JR南仙台駅 西口改札設置なるか?(その2)
前回の続きです。
前回記事
理想は高架化ですが
仙台市の都市計画図を加工してみました。範囲は西の県道仙台館腰線から、東の国道4号仙台バイパスまで。
朱色の二重線は都市計画道路のうち完成済の部分です。左下の網掛けの部分(西中田)は区画整理事業で面的整備済の範囲。逆に、それ以外は昔からの自然発生的な市街地で、都市計画道路なども後追いで整備せざるを得なかった範囲となります。
長町に次ぐ南部の拠点となり得る南仙台駅エリア【大きな赤丸】で、東北本線線路の東西に市街地が広がる一方、特に旧市街地の東側を太子堂駅から名取駅方面に貫く旧国道4号線【縦赤細線】は狭隘で一部歩道もほとんどない片側1車線で、右左折レーンも限定的で右左折待ちの際には渋滞が慢性化しています。
南仙台駅東口から袋原までを結ぶ都市計画道路は立派に完成していますが、計画されている東西を結ぶ3本の都市計画道路のうちの中央の1本でしかなく、南北に計画されている残りの2本【黒太線】については未完成で、そもそも線路を超える部分は鉄道高架化が整備の前提です。それも、特に北側の都市計画道路は当然ながら新幹線高架が近接し、道路単独での立体交差が困難であることが理由の一つ。南側の都市計画道路も多少距離があるとはいえ、新幹線高架の存在は同じ。
踏切渋滞の代名詞。。。
そして、上図の×3か所は踏切です。高架化された長町・太子堂エリア、そして名取駅の南北に線路をまたぐ陸橋で線路の東西を行き来できる周辺部と異なり、南仙台エリアは鉄道高架化も道路単独の立体化も進んでいないため、都市計画道路も進まず、既存の道路の踏切3か所に集中してしまうという現状。特に南仙台駅北側の中田西浦踏切は、アクセス線開業時にも問題になったところで、踏切制御の改善で多少は遮断時間が短くなったとは聞いていますが、基本的に前後の取り付け部分も含めこの20年間何も変わっていない。
関連記事
- 南仙台の踏み切り問題 (2006.11.23)
都市計画でも整合性がとれていないのは、その南北の都市計画道【黒太線】が線路を超える部分はあくまでも高架化された線路の下をくぐるという想定で線が引かれています。一方、鉄道の高架化については「都市計画決定」さえもされていないという宙ぶらりんな状態。
高架化の可能性
なので、建前的には鉄道高架化が大前提となっている計画のエリアなのです。
- 〇 南仙台駅周辺の線路の高架化と駅舎を高架下に整備
- 〇 線路東西の都市計画道路整備
を進めなければならないけれど、鉄道高架化の予算確保も難しく、そもそも都市計画道路の用地買収が進んでおらず、南仙台駅北側は徐々に進められていますが、南仙台駅南側は全く進んでいないという現状です。道路のみの立体化をするには、前後の取り付け部も指定しなければならず、大きな都市計画変更となるために道路の単独立体化も難しい。それも、住宅地の中での陸橋整備になると、騒音や日照制限などで反対運動が大きくなると思われる。
そもそも、県内での鉄道立体交差化は、一番大規模な仙石線仙台地区の地下化の後、長町、多賀城駅(参考写真)と続いた後は、仙台市としては、仙山線の中江駅周辺などが検討はされていますが止まっており、結局国の補助金も他の地域にいってしまうことから、空白期間が生じるのはもったいない。そもそも、JR東日本エリアでは鉄道高架化の熱意が低いという傾向があるなぁと、先日の記事にも書いてますが。
そもそも駅橋上化は?
