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2015年9月27日 (日)

コンパクトシティへの取り組みについて(4) ~富山市での取り組みその2

 続きをと思いながらも、4か月近くあいてしまいましたが、コンパクトシティを目指した取り組みの代名詞と言われる富山市を題材に、中心市街地と郊外の関係を考えてみました。

 都心部への新規公共交通の整備としては、BRTが大失敗している新潟市の話を見聞きするにつれ、都心部の活性化に対する危機感と公共交通に対する姿勢の違いで、富山市とここまで差がつくかと改めて実感していたところ。

 郊外居住が進み、都心部が空洞化していた富山市において、これ以上の空洞化の歯止めを図り、高齢社会のさらなる進展を見据えた街中居住を目指して、手段としては北陸新幹線の開業や在来線富山駅の高架化を見据えて、市内の路面電車網の再構築と整備を進めています。


前回記事


  • 1)駅北の旧JR富山港線を転換したLRTのポートラム。
  • 2)駅南の旧市街を走っていた路面電車の環状化と低床車両の導入(LRT化)
  • 3)富山駅の高架化に合わせて、1)2)の南北を別々に走っている路面電車を相互乗り入れ化(現在進行中)
  • 4)路面電車を郊外路線に乗り入れ計画(広島の市内⇔宮島線のように)

との取り組みを順次進めているところ。


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 北陸新幹線の開業による、中心駅である富山駅周辺の再整備も盛んに行われていますが、大型商業施設は皆無のこの駅前。メインの駅南側はビジネスホテルと多少の飲み屋街、ビジネス街という印象。それはきれいに区画整理されたポートラムが走る駅北も同じ。

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 この写真は1年以上前に訪れた際のものなので、現在は新幹線駅が整備され、多少は変わっているかと思います。

 この富山駅前は、新幹線開業に合わせたインフラの再整備が行われ、駅前広場の整備と路面電車の富山駅”内”新幹線改札真正面への延長というインパクトのある改良を実施しました。


富山市路面電車推進課HP(以下写真も引用)

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新幹線改札付近からの写真。

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   数年後には、在来線の高架化が完成し、駅北と駅南の路面電車が富山駅を経由して相互接続され、駅北からの中心市街地(総曲輪)への利便性が格段に良くなります。

中心市街地重視の成果

  この路面電車の利便性向上はあくまでも手段であり、寂れきった都心部(総曲輪)の再生と、郊外に延びきった市街地の拡大を抑制するための象徴的な取り組みです。

  富山市側としてはインフラやハコもの整備に、かなりの費用をかけています。

    富山城址の南側に、富山国際会議場を整備。

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   小ぶりだけど、街のど真ん中で、民間ホテルと連携しており、戦略的な施設です。また、路面電車の環状化の際に、目の前に停留所が設置され、富山駅からのアクセスも非常に分かりやすい。(富山国際会議場HPより以下写真を引用)

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   百貨店大和富山店の新築移転も絡めた、再開発事業(FERIO総曲輪とグランドプラザ)

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   この付近を訪れたのは、平日の昼過ぎでしたが、年配の方中心とはいえ、それなりに客も多く、テナントも良く最近のSCで見るようなテナントも入っており、デパ地下には近年仙台にも進出した北野エースが。広場に面している場所にはスタバなど、少なくとも仙台駅前の某百貨店を名乗っている店舗よりは格段上でした。まぁ、富山市街地では唯一の百貨店というのもあるのでしょうが。

   また、この吹き抜けガラス張りのグランドプラザの空間が、仙台にはないもので、福岡天神の大丸(エルガーラ)を思い浮かべましたが、冬場の気候が厳しい富山において、イベント広場としても活用できる気持ち良いオープンスペースでした。

周辺でも再開発が進行中

   このグランドプラザに接続するアーケードは、まぁ元気があるとは言えない代物ながら、再開発により立ち退きが進められている最中ということもあり、評価が難しかったところ。大手飲食店が出店しているということはなく、地元の昔ながらの店が並ぶ一角。お世辞でも賑わっているとはいえない。

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 大規模店舗系の再開発は難しく、住宅中心なのかなと思いましたが、いたるところで再開発の看板があり、市のこの付近をいかに重視しているかが分かる状況。

