九州旅行編(その3) 街中の驚異的な賑わい 政令市熊本
九州旅行編の続きです。
前回記事
- 九州旅行編(その2)元気な九州の魅力(8/25)
街中が元気な九州の都市
福岡をはじめ、その他の都市も軒並み街中の賑わいを保っていることに改めて驚きました。
東日本は、首都圏は別格として、東北地方だと仙台市以外は盛岡市位、北関東は東北並みのクルマ社会で駅前や繁華街の賑わいが正直厳しい状態で、しいて言えば高崎駅前位。ライトライン開業1周年で改めて注目されている宇都宮市も旧来の駅西は商業施設の撤退が相次いてきた歴史が。
新潟市は前の記事で取り上げたとおりで、従来型の繁華街が衰退し相対的に新潟駅や万代の大型商業施設に賑わいが移っているという形ですが、九州の都市は従来型の繁華街に加えて中心駅に新たな賑わいが生まれ、また郊外に大型モールが出店しても街中が対抗出来ているという、東北人からすると信じられない光景が広がっていました。
街中の賑わいを保てる人口規模を有している(県庁所在地は概ね40万人以上)ということもありながら、非県庁所在地の佐世保のように20万人規模で活力を維持しているところもあり、本当に面白い。
この写真は福岡市の天神。
福岡市は別格として、熊本市や佐世保市も郊外に大型SCが生まれ、以前よりは賑わいが薄れている面もありますが、それでもアーケードをはじめとした中心街の賑わい、そして都心部の再開発が進み、都市のハレの場としての役割を担い続けていることに関しては、本当に羨ましいと感じました。
バケモノ都市熊本(誉め言葉)
熊本市は人口73万人。県全体で174万人なので、県庁所在地を除いた人口は宮城県も熊本県と同程度と考えれば分かりやすい(宮城県は225万人のうち仙台市は110万人)。 熊本県には、天草の方に松島があったり、台湾の半導体工場の進出など、宮城県との不思議な共通点も?大地震があったという嫌な共通点もありますが、県自体の人口規模が倍以上で政令市を2つ持つ福岡県よりも参考になりそうな要素は多かったり。
震災で被害を受けた熊本城も修復途上ながら、街中のすぐ隣にあり存在感の大きさに驚きました。
疑似的な2核1モール
下の案内図のオレンジ色がアーケード。青と赤線が市電で、下通アーケードの両端が「市電の駅」そして「大規模商業施設」という集客動線的には理想的な交通環境。市電沿いには多くの平行バス路線がひっきりなしに。
下通の南端付近には、辛島町電停と 巨大複合再開発『サクラマチくまもと』で、高速バスを含む巨大バスターミナルも。
下通と上通の結節点には通町筋電停があり、その近くには熊本県唯一の巨漢百貨店「鶴屋」が。
下通と上通の結節点付近に位置し、以前よりは減ったとはいえ500億弱を売り上げる地方百貨店屈指の鶴屋。2015年に現サクラマチくまもとの場所にあった県民百貨店が閉店し、熊本県で唯一の百貨店となっています。
目の前の電車通りには市電とひっきりなしに通る路線バス、空港リムジンバスなどで、本当に賑やか。
本館、東館、Wing館とあり、建物は老朽化しているようですが、とにかく横に長い巨漢店で複数棟に及び売り場面積は7万平米強と藤崎の倍以上と存在感が凄い。まぁ藤崎は売り場面積半分以下でほぼ鶴屋に匹敵する売り上げなので、藤崎も売り場面積が小さい割には健闘しているともいえます。時間がなく外から眺めるのみでした。なお、電車通り向かいにも別館(New-S) あり。
驚異的な賑わい 下通アーケード
仙台もアーケード商店街が賑わう代表的な都市と言われ、6つのT字型の商店街合計で全長1.5㎞で店が連なり、七夕の主会場であることをはじめ街の中心軸、ハレの場として市民・県民にも旅行者にも認知されているのは自慢できるものですが、上述の2核を繋ぐ歩行者モール(アーケード)である熊本市の下通~サンロード新店街もなかなかのものでした。
噂では聞いていましたが、まずはアーケードの幅の広さにびっくり!幅は15m以上と車道上下1車線ずつに幅の広い歩道が両側にある標準的な都市計画道路と同幅員。天井からも光が差し込む構造で、アーケードの高さも2~3階レベルでゆったりしており、ここに人が集まるのも納得。
それに、下通は幹線道路などで約600mのアーケードが分断されることがなく歩きやすいこと、アーケードに接続した路地にも飲食店などが連なり、更に平行して飲食店中心の別の片アーケード(駕町通り)もあり、面的にも楽しめる街ということを感じました。
テナント構成は、どちらかというと飲食店が多め。仙台でいうと名掛丁や一番町4丁目を合わせたような雰囲気。でも、何でもあり。
