2025年6月22日 (日)

課題満載 仙台東道路の4ルート案公表

 ルートが具体化しつつある仙台東道路。過去記事として10年以上前に記事にしていたので、雑感などはそちら参照。


過去記事


 東北道の仙台宮城ICから都心部を結ぶ仙台西道路は昭和58年度に全通し、東北道からに限らず愛子地区からのアクセスを革命的に短縮した無料の高規格道路として欠かせない幹線道路となっていますが、その西道路に対する東部道路方面の仙台東道路、そして泉方面の仙台北道路、長町方面への仙台南道路は構想路線として30年以上前から存在しながら、事業化に至っていない仙台都心部に向かう高規格道路群。その中で、西道路に対して整備されればバランスの良い仙台東道路の4つのルート案が国土交通省から出されました。

仙台東道路計画段階評価第3回説明資料

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 そもそもルート沿いに整備された東部道路のコロナワールド付近から広瀬通へ繋がる元寺小路福室線は、基本的に片側3車線で都市計画決定され、中央分離帯への高架橋建設も十分可能は幅員であり、近年は架け替えられた宮城野橋から仙台駅東口第二土地区画整理事業部分が立派に整備されました。仙台医療センター東側のJR貨物線をくぐる部分のみ片側1車線になっていますが、一応全線通れるようになっています。

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 なので、ルートはこの元寺小路福室線沿い一択かと思っていたところ、今更4つのルート案が公表され、正直ずっこけました。

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 都心部は、3通り、仙台駅以東は、4通り ですが、基本的なルートは都心部の3通りに対応しています。

都心部(仙台駅西)

  仙台駅東~東部道路

①定禅寺通経由

45号線経由

②広瀬通経由

元寺小路福室線経由

元寺小路福室線+原町岡田線経由

③青葉通経由

産業道路経由

 そもそも仙台東道路は、東部道路から元寺小路福室線の仙台駅東(アンパンマンミュージアム付近)が終点であれば、整備の困難度はそれほど高くないですが、そのような形にしてしまうと、西道路から吐き出され、東道路に向かう大量のクルマとトラックが広瀬通を経由し、今以上に都心部の幹線道路が麻痺してしまうことが容易に予想されることから、東道路は西道路と直結させて、一般道への影響を極力小さくするして整備することが前提とされ、一気に整備のハードルが高くなってしまいました。

地下前提の都心部エリアも困難だらけ

 そうすると、仙台駅東方面は整備費から高架道路一択ですが、仙台駅西口エリアは正直首都高のような高架道路はちょっとあり得ない。 


 例えば、定禅寺通や青葉通を高架道路が走る形になるのは、仙台市のシンボルケヤキ並木への影響が大きく、仙台市や市民が許すわけがない。この2つの通りとの比較で、広瀬通はまだイチョウ並木なので、まだ伐採して中央分離帯に高架道路を整備するのは不可能ではないでしょうが、それでも沿道にビルが立ち並び4~5階の高さに高架道路がというのはほぼ商業・業務系のビルとはいえ、杜の都のイメージを棄損することになり、簡単ではない。

 広瀬通では、アエル近辺の車線増のために中央分離帯のイチョウを10本伐採した際に、結構問題になった覚えもあります。広瀬通でさえなので、定禅寺通と青葉通は不可能でしょうね。


 そうなると、地下トンネルしかないにせよ、広瀬通は地下鉄南北線広瀬通駅と駐輪場が一部地下に位置していること、さらに青葉通は地下鉄東西線と、青葉通地下道、駐輪場、そして仙石線あおば通駅と、ほぼ全線にわたり地下に構築物があることから、広瀬通より条件は厳しく、大深度でなければ無理じゃない?