 その他、完成した住居系再開発も。

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 これも8月に再開発ビルにオープンした富山ガラス美術館と、富山市立図書館。昨年行った時は工事中で、総曲輪フェリオに移転した大和の跡地というのはなんとなくわかっていながらも、何になるのかは知らず写真を撮っていましたが、公共施設が入るビルだったのか。あくまでも再開発ビルへの入居で上階には地元銀行も入っているというのが、純粋な公共施設として建設された仙台との違いですが。

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Map

 

 有名建築家の隈研吾が設計したとのことで、それも、ガラス張り、図書館となると、伊東豊雄が設計し、賛否両論を巻き起こしたせんだいメディアテークを連想させる施設です。

 100億以上の総工費をたかが公共施設に投じるというところに批判をうけまくったのは、メディアテークと同じで、富山でもいろいろな見方をされているようですが、特に図書館を街のど真ん中に設置するというのは素晴らしい取り組みと思う。どっかの県では遠く郊外に県立図書館を追いやり、まるでニュータウン専用図書館みたいになっていますが、富山市は中心市街地活性化に本気だという姿勢を明らかにするとともに、その建築物自体が観光地として人を呼べる施設になるので、個人的には良い取り組みではないかとは思う。

中心市街地活性化について

 このように、路面電車は分かりやすい移動軸の提示・提供であり、目的地としての商業施設・公共施設を街中に整備、また住居の受け皿として再開発事業でマンションを供給するなど、地方都市にしては、精力的なダントツに目立つ動きです。

 これも、黙っていても都心部にある程度の求心力が保てる政令市と、人口30万以下(東北では秋田市、福島市等)の死にかけた中心市街地しかない都市群との狭間に位置する40万人超の人口規模であることと、何とか維持していた路面電車というインフラを積極活用できた故の取り組み。

 全くゼロから軌道系インフラを新設する必要がなかったのは幸運なこと。

 頻繁運行する軌道系交通機関があると、部外者には分かりやすく、その都市に投資するにあたってもその沿線にという流れになりやすい。ここに投資すれば間違いないと。

 とはいえ、岐阜市のように、既存の路面電車を邪魔者扱いして近年廃止に追いやった、40万都市もあるし、考え方はそれぞれ。


 新潟みたいに、公共交通機関が「手段」ではなく「目的」として整備しようとすると、とんでもないことになる。仙台も東西線は当初、2本目の地下鉄が欲しいという「目的」としての整備の面が強かったけど、反対運動や10年近くの建設期間の中で、需要予測が厳しいこともあり、市当局もうまくこのインフラを「手段」として活用すべく、知恵を絞ってWEプロジェクトなど市民に浸透させようと努力しているところは評価していいと思います。

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 散々郊外に拡散した市街地に家を構え、住んでいる市民からすると、今更中心市街地重視と言われても困惑する面はあり。都心部居住人口も底を打ち、上昇に転じたとはいえ、集積も緩やかで、どの程度効果があるのかと半信半疑の面もあります。

 でもこの中心市街地重視の取り組みのために郊外型の商業施設が撤退に追い込まれることはないし(企業側の都合で勝手に撤退はするけど)、郊外住民は、クルマで残った既存の商業施設を使える立場にある。

 加えて都心部にそのような賑わいの場ができることは、決して市民にとって損をする話ではない。都心部と郊外という2つの異なる性質のエリアを選択して活用することができる。

 また、将来的に、都心部ではなくとも、都心部から延びる路面電車沿線などの生活利便性が高まることで、年をとってクルマが運転できなくなることを見据えて、そのようなエリアに住居を移すという選択も可能となる。

 今後新たな道路整備にカネをかけ続けるよりは、既存のインフラを活用する方向での投資であるし、単純に投資された金額を目の敵にして反対運動を打つというのはどうかとは思う。

(政令市以下の)中都市での中心市街地活性化の取り組みとしては、一応成功している事例ではあるし、それに、また成果が出る途中段階であるので、長い目で見守っていってあげたいと思っているところ。

中心市と周辺自治体との関係

 課題としては、周辺都市との関係。例えば仙台市がコンパクトシティを打ち出して、都心部と軌道系沿線への都市機能の集約を謳い様々な取り組みを始めているけど、利府がバカみたいにでかいイオンモールを誘致していることとか、仙塩地域で広域の都市計画区域となっていても、広域での調整機能が機能していないことが問題。

 富山でも、三井アウトレットが富山市と金沢市の間の小矢部市に、コストコが射水市に出店したことで、中心市街地重視の富山市との軋轢があったようですが、これを理由に富山市を批判したり、富山市の政策が無意味とするのはおかしいし、上述のとおり制度の問題。

Photo

 宮城県も富山県も、中心市だけでなく周辺市の立場も考慮しなければならないだろうけど、だったら広域で都市計画区域を設定している意味がない。

 農地をつぶしての大規模商業施設は原則できなくなったはずなのに、その用地を商業地域や近隣商業地域・準工業地域に指定を認めるのはどうなの?