旧ダイエー跡が再開発された「COCOSA」。1F~4Fがガラス張りで高級感のある新しい商業施設です。
低層階がファッション、飲食店、上層階が無印、ニトリDECOホーム、セリアなどの雑貨店、ABCストアなどで構成され、身の丈に合ったテナント構成という感じ。
下通付近が現在も賑わっている秘訣として、核となる商業施設は、上述の鶴屋百貨店の存在感だけでなく、この『ダイエー⇒COCOSA』以外にも撤退商業施設の後が建替え、リニューアルで基本的に商業施設として残り、商業床があまり減少していないことも。『県民百貨店⇒サクラマチくまもと』で魅力アップしている施設もあるなど、都心部を取り囲む郊外に出店しているイオンモール熊本やゆめタウン光の森などの影響を感じさせない賑わい。
これは、『寿屋⇒カリーノ下通(蔦屋書店を中心とした専門店ビル)』 で建物をリニューアルしたタイプ。
左側が下通の北端に2023年にオープンした『熊本パルコ⇒ HAB@熊本 』。
立地条件の良さからか2020年の閉店後すぐ建替えられ、、B1F~2Fの3フロアはSTANDARD PRODUCTSなどの専門店と飲食店街、3階以上は星野リゾートのOMO5が出店しています。商業施設としてはダウンサイジングですが、何というスピード感。引き続きパルコが運営とのこと。
上通と並木坂
下通と比べると幅も狭く地味な印象の上通とそれに続く並木坂。
熊本電鉄の都心側のターミナルで市電の通町筋電停からは徒歩10分程度の「藤崎宮前駅」に向かう通り道でもあります。
この写真は、アーケードとしての北端で並木通りに路地を挟んでそのままシームレスに繋がっています。
下通がバケモノ級なだけで、上通が地味と言っても仙台でいうとサンモールよりは賑わっています。雰囲気はマーブルロードおおまちに似てい落ち着いた印象。店舗については、地元の店が多く、飲食店も目立ちます。
鶴屋百貨店本館の道路向かいで、上通アーケード入口に面する別館(New-S)。上階はホテル日航や美術館も。
気付いたこととして、このように仙台ではアーケードから姿を消した地元書店が数軒まだアーケード内に残っていたこと。この向かいにも別の店がありました。仙台ではアーケードに面する書店は、先日金港堂本店が閉店となり大きな衝撃をもって受け止められたニュースとなり、残るは一番町四丁目のあゆみブックス(≠地元)のみ。
上通に繋がる並木坂には、センスの良い飲食店や衣服店などが並び、藤崎宮前駅に繋がる通りだけに、それなりに人通りはありました。
アーケード周辺に関しては、空き店舗やシャッターだらけで厳しい一角というところもなく、空き店舗があっても新陳代謝があり、それが熊本市中心部の強さだなぁと感じた次第。
巨大複合再開発 サクラマチクマモト
2019年にオープンし、先日5周年を迎えたサクラマチクマモト。
何で、地方中枢都市でもない新興政令市でこのような巨大な複合再開発が実現したのかと不思議に思っていいながら、ようやく訪問することができました。基本的に九州産交の巨大バスターミナルと県民百貨店跡の再整備であり、土地の権利関係が比較的シンプルだったこと、隣接地にあった熊本市のホール機能を拡充しMICE機能として熊本城ホールを整備するなど、熊本市も協力的だったのかと感じました。
中心駅と都心部が離れた都市が多く、都心部直行のバスと鉄道が鎬を削る九州ならではという、このような街中の巨大バスターミナルの存在があり、再開発の拠点施設として再整備することができたのではと。
地元のバス会社が中心となったバスターミナル併設型都心部集客施設といえば、以前取り上げた新潟交通の新潟の万代シテイが50年前から存在し、今や都心部随一の集客力を誇る場所となっていることを連想しましたが、一方仙台ではと考えると悲しい限り。
宮城交通は、一応広瀬通の高速バスターミナルの再整備として、土地売却先の東京建物の協力で、オフィスビルの1階部分に小規模なものは確保しています。これまで、北仙台ターミナルも長町ターミナル敷地も土地売却や再開発で高層マンションになっていますが、基本的に資産の切り売りをし続けてきたのに、今やその蓄えもなく、現在の減便一辺倒の状況に至っているのは悲しい限り。近年は仙台市営バスの営業所運営受託という安定収入を得てしまっただけに、自社路線を犠牲にしてでも運転手を市バス路線の運行に回していたり。そもそも泉区の路線は地下鉄開業に伴うバーター策などでパークタウン線など市バスからの移譲路線も多いながらも、うまく生かせなかった印象。一時期は泉中央駅を発着する路線で深夜帯のバスなど積極策に出ていたのは今や昔。
