下鉄開業に伴うバーター策などでパークタウン線など市バスからの移譲路線も多いながらも、うまく生かせなかった印象。一時期は泉中央駅を発着する路線で深夜帯のバスなど積極策に出ていたのは今や昔。


 約10年以上かけた再開発で、着工後に熊本地震が起こり完成が1年半遅れ、設計見直しなどで総工費も1.5倍以上の800億円弱に跳ね上がり、紆余曲折ありながらも完成にこぎつけましたが、その後もコロナに見舞われる時期もありながら、現在では賑わいを見せています。さらに整備が遅れていたら総工費は1000億円は下らなかったでしょう。

 時代は違うけれど、約800億の総工費はバブル崩壊後ながら豪華な作りと総事業費で批判を浴びた再開発ビル仙台駅前アエルとほぼ同じと考えると、サクラマチクマモトは同程度の総工費で済み時代が良かったと。それはリーマンショックの辺りに入札で事業者を決めた仙台市地下鉄東西線も同じことが言えますが。逆にどの都市でも、これからの再開発は資材高と職人の取り合いで大変。東北電力が中心の電力ビル再開発はなんとかなりそうですが、これからのさくら野跡やオリックス再開発、藤崎を中心とした大町再開発はなおさら。

 仙台市の今後整備される公共施設でも市庁舎が500億、音楽ホールが350億と総事業費が軒並み想定の1.5倍に。市庁舎は震災対応で計画が先送りとなり、音楽ホールはもともと20年以上前から計画がありながら、候補地が移ろい(長町モール横⇒あすと長町⇒都心部⇒国際センター北側)、そして県民会館との役割分担の議論などもありここまで遅れてしまった結果。それでも、市庁舎も音楽ホールも仙台市は様々な意見を聞きながら丁寧に施設内容を詰めてきており、先日の藤本壮介氏の設計に決まった音楽ホールのコンペも公開で実施され、斬新な設計が評価されました。遅れながらも素晴らしい施設となりそう。

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構成される機能として

  • 熊本桜町バスターミナル(29パース:高速バスと路線バス)
  • コンベンション施設(熊本城ホール)
  • 商業施設(B1~3階:約150の専門店)
  • シネコン(TOHOシネマズ)
  • ホテル(KOKO HOTEL Premier 熊本)
  • 分譲マンション(マリモ)
  • オフィス

と、てんこ盛りの再開発。総床面積が16万平米超えは、地方都市としてはバケモノ級です。

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2階以上のバルコニー部分は、緑豊かなテラスが。当日は天気が悪いながらも、それなりにくつろいでいる利用者が。

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 2階部分の広々とした通路は、1階バスターミナル相互を結ぶコンコースを兼ねています。

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 商業施設(シネコン含み)は、延床面積で4.5万平米。売り場面積で2.8万平米。結果的に県民百貨店の再出店ではなく、専門店の集積というのはこの施設の性格に合っていたのではと。百貨店斜陽の時代で、地域一番店の鶴屋百貨店との消耗戦を招かなかったことも。

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 このバスターミナルという性格からか、熊本への旅行者風の方が多く、レストランやフードコートの充実ぶりにうなずけます。

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 バスターミナルは、29パースと巨大。これでも事業者や路線再編により再開発前より縮小されたとか。

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 発車案内もLCDで経由地も含め非常に分かりやすく

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バス乗り場の通路はちょっと狭め。

高速バス等公共交通全般については、別記事で。

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街中のコンベンション施設 熊本城ホール

 3000人規模の大ホールや展示施設、会議施設などもこの再開発の肝であり、熊本市も多くの負担をして整備されました。単独施設ではなく、ホテルや交通ターミナルも含めた複合再開発の一部として整備した相乗効果は大きい。当然整備費用も節減されるし。使い勝手が良くなり稼働率にも好影響が。稼働率については7割程度とそれなりに健闘しているのではと。こういう件には必ず噛みつく某政党が文句言っているようですが。

