宮城県美術館 宮城野原移転の続報
あっ!とびっくりさせられた週末の河北のスクープでしたが,
宮城県美術館 宮城野原に移転? (11/16)
月曜日に開催された県の懇談会にて,美術館の”移転”及び県民会館との”複合施設化”が既成事実になっていました。
新たな県民会館と美術館集約 宮城県が施設配置3案提示
宮城県は18日、老朽化する仙台市青葉区の東京エレクトロンホール宮城(県民会館)と県美術館を、いずれも宮城野区の仙台医療センター跡地に移転、新築する方針案を正式に発表した。両施設と屋外広場、駐車場、民間が活用するエリアを組み合わせた施設配置の3案を併せて公表した。
県庁であった県有施設の再編に関する有識者懇話会で示した。配置案は図の通り。(1)県有施設のみで構成(2)西側に民間エリアを設定(3)東側に同エリアを設定-の三つで、一定の天井高を見込む新県民会館の位置は日照の観点から敷地南側か南東側とした。
県は、県民会館、美術館とも芸術を扱う観点から親和性が高く、2000人規模のホールと美術館の集約は地域の文化振興につながると強調。委員からは相乗効果を期待する声が多く、集約に異論は出なかった。
候補地周辺の人や交通の流れが変化することが想定されるため、駐車場の適正利用や公共交通機関との連携の在り方を検討すべきだとの指摘があった。今後の街づくりに向け、都市計画を所管する仙台市との協議を求める声も出た。
座長を務めた東北大大学院工学研究科の堀切川一男教授(摩擦工学)は「夢のあるプランだ。将来の宮城の街づくりに寄与するよう議論を進める」と述べた(11/19河北)。
疑問点として,
①この有識者会懇話会の位置付け
②座長の専門は芸術とは程遠い分野
③配置図まで出るとは手回しが良すぎ
を感じました。
①については,この懇話会はあくまでも県の公共施設の統廃合や再整備の方向性を検討する場であって,美術館や県民会館のふさわしい立地や内容について検討する場ではないことから,単に県が使える未利用地に当てはめれば良いものではないという点です。
そもそも,例の県政史上最大の負の遺産である利府のグランディ21も,県の住宅公社が保有する未利用地ありきで決定されたと言われています。ある面では良くても,観客輸送などを軽視して整備された施設の現時点での評価は周知の事実。
直前までは,著名な建築家前川國男の代表作であるこの歴史的建築物を活かすため,大規模改修を前提に検討が進められてきたところ,突然の方向転換の理由として「大規模改修期間の美術品収蔵の問題,長期間の閉館を強いられること」が挙げられていますが,それだけの理由でこの建築物及び空間を放棄して良いのか?と感じました。
この宮城野原への移転及び県民会館との複合化が決定事項なのであれば,少なくとも,これまでの詳細な検討の結果,移転が必要になった経緯を事細かに説明すること,加えて美術館の建物を再利用する方向性でないと,自分は納得はできない。例えば,長年整備が検討されながら実現されていない東北大の総合博物館への転用など,東北大は川内萩ホールもうまくリノベーションして現在でも最前線のホールとして活用しているので,この建物に新たな息を吹き込んでもらうには,東北大の力が必要ではと思います。
②については,座長は有名な東北大の摩擦工学の教授で,地元企業との産学連携分野での輝かしい成果を上げている方です。ただし,今回の懇話会の検討にあたって,氏の専門分野がどうやって活かされているのでしょうか?
