激変 泉区の商業環境(その1)蔦屋書店仙台泉店移転&復活なるかイオンタウン泉大沢
泉区の商業環境としては、泉中央駅前のアリオ仙台泉が年明けの1月に閉店というニュースで、泉中央vs周辺(パークタウン寺岡・泉大沢・富谷) の商業戦争は泉中央劣勢とみられがちですが、そもそも泉区・富谷市エリアの高齢化と人口停滞が生じていることから、勝ち組はおらず、消耗戦に入っているように感じます。
それを象徴するような商業施設を取り上げてみます。
1.蔦屋書店仙台泉店再訪
約10年前に富谷との境に位置する仙台市泉区大沢の区画整理地にオープンした、蔦屋書店仙台泉店。
この蔦屋書店は、当時東京の代官山にオープンした代官山蔦屋書店や、佐賀県の武雄市に続くTSUTAYA図書館導入に賛否が分かれていた多賀城市図書館が話題になっていた時期でもあり、新潟資本のトップカルチャーと経営主体は異なるとはいえ、同種の店舗が進出することとなり、それも県内最大の蔵書80万冊の衝撃とともに、レンタル・雑貨・カフェとの複合店舗を2フロアに展開し、本や雑貨好きにはたまらない空間が誕生したことに、興奮したものでした。
過去記事
- 蔦屋書店仙台泉店へ 2014.03.23
- 代官山蔦屋書店へ 2014.11.09
- 多賀城市立図書館へ 2016.07.11
- 久々に多賀城市立図書館へ 2018.07.20
その後2017年に、太白区富沢西の区画整理地に開発された商業施設「アクロスプラザ富沢西」内の、ヨークベニマルと並ぶ核店舗として、仙台での2店舗目としてオープンしています。トップカルチャーとしては、仙台泉店オープン時点で仙台圏で5000㎡クラスの店舗をあと2店舗ほど出店したいとの意向を示していましたが、現時点では泉と富沢西で打ち止めとなっています。
関連記事
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2.仙台泉店がイオンタウンへ移転
その仙台1号店である仙台泉店が、1月末で閉店となると聞いて、現在の状況を見に行ってきました。
東北道を挟んですぐ南東側のイオンタウン泉大沢内に移転するとの案内がありましたが、中に入ってみると、噂には聞いていましたが、2階の雑貨やレンタル売場が閉鎖され、1階に集約されていました。
フロア図によると、右上のおもちゃ関係と右下のタリーズコーヒーの位置は変わっていないものの、中央下部分にレンタルが移っており、その周辺に雑貨が展開という形になっていました。
雑貨売り場も、このオフシーズンの時期にアウトドア用品が漫然と並んでいるなど、移転前ということを差し引いても、現在の置かれている状況を感じることができました。
書店部分については、オープン当初の80万冊の物量で殴られた衝撃は完全に薄れ、現時点の蔵書数は不明ながらも半分以下に減っているような感覚でした。なお、移転先のイオンタウン泉大沢店では、30万冊の蔵書とのこと。まぁ、縮小しても、この程度あれば泉エリアでは十分な競争力を他保つ蔵書数ではあります。
訪問したのは、土曜日の10時過ぎから13時半頃まで。タリーズコーヒーでモーニングセットを頼み、2冊ほど読みました。
午前中ということ、移転前という状況もあるかもしれませんが、普段使っている富沢西店と比較しても正直店内が閑散としており、この状況ではテコ入れが必要というのも頷ける状況でした。オープン後あれほどイモ洗い状態だった絵本・おもちゃ売り場が無人の空間で、絵本もプレイコーナーも荒れているというか正直厳しい。。。
そもそも、この巨大複合書店は、現在大衡村への半導体工場に関わっておりホットな SBIグループが、震災前に開発した商業施設で、テナントが入らなかったために、2フロアを活用した実験的な展開ができたのでしょうが、場所は悪くないにしても規模を持て余し、店舗縮小して魅力ダウンという負のスパイラルから抜け出せなかったのか。そのオープンからちょうど約10年で、テナント契約の期限が切れるタイミングでの移転閉店となったのでしょう。
