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2016年7月17日 (日)

名取市長選に思う

 先週の参院選と同時に行われた名取市長選。

 現職の佐々木氏と新人の山田氏の一騎打ちとなったこの選挙。

 傍目には、現職厳しいだろうなぁとは思っていましたが、予想通り大差で新人の山田氏が初当選しました。参院選と同日選になり、投票率が上がったという特殊要因はありながらも、単独選挙でも結果は同じだったでしょうね。

 <名取市長選>山田氏初当選 復興で対話訴え
 任期満了に伴う名取市長選は10日、投票が行われ、即日開票の結果、無所属新人で元名取市議の山田司郎氏(53)が無所属現職の佐々木一十郎氏(66)を破り、初当選を果たした。
 名取市手倉田に構えた山田氏の事務所に当選確実の一報が伝えられると、集まった支持者約200人から大歓声が湧き起こった。山田氏は「置き去りにされた地域課題にスピードとエネルギーを持って取り組み、市内の均衡ある発展を目指す」と語った。
 佐々木氏が推進する閖上地区の現地再建方針に異を唱え、2月から選挙準備を進めてきた。選挙戦でも「復興がここまで遅れたのは市民の声と懸け離れた市政運営の結果だ」と強調。対話重視の姿勢を鮮明にして有権者の心をつかんだ。
 佐々木氏は「現地再建方針は市民の声を取り入れて決めた。今、計画を見直したら復興が何年も遅れる」と説明したが、市民の理解は得られなかった。佐々木氏は10日夜、同市増田の事務所で支持者約100人を前に「復興の道半ばでバトンを渡すことになり誠に残念だ」と述べた。
 当日の有権者は6万1630人。投票率は58.31%で前回を18.31ポイント上回った。
◇名取市長選開票結果
(選管最終)
当20,677山田 司郎 無新
 14,635佐々木一十郎 無現
<同日の別記事より>
支持者と万歳し、祝福の花束を受け取って、ようやく硬さが取れてきた山田さん。学校給食費の段階的無料化や名取スポーツパークの再開、仙台市地下鉄の南進といった復興以外の公約も念頭に、「皆さんの思いを現実にできるよう頑張る」と意気込んだ。(7/11河北)

閖上への固執が仇に
 閖上出身ということで、確かに名取市が合併で誕生した当時は閖上は一番の市街地で唯一の”町”(追記:増田町もでした)だったという自負心からなのか、閖上をなくしてはいけないと、あれだけ現地再建にこだわった結果に、市民がそっぽを向けたとのことなのだから自業自得の面はあります。

 閖上以外の市民にとっては、「閖上ばっかり」という反感はあったでしょうし、なによりも被災した閖上住民を真っ二つに分断させた、大きなしこりをのこし、さらに復興も周辺市町と比べて2回りも遅れてしまっているのは事実。

 そこを突くのであれば、今回初当選した山田氏でなくとも当選は容易だったという印象です。全く驚きはなかった。
 
 これだけ力を入れて、かたち上の対話を重ねて、全域のかさ上げなど莫大な事業費を費やして、小中学校も移設新築して、結局閖上に戻る人は半分って、どんだけ住民の気持ちからかけ離れたことをやっていたのかということ。
同じような港町を抱える亘理の荒浜は、堤防は作るけどかさ上げなし、戻りたい人は戻って、小学校は再利用、中学校はピロティ式で現地新築。5階建てのわたり温泉鳥の海を含めて、避難ビルを点在させて、無理のない自然体の復旧を図った結果、人口こそ閖上と同様半減はしたけれど、軋轢はそれほど生んでいない印象。
ただ、荒浜に整備した災害公営住宅は3棟のうち1棟がまるまる空き棟になっているというのは、住民が選択した結果。数を把握するのは難しいけど、将来的なことを考えると、医療機関や買い物の便を考え、亘理駅周辺や岩沼以北に移った人も多いでしょう。
思いが強すぎ、客観的な判断ができないということは恐ろしい。


あの独特の髪型や風貌は好きだったんですけどね。震災後、仙台駅でふつうに夕方の本線に乗っていて、周りの人に手を振り笑顔を振りまいていたのが印象的でした。
内陸への移転先

 北釜とか、名取市でも閖上以外の沿岸部集落は内陸移転対象になって、美田園駅北地区などに移転しているし、閖上出身者でも、この場所を拡大して移転地として準備をすれば、閖上から近い場所ではあるし、アクセス鉄道沿線として、利用者拡大も見込めるし、災害公営住宅にしても、将来的にゴーストタウンにはならない。


 そういう選択肢もあっただろうけど、今回の選挙結果で、新市長はどう見直すのか。


 前職の失政をあげつらうことは誰でも容易い。公約も掲げるのは自由。


 現地再建の見直しといったって、ようやく閖上の災害公営住宅第1号が完成し入居を開始したり、海に近い産業エリアへの入居企業の操業が始まったり、遅ればせながらも歯車が回り始めたこの時期に、まさか区画整理事業計画を見直すことになったら、さらに大混乱に。


 内陸移転先を増やすというのが現実的な判断でしょうが、それでも閖上の余った土地をどうするのか。かさ上げ範囲の縮小といったって、その分の土地を市で買い上げてという負担は生じるので、なかなか大変。


仙台市営地下鉄の○進?
 