 そうなると、地下の構築物が勾当台公園付近で地下鉄南北線をくぐる部分のみとなる定禅寺通の条件が良さそうですが、それも地下鉄東西線青葉通一番町駅建設の際に多くのケヤキ並木が伐採され、いつぞやの市長がケヤキの精発言をしたり、地下鉄反対派が乗ってきてケヤキ伐採反対運動を繰り広げるなどした記憶が思い起こされ、地下を通すにしても結構大変そうです。

 定禅寺通自体は、車道減少で歩行空間拡大に向けた再整備を実施しているところで、その計画にも大きな影響が出てしまう。このシンボルロードの地下に時代遅れの地下道路を通すということが許されるのか。

 どのルートであってもそれに地下を通す場合、それなりの大深度が前提となることから、西口側(特に仙台駅付近)で地上への出入口が設置可能な場所も限られ、換気口の設置場所を含め、どのような手法になるのか想像がつきません。

東側は高架一択にしても。。。

 そもそも国道45号線ルートが出てきたのがよく分からない。幅員も狭く、仙台港北IC付近で三陸道に接続するにしても、現道の幅員が狭く曲がりくねった区間もあり、このルート沿いで整備できるイメージが湧かない。もっとも整備距離が長く、三陸道松島・石巻方面に向かうのであれば距離が短縮されるにせよ、空港や常磐道方面との行き来を考えると、非常に遠回りになり、需要が見込めない。地下が最も通しやすい定禅寺通りとセットで検討した結果なのかもしれませんが。。。

 また、地下整備が最も困難な青葉通に対応して、産業道路(新寺通)へつなぐルートを見る限りは、地下鉄南北線が通る愛宕上杉通と上に在来線と新幹線が通る新寺ガードが含まれ、正直あり得ないルートとしか思えない。

 なので、結局整備するとしたら②の広瀬通⇔元寺小路福室線(or原町岡田線)しかないのでは。

 元寺小路福室線がネックになるとしたら、防衛上、自衛隊苦竹駐屯地を見下ろす形となる高架道路を整備することの妥当性や、新県民会館への振動の影響などが考えられますが、他のルートよりは解決が容易。先日交差点立体化工事が終了し開通した4号線バイパスの箱堤交差点との接続の困難さを考えると、平面交差の卸町交差点へ接続するために1本南側の原町岡田線にルートを振るという可能性もあるのか。

 インターは、西道路終点付近、仙台駅西口付近に1か所、広域防災拠点付近に1か所、国道4号バイパス交差点に1か所、あとは東部道路へJCT形式で直接接続が前提でしょう。

事業化へのハードル

 正直、構想が出てからの検討時期が長過ぎ、建設工事費の高騰が進んでいる今、整備の時期を逸してしまったという感想になってしまいます。

 約20年前工事が行われた秋田中央道路(片側各1車線、秋田駅の東西を地下トンネル構造、2.55㎞で事業費約700億円)を考えると、仙台都心部の地下トンネル工事のみで1,000億円は下らない。20年以上前に整備された仙台東部道路の高架区間(仙台東IC⇔仙台港北IC:5.2km)が520億の整備費とのことなので、仙台駅東側を高架で5㎞以上をこれから整備する場合はゆうに1000憶は超えるだろうし、そうなると全線で地下鉄東西線を超える2500憶~3000憶程度のビッグプロジェクトになってしまう。

 そうなると当然ながら無料通行を前提にはできず、都市高速的な有料道路としての整備が前提となるでしょうが、普通車通行料を仮に5~600円としてどの程度の利用が生まれるか。西道路との直結を前提とするのであれば、西道路を組み込み有料化し、料金収入を上積みすることも必要になるかもしれない。また、仮に2030年頃に事業化されても全通まで15年程度はかかるだろうから、そのころには交通需要も低下し、事業として成り立つかどうか、見通しは暗いのでは。

 そもそも、幹線道路が各2本以下と限られる北・南・西方面と異なり、東方面は利府街道、国道45号、元寺小路福室線、産業道路と、都心部からの幹線道路が4本整備され、整備水準は高い状況。