約10年以上かけた再開発で、着工後に熊本地震が起こり完成が1年半遅れ、設計見直しなどで総工費も1.5倍以上の800億円弱に跳ね上がり、紆余曲折ありながらも完成にこぎつけましたが、その後もコロナに見舞われる時期もありながら、現在では賑わいを見せています。さらに整備が遅れていたら総工費は1000億円は下らなかったでしょう。
時代は違うけれど、約800億の総工費はバブル崩壊後ながら豪華な作りと総事業費で批判を浴びた再開発ビル仙台駅前アエルとほぼ同じと考えると、サクラマチクマモトは同程度の総工費で済み時代が良かったと。それはリーマンショックの辺りに入札で事業者を決めた仙台市地下鉄東西線も同じことが言えますが。逆にどの都市でも、これからの再開発は資材高と職人の取り合いで大変。東北電力が中心の電力ビル再開発はなんとかなりそうですが、これからのさくら野跡やオリックス再開発、藤崎を中心とした大町再開発はなおさら。
仙台市の今後整備される公共施設でも市庁舎が500億、音楽ホールが350億と総事業費が軒並み想定の1.5倍に。市庁舎は震災対応で計画が先送りとなり、音楽ホールはもともと20年以上前から計画がありながら、候補地が移ろい(長町モール横⇒あすと長町⇒都心部⇒国際センター北側)、そして県民会館との役割分担の議論などもありここまで遅れてしまった結果。それでも、市庁舎も音楽ホールも仙台市は様々な意見を聞きながら丁寧に施設内容を詰めてきており、先日の藤本壮介氏の設計に決まった音楽ホールのコンペも公開で実施され、斬新な設計が評価されました。遅れながらも素晴らしい施設となりそう。
構成される機能として
- 熊本桜町バスターミナル(29パース:高速バスと路線バス)
- コンベンション施設(熊本城ホール)
- 商業施設(B1~3階:約150の専門店)
- シネコン(TOHOシネマズ)
- ホテル(KOKO HOTEL Premier 熊本)
- 分譲マンション(マリモ)
- オフィス
と、てんこ盛りの再開発。総床面積が16万平米超えは、地方都市としてはバケモノ級です。
2階以上のバルコニー部分は、緑豊かなテラスが。当日は天気が悪いながらも、それなりにくつろいでいる利用者が。
2階部分の広々とした通路は、1階バスターミナル相互を結ぶコンコースを兼ねています。
商業施設(シネコン含み)は、延床面積で4.5万平米。売り場面積で2.8万平米。結果的に県民百貨店の再出店ではなく、専門店の集積というのはこの施設の性格に合っていたのではと。百貨店斜陽の時代で、地域一番店の鶴屋百貨店との消耗戦を招かなかったことも。
このバスターミナルという性格からか、熊本への旅行者風の方が多く、レストランやフードコートの充実ぶりにうなずけます。
バスターミナルは、29パースと巨大。これでも事業者や路線再編により再開発前より縮小されたとか。
発車案内もLCDで経由地も含め非常に分かりやすく。
バス乗り場の通路はちょっと狭め。
高速バス等公共交通全般については、別記事で。
街中のコンベンション施設 熊本城ホール
3000人規模の大ホールや展示施設、会議施設などもこの再開発の肝であり、熊本市も多くの負担をして整備されました。単独施設ではなく、ホテルや交通ターミナルも含めた複合再開発の一部として整備した相乗効果は大きい。当然整備費用も節減されるし。使い勝手が良くなり稼働率にも好影響が。稼働率については7割程度とそれなりに健闘しているのではと。こういう件には必ず噛みつく某政党が文句言っているようですが。
ちょうど、訪問時には医療系の大規模な学会が開催されていました。
天気が悪い中で、半日で駆け足で回ったので、鶴屋をはじめ都心部の商業施設、市電沿線の街の広がり、豊肥本線沿線のTSMCの好影響などまでは確認できませんでしたが都心部を見るだけでも熊本市の勢いは十二分に感じることができました。
このような賑わう大都市で生活しながら、週末は福岡という大都会にもバスで往復5千円以内で気軽に出ることができるとは、恵まれた環境の都市に感じました。この規模で九州内で3番手の都市というのも、九州のポテンシャルの凄さかと。
もう1日余計に滞在し、周辺も含めていろいろ回りたかったのですが、先の行程もあり泣く泣くこの地を離れました。
なお、この勢いのある熊本市。順風満帆に見えながら、特に都市交通面では渋滞で悩まされているとか、バス・市電の乗務員不足による減便、JR熊本駅が郊外で利用者が少ないことなど、訪問して見えてきた面も。この件については次回に続きます。
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