 なんか聞いたことがあるような話が。

 仙台の北隣の富谷町(10月10日から富谷市へ移行)で、初当選した若生裕俊氏がぶち上げた、市営地下鉄の富谷町への延長。それもLRTでの延長など、非現実的な構想を掲げながらも、町民はそのおとぎ話に賭けて、彼が初当選したのは1年半前の話


 過去記事 

富谷町長選に思う(H27/2/11)

 何やら、調査をやったり、イクスカを使った仙台市に準じた高齢者向けの運賃割引サービスを開始したり、一応やっているぞ感を出していますが、その間に、平日深夜の宮交の深夜バスが廃止になり、利便性が低下したりという(それは宮交の事情ですが)、一進一退の状況。

 さて、この名取市で、仙台市地下鉄の南進と記事にありましたが、新市長のHP等を見る限りではそういった話は出てこないので?です。75歳以上高齢者のバス運賃無料は見つけられましたが。

仮に、地下鉄南進といっても、名取駅を目指すのか、高舘3団地方面を目指すのかで異なる話。

 そもそも東北本線の名取駅が県内のJR線屈指の高頻度運行路線(アクセス線のおかげで)で、120往復/日 以上の本数が利用可能である点(地下鉄南北線は160往復以上)、運賃も名取駅から仙台駅まで240円で安価であり、仮に名取駅を目指すにしても、仙台―富沢が300円であることから、確実に市交通局運営の運賃でも360円にはなるし、利用するのは途中駅の方のみ。それだったら途中の名取西ヨークや東京インテリア付近?に駅を造ったとしても中途半端。そもそも、仙台市が同じ市内の柳生方面に伸ばす気が全くない(南仙台駅の利便性に全く勝ち目がない)ということもある。


 だったら、高舘3団地(ゆりが丘、那智が丘、みどり台)を目指すかといっても山の上の団地まで伸ばせるわけもなく、山のふもとまでいっても意味がない。

  それに、富谷の時と同様、名取市への部分は仙台市交通局ではなく、三セクなり別の事業主体を立ち上げる必要があるけど、それでなければ名取市を仙台市に合併してもらうアメとして作ってもらうしかない。

 仮に(名取駅まで)できるとしたら、アクセス線が東北本線内のトラブルで止まった際に代替交通機関になり得ること位。それでも地下鉄とアクセス線が相互乗り入れするわけでもないから、空港~名取駅をピストン輸送して接続という可能性があるかもという位。

 誰も求めてないし、この話は富谷と異なり忘れられるでしょうけれど、公約(マニフェスト)って軽いなぁと思うことが最近ありますね。7年前に政権交代した党のせいか?そもそもその前の第一党の長期政権時代からどうかと思うことはあったけど。



 

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コメント

名取市長選は震災後の調書廃棄など直接の被害者では無くても「なんで?」という事がかなりありましたね。方向転換は骨が折れるかもしれませんが新市長に期待したいところ。
地下鉄○進は柳生~野田山~愛の杜があり得るのでは無いかと。柳生付近は隣接した名取市の宮城農業高校移転地もあり周辺に開発の余地がある、さらにがんセンターや看護学校に高専、警察学校に新興住宅地とそれなりの需要はありそうです。
パーク&ライドの効果などで太白大橋の渋滞が緩和されればみんなハッピーになりそうな気もしますがさてはて。

投稿: か | 2016年7月19日 (火) 13時43分

まず閖上が合併当初の唯一の町というのは間違いですね。
正確には現在の市中心部にあたる増田と沿岸部の閖上の2箇所が町でした。
この意味では名取市は元々はへそのない多極型の都市(いわゆる北九州型)だったりします。
でこの手の都市の場合どうしても地域のプライドめいたものが出やすくてねえ…。

それはさておき地下鉄南進or西進の件ですが少なくとも名取駅を目指すルートはJRに対して勝ち目がないから論外。
それ以外のルートだと高館3団地には標高の関係上伸ばせないだろうし…。
そうなるとかさんが上げた名取市役所ルートが唯一実現性があるルートかなあ…。
(実は名取市役所と名取駅は離れている。)

投稿: hts | 2016年7月23日 (土) 15時18分

>>か さん

コメント遅くなりすみません。
新しい名取市長には自分も期待しています。
地下鉄云々は夢物語なので、あんまり気にしてもしょうがないですが、
お示しのルートですと、距離が長すぎるけど、JRとは競合しないのがメリットですね。

ただ、これから人口減になっていく中で、東西線沿線への人口増を図りたい仙台市が
名取市の開発に積極的になることはないので、難しい話ではあります。

太白大橋の渋滞は確かにひどいようなので、何とかしたいところですが、
パークアンドライドであれば、既存のJRの南仙台駅とか名取駅でもできる話かなと。
クルマ利用者の一部でも誘導できれば、劇的な渋滞解消効果はあるのですが、
そもそもクルマ利用者の意識を変えるのは難しいですね。

投稿: S-Watcher! | 2016年7月24日 (日) 01時12分

>>htsさん
コメントありがとうございます。
確かに名取市誕生時点では増田も町でしたね。
勘違いでした。
昭和30年時点では、唯一のDIDは閖上にあり、
閖上の方が市街地の集積・広がりが大きかったということが頭にあったので。
閖上町の方が人口も増田町の1.5倍でだったようです。

地下鉄の件ですが、名取市役所ルートの意味は???です。
「か」さんはそんなこと言ってないのでは。
それに名取市役所はアクセス線杜せきのした駅に近いですよ。

投稿: S-Watcher! | 2016年7月24日 (日) 01時41分

よく見たら名取市役所の場所に関しては見間違えていました。そこは訂正します。
ただかさんが示したルートがやるならばまだ意味があるということに関しては書いたとおりです。

投稿: hts | 2016年7月24日 (日) 02時11分

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