アクセス鉄道の車両増備実現か?
7月で,民営化から間もなく丸3年を迎える仙台国際空港。
最近,立て続けに新規路線の情報が入ってきていますが,現時点でもインバウンドの増加により,アクセスのメイン手段であるアクセス鉄道の混雑が目立ってきたようで,河北の4/1に,車両の増備を模索しているとの内容の記事が。
一瞬エープリルフールかとも思いましたが,乗客の増加により,対策が必要な状況が近づいているようです。
<仙台空港アクセス線>混雑激化 訪日客増で拍車 JRなど4両編成増検討
仙台空港アクセス線は東日本大震災後に乗客が増え続け、時間帯によって乗車できないほどの混雑になっている。沿線の宅地開発の進展に加え、仙台空港を利用する訪日外国人旅行者(インバウンド)の急増が拍車をかけた。共同運行する仙台空港鉄道(宮城県名取市)とJR東日本は輸送力の強化を模索するが、アクセス線特有の障壁もあり、混雑緩和は容易ではない。
<乗車諦める客も>
3月25日朝、大きな荷物を抱えた観光客らが続々と仙台空港駅(名取市)の列車に乗り込んだ。2両編成の列車はぎゅうぎゅう詰めになり出発。途中の南仙台駅(仙台市太白区)では高齢女性が混雑に驚き、乗車を諦めた。
仙台空港鉄道が運営する仙台空港、美田園、杜せきのした3駅の2017年度の1日当たりの乗降客は初めて1万人を超え、6年連続で過去最多を更新した。10年度に比べて約60%も増えた。
震災後、被災地からの移転や復興需要も相まって沿線の宅地開発が進み、通勤通学客が増えた。仙台空港も16年7月の民営化以降、旅客数を拡大し、17年度は過去最高の約344万人を記録した。運営会社の仙台国際空港は、18年度は358万人程度を見込む。
仙台空港鉄道によると、インバウンドのうち、バスで周遊する団体客以上に個人客が増えていることもアクセス線の利用率を高めたという。
アクセス線開通で乗客が減り、廃止されていた空港と仙台駅を結ぶリムジンバスも10年ぶりに復活し、3月16日に運行が始まった。4月には杜せきのした駅に隣接するイオンモール名取(名取市)の増床も予定され、さらに乗客増加が見込まれる。
<特有のハードル>
一方、3月のダイヤ改正では2両編成と4両編成を一部入れ替えただけで全体の輸送量は変わらなかった。
JR東仙台支社は単線区間の仙台空港-名取間の制約や、仙台駅ホームの列車の混雑状況といった現状を踏まえ、増便ではなく4両編成を増やす「増結」を優先的に検討する。
増結には車両の新造か、支社管内の車両運用を見直してアクセス線に使う車両をもっと確保するかの2通りがある。新造は2両だけで億単位の費用がかかり、完成に数年を費やす。投資判断は慎重にならざるを得ない。
現実的なのは車両運用の見直しだが、アクセス線特有のハードルがある。最大6両をワンマン運行するアクセス線の車両には、ホームに設置したカメラから映像を受信し、運転士がドアの開閉や発車を判断するためのモニターが備わっている。他線の車両を走行させるにはモニターを加える改造工事が必要になる。
仙台支社の担当者は「改造は1年以上かかるが、費用は新造より1桁低い。まずはアクセス線に使える車両を捻出できるか前向きに考える」と説明する。
仙台空港鉄道の菅原久吉社長は「輸送力強化は早く実現したいが、財務状況が厳しい。費用の分担なども含めてJRや宮城県などと協議を進める」と話す。
[仙台空港アクセス線]2007年開業。仙台空港-仙台間(17.5キロ)を快速17分、普通25分で結ぶ。車両は仙台空港鉄道が3編成とJR東日本が4編成を保有し、現在は1日上下計86本を運行する(4/1河北)。
特に,昼間は本数を増やすために,2両編成での運行が多いところですが,その2両編成の電車での混雑については,これまでも度々このブログでも言及してきました。主に混雑 するのは,昼間の仙台空港発仙台行の名取~仙台のJR線区間。