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ちょうど、訪問時には医療系の大規模な学会が開催されていました。

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 天気が悪い中で、半日で駆け足で回ったので、鶴屋をはじめ都心部の商業施設、市電沿線の街の広がり、豊肥本線沿線のTSMCの好影響などまでは確認できませんでしたが都心部を見るだけでも熊本市の勢いは十二分に感じることができました。

 このような賑わう大都市で生活しながら、週末は福岡という大都会にもバスで往復5千円以内で気軽に出ることができるとは、恵まれた環境の都市に感じました。この規模で九州内で3番手の都市というのも、九州のポテンシャルの凄さかと。

 もう1日余計に滞在し、周辺も含めていろいろ回りたかったのですが、先の行程もあり泣く泣くこの地を離れました。

 なお、この勢いのある熊本市。順風満帆に見えながら、特に都市交通面では渋滞で悩まされているとか、バス・市電の乗務員不足による減便、JR熊本駅が郊外で利用者が少ないことなど、訪問して見えてきた面も。この件については次回に続きます。

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2024年8月25日 (日)

九州旅行編(その2) 元気な九州の魅力

 九州旅行編の続きです。


前回記事


 九州には約20年ぶりの上陸。その前は学生時代に2週間くらい九州内を彷徨ったことがあり、ずっと再訪したいと思っていながら、東北から九州は敷居が高く、ようやく念願の再訪が叶いました。


 前回は2003年11月29日。ベガルタのJ 1残留をかけた最終戦のために、いてもたってもいられず大分に行って以来。 その時は、羽田からの飛行機が取れず、仕事終えた金曜日夜に新横から小倉まで東海道・山陽新幹線、そしてドリームにちりんという今は亡き宮崎行きの夜行特急に乗り換え、大分で2時頃に途中下車しネットカフェで朝まで過ごして、当時のビッグアイでの直接対決決戦に向かった覚えがあります(若かった。。。)。試合は、勝てば残留のところ 1点が遠く 1−1の引き分けとなり、翌年から6年間の長いJ2での苦境を彷徨ったベガルタでした。

 ベガルタの3回目のJ2はすでに3年目ですが、まだ3年目と言えるほど簡単に抜け出せる世界ではない。新潟もJ2に落ちて戻るまで5年もかかっているので、ことしは森山監督(ゴリさん)のもとで秋に向けて期待が残っていますが、J1昇格プレーオフに残れば御の字というスタンスで、楽しみます。


 試合翌日にはせっかくなので、小倉のリバーシティ北九州、キャナルシティ博多という当時話題になっていたジョン・ジャーディが手がけた複合商業施設を梯子し、そして天神の渡辺通沿いの三越・岩田屋・ソラリアを中心とした商業施設群の迫力、11月なのに歳末か?と見間違うような人混みに圧倒され、降格の傷心の中新幹線で5時間弱の長い帰途についた記憶は鮮明に残っています。それ以来ということもあり、本当に楽しみでした。

 

SUNQパスフル活用
 九州内は主に高速バスで移動。SUNQパスというバス乗り放題の切符が役に立ちました。都市間の中距離バス移動だけで十分に元を取った上、長崎市、熊本市、福岡市での都市内の路線バス移動にも利用することができ、旅先での運賃の違いを気にしながら乗る必要がなく、ストレスが軽減されました。


 SUNQパスは、北部九州3日間券を9000円で購入。他に南九州版、全九州版(これのみ4日間あり)もあり、目的地や利用期間によって選ぶことができます。高速バスや路線バスも全て乗り放題、そして一部のフェリーなども乗れて、北部九州版は1日3000円と格安。下関など山口県の一部も範囲に含まれていること、観光施設の割引クーポンもあり、西鉄バスを中心に、都市間高速バスも、都市部の路線バスも信じられない本数が走っている九州なだけに、非常に使い勝手が良い切符でした。