上階は、クリニックモールとなっていましたが、今回退店する1階の後釜はどうなるのかな。正直人口頭打ちでオーバーストアのエリアであり、まだ建設後十数年の建物ですが、単なる商業用途での活用は厳しのではと。
やはりこのエリアに来て感じるのは、イオンタウン然り、ホームセンタームサシ、家電店(ケーズ、ヤマダ)、スパメッツァ仙台(旧龍泉寺の湯)など、巨大な店舗が立ち並んでいる反面、回遊性に難があり、疲れる空間であること。今回はバスで行ったのですが、蔦屋書店とイオンタウンを回ってお腹いっぱい。徒歩で回遊するエリアではないことは当然承知の上、クルマだってハシゴする気にはなれないスケール感ということ。
3.移転先のイオンタウン泉大沢へ
※一部写真を追加しました
高速道路を挟んで目と鼻の先で、徒歩3~4分のイオンタウン泉大沢へ。
(1)自社競合極まれり
北に1.6kmにイオングループの「イオンモール富谷」が位置している中、グループでの寡占化を図るためなのか、信じられない位置関係での出店を図りました。イオンモールの近隣にイオンタウン出店という事例は、イオンモール名取に南西1kmに位置する「イオンタウン名取」という事例もありますが、イオンタウン名取は旧ジャスコ名取店の建替えで、規模も2階建てながら明らかにスーパー+サービス機能という近隣向けの位置付けであるのに対し、イオンタウン泉大沢は、売り場面積2.5万㎡超と、来春着工のイオンモール雨宮(売り場面積2万㎡弱予定)よりも一回り大きい規模で、イオンモール並み。その近隣のイオンモール富谷の売り場面積約4万㎡規模と比較すると、”イオンタウン”故グレードは多少落としているにしても、箱としてはかなり立派なもの。しかし、大規模なSCが複数あるのは嬉しいかもしれませんが、両方のSCの商圏内の住民にとっては、同じイオングループの大規模SCが中途半端に分散しているイメージ。一か所に集まっていればどちらに行けば良いのか迷わなくてもいいのにという関係に思えます。
この事例から感じるのは、それなりに大きなSCを中途半端な近隣に出店すると逆に双方マイナスになってしまう反省から、イオンモール新利府は、メインの新棟(南館) に地域住民向けの旧棟(北館)とを接続させ、一体の巨大SCとして見せるようにしたことが、現時点で成功とされている一因ではと。
まぁ、この巨大なSC群を今後維持できるかは分かりませんが。そもそも仙台圏北部の商業施設のバランスが崩れる引き金を引いたのは、イオンモール新利府の無謀な出店。
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(2)核テナントはザ・ビッグとトイザらス
手前の北側1階に、ザ・ビッグが入っており、それなりに賑わっていました。オープン当時はマックスバリューでしたが、イオンタウンなどの中規模なSCは価格志向で軒並みザ・ビッグに転換している印象。塩釜、鹿島台、多賀城鶴ケ谷、名取、柴田など。周辺のイオンモールやイオン本体の店舗との差別化なのでしょうが、ザ・ビッグが入っているSCは老朽化が進み、軒並みテナント構成が荒れている印象が。
ザ・ビッグ真上の北側2階端には一方の核店舗のトイザらスが。以前は山の寺にあった旧ジャスコ泉店跡のパワーモールに入っていたのが移転してきたもので、仙台圏北部では唯一の店舗となり、それなりに集客はあった印象です。
駐車場も1200台収容と巨大でありながらそれなりに埋まっている印象だったので、SC内の状況とのギャップを感じました。
(3)2階に蔦屋書店とダイソー複合店出店
この2つの核店舗に続く集客の核として期待される蔦屋書店が移転するのは、2階のフードコートの脇。
そのフードコートも昼過ぎにも関わらず空席が目立ち、撤退済の飲食店スペースも。
まぁ、幸楽苑にはなまるうどん、モス、サーティーワンと、本当にフードコートに必要最低限の飲食店が並んでいる印象が。
そのフードコートのすぐ脇に蔦屋書店移転予定スペースがありました。
■「蔦屋書店 イオンタウン仙台泉大沢店」店舗概要
所 在 地 :宮城県仙台市泉区大沢1-5-1(イオンタウン仙台泉大沢 内)