仙台空港駅発時点でほぼ席が埋まり,ぱらぱらと立ち客がある状態で発車し,美田園で多少,杜せきのしたでそれなりに乗ってきて多少圧迫感を感じるようになり,名取駅到着。そこで多少の降車客の後,どっと乗ってきて,南仙台,太子堂,長町で各入口数人ずつ乗ってきて,長町ではたまに乗るのをあきらめる人がいる状態というのがこれまでのイメージ。
ただし,逆方向の仙台駅発空港行は,混雑を嫌う長町~名取駅間の客が,多少待っても座れる次の東北本線や常磐線の電車を選ぶ場合もあるから,それほど醜い混雑にはならない傾向にあります。
いずれにせよ,名取を過ぎて空港線に入るとほぼ立ち客がいなくなる状況からすると,仙台空港鉄道会社からすると2両編成で十分で,ランダムな発車時間をある程度揃え(20分毎,3本/時),JR線区間のみの乗客を分離すればなんとかやっていける現状ではあります。この記事中にある,3月25日(月)朝の状況というのは具体的に何時台かは分かりませんが,ピンポイントで混むところを河北が狙った可能性もあるので何とも言えない。
ただし,空港駅発時点でギュウギュウ詰めがあるというのはまずいですね。
アクセス線の混雑具合は電車によってまちまちなのは,
- アクセス線の空港駅発の間隔が10~40分程度とランダム
- 飛行機の到着便の集中具合(特に9時台に集中)
- JRの名取駅発仙台行も,30分程度空く時間帯があること
から,間隔が空いたところで多くの到着便があったりすると,本当にヤバイです。
ダイヤ改正前は,仙台空港発9時13分発(2両編成)に,8時40分から9時までの20分間に到着する神戸,新千歳,小松,伊丹からの初便が集中していたところ,これは9時16分発(4両編成)になり,改善されましたが,アクセス線のダイヤ調整は,まずJRの本線や常磐線の電車の合間というのが基本なので,クールごとに変わる飛行機の時間に合わせて改正する訳にもいかないのが厳しいところ。
解決策は?
- 車両の増備
- 電車本数の増(増発)
- 区間快速の設定
があげられます。
1の車両の増備が検討されていると,この記事にはありました。
相互乗り入れしている空港線とJR線の距離の割合から,空港鉄道が3編成6両,JRが4編成8両。計7編成14両で回しているところで,昼間のように2両編成中心であれば双方向毎時3本でもやりくりできます。この時間は,JRの本線や常磐線の本数が毎時3本しかないので,空港線と合わせて仙台―名取間の本数を確保しています。
しかし,混雑する朝夕は4両編成になり,基本は双方向毎時2本になってしまいます。4両編成ながら15~20分間隔になるところは,その後や逆方向の運転間隔が空いてしまったりします。 終日4両にしたいところですが,そうすると毎時3本は維持できず,朝夕と同じように毎時2本になってしまっては,かえって不便になります。
相互乗り入れの原則から,公平に1編成(2両)ずつ増やしたいところで,そうすると9編成18両となり,4両編成×4本に予備2両でちょうどよくなりますが,2両ごとに運転席を両端に設ける仕様から,1両2両で,ほぼ同型を導入した同じく宮城県の第三セクターの阿武急では4.5億で国の車両更新補助と宮城・福島県及び沿線5市町補助でなんとか最初の更新車両を購入しています。
空港鉄道も同様に対象にできるかというと,鉄道の性格が異なることや車両更新ではなく増備だと補助対象にはならず,また震災で甚大な被害を受け,復旧費用を含めたこれまでの累積赤字もありました。そのような状況から,鉄道施設については県が購入し,上下分離を導入した経緯もありますので,県としてもこれ以上空港鉄道への支出を増やすことは難しい状況です。
それで,公平性の原則を破って,空港鉄道がJRに車両使用料を払えば,JR側のみの車両増備も可能でありますが,それで空港鉄道としての運賃収入が上がるのであれば,その選択枝もありです。
JRとしては,特に昼間は露骨に減便しているので,大梶の車両基地に多くの車両が昼寝しているから,昼間限定で回すことは可能なはず。としては,そもそも,美田園での夏祭り花火大会で6両運転をしてたし,19日からのイオンモール名取の増床時の増結も実施するなど,現在でもJRの通常車両を使用しての多客期対応はしていますが,その場合ワンマン運転ができないとのことなので,恒常的に使用するには改造が必要とのことです。
