常磐線全線復旧 ひたちのダイヤ考察 その2
常磐線全線復旧 ひたちのダイヤ考察 その1(1/21)
の続きです。
その9年間を経ての変化とは,
1.はやぶさの誕生による,仙台経由の時間的優位性の拡大
2.常磐道の全通と高速バスの伸長
3.相双地域の人口減
1.はやぶさの誕生による,仙台経由の時間的優位性の拡大
東日本大震災の6日前に誕生したはやぶさ。従来のはやてよりも約10分程度時間短縮し,概ね91~95分程度で東京ー仙台を結んでおり,近年朝晩を中心に毎時2~3本に増え,今春の改正では一気に3往復が増発され,原ノ町目線では仙台とを結ぶ常磐線普通列車との乗り継ぎも改善される傾向にあります。
震災前は,南相馬市原町区,相馬市から東京方面へは,ほぼスーパーひたち一択でしたが,震災での長い不通時期はバスでの福島経由や仙台からの高速バスやJR代行バスメインを経て,約3年前に相馬ー浜吉田間が復旧して以降, 接続によっては3時間を切ることができる仙台経由が仕方なくメインルートになりました。運賃は片道約1.2万円超ながらも,約1万円の 東京フリー乗車券に特急券を追加すれば,往復2万程度で東京でのフリー乗車券もついてくるというJR側の配慮もありましたが,この3月末で利用終了となり,後継の割引切符が発売されなければ,純粋に値上げとなってしまいます。その分,えきねっとトクだ値割引での最大50%割引が設定されるようなので,うまく活用していかないと。割引がなければ,空気輸送確実なので。
そうはいっても,東京での有効時間を増やすには,原ノ町駅からでも仙台経由はやぶさは非常に有効で,復活しなかった朝5時40分頃のスーパーひたちよりも遅い5時51分発の常磐線で仙台に向かい,はやぶさに乗り換えると約3時間後の8時56分には東京駅に到着します。かつてのスーパーひたちであればせいぜい上野9時半頃であったはずで,乗り継ぎさえ良ければ断然早い。
帰りも,東京駅20時20発のやまびこから仙台駅22時40分発の原ノ町駅行に乗り換えると,仙台駅での乗り継ぎは20分待ちながら,日が変わる前に原ノ町駅に到着。その1時間前の東京駅19時20分発では原ノ町駅22時24分着と約3時間で到着。かつての原ノ町終着のスーパーひたちでは19時発で22時20分着だったので,やはり所要時間は短いのがメリット。
仙台から普通列車で80分かかる原ノ町駅でさえそうなのだから,仙台寄り(20分短い)の相馬駅からは言わずもがな。
また,常磐線はラッシュ時こそ仙台側で混雑するとはいえ,亘理駅以南はかなり輸送力に余裕があるので,仙台に向かうのがそれほどストレスにならないというのも。
2.常磐道の全通と高速バスの伸長
仙台ーいわきについては,これにつきるかと。磐越道・東北道経由から常磐道経由に移行した高速バスで約3時間。いわき側はクルマでバス停まで乗り付けられるパークアンドバスライドを使えば,アクセスが容易な住民も増えました。本数も毎日8往復(土日のみ1往復追加運行)で,始発を使えば,8時半過ぎには仙台駅に到着可能。
そもそも,復旧する常磐線の普通列車で,いわき駅始発の5時23分発で原ノ町駅乗換でも8時17分に仙台駅着と,震災前とほぼ変わらない時間帯で到着できるようになります。
かつてのスーパーひたち1号(いわき駅発7時半頃⇒仙台駅着9時半頃)が復活したとしても,2本目のバス(いわき駅6時55分⇒仙台駅9時49分)で代替できる時間帯で,現時点の乗客数は分かりませんが,混雑しすぎることはないはず。
終バスは仙台駅19時発ながらも,土休日は20時40分発も運行と,18時2分発のひたち30号や18時44分常磐線各駅停車よりも仙台を出る時間は遅くなります。そうすると,少なくともひたちに勝ち目はない。