電話番号 :022-772-2011
営業時間 :9:00~22:00 (土日祝 8:00~22:00)
店舗面積 :2,864㎡(866坪)
地域最大級の30万冊規模(450坪)で、ブックカフェとしてのタリーズコーヒーも100坪確保とのこと。売場自体は10年前にオープンした仙台泉店の1/3、現店舗と比較すると半分強程度でしょうか。おそらくおもちゃ・絵本売場部分はかなりの縮小になりながらも、書籍売り場は極力維持する印象。タリーズコーヒー部分は現在でもかなり広く、同程度を確保でしょうか。
なお、この蔦屋書店が出店する2階南側は、吹き抜けを挟んで両側が現時点で全て空きテナントというものすごい状況です。
建物が築15年程度と新しいだけに不思議な印象ですが、仙台にも明るい廃墟モールが誕生したかという印象です。しかしこの状況は束の間で、3月にはこの吹き抜けを挟んで左側が蔦屋書店、そして右側にはダイソーグループの大型店が出店準備とのことで、この状況を逆手に取って、集客力のある大型店を集めて、起死回生を狙うのでしょう。
なお、ダイソーの既存店は南側端の1階にありますが、その既存店を2階に移転させるとともに、最近積極的に店舗展開しているSTANDARD PRODUCTSと、最近ヨドバシ第二ビルにも出店したTHREEPYの複合店舗となります。
この3店舗が集まるのは少なくとも県内では初めてでは。無印良品を研究したような商品を並べて力を入れているSTANDARD PRODUCTSは、仙台駅前でパルコ2、イオンモール名取および新利府と、競争力のあるSCを選んで出店してきましたが、今回のイオンタウン泉大沢への出店はちょっと異質。3業態の集積で話題性はあると思うので、この商業施設復活のきっかけとなるか?
(4)厳しい南側1階
なお、現時点のフロアマップです。3層吹き抜けが標準のイオンモールに準じた2層吹き抜けモールで、曲線を描き先の店舗が見渡せるようにしているところは、本当に力を入れていたショッピングモールと感じます。
ここにきたのは2回目(2015年頃?) でしたが、その当時はこの規模感でそれなりに賑わっており、成功しているモールという印象を持っていたので、今回の状況に驚きを感じました(2階の左半分が現時点で空き店舗であり、蔦屋書店とダイソーグループ複合店出店予定地です)。
2階の半分は埋めたとしても、1階南側などまだまだ空きスペースは残っています。現時点でマッサージスペースに使っていたり、がらんどうの空間があったり、正直これだけでは厳しいとは思います。現在のダイソーが2階に移転する跡も空きスペースになってしまいます。
参考リンク
4・人口減少・縮小社会に向けて
そうはいっても、このイオンタウン泉大沢SCは大きすぎてまだ潰せない。蔦屋書店を経営するトップカルチャーとしても、テナント契約切れのタイミングで、面積を効率化してSCのテナントに入った方が固定費を削減でき、”ついで来店”を見込めるし、イオンタウンにとっても広大な空きテナントを埋めることだできる。
困った者同士で協力してという印象ですが、このようなことが今後も起こっていくのでしょうね。決して明るい話題ではないですが、何とかしていくしかない。このような郊外型SCだけでなく、泉中央、そして仙台都心部でもあり得る話。人口減少・縮小社会の負の側面を考えさせられました。
なお、おそらく、今年最後の更新となります。今年のトップニュースは、何といっても6月のヨドバシ仙台オープンでしたね。また、閉店となるアリオ仙台泉をはじめとした大規模SC記事に多くのアクセスを頂きました。
仙台市の人口も110万人を前に頭打ちとなりながらも、先を見据えた投資を進めて欲しいところで、停滞している都心部の再開発のうち、電力ビルや第一生命ビルについて動きが出始めるなど、今後に期待が持てる状況となったことは喜ばしいことです。
新年の2024年も引き続きどうぞよろしくお願いします。
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