阿武隈急行 10月全線復旧へ&新型車両仙台駅乗入れ
昨年10月の台風19号で大きな被害を受け,県境区間が未だ不通のまま,また車両基地がない宮城県側は朝晩の運行のみとなっている阿武隈急行。
当初は村井知事の必ずしも鉄道での復旧に拘らないという発言にビクビクしていましたが,上下分離を前提とした復旧費のほぼ国費負担の制度ができ,ひとまず今夏までに不通区間の回送運転により,宮城側の昼間の運行が再開との話がありました。
阿武隈急行 全線復旧なるか? (R1/11/28)
この話が出たら,車両基地への回送運転だけに留まるわけはないとは思っていましたが,台風被害で不通になって約1年の10月をめどに全線復旧を目指すという話が出て,ホッとしました。
福島市と宮城県柴田町を結ぶ第3セクターの阿武隈急行は、去年の台風19号の影響で不通となっている区間について、ことし10月をめどに運転再開を目指すことになりました。
福島県と宮城県や沿線の自治体などが出資する、第3セクターの阿武隈急行の取締役会は26日、福島県伊達市で開かれました。
阿武隈急行は、台風19号の影響で、現在、伊達市の富野駅と宮城県の丸森駅の間の15.4キロで不通となっています。
26日の取締役会では、復旧作業が続くこの区間について、ことし10月をめどに運転再開を目指すことが報告されました。
また26日は、ことし3月までの1年間の決算が発表されました。
それによりますと、本業の鉄道事業営業収益は5億8800万円で、前の年度に比べて9000万円、率にして13%減りました。
台風の被害や新型コロナウイルスにより、乗客数が、前の年度に比べ12%減って、216万人あまりになったことが影響しています。
そして台風19号などによる被害の損失が9億1500万円にのぼり、最終的な損益は10億4000万円の赤字となりました。
この赤字額は過去最大です。
26日はこのほか、千葉宇京社長の後任に、仙台空港鉄道の菅原久吉社長が就任する人事案も発表されました。(NHK 5/26)
コロナによる公共交通機関への影響
コロナの影響で,主要客の高校生や大学生の利用が皆無になっていました。福島側には福島学院大駅もあるし,福島大学への通学も。
宮城県側でも仙台市内の大学へ通う需要も消えてしまい,ようやく高校が再開する6月から乗客数も回復に向かうでしょうが,この数か月の乗客減のダメージは大きく,運営資金も厳しい中運行を続けなければなりません。
よって,夏に宮城側の昼間の運行が再開し,秋以降に全線復旧したとしても,運行本数が台風前を維持できるかというと厳しい状況です。
特に,県境の閑散区間でも毎時1本近くは確保してきたのが,昼間は2時間に1本程度になってもおかしくはない。宮城側である程度丸森折り返しを残すなど。
県境区間は観光需要と,角田・丸森両駅と福島駅(そして新幹線乗継東京方面)の需要に支えられてきたのに,観光も東京方面への流れも,秋までどの程度回復するかが鍵。
仮に多少減便になっても,需要から考えると十分だし,県境区間が再開するだけでも十分かなと思っています。
仙台直通に新型車両
宮城側での明るい話題といえば,5月18日から仙台駅直通列車の置き換え運行が開始され,阿武急の新型列車AB900系が仙台駅に毎日顔を出すことになりました。
JRのE721系の亜種であり,従来の2ドアと異なり普通列車が3ドアに統一できたことで,特に朝夕の混みあう時間の仙台乗り入れ列車に新型車両の効果はテキメン。従来の2ドア車両だと,うっかり押されて車両真ん中あたりまでは行ってしまうと,途中駅で降りるのが苦悶だったり,4両編成というのもあり,朝の下り,夜の上りは前後の電車と比べても体感的に混んでおり,避けられる存在でもありました。
何といってもステンレスベースでピカピカ。斬新なデザインです。順次置き換え中で,年1編成ペースでは,ようやく2編成(4両)が投入されたところなのに,その2両とも宮城側で運行というのは,福島側にとっては複雑な気分でしょうね。この車両が能力を発揮するのは仙台側のラッシュであるのは間違いないにせよ。
車内はJRやアクセス線とほぼ同じデザインながら,座席のモケットの色は特徴的。
車内広告は当然独特で,福島側の広告が多く新鮮です。
この写真は発車10分前の先頭車両なので,まだガラガラでしたが,発車間際には次々と乗り込んできて,立ち客もパラパラでる位でした。
緊急事態宣言明けの週でもあり,学生はともかく通勤客は大分戻ってきつつありました。
これは,長町駅で下車した時の発車直前の状況。長町駅でかなり下車した後でも,席は埋まり,立ち客もいます。線路が分断され車両のやりくりが大変な状況の中,阿武急には宮城側に貴重な新型車両を回してくれて感謝です。
阿武急の今後
阿武隈急行は,現在では珍しい2県に跨り運行する第三セクター鉄道で,車両基地や変電所を福島側に頼っている状況からは,いまさらそれぞれに分断するのは困難な路線です。国費を使って復旧したからにはあと長期的な運行を担保しなければならず,少なくとも20~30年は運行を確保することになりますが,このような珍しい状況だからこそ,片方の県の意向のみで決められないメリットがあったのかも。
福島県としては輸送密度が極端に低い只見線を力技で復旧させて,阿武急を復旧断念というのはありえないので,宮城県が仮に阿武急県境部の廃線を希望しても福島県と合意する訳がない。
コロナ後の観光需要がどの程度戻るかによるけれど,せっかく復旧させるこの区間。観光需要の掘り起こしなど両県協力しての活用を図らなければ。
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コメント
お疲れ様です。
中々揉めていた全線復旧話が纏まったことが驚きでした。
費用負担もさることながら、不通区間の復旧後の需要を考えると今のご時世だとかなり悩んだことは想像に難くありませんが。
新車による仙台直通運転時の写真を見ましたが、コロナ禍の客が少ないであろう時期であの混雑では、通常時は目も当てられないなと改めて感じました。
これで仙台口の混雑が少しは低減すると良いですね。
ただ、新車置き換えのスケジュールがコロナ禍を受けてかなり狂いが生じてきそうで、JR東の事情と相まって複雑な経過を辿りそうな印象がありますね。
今の三セクという仕組み自体、岐路に立っている気がします。
投稿: デリン | 2020年6月 9日 (火) 20時50分
>デリンさん
コメントありがとうございます。
費用負担はほぼ国費(ただし長期的な運航継続が条件)なので,短期的には痛みは小さいにせよ,
代替バスがなくても長期運休で困ったという声が聞こえてこないこの県境区間。
それでも復旧に向かったのは福島県と宮城県の2社三セクだったからでしょうね。
福島県としては只見線を救って阿武急をあきらめるのはあり得ない。
一応,他ローカル路線の県境区間と比べると輸送密度はそれほど低くないのが救い。ほぼ毎時1本確保してましたからね。
仙台口の新車は3ドア車への統一と混雑緩和の面で待望でしたが,
ご指摘の通り沿線自治体は昨年の東日本台風で大きな被害を受けており,コロナの影響もあるので,3編成目以降はどうなるのか。でも置き換えを続けないと運行継続ができないというジレンマ。
またその新車を2編成とも仙台口にのみ運行というのは,福島口の自治体(伊達市)から不満が出そうで,時期によっては元の車両に戻ることもあり得そうです。開業30年を過ぎて課題が山積していますね。
投稿: SENDAI Watcher! | 2020年6月 9日 (火) 23時19分