Sunqmap 

関連ページ


 これ、東北でも真似してもいいんじゃない?とはいえ、九州の西鉄バスのような音頭を取れる事業者がいればですが、宮交バスはお察しの状況。また、都市間バスはそれなりにありますが、路線バスが壊滅的な都市もあること、面積が広い分、価格を高く設定する必要がありそうということなど、困難な要素は多いですが、インバウンド対策も含めて、検討の余地はあるのでは。東北運輸局あたりで音頭をとって欲しいな。 

 

九州が元気な要因

 本州から離れた島という、一見ハンディにも思える条件ですが、それを感じさせず、逆にメリットとしてしたたかに生き残っている印象です。

1.航空便の発達

 本州からは飛行機の移動が主流になり、東京や大阪からの航空便の本数が確保されているため、格安航空券やツアーが使え、観光客の誘致にはかえってメリットになっている点。

 そして、東京からの距離はあっても、古くからアジアやヨーロッパとの交易などでの交流が盛ん立ったこともあり、また、飛行機でのアジアとの時間距離は2時間圏にソウル、上海、台北と、東京への所要時間と変わらず、地の利をうまく活かしているのは、熊本のTSMC誘致成功も然り。

2.陸路でも本州とつながっている

 戦前から関門国道トンネルで本州とつながり、1973年の関門橋開通で高速道路でも本州と結ばれ、クルマでの本州との行き来も容易になりました。その後、1975年の博多までの山陽新幹線全通、2011年の九州新幹線全通により、博多駅の交通拠点性が高まった上、博多駅を挟み新大阪から鹿児島中央までの直通運転が開始され、航空路線がなかった広島や岡山などからも、熊本や鹿児島まで乗り換えなしで毎時1~2本の「みずほ」・「さくら」で移動することができるように。九州は、福岡空港や宮崎空港を除いて空港が中心都市から遠いこともあり、九州新幹線の全線開業で大阪以西との一体化が進んだことは大きかったと。以下の図は日経記事より引用。

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 特に、広島~熊本は九州新幹線直通の効果は絶大で、1時間35~50分で結ぶというのは破壊的。仙台~東京間に相当するこの間に福岡市・北九州市を含め4つの政令指定都市が存在するのはさすが太平洋ベルト国土軸の延長線というか。

3.”離島”としての一体感と各県の対抗意識のバランス

 面積は東北地方の6割にも関わらず、人口は1.5倍。人口密度だけでも2.5倍と。そもそも適度な集積があります。全国に対して占める割合から1割経済と言われており、大きすぎず、小さすぎずという絶妙の”カタマリ”。

 人口ブラックホールの首都東京に陸路で繋がり、心理的障壁が小さい東北地方と異なり、 首都圏から物理的に離れていることで九州内に留まろうとする意識が強いことも、福岡市が九州の首都として人口増を続け本州に対する人口ダム機能を果たしているという面があります。このような大都市の存在は、北海道に対する札幌が分かりやすい例。 


 自分は東京一極集中解消の観点から道州制が望ましいと長年思ってきましたが、一方実質道州制が実現しているような北海道は、東北地方と新潟県を合わせた面積に匹敵しますが、札幌に人も富も一極集中する一方、旭川、函館、釧路などの拠点都市の寂れ方と周辺部の過疎化、無住化の極端な進展ぶりと課題が山積です。一方、ここまで福岡市が発展しても他県も切磋琢磨し観光地や名産品をはじめ魅力を発信し続けていることが九州の魅力であり、また県庁所在地の活力が失われていないという点もバランスの良さを感じます。九州に関しては現在の各県がそのまま残り、連携するところは九州でまとまるという方法で十分やっていけそうな気がします。くまモンは道州制だったら生まれていたか?


