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2014年3月 2日 (日)

栗原市に医学部新設?

学院大側の合意がとれなかったため、厚生病院と福祉大の連携が前日発表になったとのことでしたが、詳細の構想が厚生病院、福祉大側から発表になりました。

医学部新設 仙台厚生病院、東北福祉大と連携発表

東北への医学部新設を目指す財団法人厚生会仙台厚生病院(仙台市青葉区)の目黒泰一郎理事長らは28日、宮城県庁で記者会見し、連携先に東北福祉大(同)を選んだと正式発表した。校舎や大学付属病院は栗原市内に整備する方針。付属病院の病床確保に向け、栗原市立栗原中央病院と市内の県立循環器・呼吸器病センターを、それぞれ市、県から移譲してもらう意向も示した。

 構想によると、医学部は定員100人。栗原中央病院は職員を含めて譲渡を受け、近隣に校舎と付属病院を建てる。センターは県に廃院にしてもらい、規定病床数や職員を譲り受けたい考え。
 目黒理事長は「福祉大は看護教育の蓄積もあり、医学部開設の理念を共有できた。医師不足が深刻な宮城県北沿岸の扇の要になる栗原に立地を選んだ」と話した。
 会見に先立ち、目黒理事長と福祉大の渡辺信英学長補佐、佐藤勇栗原市長は村井嘉浩宮城県知事と県庁で面会し、センター移譲を要請した。
 村井知事は「まずは職員の意向を確認し、早急に検討したい」と述べた。記者会見に同席した佐藤市長は「地域の医師不足解消につながる」と医学部新設を歓迎し、栗原中央病院の譲渡に全面協力する姿勢を示した。
 福祉大と共に厚生病院と連携協議を進めてきた東北学院大(青葉区)は同日、仙台市内で記者会見し、協議継続と医学部設置を断念した経緯を説明した。
 文部科学省は、13年11月に東北地方の大学1校に医学部新設を認める方針を発表した。ことし5月にも新設構想を受け付け、早ければ15年春の開学を目指す。医学新設構想は東北薬科大(同)も13年10月に公表している(3/1河北)。

学院大は、泉キャンパスの土樋キャンパス周辺への統合を検討している最中であり、医学部キャンパスを設置する場所も含めてなかなか学内のコンセンサスが難しかったのだろうと推測します。

これまでは、東北に医学部1校新設といいながらも、実際は仙台市内での開設をめぐっての市内既存大学3校間の競争と言う構図ができており、石巻市が校舎誘致といいながらも、あまり実現性のないことと思われてきましたが、さらなるダークホースである栗原市が本命に躍り出てきました。

仙台市内では、附属病院に必要な600床の病院が設置できないとのことですが、これが前提条件になってしまった感が。厚生病院の409床だけでは不足で、追加で増床するにしても仙台医療圏では病床過剰の状態だから不可能だとか。

でも600床必要というのも、やりようでは400床でも可能だと思うし、厚生労働省からの条件についても、いろいろと裏の動きがありそうで、良くわからない部分も多いですが、結果的にこの条件を厳格に解釈するのであれば、仙台近郊では既存の600床以上の病院は、東北大学病院と国立仙台医療センターのみであり、病院の経営権(病床の権利)を買い受けるなどのウルトラCを使わない限り、新設医学部は設置不可能とのことになります。それは薬科大学側(一般病床420床、精神病床46床)も同じということに。

そうなると、福祉大+厚生病院連合が栗原に設置するという計画が、県や栗原市を交えての調整がうまく行けば、ほぼ決定となってしまいます。

地域医療への貢献と言う観点では、病床・医師過剰区域の仙台に開設するよりは、医師不足の地域に医学部を開設する方が評価が高そう。

確かに栗原市は、医師不足が言われ、基幹病院の栗原中央病院も医師不足に苦しんていて、患者も栗原市に隣接した、医師も診療科も充実した大崎市民病院へ流れている実情がありました。県で定めた医療圏も大崎と栗原は統合となり、県内最大の面積を持つ栗原市単独での医療体制維持が厳しさを増していたところ、病床数が余っていたことを逆手にとった構想です。

実現性は?