 今回のルート案公表で正直事業が前に進むのかと思ったら、まだこの段階の検討だったのかと拍子抜けとなってしまい、事業化されれば嬉しいにしても、ここまでのルート条件、事業採算性の厳しさから、トーンダウンしてしまいました。

 そもそも、仙台市は、地下鉄東西線を整備することで、都心部を含めた自動車交通量の減少を見込んでいたはず。定禅寺通りの車線減少もその一環。その前段で都心部を取り囲む自動車専用道路を整備し、通過交通の排除を進めていながら、環状道路は有料道路であることから、結局、仙台宮城IC⇔西道路⇔広瀬通 という無料ルートに大型車が流入してしまっています。この東道路を進めることで、都心部へのクルマの流入を促進することとなり、これまでの流れに逆行することとなるのでは。

 福岡や広島のように、都市高速が整備され都心部への自動車アクセスが向上することで、高速バスの定時性も高まるなど、良い効果は見込めるにしても、正直これから改めて事業化を進めるのは厳しいなぁと改めて感じた次第。

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2025年6月14日 (土)

仙台と福岡(その3)福岡市地下鉄各路線について


仙台と福岡(その2)地下鉄直結!福岡空港からの続編です。


 福岡市地下鉄3路線目として、2005年2月に天神南ー橋本間の12㎞が開業した七隈線。

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  事業化のためには、コスト削減で断面積の小さいリニア地下鉄が採用され、既存路線との直通を当初から断念することとなった上、開業前には、幾度となく需要予測が下方修正され、ようやく開業にこぎつけた感があった路線。この紆余曲折ぶりは、「仙石線相互直通+モノレール南西線」計画撤回により生み出された、仙台市東西線とも共通するところ。同じリニア地下鉄というところも。

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 将来の延伸を見据えて、天神の駅位置が天神地下街を挟んで南側に置かざるを得ず、既存の地下鉄空港線乗換のためには、その天神地下街経由で10分弱の改札外乗換を強いられ、地下鉄で博多駅や空港方面へ行くには、非常に遠回り感が生じていました。

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 博多駅へは途中の薬院駅で博多駅行のバスに乗り換えるか、それであれば、最寄りのバス停から直接博多駅行に乗った方が楽という、中途半端さがあだとなり、開業後も西鉄バスが真っ向勝負で博多駅直行バスをバンバン出し続けたため、当初は、七隈線の一日の利用者数が4万人台(需要予測11万人)と惨憺たる利用状況となっていたとか。

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 もともとの構想は天神南・中洲川端駅経由ウォータフロント方面と、途中の薬院駅で分岐して博多駅延伸という路線が考えられていましたが、ウォータフロント方面構想は中洲川端駅で既存2路線に乗り換えできるというメリットの反面、採算性に難があり、天神南行と博多駅行を分岐させる運行体系は無駄が多いということで、延伸計画は決まるまで時間がかかりました。

 せっかく整備した七隈線の利用促進のために、
2011年に実際開業した現ルートの整備が決定し、天神南駅からキャナルシティ博多経由で博多駅乗り入れ工事を開始したものの、記憶に新しい平成28年の工事中道路陥没事故で開業が2年程遅れ、令和5年3月26日にようやく博多延伸開業にこぎつけたとのこと。

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 七隈線雑感については、過去記事と重複するので、こちらを。

 開業前の低利用率から一転、博多駅延伸開業後の混雑状況が話題になっていた七隈線に初めて乗車しました。あえて朝ラッシュ時をめがけて、宿泊していた天神の宿を朝早く出て、終点の橋本駅まで向かって、平日の8時頃に博多駅に到着する電車に乗ってみました。

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 仙台の東西線で乗り慣れているリニア地下鉄の車両サイズですが、やはり窮屈感は否めません。向かい側の席が目の前に感じます。