 そんなことを感じながら、各地を周りました。もっと各都市をじっくり腰を落ち着けて回りたかったのですが、欲張り過ぎて本当に駆け足の旅に。

 

次回に続きます。

 

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2024年8月 3日 (土)

続 新潟編 厳しい古町の現状

 さて、新潟訪問の続きです。


前回記事


 わずか2時間余の滞在時間で、2年前にバスで通過しただけだった古町を訪れました。

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 今は亡きかつてはBRTと称された萬代橋ラインにて、古町へ向かいましたが、雨と寒さでテンションが低くなっている中、お目当ての連接バスも来ず、そして知ってはいたけれど、均一料金が210円から260円にアップしており(新潟駅ー万代間を除く)、全線に乗るんだったらともかく、たった5分ちょっとの乗車でとがっかり感。そもそも快速便なのに5人程度しか乗っておらず、万代から多少は乗ってきましたが、平日の昼間とはいえ確かに連接バスにする必要もない乗車状況。仙台市地下鉄の昼間10分間隔もがっかりですが、新潟市の幹線系統と位置付けられている街の中心に向かう基幹系統バスで10分間隔、そしてガラガラという状況を目の当たりにすると、何ともいえない気分。

かつての古町の中心

 古町モールを横目に見ながら、まずは新潟三越跡とNEXT21、新潟大和跡の再開発ビルである「古町ルフル」が集まる西堀交差点に。

   交差点を取り囲む建物からは街の中心地という賑やかさを感じます。

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 その3つの核的な施設を結んでいた、地下街西堀ローサにまずは潜りました。前回震災前に来た時でも、結構厳しい状況ながらも、それなりに店は並び、そのご大規模なリニューアルでテコ入れされたと記憶していました。

 まるで地下鉄に入るような不思議な感覚で地下に潜ると、こんなレトロな地下街が。

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 訪問したのは冬でしたが、暖房もバッチリで通路としては使い勝手が良いと思いながらも、地下街の店舗は正直厳しい。

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 結構な長さがありますが、半分以上の店舗名がテープで覆われているように、結構な歯抜け状態。

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 端から端まで10分くらいかけて歩いてみましたが、ため息しか出ませんでした。

 この地下街の店舗がかつては全て埋まっており、新潟の最先端のストリートとして人でごった返していたという情報からすると、なんとも言えない。地上の賑わっていたアーケードがシャッター街になった状態は見慣れていますが、それでも人が住んでいたりでここまで寂しい雰囲気にはならない。入居しているのはチャレンジショップ的なもの、飲食店、そして消費生活相談所のようなもので、正直まともに商売になっているところはあるのだろうかと思わせる位の状況。

 この地下街も全店舗を撤退させて運営会社が2025年で解散するとの発表がありましたが、地下駐車場や周辺施設との連絡機能もあることから、通路自体の閉鎖はしないようですが、どのような未来が待っているのでしょうか。

 そのような西堀ローサからの薄暗い連絡通路が、NEXT21に繋がっていました。

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ファッションビルからお役所ビルへ(NEXT21)

 地下1階からセブンイレブンが、1階を含め、クリニックや薬局などで埋められています。

 1階から上空に広がるアトリウムについては実質無料休憩所で、外で買った弁当を広げる市民が多し。

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 建物の2〜5階は、新潟市中央市役所として活用されていましたが、正直仙台のアエルのようなガラス張りの吹き抜けもある高層ビルが区役所として活用されていることについては、石巻市役所の旧さくらの百貨店の建物は閉じられた建物で「これもありかな」と思わせたのに対し、更に役所らしくなさを感じました。

 中心市街地活性化として、行政機能の街中移転という施策はよく使われますが、大和、三越という百貨店2店舗、そしてラフォーレというそもそも買物する場所がなくなった古町。飲食などは期待できるのでしょうが、人を集めさえすれば良いという訳でもないよなとも。でもやらないよりはマシとも。 


なお、このNEXT21は、かつて移転した新潟市役所跡地の再開発と聞いて、頭が痛くなりました。役所跡を再開発したけれどうまくいかず、結局役所機能を戻すという例を聞くのは初めて。。。

 そもそも郊外の新光町の現地に移転した県庁跡地に、かつて玉突き的に新潟市役所が移転したとか。県のしりぬぐいをさせられて、結果的に中心部が衰退し、二重の意味で労力を掛けざるをえなかったということには気の毒な面も。