あくまでも、様々な調整が進めば、大本命に躍り出ることになると思いますが、とはいえ、ハードルは高い。

1.病床数の権利の譲り受け

市立栗原中央病院(300床)を病院丸ごと譲り受けの上、県の循環器呼吸器センター(150床)を廃院にして病床数の権利とスタッフを譲り受け、加えて医療圏の余裕病床数(150床)を加えて600床を確保するという大胆すぎる提案です。

栗原中央病院については、公立病院として国?から建設費の補助を受けていたり、まだ建設時の借金が残っていたり、運営にあたっての累積赤字があるのならば、その処理も結構大変なのではと思います。また公の財産を簡単に民間に移譲できるのかというところ、また職員の身分の問題もあり、それは循環器呼吸器センターの廃院を求められている県も同じ。

また、循環器呼吸器センターは、仙台日赤の結核病棟の閉鎖後は、県内唯一の結核病床(50床)を保有している重要な病院であり、その役割もあるから簡単に廃院にはできないと村井知事も言っています。

もちろん、栗原市長は全面的に協力すると言っており、また村井知事にとっても、県の立場からすると、仙台圏に新設されるよりは医師不足が深刻な周辺部に設置の方が望ましいのは明らかなので、できる限り協力するでしょう。

2.教員の確保

1.については、困難ながらも県と栗原市が協力すれば、何とかなるかもしれませんが、100名を超える医師・教員の確保をどのように行うか。仮に仙台に設置であれば、非常勤を含めてかき集めることもやりやすいですが、栗原市設置であれば、新幹線や高速道路利用でも仙台から実質1時間以上の移動距離なので、兼務で集めることも含め、自前でほとんど確保する必要あり。

地域医療に影響を及ぼさないよう、東北の医療機関からは医師を引き抜かないという条件があるので、額面通り受け止めれば、東北外から集めるにしても、ただでさえ医師が来てくれない地域だったのに、ここに赴任してくれる医師を100名以上集めることができるのかが不安に感じます。医師・教員の殆どとは言わないまでも、半分以上が仙台から通勤という条件を飲んで採用ということになりかねません。かなりの高待遇で。それでも集まればよいのですが。

また、仙台厚生病院の医師が兼務するにしてもちょっと遠すぎて、一部にとどまるでしょう。

なお、仙台では、大病院と中小病院の棲み分けが行われており、大学病院のような大病院には紹介状がないと行けないですが、、栗原でこの計画が実現すれば、市立病院を継承するという性格上、実質的にこの大学病院のみで、風邪等の軽傷から重症まで全部対応しなければならない。一般的に、そのような病院に医師は来たがらないと聞いたことがあります。。医師は専門性を高めることを望むので。

3.600床分の需要確保

人口7万人の栗原市に600床規模の大学病院を設置することで、入院患者は大学病院の高度な医療を期待して周辺の自治体からも集まってくるかもしれませんが、しかし600床は多すぎる。さらに外来患者は、地域内の公共交通が壊滅的な地域であり、あまり遠方からの来院は期待できない(高速交通網は発達しているけど)。

大崎市には500床規模の大崎市民病院がありわざわざ栗原市までは行かないだろうし、登米市あたりからは期待できるかもしれませんが、医学部の経営は大丈夫でも大学病院の経営的にも大丈夫かな?と思います。

4.その他

最も競合するのは、同じ県内の<国立>東北大学病院ではなく、同じ東北新幹線沿線で、1時間の距離の<私立>岩手医科大学(岩手県矢巾町)なのではと。ここは結構宮城県からの入学も多いようですし、”私立”と言う面から、学費が同じ水準なので、学生募集面でもどうなるか。岩手県側からの反対が大きくなるような気がします。

宮城県内として考えると、石巻、気仙沼という医師不足が叫ばれている被災地にも比較的近い栗原市と言う選択肢は悪くはないかと思います。また、東北新幹線沿いなので、医師・教員、学生獲得と言う面でも、石巻に比べると勝っているのは明らか。東北地方の他県からのアクセスも比較的容易です。

栗原市とすれば、医療過疎地域であることを逆手にとっての誘致が成功すれば、大学病院ができ、多くの診療科が開設され、医療に関してはほぼ市内で自給できることになるほか、学生やスタッフの市内定住も期待できるので、反対する要素はないかもしれません。

まぁ、学生にとっては、勉学に集中できる場所ではあります。。。

個人的には、仙台以外であれば、同じ県内の小都市だと白石あたりで可能性がないのかなと思いました。栗原と同じく新幹線、高速道路があり、仙台(東北大学)と福島(県立医科大学)の両国公立医学部を補完する私立医科大学という点では。両都市からの医師・教員の派遣と言う点でも栗原よりは、ある程度容易ですし。

早ければ来春の開学とのことで、スケジュールはタイトです。この福祉大+厚生病院側の計画を受けて、薬科大側はどのような対抗策を出してくるか、興味深いです。

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