ただし,バスのライバルは常磐線の各駅停車であって,いわきー原ノ町が5両編成のE531系の運行と,原ノ町以北の仙台側よりも1列車あたりの輸送力に余裕があるので,ゆったり行きたいという需要を電車が叶えることに。原ノ町駅での接続が良い列車(20分以内)は上り5本,下り8本と高速バスの本数とそれほど変わらない。
そうすると,高速バスも共倒れで減便という可能性もありますが,仮にそうなってもひたちの増発に結び付くようなものではないかと。
3.相双地域の人口減
中核となる南相馬市の現住人口は,震災前の7万人超から現在は実質5万3千人,相馬市は約3万7千人と横ばい(南相馬からの転入分がある)ですが,この2市で2万人近い人口減,さらに原発事故による避難区域となった双葉郡は元々6万人あった人口がどの程度残っているのか正確な数字は捉えづらい。
概ね確実に住民の需要は半分以下に,廃炉や復興関係者も頻繁に乗る訳ではないため,もともとの仙台まで4往復,原ノ町まで6往復を維持するのは難しい。そうすると,震災前6往復⇒復活する3往復というのは,ある程度妥当な本数なのかもしれません。
いわき乗換への誘導
そのなかで,今回再開する区間の普通列車を11往復確保したという意味は?純粋に需要からするとこんなにいらない。
狙いとしては,特急を削減した分,空く時間帯は普通列車でいわき駅まで出て,いわき始発の特急に乗り換えてもらうことを想定したのかなと。特急でも65~70分程度が普通列車で80分なので,それほど所要時間は変わらない
特に朝の原ノ町5時台,仙台7時台始発の特急2本分の代わりに,東京に昼前に到着できる時間帯にいわき行の普通列車を8時前発まで4本接続良く走らせています(30~60分間隔)。時間は4時間近くかかるけれど,選択肢を広げたということに。
普通 | 列車 | 特急 | ひたち | |
原ノ町駅発 | いわき駅着 | いわき駅発 | 東京駅着 | (所要時間) |
5:33 | 6:55 | 7:03 | 9:38 | (4:05) |
6:10 | 7:32 | 7:39 | 10:11 | (4:01) |
6:53 | 8:12 | 8:18 | 10:42 | (3:49) |
7:52 | 9:09 | 9:20 | 11:42 | (3:50) |
(参考) | ||||
11:07 | ⇒ | ⇒ | 14:42 | (3:35) |
なお,仙台10時13分発のひたち14号だと,所要時間は3時間半強なので,7時52分発の普通列車の場合と所要時間は15分しか変わらない。
いわき経由だと片道7720円で東京まで行け,仙台経由新幹線と比較して4~5千円の節約になります。
帰りも,
特急 |
ひたち |
普通 | 列車 | |
東京駅発 | いわき駅着 | いわき駅発 | 原ノ町駅着 |
(所要時間) |
16:53 | 19:15 | 19:25 | 20:42 | (3:49) |
17:53 | 20:15 | 20:19 | 21:38 | (3:45) |
(参考) | ||||
15:53 | ⇒ | ⇒ | 19:23 | (3:30) |
と,原ノ町までの直通特急と変わらないということも。もちろん,仙台経由の新幹線だと,東京駅滞在が20時20分発までOKなので,そこは使い分けということに。行きが常磐線,帰りが新幹線で,上野駅利用であれば,一筆書きの切符が使え,乗車券が節約できるというメリットも。
3往復設定 ひたちの狙い
水戸・日立と仙台相互の移動需要はそこそこ狙っています。朝一の時間帯はそれぞれ捨てて,新幹線と特急ひたちを上野経由で乗り換えることで対応できる一方,それぞれ12時以降到着という時間帯の特急ひたち直通列車を設定しています。
震災後に新幹線⇔特急ひたちを上野で乗り換えるパターンが社用では定着していただけに,JRとしても仙台ー水戸・日立 の直通を便利にしすぎると収入が減るというジレンマがあるのかなとも思慮します。それである程度バランスを取ったのかとも。純粋に時間だけを見れば,上野まで30分間隔運行の特急ひたちと毎時1~3本のはやぶさを乗り換えた方が本数は多いし,所要時間は短いという状況なので。