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 上階はフィットネスクラブ、オフィス、レストラン街ですが、レストラン街はほとんど営業していません。仙台のSS30やアエル、アジュール仙台(現大樹生命仙台本町ビル)もですが、地方都市の超高層ビルの飲食店街は長続きしない印象。

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 NEXT21は震災前にまだファッションビル「ラフォーレ原宿新潟」が入居していた時にを見に来たことがありましたが、その時は、仙台駅前のEーBeansのようなレディースファッションの集積地という華やかさを感じたものでしたが、ハコは一緒とはいえ全く雰囲気が変わっており驚きました。

 屋上の展望スペースも雨ながら眺めは良かったのですが、そこの無料休憩スペースには区役所やオフィスに勤務されていると思われるかなりの方々の昼食スペースに変身していました。皆、弁当やサンドウィッチを慌ただしげに食べており、居心地の悪い視線を感じ全く落ち着くことができず、さっさと退散せざるを得ない状況に。

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 前回新潟を訪問した際に寄った、新潟日報メディアシップでも感じましたが、1階の一等地が休憩スペースに解放されており、あらゆる年齢の方々が長時間滞在しコンビニやパン屋で買った物を食べていること。これが仙台であれば、ちょっとした待ち合わせに短時間使用するような使われ方をしていたり、うまくお金を落とすためのカフェなどが設置されている印象ですが、一等地の使い方として勿体無いというか、違和感を感じる場所が多かったと感じました。


過去記事


百貨店からお役所ビルへ(古町ルフル)

 そして、また西堀ローサに戻り、向かい側の再開発ビルの古町ルフルへ向かいました。綺麗な連絡口が整備されています。

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エスカレータと立派な階段が整備されており、地下街の現状との落差にびっくりしました。

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ガラス張りで今風の再開発ビルです。

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NEXT21展望台から。

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 低層部は商業施設、上層部はオフィスと思ったら、3階から6階までが何と新潟市役所ふるまち庁舎とか。その上も公共系(金融・産業関係)の団体が入居しているなど、公共施設ビルになっているではないですか。

 低層部もドラッグストアとコンビニエンスストア、そして金融機関。正直百貨店跡地に再開発ビルとしてわざわざ作る必要があったものかは疑問に思いました。まぁ、リーシングがうまくいかずに、後戻りできなかったパターンと思われます。

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 入り口部分のオブジェというか見事な意匠です。

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 建物の前面とバス停との間には、北国での冬の寒さを避けるためにイベント広場として使えるスペースが整備されていました。

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 新潟駅方面へのバス停が目の前なのは良いですね。

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 キッチンカーが出店し、ここにも無料休憩スペースがありましたが、お金をかけずに休憩する場所がここまで整備されている都市は中々見ない。ある意味周辺の専門学校の学生などにとっては居心地がいいのかもしれない。一方、カフェが見たかぎりドトール1店舗のみでしたが、スタバもNEXT21から撤退しているなど、大手チェーン店の出店対象から外れてきている危機的な状況。マックも無くなったのでしょうか。個人の喫茶店は点在しているのが救いですが、気軽に入ることができるチェーン店もあると良いのに。


 先日行った、長崎市の浜町アーケードは、長崎駅から市電やバスで10分以上かかる場所にあるどちらかというと地元民向けの商店街なのに、ドトール、マック、コメダ、サンマルクなどチェーン店のカフェがこれでもかと出店しており驚いたもの。


 そういう意味で、この一体は、NSGグループが経営する専門学校を集積させ、街中に若者を集めるという施策を長年とっており、これまでは比較的評価されていたという印象でしたが、高齢化が進み新潟島の人口が減少し、街の中心が新潟駅や万代へ移っている中で、外から集めているのがその購買力の小さい学生だけでは、街を維持するのは難しい。大和と三越の閉店で、百貨店の客層である高齢者も万代の伊勢丹に移ってしまったのか。

