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2019年9月10日 (火)

混雑激化 東北線の課題 (その5)仙台駅の改善を

このシリーズも間が空きましたが,これが最後です。


前回記事


  仙台近郊の場合,構造的にJR仙台駅に乗降客が集中してしまうという課題があります。

 その理由として,


  • 〇JR仙台駅の前後に駅がないこと(駅間が短い仙石線を除く) から,最終目的地が仙台駅であること
  • 〇仙台駅をスルーする運転が少ないこと

ということもありますが,仙台駅の構造にも大きな問題があります。

それに,ちょっとした改良で便利になるのに,なぜか(あえて)しないということもあります。

20年前の仙石線地下化での改善点と課題

 仙台駅は,20年前までは地上1階の在来線ホーム,離れた東口にあった仙石線ホーム,地上4階にある新幹線ホームに分かれていましたが,仙石線の地下化とあおば通駅開業により,特に地下鉄南北線との乗換は劇的に便利になりました。

ただし,仙石線仙台駅と他の在来線との乗換については改善されたにしても,劇的にとは言い難い状況です。

①限られた動線に集中

 仙台駅のメイン改札口は当然ながら,イベント広場に面する西口改札で,そこからつながるコンコースから在来線の東北線の発着する1番ホームから,仙石線が発着する地下10番ホームまで行けるようになっています。

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 それはある意味分かりやすいとも言えますが,とにかく,このコンコースに利用客を集中させる構造です。

他の拠点駅では,このコンコースが南北に2本あり分散させているところもあるのに対し,まともに使えるのが1本のみでは混むのは当たり前。

 なお,地下南口から地下コンコースもあり,これをうまく活用すると2本目のコンコースとして大分動線は分散されるはずです。ただし,この地下コンコースは仙石線以外の在来線1~8番にはつながっていますが,階段のみで旧態依然とした通路のままとなっています。

 写真左側の壁面の陰には,一時期日の目を見ながら,1年ちょっとで閉鎖された南側階段がありました。

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 仙台駅東口開発に伴う再整備時に,南側階段が一時復活した際北側階段を閉鎖したので,この期間にエスカレータ位は整備すると思ったら結局多少のお色直しをしただけで,階段ONLYのまま再開通となってしまいました。何のために一時期閉鎖してたんだろう。壁は多少白くなったような気がするだけで,階段部分の汚さは何も変わらず。コンコース床面は,何とアスファルト舗装。

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 それに,この地下コンコース。2015年の地下鉄東西線開通による地下鉄仙台駅 東改札口の新設で,地下鉄とJRの乗り継ぎ最短ルートとしての重要性が急激に高まりましたが,一時復活した南側階段をまた封印し,地下コンコースとを結ぶ階段が北側階段のみとなってしまったのが,非常にもったいない。

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 確かに,北側階段に比べると南側階段は幅は狭く,この階段が残ると安全上厳しかったのかもしれませんが,5・6番線はホーム上を含めまだ幅に余裕があり,一律に封印する判断というのは愚策でした。

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 これは閉鎖後の南側階段。

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②最短距離で行けない

 この地下コンコースについての一番の問題は,同じ地下の仙石線地下コンコースに直接行けないこと。

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仮にこの地下南口改札から地下コンコースに入ってしまったら,

 地下1Fコンコース↗地上1Fホーム↗地上2Fコンコース↘地下1F仙石線コンコース↘地下2F仙石線ホーム

という,5階分もの苦行ともいえるアップダウンを強いられます。

 もちろん,地下南口改札に入らずに,エスパル地下街↘東西自由通路経由で地下東口改札から入ればあまりアップダウンは無いけれど,その動線が積極的に案内されている訳ではないし,改札内の最短動線を整備しないというのはどうなのでしょう。

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 それより望まれるのは,在来線(東北線・常磐線・仙山線)の地上1~8番線から仙石線への乗換の際に,この地下コンコース経由で行けると,かなり楽である点。

 上記図の赤太線ルートが整備されれば,西口や東口改札に向かう利用客や在来線相互での乗換客との動線分散が図られる他,やはり地下に向かうのに上り下りをを強いられるという不自然な流れは利用者にとって不便です。

