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2021年12月29日 (水)

22年春JRダイヤ改正発表 その3〜乗客数から仙石線の適正本数を考察

 来春,2022年春のJR改正で,昼間を中心に,仙石線仙台口の本数が減り,多賀城以西では毎時4本⇒毎時3~4本と多少の減便,下馬~松島海岸駅では毎時2~3⇒3本へ増便となり,松島海岸までは実質20分間隔となります。


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 20分間隔自体は,郊外型路線での最低限の本数とも言え,多賀城までの区間便も2時間に1本あることから,当初はまぁやむを得ないかなとも思いました。

仙石線は都市高速鉄道

 とはいえ,仙石線の位置づけを考えると,あおば通から陸前原ノ町駅東側までの約3.5kmを地下化による立体交差工事を行った区間で,旧東西線計画への直通目的は消えましたが,踏切除去と地下鉄仙台駅への接続が果たされました。

 仙台市都市高速鉄道として都市計画決定されているなど,仙台市としては地下鉄南北線,東西線と同等の位置づけ,利便性を期待している路線と言えます。

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 また,毎時3本ということを考えると,近郊では仙山線愛子駅以東と東北本線(館腰~岩沼駅),仙台空港アクセス線と同等の本数というのはどうなの?

 特に仙山線は単線で交換駅に制約があることから毎時3~4本が限界であるのに対し,仙石線は東塩釜まで複線化されており,上述の仙台駅付近は地下化,多賀城駅と本塩釜駅付近は高架化され,都市鉄道としてふさわしい規格で運行しています(4両編成が最長であることや快速が追い抜きできない課題はあれど)。

 また,過去には,国電区間として昼間の本数が〇~〇分おきと時刻表に記載されるにふさわしい本数がありました。


 平成初期には快速含め昼間が毎時6本(石巻発着快速・快速各1本,陸前原ノ町発着1本,多賀城発着1本,東塩釜発着2本)であり,陸前原ノ町までは毎時5本,中野栄までと本塩釜は毎時4本,多賀城駅は毎時5本,下馬・西塩釜・東塩釜は毎時3本でしたが,快速を除いてもこの時の本数が実態に合っていたのではと感じます。


 それも,宮城電鉄を戦時中に買収した元私鉄路線だけに,仙台近郊では異色の駅間の狭さ故,地下鉄のようにこまめに需要を拾っています(実際に地下区間は見た目が地下鉄同然)。仙山線も80年代以降に新駅を続々と開設しましたが,仙石線には及ばない。

 その最盛期の運行本数や,都市高速鉄道としての位置付けを考えると,小鶴新田駅の設置と周辺開発をはじめ確実に沿線人口は増えていることから,多賀城以西は最低でも毎時4本,理想としては毎時5~6本が望ましい本数であると思います。

東北本線(仙台以南)の利用者数・本数との比較

 一方,かつて東北地方のJR線において最も便利だった”最北の国電”仙石線を,利便性で超えた東北本線の仙台~名取の区間。

 それも2007年の仙台空港アクセス鉄道の開業で40往復が純増(R4春からは44往復)となった故の躍進で,東北本線・常磐線を併せて3路線が利用できます。

 加えて令和3年春改正で,まさかのパターン化まで実施され,昼間は毎時6本,夕ラッシュ時は毎時8本という,地下鉄に迫る利便性を誇ります。



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 とはいえ,コロナ直前の2019年度乗車人員で仙石線(東塩釜以西)と東北本線(岩沼以北)と,利用者数が多い区間を比較したのが下記の表ですが,仙石線の方が利用状況で上回る要素もあります。両線とも,概ね17~18kmと同程度の区間距離で比較が容易。

 なお,西塩釜は無人駅で非公表のため過去の推移から妥当と思われる概数を入れました。

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〇乗客数から分かること


  1. 駅数は仙石線が東北本線の倍あり,駅間が短いのに4~6千人の乗客を集める駅が多い。
  2. 沿線駅の乗客数合計について,仙石線の東塩釜が,東北本線より2割弱多い
  3. 6㎞刻みで3区分すると,6㎞までは仙石線が,12㎞までは本線が,18㎞までは仙石線が圧倒している。
  4. 12㎞までは,仙石線・本線ともほぼ同数の乗車人員。ただし,12㎞超の多賀城駅を含めると,仙石線の方が1.2倍に。