こんな都市計画道路と絡み合った状況であれば、名取駅、そして同じ仙台市内の郊外駅である岩切駅でも実現した「橋上駅化」のみを進める方向が現実的だと思っていますが、上述のとおり、都市計画道路が「鉄道高架化」を前提に都市計画決定されているため、橋上駅化=鉄道高架化の断念=都市計画道路の見直し に結び付くことが膠着状態になっている要因と推測します。誰もパンドラの箱を開けたくないと。
とはいえ、岩切駅は2018年に完成した駅舎で、そもそも2001年の国体や2002年のワールドカップの時に、この駅があの忌々しいグランディの最寄り駅になり得ながらも、駅構内通路が地下でバリアフリー対応がなされていないなど、イベントの大量の利用者をスムーズに処理できないとの課題があり、本数の少ない利府駅や新設された国府多賀城駅を最寄にせざるを得なかったこと、駅前を中心とした区画整理事業が行われ玄関口の整備が必要とされたことから、長年の課題が解決された駅整備事業です。
これはメイン口の北口。ロータリーが整備され、送迎によく使われています。
グランディなど利府町側住宅団地の利用者もパークランドライドで大いに利用しているようです。
こちらは、これまで狭隘な県道のガード経由で遠回りを強いられた多賀城市側の南口。劇的に駅が近くなりました。
ホームが4番線まであり、自由通路もけっこうな長さです。
昼間の本数の少なさは残念でしかないですが、朝晩のラッシュ時は毎時5~6本の本数があり、概ね10分に1本とそこそこの利便性が確保されています。
高架化された名取駅に関しては、こちらの記事を。
- 名取市図書館に行ってきました その12019.03.10
膠着状態にある都市計画道路の整備をあきらめる訳には行かないにせよ、南仙台駅一帯の再整備を進めるためには、 橋上駅化に向けてすぐにでも動く必要があるのではと思っています。
しかし、橋上駅化は5年スパン、高架化は10年スパンの話になるので、今回仙台市が説明会を行い、地元紙の記事になったような一時的な改善策はやむを得ないのかもしれない。
今回の新改札設置案について
このような状況の中、先日の河北新報朝刊に悲願の南仙台駅西口改札設置に向けた仙台市の動きが取り上げられました。
JR南仙台駅に新改札なるか 仙台市が検討、西側住民の利便性向上へ
仙台市太白区のJR南仙台駅で、改札口の新設に向けた検討が具体性を帯びてきた。現在の改札は東口の1カ所だけで、駅西側に住む利用者は長年、高架の自由通路を渡る遠回りの不便を強いられていた。市は今春、新改札口の設置場所について地元説明会を開催したが、住民の望みはあくまで線路の高架化。市は「利便性向上が最優先」と慎重な姿勢だ。(せんだい情報部・藤原佳那)
現在の改札は東口の1カ所だけ
今月上旬の午前中。西口から仙台方面に向かう女子大学生(21)は「ホームまで4分くらいかかる。夏は自由通路も蒸し暑く、階段の上り下りはつらい」と汗をぬぐった。改札の新設については「ずっと願っていたので、できたら便利になる」と期待した。
市によると、新改札口の設置場所は自由通路の途中と、3番線西側の2パターンを想定。3番線西側の場合、改札を入ってホームまでの動線として構内に踏切か陸橋、新ホーム-のいずれかを整備する必要がある。
利用者の安全確保や列車運行上の課題を踏まえ、市は(1)自由通路と仙台方面のホームに直結させる案(2)3番線西側から既設の陸橋に接続させる案(地図)を「現実的」と判断。この2案を軸に、手法や費用負担などの詳細をJR東日本と詰める方針だ。改札は交通系ICカード専用の簡易式を予定する。
市は5~6月、地元説明会を9回開き、延べ200人を超える住民が参加した。中田西部町内会連合会の石田優光会長(73)は「非常に明るい見通しとなってきた」と喜びを口にする。
一番の願いは線路の高架化も…市は慎重姿勢
住民を中心とした市への改善要望は1999年から。仙台空港アクセス線が2007年に開業し、踏切の遮断時間がより長くなり、駅周辺の渋滞は激しさを増した。