 2000年の仙石線地下化の際に整備されなかったのは,東口開発が不透明だったからという状況から理解できますが,その計画が具体化し一連のエスパル東館,メトロポリタンイースト,オフィス棟の整備計画にも,この地下コンコースと仙石線コンコースの接続が盛り込まれなかったというのは,利用者のことを考えていないと。

③左右対称ではない

 先日行った札幌駅は30年近く前に駅前後の高架化が終了していますが,この札幌駅に限らず高架化・橋上駅化された拠点都市の中心駅は,駅の両側からの利用がしやすいように,均等に両側の改札を設けている駅が多いです。

 札幌駅は,各ホームを結ぶ改札内コンコースが2本あり,改札も東西に分かれているので,非常に乗降客が多いのに,スムーズに流れていました。高架化に伴いJR駅が北側に移動した関係上,南側の駅前広場付近にある地下鉄への乗り継ぎはJRタワーを挟んで多少歩きますが,JR駅の改札を出るまでは本当にスムーズ。

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 仙台と同じJR東日本では,首都圏の北の玄関の大宮駅は,中心を通る東西自由通路を挟んで,南北に中央改札がそれぞれあり,その先に各ホームへの改札内コンコースがあるので,こちらも,乗降客数が多いながらも動線を分散されています。

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 大宮駅は首都圏の主要駅で利用客数が桁1つ違うので,同規模の都市であれば,JR西日本管轄で現在駅の大改造中の広島駅では,もともとの改札内コンコースを南北自由通路に転用し,仙台並みの15m幅自由通路沿いにメイン改札を移動するという計画が現在進行形で進んでいますが,従来から「在来線が南側」,「新幹線が北側」という配置のため,南北両側からの出入りがしやすい構造です。

 この図面には表現されてませんが,地下コンコースも南北の地下改札に繋がっているなど,駅利用にあたって両側から使いやすいようになっています。

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 一方,仙台駅では,長年駅裏と呼ばれた東口にはメインの改札はありませんでした。

 西口にしか主要改札がなく,さらに新幹線も西口に駅舎と一体で整備され(郡山も同様),新幹線駅が裏口に整備された広島や福島のように裏口改札の整備がなされなかったため,整備完了まで北新幹線開業から30年以上もかかってしまいました。

 一応,2000年以前には地下化前の仙石線東口改札が現Biviの北側のあたりにあったり,地下化後は東西地下自由通路沿いに地下東口改札が設置されているとはいえ,東口方面に行くにはやや遠回りを強いられてきました。

 ようやく2015年度末に,東西自由通路やエスパル東館に繋がる”まともな”東口改札ができましたが,とはいえ東口改札というよりは広島駅であれば中央口というような位置。それも,東西自由通路からかなり奥まった地味な改札。

 まぁ,新しさ満点なので,地下コンコースのボロボロ感に比べれば,文句を言うのが贅沢ですが。

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 本来であれば,メインの西口改札に対し,ホテルメトロポリタンイーストの位置に東口改札を設置するのが自然ながらも,自社の商業施設に誘導する観点からこのような位置にあります。

懐かしの仙石線西口地下改札

 また,仙台駅の北東側のアーケード方面に行くにあたり,惜しまれるのは,2000年に廃止された地下化前の仙石線西口地下改札。

 改札があった場所は,現在エスパルキッチンとして改装され売り場として活用されていますが,東口にあった地上駅時代の仙石線ホームと在来線ホームを,各ホームの北端に繋がっていた地下通路経由(下図黒太線)で結んでおり,東口にあった仙石線ホームから西口に出たり,地下鉄南北線への乗換の主要動線として存在感を発揮していました。

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 よって,名掛丁方面に向かう時には,在来線ホームからこの改札経由で行くことも出来て,ある程度分散が図られていました。現在は通路ごと埋められてしまっているようなので,復活は当然無理ですが,上述の地下南口改札からの地下コンコースと地上ホームを結ぶ南側階段を復活させなかったり,国鉄時代から残されていたこれまでの遺産もうまく活用できていないのが,本当にもったいなく感じます。

