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2024年3月

2024年3月17日 (日)

仙台市敬老乗車証見直しについて雑感

 前記事とセットで書いていた記事でしたが、別の記事としてUPしようと思っていたら、あっという間に3月になってしまってました。取り上げたいネタはたくさんありながらも、最近月刊化しているので、徐々に手をつけていこうと思っています。

敬老乗車証見直しは高齢者いじめなの?

 前回取り上げたように、学生向けのフリーパスが拡充されるというのは、子供を持つ親としても嬉しい話ですが、一方仙台市で進められている敬老乗車証の見直し。制度維持のために10%から25%へ負担率を高める改定方針が出され、パブリックコメントでも現役世代を含めて賛否半々という結果を元に、仙台市としても今秋の実施に向けて進めているところながら、2月議会で何でも反対の某党だけでなく、高齢者を主な読者とする地元紙もバイアスがかかった意見を頻繁に取り上げており、何だかなぁと感じているところでした。

Keirouicippann

 因みに高齢乗車証は年間12万円まで使えるのに対し1割負担だったので、何と年間で最大1万2千円!月で割るとたった千円!最大10万8千円分の割引を受けることができるのが、負担が25%になると最大月2500円になり、それでも最大割引額が9万円。利用状況にはかなりの偏りがあり、JR沿線でバスがない場所は当然恩恵を受けることができず、一部の高齢者がフルに使っているような状況で、公金を支出する事業として、公平性にも疑問が生じる制度となっています。

敬老乗車証HP

仙台市敬老乗車証の見直し状況について

 一方、従来の「学都仙台フリーパス」や10月から開始される「せんだいバスFREE+」では、月5,940円~12,230円/人 なので年間7万円~15万円弱/人 の支払いとなり、敬老乗車証の変更後の負担額は、学生の親が負担する水準のたった1/3以下でしかない。

 社会参加の促進とか、都心部への買い物とか、高齢運転者の免許返上対策とか、様々な効能・効果はあり、制度自体は必要なものと思っていますが、本来運賃とのバランス、そして学生向けのフリーパスで、今回の月8千円というのが破格に感じてしまう水準なのに、一部の高齢者は月2500円でも文句を言うのかと、そしてそのような意見を高齢者の代表のように嬉々として取り上げる地元紙。本当に悲しくなります。

 現在の制度を続けていたら、自分が対象になるころにはとうに破綻しているでしょう。制度を持続させるための見直しなのに、現在の受益者の意見だけを垂れ流すのはそもそも割引率や年間の割引額などが正規料金や他都市と比較して適正なものなのかということも踏まえて報道し、社会の公器としての役割を果たして欲しいものです。

全国大都市の制度運用状況

なお、このような敬老乗車証の見直しは全国的な流れですが、そもそも仙台でもJR線は対象になっていないように、大盤振る舞いの制度は基本的に公営交通を保有している都市に限るものです。

(1)新潟市の事例

 例えば、公営交通がない新潟市は、新潟交通が発行するフリーパスが年齢により4~7千円程度/月 の負担であり、運賃補助も「シニア半わり」として基本的には50%割引で、割引率は子供と同じ。

(2)福岡市の事例

 かつて廃止された路面電車は西鉄が経営し、公営交通は市営地下鉄導入時からと歴史が浅い福岡市は、新潟市と似ておりやはり民間の西鉄バスのフリーパスが年齢により5~6千円/月負担 で購入可能。これとは別に福岡市の事業としては介護保険料の所得段階によって受益額を設定しており、負担金なしで年間1.8万~2.7万円まで高齢者乗車券を交付しています。これは市営地下鉄だけでなく、JRや西鉄電車、バスの利用のためのICカードへの入金も可ですが、公共交通機関の代わりにタクシー券の交付を選べることができるなど、フレキシブルな制度となっています。それ以上の利用の場合は当然ながら全額自己負担となります。