 ただし,仙石線は東塩釜以遠の利用者がほぼ松島海岸・高城町のみであり,石巻方面は仙石東北ライン経由で上乗せは限定的なのに対し,東北本線(槻木以南)及び常磐線が乗り入れており,乗客数2~3000人程度の駅が,槻木・船岡・大河原・白石・亘理の5駅あることから,路線としての通過人員数は双方同程度と思われます。

〇本数との関係(仙石線多賀城以西と本線名取以北)


  1. 朝の本数は東北本線の方が多いが,夕方の本数は同程度。
  2. 仙石線の昼間の本数の少なさ(本線は毎時6本,仙石線は毎時3~4本)
  3. 東北本線は毎時6本ある他,仙台―長町間で並行している地下鉄南北線が別に毎時8本(昼間は毎時計14本!)。 

   特に,6㎞までで比較すると,仙石線(小鶴新田駅以西)の方が東北本線(太子堂以北)と比べても1.7倍弱の利用者があるのに関わらず,毎時3~4本は少なすぎる。

 榴ヶ岡~小鶴新田までの乗客数計は,地下鉄南北線五橋~長町までと距離もほぼ同じで利用者もほぼ匹敵しているのに。

 12㎞まででは各駅の乗客数合計は同程度ですが,輸送量の段差が生じる東北本線名取駅以北及び仙石線多賀城駅以西で比較すると,仙石線に多賀城駅の約7千人が加わる分,仙石線の方が東北本線と比較し1.2倍の利用者となります。

 毎時6本の東北本線よりも利用者が多く,また運賃水準の違いはあれど,同じ都市高速鉄道として位置づけられる市営地下鉄南北線(南方面)と同程度の乗客数であることから,少なくとも小鶴新田以西は10分間隔であっても不思議ではない乗客数です。

〇本数との関係(仙石線多賀城以東と名取以南)

 仙石線と東北本線の乗客数はほぼ同じで,ラッシュ時も含め本数の傾向も似ています。利用者数を比較しても妥当な本数が設定されていると思います。

 アクセス線は両線の6割程度の利用者ですが,昼間が毎時3本と同じ。空港利用者向けの利便性確保のため増発に向けた努力が続けられてきた結果で,これは政策的なもの。朝夕よりも昼間の方が本数が多いのは,朝夕の増発が厳しいことと,保有車両数の制約から,現時点ではやむを得ない状況。朝夕も毎時3本が理想ですが。

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〇仙石線昼間増発の課題


  1. 駅利用者数と昼間利用者数は必ずしも比例しないこと
  2. 新型車両を導入する場合,車両数を増やさないため車両不足が懸念される

 ①ですが,今回昼間毎時3本化されたのは,松島海岸駅まで及び仙台空港駅まで。双方とも利用者数の絶対数は少ないにしても,観光客や用務客を含む定期外利用者の割合が高いという共通点があり,その需要を掘り起こすための毎時3本(20分間隔)での分かりやすさのアピールと言えます。

 その点,仙石線の仙台市内区間は通勤通学定期利用者割合が高く,昼間の利用者割合が低いこと,かつ仙台駅方面まで200円以下の低単価利用者が多く,JRにとっても毎時3本をそれ以上の本数にする理由が弱いのかと。毎時3本にしても運びきれないことはなく,使ってもらえると。

 仮に,昼間の増発を図る場合,松島海岸方面の20分おきは崩せないので,その間に区間電車を3本入れて毎時6本にすることが考えられます。

 ②ですが,4両編成で毎時6本の運行だと時間あたり24両の輸送力になるが,東北本線の名取駅以北は,空港線の2両編成もあり時間当たり概ね20~22両の輸送力なので,同程度にするとなると,新型車両の導入に合わせて昼間のあおば通~多賀城駅区間列車を新型車両置き換え後2両でシャトル運行すれば,輸送力として時間当たり18両(4両×3+2両×3)となり,車両数が減ってもある程度対応できます。