 富山の三井アウトレットは、県が工業地域から準工業地域に変更を認めたため、大規模商業施設が建設できるようになったとのことで、これは単なるイオンのようなどこにでもある施設ではなく、北陸中を商圏とする巨大アウトレットモールが石川県ではなく自県内に誘致するためなので、自治体間競争でやむを得ない面もある。

 でも、人口が減少し、10年後の2025年には、団塊の世代の全てが車の運転が難しくなる75歳以上の後期高齢者に突入する。家も余ってきて、空家問題も深刻となる。

 さらに、増田レポートでショッキングな数値が公表された、2040年時点での若年層や生産年齢人口は自治体によって半減~3/4程度になり、これまでのように郊外に無邪気に市街地拡大をする必要もない。本気で市街地縮小でなくとも、これ以上の郊外開発は一部の鉄道沿線の再開発以外は認めないというような姿勢をとらないと、それがとんでもない負の遺産になってしまう現実。

 無理やりの市街地集約は非現実的でも、既存の都市インフラを活用できる中心市街地の再整備は、(中小都市において)富山市に続く自治体が出てきて欲しいと思っているし、その点、県内では石巻市や山元町などの復興事業を行っている自治体は消極的ながらも鉄道沿線への集約を図っているし、本気で将来を考えなければならない時期に来ているのではと思います。

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コメント

岐阜市と富山市を同列で語るのはどうなんでしょうね

岐阜市にはJRで最短19分のところに大都市名古屋がある
(以前はもっと時間がかかったが、名鉄に対抗する意味もあり高速化された)
道路網も岐阜市から名古屋まで全て6車線の高規格道路で結ばれている

岐阜市周辺は紡績工場の跡地(数万㎡~十数万㎡)が非常に多く
そのほとんどがイオンモールなどの大規模商業施設になっている


この2点だけでもその都市の置かれている状況はかなり違います
岐阜市に限っていえば路面電車が無くなったから街が衰退したのではなく
街が衰退したから路面電車が消えたが真実です
さらに線路が敷設されている道路は全線片2車線のため安全島は一切なし
なんでもかんでも路面電車が無くなったから街が衰退したとか書く輩には
憤りさえ感じます


投稿: 岐阜駅まで徒歩15分 | 2015年10月 3日 (土) 23時55分

>>岐阜駅まで徒歩15分さん

コメントありがとうございます。岐阜駅は通過したことしかなく、降りたことのあるのは大垣のみなので、認識が薄いところがあるかもしれませんが、木曽川のイオンモールを含めてSC王国(競争が激しい)ですね。
また、名古屋には昔仕事で毎月のように行っていた時期もあるので、あの辺のことはそれなりに分かります。

>岐阜市に限っていえば路面電車が無くなったから街が衰退したのではなく
>街が衰退したから路面電車が消えたが真実です
> さらに線路が敷設されている道路は全線片2車線のため安全島は一切なし
> なんでもかんでも路面電車が無くなったから街が衰退したとか書く輩には
>憤りさえ感じます

なお、路面電車が廃止して街が衰退したとは言っていませんよ。
言いたかったのは、自治体により、路面電車を街づくりに生かそうとする姿勢があるか、邪魔者として廃止しようとするかの違いがあるということ。
中心地の衰退度は断然富山の方が上かと。

同じ超クルマ社会でも、岐阜は名古屋圏だし恵まれているというところもあるのかなと。
名古屋圏だと、基本的に一宮も刈谷他の人口規模が大きな都市でも軒並み中心市街地が元気がなく、駅前は名古屋への中継拠点としての役割しか期待されてないけど、それで自治体が不自由を感じていないというところが。
豊かさ故にというところは、新潟とも共通する点を感じました。

投稿: S-Watcher! | 2015年10月 5日 (月) 00時45分

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