美術館の方向性については,芸術分野の専門家を集めた懇話会や検討会で議論していくべきもので,単なる配置や効率性の視点からの検討会で決定して良いのでしょうか。「夢のあるプランだ」とコメントしていますが,ハコは立派でも中身がどうなるか分からないのに,無責任なコメントに思えます。
③については,配置図まで準備されていたというのは,用意周到ですね。もしかしたら,日曜日の河北のスクープは県が意図的に流した情報かもしれません。配置図云々という段階ではなくそもそものところで議論の余地がありすぎるのに,これで決まってしまうのでは,何か悲しいです。
前向きに考えると。。。
ショックが大きいところですが,観光面からすると先日の記事に紹介した青森県美術館や金沢21世紀美術館の他にも,水戸芸術館など地方にありながらも,集客力がある美術館として評価されるようになれば,楽天の試合だけでなく,沿岸部の松島や仙台港の水族館,アウトレットなどとの周遊がしやすいような立地条件は評価できる面もあります。
今後整備が予定されている仙台東道路の沿道でもありますし,おそらく防災拠点隣接地ということからインターも整備されることと思います。そうなると,仙台東部道路(常磐道・三陸道)から,直接高速道路で目の前まで行ける立地になると言えます。
目の前にJR宮城野原駅
仙台駅から2駅4分,片道150円で目の前まで行けるという立地条件は,交通条件だけをみると優れている面もあります。とはいえ,連続立体交差事業で最低限の駅設備で20年近く前に移転開業したこの地下駅。拡張の余地が全くないという欠点があり,楽天の試合と県民会館の公演が重なってしまうと大変なことになりそう。
とはいえ,美術館の利用者は近年20万人前後であり,1日平均だと500人程度。特別展の開催時はその数倍なるでしょうが,鉄道輸送にとっては誤差の範囲内で,十分対応可能でしょう。野球も年間で65試合程度の開催なので,通常日は特に問題なく対応できそうではあります。
検討されている民間施設として,飲食店などが入るでしょうし,帰りもある程度分散することが予想されますが,楽天の球場よりも多少仙台駅からは遠いことと,客層が中高年が多そうなこと,目の前が駅になるので,鉄道利用率は野球よりは当然高くなるでしょう。
なので理想としては,現在昼間15分おきの運行を12分おき程度にして欲しいところ。また夜間帯のナイター終了後と県民会館の公演がバッティングする可能性がある21時台の運行本数を多少増やしてもらえれば(楽天の試合後も増便しないので期待薄ですが)。
楽天生命パークへの仙石線アクセスについて (8/13)
とにかく,正式決定とは思いたくなので,もう少し丁寧な説明が必要だと思います。この問題については,状況を追っていきます。
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コメント
ウェブ版 美術手帖の記事、ぜひご覧ください。
「宮城県美術館、移転・新築の方針固まる。前川國男建築はどうなる?」
https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/20915?fbclid=IwAR0ONEuSoc3MzHS9jU6egEntPwYPaudgdKIbPyoSzsYwZYZh5D1E_blyJNA
投稿: | 2019年11月20日 (水) 20時18分
なんというか県は矢継ぎ早に物事を決めている印象がありますね。
こういう有識者懇話会をやる前に方向性を決めていて、それを既成事実化するために会を開いたのかなと思ってしまいます。
美術館もすべての展示品を宮城野原に移転できるのか、旧美術館の建物をどう活用するのかという点をちゃんと詰めないとダメでしょうねえ。
後者については、お書きの通り東北大がカギになると思いますが…。
そして、再三話している通り仙石線の立ち位置をどうしていくのか、JRや自治体双方が考える必要があるでしょうねえ。
駅のキャパシティや列車本数が、現状のままで耐えられるとはとても思えませんし。
投稿: デリン | 2019年11月21日 (木) 20時29分
リンク先,教えて頂きありがとうございます。
しっかり読ませて頂きました。全く意見は同意です。
なお,今回の展開については違和感しかなく,聞こえてくる声は反対意見のみとはいえ,
地元マスコミが方向性を淡々と報道するのみで,沈黙しているのはちょっと気になるところです。
芸術に興味のある人口が少ないとはいえ,何か遠慮がちに思えるのは気のせいでしょうか。
投稿: SENDAI Watcher! | 2019年11月24日 (日) 10時16分
>デリンさん
意見については,全く同意です。
なお,朝日新聞の記事では,「跡地利用は未定」とあったので,
取り壊し前提なのかと思い,落胆しました。
まぁこの短い期間で東北大の了承を得られる訳はないし,長年様子見だった総合博物館構想の実現に向けても,そもそもの候補地は仙商跡地(現国際センター駅北側広場)で現在は市の所有地のはずで,東北大と市の間の課題に県が割り込んで解決策を提示するはずはないのですが。。。
仙石線は,地下化からの20年弱で,宮城野原へのイーグルスの進出,仙台港の開発(水族館,アウトレット),小鶴新田駅新設及び開発ラッシュなど,沿線環境が激変し,特に震災後の利用者増も顕著で,県及び仙台市にとっても重要性が増しています。
そもそも,仙石線の苦竹以西は都市計画決定による南北線や東西線と同列の都市高速鉄道扱いで大部分の公費負担で連立事業が行われた背景があり,施設は立派になっても運行は事業費5%負担のみの事業者(JR東日本)の意向次第で,昼間の減便や混雑時の本数増を渋るような合理化が行われているというのは,納得がいかない部分もありますね。
老朽化し故障運休が頻発している首都圏の中古205系車両の置き換えで,幅広車両の導入で混雑率を下げることができても,車両数は限界まで絞って投入するでしょうから,それをどの程度で折り合いをつけるかなど課題は多いですね。
投稿: SENDAI Watcher! | 2019年11月24日 (日) 10時34分