石田会長は「全てゼロの状態だったが、やっと少しずつ動き始めた」と評価するが、一番の願いは線路の高架化だ。
2駅隣の長町駅(太白区)は土地区画整理事業の一環で06年に高架化された。東側のあすと長町と西側の商店街をつなぐ道路も立体交差で整備され、線路で分断されていた東西の一体的なまちづくりが進んだ。
石田会長は南仙台駅周辺も高架化すれば東西の交流促進とにぎわい創出につながると強調。「地域住民の悲願。次世代のためにも要望を継続したい」と語る。
市公共交通推進課の担当者は「高架化や橋上駅化は事業費や工期も相当かかる。議論は継続しつつ、駅の利便性向上に向けて西口改札の設置を最優先に課題解消を目指したい」と話す。(7/22河北新報朝刊より引用)
[南仙台駅] 1924年9月に「陸前中田駅」として開業し、今年100周年を迎える。現在は東北線と常磐線、仙台空港アクセス線が通る。JR東によると、1日の平均乗車人員は2022年度、9003人。仙台市内では仙台駅、あおば通駅に続き3番目に多い。市が22年7月6日に行った調査では、駅利用者は東口6576人、西口5541人だった。
4つの案が検討された中で、
- ①案 自由通路の途中に設置する案
- ②案 3番線西側に設置して陸橋を延長させる案
に絞られたとのこと。まぁ、妥当でしょうね。
実際に南仙台駅の仙台方面は2番線利用なので、3番線は待ち合わせ(退避)などで1日数回程度活用されるのみ。
よって、いちいち陸橋に上がってもらうのではなく、地上に構内踏切設置というのは楽で利用者にとってはありがたい話ながらも、利用者が多い南仙台のような駅での新設は非現実的かと。
そうなると、3番線西側に設置して陸橋を延長させる②案しかないのではと思います。
②の3番線西側に設置して構内陸橋を延長する案については、朝の仙台方面に行く場合は階段の一度の上り下りで済むし、帰りも1番線から構内陸橋を上って西口改札に向かうことができることから、①よりも動線は短くなることが考えられる。ただ、ボロボロの構内陸橋を延長して設置といっても、一応エレベータは設置されているにせよ幅も狭く拡幅が必要なのを含め、従来部分のリニューアルも同時に行う必要があるのではと。
JRの仙台地区では、自由通路と構内陸橋を接続させたパターンでの新改札設置が多いですが(岩沼、船岡、槻木など)、結局その新設された改札は既存の改札口側に設置されるので、反対側からの利用者にとっては、それほど動線が短縮されないパターンが多いことが欠点。
①の自由通路の途中に設置する場合、朝の仙台方面への利用時は新設された階段経由で一度の上り下りで済みますが、帰りは1番線に到着し、これまでどおりの東口改札ー自由通路を経由して西口にということで、結構遠回りなのは変わらず中途半端。ただ、この案のメリットは、西口からの利用者は仙台方面2番線ホーム南側に着くので、北側に溜まりがちな東口利用者とホーム上で分散できるということはありそう。南仙台駅朝ラッシュのホーム混雑は、かなりのもので、ホーム上に一杯に待っている乗客が、混雑した電車に吸い込まれていく様子は見事なもの。
なおICカード専用簡易改札とのことですが、岩沼駅西口改札や仙台駅に設置されているような、一応通常の自動改札でのIC専用が望ましいと。無人駅用のものだと、多くの利用者を処理するのが難しいのと、不正乗車を誘発することにならないかなと心配。
暫定措置でも念願の改善
不満はあれども、駅の半数の利用者が遠回りを強いられる状況は改善するに越したことはなく、遅ればせながら動きが出てきて良かったと思っています。②の案であれば、あえて橋上駅化を図らなくとも駅両側の利用者の利便性は図られるし、次のステップに向かうのはいつかは分かりませんが、中途半端な①の自由通路案ではないことを祈って。。。
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