それでも,空港線の旅客増で,JR線部分の根本利益が生じていることや,そもそもJR区間の仙台―名取間の混雑が原因であることから,JR側の協力で対応すべきでしょうね。上述の通り,昼間の車両は余っている訳で。それが数千万円かかるにしても,車両増備よりは短期間で対応できるし。
ただ,今後民営化が成功すれば,旅客数400万人を優に超えることになり,小手先の対応では難しくなります。
そのため,2.電車本数の増(増発)を図る必要が出てきます。
そもそも,空港アクセス鉄道として最低限の利便性を確保するためには,この規模の空港であれば,最低20分おきの運行で,常に駅に車両が在線していて,座って待つことができることが望ましいところ。旅客数は全然違いますが,新千歳は6両編成で15分おき。空港駅では常に車両在線しているとのことで,そこまでいかなくとも,増発は必要です。
本数を増やすのが難しい理由として,JR区間の本数が多いこと,空港線内が単線であることが言われていますが,朝のラッシュ時は4分おきに走らせていることから,毎時1本程度増やすことは容易。また,空港線内の行き違いも,既に準備がされている杜せきのした駅での列車交換を可能にすれば,難しいことではないので,5年後を見据えて検討に入る時期になってきたと思います。
なお,以前の記事でも提案したのが,3.区間快速の設定。これであれば,現在の2両編成でも対応できます。
○本線部分を快速化・・・以前の記事で、可能性について書いてましたが、仮に昼間の2両編成を維持するのであれば、空港などアクセス線沿線利用者が窮屈な思いをしないように、アクセス線部分は全駅停車、本線は名取⇔仙台 ノンストップ として、昼間は全線所要時間20分(アクセス線10分、本線10分)での運行とすれば、車両運用の効率が良くなり、積み重なって増発の余地は生まれます(その代わり2往復しかない現在の快速は廃止)。これをやるには、名取駅で本線や常磐線の各駅停車と5分以内で接続することが前提条件ですが、昼間は本線毎時2本、常磐線毎時1本なので、空港線を毎時3本とバランスがとれることも。
ただ,昼間にこれを完全に実施するとなると,地下鉄南北線からの乗換が楽な長町駅経由ルートが機能しなくなること,南仙台を含めた途中通過駅の利便性が極端に低下するため,前後5分以内に本線や常磐線の電車がある時間帯限定で一部列車の区間快速化はありかと。
沿線開発の進展
4月19日には杜せきのした駅直結のイオンモール名取の増床オープンで,買い物客だけでなく従業員の利用増が見込める他,沿線の住宅地もほぼ売れており,今後急激な伸びは難しいところ。その中でも,美田園駅周辺では分譲マンションが建設中であり,また仮設住宅も退去し,仮設商店街のさいかい市場も今年退去であることから,駅前の空き地も含め,利用できる土地が結構出てきます。
よって,美田園駅の周辺開発の進展にも期待したいところです。一応閖上への最寄駅にもなりますし。
利用客増は嬉しい悲鳴とはいえ,アクセス鉄道はようやく1万人/日 の利用客になっただけ。この数字は開業時の目標を10年ちょっとかけて達成しただけで,採算上はさらなる乗客増が必要。そのためには,車両の増備は必要経費であり,400億以上かけて整備した鉄道が数億ケチって活用されないというのは,もったいない話。外からの仙台空港利用者を歓迎する意味でも,東北のゲートウェイとなるアクセス鉄道の利便性を高めることは必要なので,期待しています。
| 固定リンク
「県政」カテゴリの記事
- 九州旅行編(その1) 久々の仙台空港&アクセス鉄道(2024.08.19)
- 新築移転 仙台厚生病院へ(2024.06.02)
- 東北大青葉山新キャンパス散策(2024.05.18)
- 激変 泉区の商業環境(その2)間もなく閉店アリオ&泉中央の行方(2024.01.20)
- 大型半導体工場が仙台近郊進出へ 場所はどこに?(2023.10.28)
