プロ野球とJリーグが共存できる都市を目指して(3)
それぞれのホームスタジアム
それぞれのチームの本拠地は好対照です。
マツダスタジアム
長年の懸案であった市民球場移転を実現したカープ。
場所も旧市民球場の現地建て替えvs貨物ヤード跡地(現在地) とのせめぎ合いもあり、結果的に貨物ヤード跡地に建設地が決まりながらも、コンペに選ばれた外資の撤退等もあり数年完成が遅れ、かなりの難産ながらも、市民及び行政がマスコミを巻き込んで議論して一歩ずつ進めて行った印象です。地元経済界も資金面でも協力し、地下調整池の予算が別建てながらも、3万3千人収容と、旧市民球場よりも収容人員をUPさせた上、本体建設費は100億を切るコストパフォーマンスの良い素晴らしい球場が出来ました。
同時期に同規模の予算を投入し建設した新潟ハードオフエコスタの、”いかにも公共施設です”という新しいながらも時代遅れの球場と比較すると、球場に対する文化の違い、自治体の野球に対する愛の違いを感じます。
- (無理にドーム化をせず)身の丈にあったオープン球場
- 選手の要望、時代の流れを読み、天然芝球場に。
- 1周できるコンコース(ユアスタと同じく観客の移動が容易)
- 名物のアッパースタンドや、寝ソベリアなど、様々な個性的な座席。
- 山陽新幹線からも球場内がチラ見できるなどの遊び心
ホント魅力的です。新しくなってからずっと行きたいと思っていますが、カープとのマツダスタでの交流戦は、いつも5月中旬の平日開催が多く、今年は珍しく週末でしたが、未だに行けていません。もしかして日本シリーズで対決?と思いながらも、どっちにしても平日だったから無理だったんですが。
立地も、以前の街のど真ん中からは多少郊外に移ったと言っても、新幹線も停まる大ターミナルの広島駅から徒歩10分の別な意味で立地は遜色なく、遠方からの観客にとっては、かえって利便性がアップしたような状況です。
繁華街からみて駅の向こう側というのは、仙台とも似ている立地関係かも。
広島:八丁堀・流川―広島駅―マツダスタジアム
仙台:一番町・国分町―仙台駅―宮城球場(新楽天スタ)
<マツダスタジアムホームページより引用>
球場周辺も、三井不動産系が関与し、コストコがすでにオープンしているなど、試合開催時以外でも賑わうような街づくりを進めており、本当に理想的なスタジアムです。
宮城球場(楽天koboスタジアム)の取り組みと今後
一方、我が仙台の楽天の本拠地、来年からは、楽天自らが命名権を取得し「楽天koboスタジアム」になると、先日NHK他で報道がありましたが、球場自体は、楽天野球団が様々な工夫を重ね、球場改修を行ってきており、実際楽天の取り組みがマツダスタ等他球場へ波及したというトップランナー的な取り組みを行ってきています。
砂かぶり席や、フィールドシート、ボックスシートなど、初年度から矢継ぎ早に新たな考え方の座席を設置し、収容数の少なさを座席の魅力でカバーしようという取組は、賞賛されるべき。近年こそ、観客動員の伸び悩みもあり、投資は小粒なものになってきていますが、この仙台の市場規模からすると、無理のない投資とも言え、ようやく今年の初優勝・日本一にて、ファン層の拡大が見込めるので、次を見据えた投資ができる段階になったかと。
いろいろ言われている、宮城球場のドーム化については、知事が、「現球場に屋根をかけたドーム化」の”可能性”について言及し始めた段階ですが、行政トップとして、現時点で可能な現実的なコメントかなと。相変わらず身銭を切ってという姿勢は地元経済界にはないし、楽天にタカるだけでは解決はしない。
防災拠点とのからみで、避難できる屋内施設は望まれている面があっても、行政だけでその理由のみで推し進めるには厳しいところ。なので、ドームと言っても(寒さ・暑さには殆ど効果はないが)西武ドーム方式もあるし、サッカースタジアムでは、トヨタスタや大分銀行ドームのように、簡易式の開閉式屋根という方法もあり。
課題として、
- ・当然、公園法の建蔽率制限(貨物駅跡地が使えるようになるまでは10年以上)
- ・立花社長が目指している天然芝化との兼ね合い(開閉式屋根では厳しい)
- ・もっとも老朽化が進んでいるバックネット裏の座席部分の老朽化対策
- (ボールパーク養成ギブス部分はともかく)
- ・観客席増設を兼ねて外野も含めたスタンドの外周部の高さを揃え、屋根をかけやすいようにすること。屋根に耐えうるスタンド強度の確保(または球場外周部への支持基礎の設置)。
- ・簡易式ドームでは、暑さ・寒さへの対策が中途半端。
など、簡単にはいかないにしても、議論を始めることは重要。そもそも広島もですが、長年の議論のもとに新球場が生まれた経緯があり。札幌ドームも球団がなかったバブル期からの議論の積み重ねの結果生まれたもの。タナボタというのは、当時のダイエーが金を出してくれた福岡ドーム位?