 それに加えて公共系の就労者を集めて飲食店などのある程度の下支えにはなるでしょうが、それにしても隣接する古町モールの衰退ぶりには驚きました。商店街の方がバス通りからの入り口でさえ、空き店舗が目立っている状況で、古町ルフルの1階部分の店舗も正直魅力的な店舗を入れられていない。

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 NSGグループの奮闘ぶりは非常に感じました。

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 厳しいふるまちモール

 震災前に新潟訪問した際には、三越、ラフォーレ、大和とまだ大型商業施設が健在の頃で、とにかくふるまちモールの元気さと長さとには驚きました。バス通りに近い部分は全蓋式、離れたところは一番町4丁目のような片側アーケードがどこまでも伸び、チェーン店から、地元の味がある店舗や飲食店などに徐々に移り変わっていく様子が非常に新鮮でした。

 5年位前には、カミフル(上古町)と呼ばれる白山神社寄りの商店街を見学する機会があり、商店街の端っこで苦しんでいるアーケードの維持、テナントリーシングや運営の工夫について話を聞くことができ、ほとんど空き店舗がないということでした。

 この長いモールが結果的に機能分担して頑張っていることについては、仙台のアーケードのように地価や賃料が高すぎて、ほとんどがチェーン店の集まりとなってしまい、通行量が多いけれど面白みのない街並みになってしまっていることの良い意味でのアンチテーゼとも。


 仙台市役所が中心となって、東北芸術工科大学の馬場教授に協力を得て「リノベーションまちづくり」として、肴町、立町など、アーケードから程近くながら、古い建物が生かされていないエリアに家賃の安い面白いビジネスを生み出すプロジェクトをここ10年進めていますが、地価が高すぎる仙台では中々進まない弱点が。地価が安く実験的な店舗を若者の多いエリアに出しやすくなっているというのは大きなメリット。


 今回、カミフルまでは時間がなく、天気も悪く回ることができませんでしたが、平日の昼過ぎとはいえ、古町の厳しい状況を十分に感じました。本当に歩いている人がほとんどいない。雨かつ、専門学校が休みに入り、オフィスワーカーが働いている時間帯と言ってもここまでになってしまうのか?

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 今回は雨で諦めましたが、並行してふらっと本町にも庶民的なアーケード街が伸びており、今度閉店しロピアが入居することになったイトーヨーカ堂丸大新潟店が位置しているなど、古町といえばアーケードと商店街というイメージがあっただけに、核となる大型店舗がほぼ失われると、街中の買い物は万代シテイ、そして、今後は新潟駅ビル、そもそも、郊外のショッピングモールや郊外型専門店で十分となってしまっているのか。買回り品のふるまちモールよりは、イトーヨーカドー丸大がある食料品などのふらっと本町の方が人通りが多いという印象でした。

 確かに、新潟市中心部は、前回記事で取り上げた新潟駅新駅ビル、そして衰退気味とはいえ誰もが認める街の中心である万代シテイに専門店が集積し、古町の立ち位置が厳しくなっていますが、やはり街の軸として打ち出して投資を促すには、バスでは不十分で効果を発揮しないということを改めて認識。

 新潟市の前に訪問した宇都宮市、そして今回九州で訪問した長崎市、熊本市という政令市、中核市を見ても、街中の路面電車のシンボル性、沿線の市街地形成における信頼性は圧倒的です。

 白山駅から古町、万代、そして高架化された新潟駅を貫通させ、駅南のビッグスワン方面といったような、中心地と郊外をバランスよく結ぶLRTは新潟にはピッタリと考えられており、政令市化に向けた21世紀初頭は「政令市でJR以外の軌道系交通機関がないのは新潟市だけ」という現状から、行政も地元団体も積極的にLRT導入に向けた提案をしており、宇都宮市よりも新潟市での導入可能性が高いと思われていましたが、2015年に開業した実験的なBRTもK産党や地元マスコミの餌食となり骨抜きされ、LRTまで昇華させることはおろかただのバスになってしまいました。