「交通」カテゴリの記事
- 九州旅行編(その2) 元気な九州の魅力(2024.08.25)
- 九州旅行編(その1) 久々の仙台空港&アクセス鉄道(2024.08.19)
- 続 新潟編 厳しい古町の現状(2024.08.03)
- JR南仙台駅 西口改札設置なるか?(その2)(2024.07.26)
- JR南仙台駅 西口改札設置なるか?(その1)(2024.07.24)
「震災」カテゴリの記事
- 続々と再開発のニュースが(その1)オリックス再開発始動か?(2023.12.12)
- 札仙広福の人口密度比較 その2 サミット開催中!広島編(2023.05.20)
- JR東日本 ローカル線の行方(2022.08.13)
- アクアイグニス仙台 4/21オープンを前に(2022.04.20)
- アクアイグニス仙台 4月21日オープン(2022.02.26)
コメント
寄稿、興味深く拝読させていただきました。
これまでも日中のアクセス線2両編成の混雑具合が厳しく、何とか改善されないかと思っていました。
混雑が厳しい仙石東北ラインの2両編成も改善されておりますし。
E721-1000の4両編成を2本程度ワンマン対応化するのが、今後長く使えることからも一番よいと思っています。記載の通り、アクセス会社、JRともに車を増やすのがあるべき論ですが、使用料の精算で対応するのが現実的でしょうか。「根本利益」で同費用がペイできればすんなり実施できるでしょうか。
運行本数増ですが、朝ラッシュ時間帯を除けば本線もまだ余裕があり、現在の設備で対応可能と思います。
杜せきのしたへの交換可能対応化については、高架橋設備はあるものの、信号や軌道、電気の対応が多く必要で多くのコストが必要のため、実施は4両化・現設備での増発実施後となると思います。検討はダイヤ編成上の有効性を含め、始める時期であるとは思います。
失礼いたします。
投稿: sikeno | 2019年4月 6日 (土) 07時47分
空港線の電車はJR線を走るには輸送力が足りてないので、割り切って直通をやめて空港・名取間をできるだけ高頻度でピストン輸送したほうが利便性が高まるかもしれませんね。
投稿: uranux | 2019年4月 8日 (月) 07時20分
>>sikenoさん
コメントありがとうございます。
車両は,取り急ぎJR側で対応して欲しいところですね。
運行本数増のためには現有設備で対応可能というのは,
確かに現在の交換駅である美田園駅が空港線部分のほぼ中間なので,
今のままでも効率的と言えますね。
杜せきのしたの改良は多くのコストが必要というのは勉強になりました。
JRとしては,朝~昼間が毎時2~3本,夕方以降が毎時2本というのが,
他路線とのバランスから適切と思っているんでしょうが,せめて,空港の運行時間は
20分間隔で運行して欲しいところで,車両増備ですべて4両編成となればいいのですが。
新千歳空港や神戸空港も,アクセスの軌道系交通機関の混雑で,
輸送力の増が求められているので,仙台空港も早めに検討は必要ですね。
今後とも,ご意見よろしくお願いします。
投稿: S-Watcher! | 2019年4月11日 (木) 22時05分
>uranuxさん
コメントありがとうございます。
直通をやめるというのは致命傷ですよ。
基本的に空港利用者は仙台まで行けなければ使いません。荷物も多く,乗り換えなしとのメリットは大きいもの。
ただし,運行間隔が空く時間帯限定で,名取駅での本線接続を前提に,
空港―名取間の区間便を1日数便程度運行するのはありかなと思っています。
投稿: SENDAI Watcher! | 2019年4月11日 (木) 22時12分
仙台は大きな都市なんですね。別の地域に住んでいるとあまりイメージわかなくて・・・。
約25年前くらいの代表の動画見つけました。懐かしいです。
https://www.youtube.com/watch?v=KmMZ3SvX8BA
投稿: たがぐ | 2019年4月22日 (月) 06時16分