楽天のみが責められていた、「約束の28,000人収容になんでしないの」という問題については、今シーズンに続いて、来シーズンも”仮設を改めて設置”とのことで、ひとまず乗り切るようですが、公園法とか制約がある中で、抜本的な改善は見込めないので、単にドームクレクレというのは何も解決にはつながらない。まずは、寒い春先も含めて少なくとも週末は満員になるような、我々ファンの頑張りがあってこそ、本格的な議論につながっていくのかと。
サッカースタジアム新設運動
一方、広島では、カープの本拠地は素晴らしい球場が出来ましたが、サンフレの本拠地のエディオンスタジアム(ビッグアーチ)は、国立競技場や神戸ユニバ系のある意味古いコンセプトの陸上競技場で、殆ど屋根もないこと、収容人員は当初4万人超とはいえベンチ席が多く、昨年の優勝決定試合でも3万4千人。
そもそも、一応市中心部から新交通システムが近くまで通っているとはいえ、輸送能力は低く、遠回りのルートで約40分。そこから徒歩10分程度で、基本は車でのアクセスながらも、観客が見込める2万人以上の試合は特に、周辺の道路が麻痺するという、どこかの宮スタ状態。
宮スタと比べれば、公共交通機関のアクセスがましな点はうらやましいとはいえ、頻繁に行くには厳しい印象。その悪条件ながらも、チームの成績もあり、現時点では1万5~6千人平均の観客動員を誇っており、だからこそ、最近のサッカースタジアム新設の運動に説得力が出てきているところ。
広島の場合は、野球場もそうだけど、ファンを中心とする市民を巻き込んだ議論が凄いところが。今回も元々球技場の設置を求める声があり、原爆ドーム近くの旧市民球場の移転・取り壊しにより、跡地への活用を求める動きに移行しました。
一方、その場所は、広島の方々にとって意味のある場所。もともとは国有地だし、その原爆ドームからの導線上に新たに建物を建てることへの抵抗感もあると聞きましたが、意外に野球ファンからの抵抗(我々の聖地にサッカーなど)と言う声は小さいと聞いて、それは意外な感がありました。
市も様々な意見を前に、のらりくらりと対応してきましたが、先日の市長の失言(2位になった方が良い)に発奮したのか、サンフレが優勝してしまい、にわかに球技場の新設の声が高まり、広島市側も重い腰を上げ始めたようです。
場所も、この旧市民球場跡地を含め数か所(宇品、旧広島西飛行場跡地)出ているようですが、交通アクセスを考えると、旧市民球場跡地以外は考えられないように思えます。
こういった動きがあると、たいてい
野球ファンvsサッカーファン
という対立の構図に持ち込まれてしまい、不毛な争いになるか、野球ファンからみて「サッカーなんて」とバカにされたり、なかなかコンセンサスを得ることが難しかったりしますが、っ広島では、野球ファンも暖かく見守っているようで、マツダスタでの”球技場設置”署名運動に野球ファンが協力したりと、やはり両者は共存しています。
仙台と広島の共通点
人口が100万人規模の政令指定都市ながらも、他の拠点都市と比べて人の集積・集客面では弱いところがあり、簡単にドーム球場をはじめとしたハコものを建設できるような行政・経済界の財力もない、中途半端な大都市であるところ。
また、広島は、大阪と福岡に挟まれて、隣県には岡山という新興政令市の追い上げもあり都市間競争には苦労しています。仙台も東北では敵なしとはいえ東京との近さは諸刃の剣の面があり、拠点性については一歩劣るところ。
だからこその地元意識の強さ、地道さが必要という面があり、背伸びはせずにあるものを大事にする(せざるを得ない)という共通の意識を感じます。
仙台でも、野球ファン、サッカーファンそれぞれ共存しています。周りは結構両方掛け持ちしているファンも多いです。両方を応援している市民として、このような流れが続いてくれればと思いますし、広島のようにブームではなく文化として、それぞれ根付いていってくれればと思っています。そのために、仙台にとって、同規模チョイ上のお兄さん都市として、広島は参考になる部分が多いと感じています。
そのためには、ベガルタは来シーズンJ2に落ちないように、新監督の下で頑張らないと!その前に今週末の天皇杯準々決勝もあるか。それに勝てば、国立で(おそらく)サンフレッチェと!そっちも楽しみです。
楽天も、にわかにマー君が残留するかも?という流れになってきたので、来季も期待できる?
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