 ただし,本線の名取~長町で,コロナ前はアクセス線の2両編成の混雑が問題になっていたことから,徐々に昼間の4両化が図られれていたことが引っ掛かります。

 仙石線も多賀城からあおば通り駅までの10駅以上あるので,各駅から10~20人ずつ乗っても2両編成だとあっという間にラッシュ時並みの混雑になってしまいそう。小鶴新田以西限定であれば輸送力とのバランスからあり得るので,机上の想定としては2両編成の区間便への導入は良さげなのですが。乗客は来た電車に乗るので,4両編成と2両編成を使い分けられないケースもあります。


 特に下りの仙台駅で4両編成と2両編成で乗車場所が異なり,輸送力の違いもあり混乱する可能性が高い(特に,プロ野球開催時休日昼間の試合開始前)こと,ダイヤ乱れ時に4両と2両が混在することでの復旧が遅くなってしまうこと,2両編成×2で活用する場合東北本線や仙山線のように運転席やトイレ部がデッドスペースとなり,ラッシュ時などの輸送力が落ちることから,石巻口はともかくあおば通口に2両編成はちょっと使い勝手が悪いのではと。


 松島海岸までの20分間隔を崩して毎時5本(松島海岸まで3本,多賀城まで2本)で12分毎が仙台口を考えると適正ですが,その場合,松島海岸行が24分おきと12分おきが混在し,バランスが悪くなってしまうことから,松島海岸までの20分間隔を前提条件とすると,多賀城まで4両編成区間便を毎時1~2本運行することで,多賀城までは10分or20分間隔(毎時4~5本)という形が現実的な落としどころではと思いました。

まとめ

 JRとしてもコロナで厳しい状況の中,苦心しながらメリハリを付けた改正となったことが感じられますが,東北本線よりも駅数の多さから区間内の乗客数が多く,また都市計画上都市高速鉄道として位置づけられた仙石線が,あおば通口で昼間毎時3~4本というのは宝の持ち腐れでしかありません。

 いずれにせよ,新型車両E131系の導入待ちとはなりますが,何らかの形で仙石線多賀城以西の増発が図られることを信じたいと思います。最近の仙台支社は仙台駅以南のパターン化,アクセス線の増発,松島海岸までの増発パターン化など,想定以上のダイヤ改正となるケースが続いているので期待したいところ。




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コメント

仙台近郊区間について、20分間隔化とは思い切って削減したなと思う一方、間隔を埋める様に
10分間隔化できる体制にしたのは将来を見据えてなのかなとは思ってしまいますね。
15分間隔だと、間隔の隙間を埋める様に増発する際は7分30秒間隔と少し過剰かもなと思って
しまいますし。

現状としては、プロ野球他の臨時対応として増発する際には、この空スジを使い増便を
するかもなと思っています。
特に土休日についてはですが、特急や新幹線、イベント施設のある武蔵野線や京葉線のように
繁閑で運行本数に差をつけて対応することも視野に入ってそうです。

新型車両が入ることで、またダイヤは変えてくるでしょうねえ。
また宮城野原に音楽ホールが出来る話もあり、福田町駅が移転決定、矢本駅も駅舎
建て替えということでまた色々と界隈が騒がしくなってきそうです。

投稿: デリン | 2021年12月30日 (木) 17時14分

>デリンさん

コメント遅くなりました。

仙石線の多賀城以西について,約30年前の昼間は毎時5~6本(うち1本快速)という,基本約10分毎(うち快速の前は20分空き)という運行だったこと,その時点から乗客数は増えていることから,適正本数は10分毎なんでしょうね。確かに地下鉄と同じ7分半毎は理想ながらも多少過剰。
 
ただ,このご時世で基本20分間隔に減便しながら,今後区間列車の増発で10分間隔にする余裕がJR東にあるかは半信半疑です。
コメント頂いたのとおり,プロ野球開催時などに適切に臨時列車の増発を行ってもらえればという気持ちでもいます。

この沿線は,駅間が短い故に小鶴新田⇔福田町駅間以外はまんべんなく市街化し,点在する集客施設のアクセスが良好な沿線なので,この恵まれた環境を生かし,JRとしても継続的にテコ入れしてもらえればと思っています。

投稿: SENDAI Watcher! | 2022年1月12日 (水) 06時29分

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