ただ,ビジネス目線で見ると,下りは仙台での午後一番の会議には使えるけど,上りだと水戸及び日立着が13時台でちょっと遅い。いわきは12時台着だけど。せっかくであれば,仙台7時台発の設定が理想ながら,1時間早めて9時台発だと使い勝手が良さそう。震災前のように,3~4時間おきに運行というパターンを無視して良いので,3往復を前提により使いやすい時間帯に移行した方が良いと思う。
仙台発の10時台はやぶさが今回も増発されて,約10分おきに3本運行されるのも,午後一番の会議に合わせるため。ひたちについてもせめて同様考え方ができないかなと。3往復がJR東日本として政府に対するノルマなのであれば,より使いやすい時間帯にして活用してほしい。
なお,水戸⇔仙台の料金として,概算ですが
特急ひたち直通 約7,500円
上野経由新幹線 約14,500円
小山経由新幹線 約9,000円
と,いずれも3~3.5時間前後で変わらないのに,価格差が大きいのは利用者にとって分かりづらい面がありますが,現在の状況からやむを得ない面もあるのでしょう。
その他雑感
仙台発上りは午後4時台と6時台の2本を設定してきました。原ノ町や双葉郡から東京への帰りを含め,直通で使いやすいようにとの考えでしょう。昼間よりも夕方の方が乗客が見込みやすいとの考えか。
途中駅の停車駅は岩沼駅と亘理駅の停車が1往復辛うじて残りました。以前は水戸・東京方面への輸送需要が辛うじてありましたが,全体が3往復に減った現在,相馬・原ノ町駅への所要時間を無駄に延ばしてしまう停車を無理に残す必要はなかったように思えます。
またもしかしたらと思っていた空港需要を拾う名取駅停車ですが,岩沼・亘理駅の停車数が減った状況であれば,1往復設定しても誰得になりかねず,常磐線方面との輸送は従来通り普通列車に委ねることになりました。やるんだったら全列車停車かと思っていましたが,結果はまぁ妥当でしょうね。
臨時列車の設定可能性
twitter上では,2編成の増備で最大で,仙台まで5往復の運行が可能なスジは設定できるとの予想を見ました。通常時は難しくとも,盆暮れ・GWなどの繁忙期には2往復程度の臨時列車は設定できるようです。
まずは,せっかく復活するひたちに乗って東京に行く機会を計画しないと。ベガルタの関東アウェイ戦も春先に集中開催なので,上京する機会を模索します。
| 固定リンク
「東北」カテゴリの記事
- 九州旅行編(その2) 元気な九州の魅力(2024.08.25)
- 札仙広福の人口密度比較 その3 北の200万都市!札幌編(2023.06.07)
- 久々の新潟 その(7)新潟の強みとクルマ社会の功罪(2022.12.25)
- 陸羽東線と快速ゆけむり号(2022.08.15)
- JR東日本 ローカル線の行方(2022.08.13)
「交通」カテゴリの記事
- 身の丈再開発『みなてらす河原町』(2024.09.18)
- 九州旅行編(その2) 元気な九州の魅力(2024.08.25)
- 九州旅行編(その3) 街中の驚異的な賑わい 政令市熊本(2024.09.16)
- 九州旅行編(その1) 久々の仙台空港&アクセス鉄道(2024.08.19)
- 続 新潟編 厳しい古町の現状(2024.08.03)
「震災」カテゴリの記事
- 九州旅行編(その3) 街中の驚異的な賑わい 政令市熊本(2024.09.16)
- 続々と再開発のニュースが(その1)オリックス再開発始動か?(2023.12.12)
- 札仙広福の人口密度比較 その2 サミット開催中!広島編(2023.05.20)
- JR東日本 ローカル線の行方(2022.08.13)
- アクアイグニス仙台 4/21オープンを前に(2022.04.20)
コメント