(3)京都市の事例

 他の都市でも、見直しが進められていますが、仙台市の事業の問題点として、利用状況や所得に関わらず一律割合の負担であること。最近負担額の増大から見直しを行った京都市はフリーパス方式を維持しているものの,所得額に応じて負担金額を変えています(0~4.5万円)。京都市も一部の利用者が使い倒していることへの問題が指摘されています。

(4)札幌市の事例

 札幌市は年度内のチャージ額により、1000円入金⇒1万円利用 から、1.7万円チャージ⇒7万円利用 まで、段階的に負担率を変えています。札幌市は最大5.3万円分の補助となり、多く利用する方の割引率を下げるなどの仕組みを導入しています。それでも負担が大きく、制度の刷新を見据えて素案を公表しました。自己負担金をなくす代わりに、日頃の健康活動(ウォーキング)や社会参加などの度合いに応じてポイントを付与し、その分を公共交通機関の利用運賃に充てることができるという斬新な制度ですが、利用可能額が減ってしまいそうなこと、活動状況によって付与されるポイントがどの程度が予想できず不安が生じているとのこと。御多分に漏れず大反対が起こっているようで、既得権を失う高齢者、そしてその方々を支持層とする政党の利害が一致し、制度見直しを阻もうとしているように感じます。

バランス良い制度にするために

持続可能な制度にするための見直しが各都市で試行錯誤しながら実施されている中、仙台市の見直しはまだ恵まれている方だと感じるところです。

 今回は負担率を基本10%から25%に高める方針ですが、負担率は小学生と同じ50%というのが着地点になるように思えます。この負担率であれば逆に上限を設けなくとも良いかもしれません。一方、市の負担を低くするためには、負担率を上げない代わりに上限利用金額の大幅引き下げという選択肢もアリだったのでは。

 一部の利用者に利用が偏っている反面、JR沿線の高齢者が中々使いづらく、不公平が生じているという課題もある中、福岡市のように負担金なしで介護保険料の所得段階による区分をして、上限利用額を設定する一方、JRやタクシーの利用を可能にするなどの方向性がバランス取れていると感じました。

 そもそも、車社会の恩恵を最大限に受け、公共交通を使用しない流れを作った団塊世代の方々のために青色吐息の公共交通となっているという面もあり、車の維持費に嬉々として年間数十万円を平気で出していた方々が大部分。それから考えると年間2万5千円/人 で文句を言う人たちが多いとは思えない。そりゃ負担増になれば反対したくなるだろうけれど、アンケートの結果から「少しの負担増も許せない」という一部の声の大きい人達の意見を、殊更に大きく取り上げる某政党,マスコミの存在意義って何だろうなと思ってしまいます。少数派の意見を尊重と言いながら、その少数派が本当に困っている方なのか、世代間で比較すると全く不公平な現状となっていることをしっかりと見極めて欲しいし、一方的に高齢者を弱いものとして弱いものいじめみたいなレッテルを貼り、負担を少しでも次の世代に押し付けても構わないというようなことを平気で支援している勢力に違和感を感じています。


自分のような中間世代も社会保険料に苦しめられ、わずかに給与が増えても手取りは増えず、子供関係を含め様々負担増に苦しんでいる中で、若い世代は尚更でしょうね。回りの若者世代は、車の保有や持ち家には執着していないという傾向が増していると感じています。これもそれにお金を回す余裕がないので,取捨選択して効率的に使途を選択しているということ。また、過度に頑張ってもしょうがないというか、自分の時間を大事にし、無駄なことはしないという傾向を感じます。こんな社会になってしまったことの責任の一端を感じつつも、自然体の生き方が認められることに羨やましさを感じたり。見栄張って横並びを目指していた時代からそれぞれの考え方を重視する時代になってきたことは喜ばしいことかもと。


 高齢者にとってせっかくの誇るべき敬老乗車証制度を与えてもらっていたことに感謝しながら,長続きさせるためにはということを少しでも広く考えることができる人が増えれば良いし,マスコミも本質をしっかりと理解して,公平に報じて欲しいと感じるところです。

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