 もはや、手遅れ状態に。


過去記事


三越跡地の再開発計画

 新潟三越は、同じグループの伊勢丹が万代に百貨店を構えており、新潟での2店舗は維持できなかったのか、実質的に伊勢丹新潟店に統合されました。この跡地は37階建てのオフィス、マンションを含む東京建物による再開発が行われるとのことで、街中に居住者を集める流れからも、再開発が成功して欲しいと思いますが、商業機能は古町ルフルの二の舞になりかねない。写真は、店舗跡。

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 閉店すると、当然寂しげな光景になりますが、前向きな閉店であることをアピールするような掲示物がありました。

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 「みーつ」とは、meetsと三越を掛けているのでしょうか。

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 仙台でも、耐震工事やリニューアルの必要性を見極めるために一旦閉店したフォーラス前にもこのようなメッセージがありますね。

新潟市と熊本市

 このような古くからの繁華街の古町は厳しい状況ですが、そうはいっても新潟市全体が衰退しているわけではなく、前回取り上げた新潟駅周辺や都市型大型商業施設が集積する万代シテイに商業機能が移ってしまったという面が大きく、街の新陳代謝の一環と言えるかもしれません。


 関連記事

 今回の記事を書くにあたり、3月の新潟市訪問時よりも更にネガティブなトーンになった理由としては、同日に訪問した宇都宮市のライトラインを目の当たりにしてということもありましたが、同じく新興政令市である熊本市に先日訪問した際に感じた賑わいの度合いの違いからです。

 新潟市は人口77万人。熊本市は73万人とほぼ人口規模としては同規模。もちろん合併前の人口が約50万人都市だった新潟市と、もともと周辺市町村合併前も65万あり市域も比較的コンパクトだった熊本市ではおかれている条件に違いはありますが、九州新幹線開業後のJR熊本駅周辺開発と、熊本城至近の従来の中心市街地の賑わいを両立させていることに、驚きを感じたものでした。

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賑やかなアーケード。幅の広さにもビックリ。

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バスターミナルやホール、ホテルなどの超大規模複合開発の「サクラマチくまもと」

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 熊本は、近年近郊自治体である菊陽町への台湾半導体企業のTSMCが進出することで、盛り上がっていますが、そもそも渋滞が激しく、バイパスを作って一旦解消しても、クルマが増えいずれ元通りに元通りになってしまうことの繰り返しであること、公共交通機関は、以前からの市電を生かし街中の求心力を保っていますが、JRや私鉄(熊本電鉄)などの軌道系が弱く、JR熊本駅の乗降客が3万に留まっており(新潟駅は乗降客で6万人を超え熊本市の倍以上)、複数社運行する路線バスの存在感が大きいですが、公共交通機関の分担率は実は熊本市よりも新潟市の方が高いということに驚きました。

 このような状況の中、熊本県と熊本市が協力して、渋滞解消と公共交通の改善に向けたメッセージを発しています。

 やはり、クルマ社会の限界を感じないと動かないというのは、宇都宮市もインターパークなど商業の郊外化でオリオン通りなど都心部の空洞化が進行し、また鬼怒川以東の工業団地への渋滞解消策が限界に達したこと。LRTの導入が発表された那覇市も同じでしょう。


 その点、新潟市は高規格バイパス網の整備が進み、さらに都心部に向かう栗の木バイパスの立体化も進むなど道路交通網に恵まれ、公共交通機関への理解が集まらない状況というのが、持続的な都市構造を作り上げるためにはあだになってしまった印象。やっぱり、「バイパスサイコー」というメンタリティが市民、県民、そして行政にしみ込んでしまったか。


 しかし、この政令市ワーストの公共交通分担率の中、街中に驚愕に賑わいを保っている熊本市。仙台も負けてしまうのではないかと思わせるものがありました。

 次回記事は、この点について深めて行きたいと考えています。

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