 前回の仙台駅大改造にて対応できなかった部分について,JR東日本独自で駅改良予算化は期待できそうにありません。


 西口イベントスペースの床の模様替えとか,見てくれの意匠の部分のリニューアルは予算がそれほどかからないからか,オリンピックに向けての工事があっという間に終わりましたが,何かアピールする機会がないと,予算要求ができないのではと思ってしまう。

 過去に進められたアクセス線3・4番ホームを中心としたホーム床のタイル化なども中途半端に終わり逆にみすぼらしかったり。


改善された新幹線改札

 一方,ドル箱の東北新幹線は,以下過去記事のとおり,新幹線中央改札に比べみすぼらしかった南口改札が,在来線乗換ルートの新設や売店の拡大などで一気に使い勝手が良くなりました。エスパル東館に新設されたレストラン街や東西自由通路方面からの最寄改札になるため,力を入れてリニューアルしたことが分かります。

 


過去記事


課題が多い現実

 一方,在来線は,また最初の話に戻るようですが,いくら利用客が増えても運賃の安さから黒字ではなく,JRとしても積極的に投資はされません。東西自由通路部分のような改札外であれば仙台市としても理由をつけられれば税金の投入が可能ですが,駅改札内はあくまでもJRの駅スペースなので,JR自身が必要と判断しなければ整備されないという,もどかしい現実があります。

 現在踊り場に差し掛かりつつあるとはいえ,増加基調の仙台近郊のJRの混雑解消のためには,ダイヤ,車両,駅設備と多くの課題が残っています。こういう現実について,改めて考えてもらうきっかけになればと思い,このシリーズを終わりにします。

 

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コメント

仙台駅については、やはり地下通路がまともに使えない形になっているのが痛い限りですね。
他の主要駅と違って、地上改札に人が集中する形になっているのが混雑を助長してます。
仙石線が地下を走る上に、ホーム幅、階段幅が首都圏の半分くらいですから、やはり不親切な導線になってるなと。

あと、比較例に出されている大宮駅ですが、ここも他の主要駅同様に改良工事が計画されていて、現在の中央コンコースの北側に東西自由通路と改札を作り、東武やニューシャトルと楽に乗り換えられる導線を作る計画(大宮駅グランドセントラルステーション化構想)がさいたま市から持ち上がってます。
それができると更に混雑が分散するのかなと思ってますが、やはり自治体の協力+JR側にとって何かしらの名目がないと仙台駅の現状は動かないでしょうねえ。

ちょっと記事からずれますが、仙台駅の駅舎内改札外も他の主要駅と比べて土産物店の乱立のおかげで通路がかなり狭いなと帰省した際に感じました。
特にステンドグラス前からマルイの方までスーツケースを持つ者同士がすれ違うのもやっとといったところで、この辺は土産物店の選択と集中をした方がいいのではと。

やはり仙台地区のJRの改善は一筋縄ではいきませんね。ある意味時世に翻弄された感があります。

投稿: デリン | 2019年9月13日 (金) 00時24分

>デリンさん

コメントありがとうございます。
いかんせん,首都圏と新幹線が稼ぎ頭のJR東日本にとって,地方の在来線は仙台クラスでも”お荷物”なんでしょうね。
仙台駅は管内利用者数でギリギリ50位に入る程度ですので,優先順位は低くなる。
その点,同規模都市の広島駅利用者数はJR西日本で10位に入るということで,遅ればせながらも満を持して投資の順番が回ってきた印象。

 新幹線の仙台駅は自主的にリニューアルで使い勝手が良くなりましたが,
在来線の改善は最小限に留まるところが,本当に残念です。
 さいたま市が協力する大宮駅のは,複数の鉄道会社相互の乗換改善という大義がありますが,仙台市は東西自由通路改良に大きな負担をし,地下鉄とJRの乗継ぎのために地下鉄東改札口新設したりと,出せる名目でのかなりの投資をしましたので,これ以上JR仙台駅内部の機能改善に予算を投じる大義はないですね。今更高架化でのガラポン再開発はありえませんし。

 それに,ご指摘のとおり,駅スペースの商業活用に熱心なのは良いけど,通路の狭さでストレスがたまるのも同感です。仙台駅も築40年で,利便性の向上に向けて投資をして欲しいところです。


投稿: SENDAI Watcher! | 2019年9月19日 (木) 20時54分

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