 下りは6時台だったため、当然ガラガラで25分の道のりを橋本まで。この駅は、日本最西端の地下鉄駅とか。

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 一旦改札の外に出て、駅周辺を観察しましたが、幹線道路沿いで上空には都市高速環状線が走っており、向かい側には「木の葉モール橋本」というそこそこのサイズの郊外型SCが。かなりの郊外を感じるエリアで、この光景見覚えあると思ったら、仙台の三井アウトレット仙台港と産業道路・上空に東部道路という組み合わせに似ている。

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 橋本駅周辺は住宅密集地という訳ではなく、発展途上な印象で比較的低密な土地利用が広がる中、周辺の丘の上に見えるニュータウンからの乗り継ぎバスターミナルがありました。地下鉄で博多から30分の終点なので、郊外なのは当たり前にしても。

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広々とした橋本駅構内です。

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 7時29分発博多駅方面の朝ラッシュ時の電車に着席乗車でしたが、発車後3~4駅でようやく空席が埋まり、福大前駅あたりからは多少混雑してきました。

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 六本松と薬院の間の数駅はドア付近はかなりの混雑で積み残しも多少あるようでしたが、座席に挟まれた通路の部分は2列でつり革をゆったりとつかめるような混み具合で、足元もかなり余裕あり。ピークはもう少し後だったのかもしれませんが、最高140%の乗車率という前評判?に対し、多少拍子抜け。一応夏休み前の学生も多い時期でした。確かに、リニア地下鉄の小型車両では2列ではゆったりつり革をつかめるけど、3列になってまで中に詰めるのは困難という中途半端な車幅ではある。

 予想通り、西鉄乗換の薬院駅で混雑が緩和され、天神南駅で過半数が降り、あとは立ち客がパラパラ状態で博多駅方面へ。仙台もですが、実際混雑が激しい区間は数駅だけという感覚は同じでした。

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 一般的な地下鉄は都心部を貫通して双方向の利用がありますが(空港線はこのパターン。仙台の南北・東西線も。)、七隈線は博多・天神南・薬院という繁華街や乗換駅が終点寄りに固まっており、片道28分の片輸送気味で、福大輸送はあれども路線としては効率は良くないと感じました。延々と住宅地から小型車両4両編成で20分以上も乗客を集めていけば、さすがに車内が混雑するのは当然で、仙台の東西線でさえ、東の終点荒井から片道10分を超える仙台駅直前はかなりの混雑になる。

 ミニ地下鉄では大江戸線は8両編成で乗客を詰め込んでいるなど、1両当たりの輸送力が小さい分を編成を長くして対応するしかない。


 そもそも西鉄バスが地下鉄へのシフトに協力的であれば、七隈線は博多延伸時に6両編成への増結が可能になる程度の利用者数と経営状態にもなり得たと考えます。郊外からの片輸送を少しでも軽減させ、利用者数を確保するために、沿線のマンモス大である福岡大学を経由させ、車両基地設置の都合で引っ張った橋本方面へはかなりの遠回りの線形となるなど、苦労がしのばれる計画でもありました。

 西鉄バスとしても、当時真っ向から勝負に出たのは、元々経営していた路面電車が廃止を強いられ、市営地下鉄空港線・箱崎線への移行に協力したという背景から、これ以上ドル箱の沿線の乗客が根こそぎ奪われるのを避けるためというのは、民間企業の判断として分からなくもないですが、結局博多駅延伸されれば勝ち目がないと、乗務員不足もあり白旗を上げるタイミングは結果論ではあるとしても、悪すぎるとしか。


流石の空港線ラッシュ

 一旦ホテルに戻ろうかと思いながらも、せっかく博多駅まで行ったので、空港線に乗り換え、姪浜方面へ乗車。大濠公園を散歩しようと思ったら、大雨が降ってきたので、とんぼ返りで大濠公園駅で8時半頃のラッシュ状況を観察しました。

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 3分間隔で、6両編成の車両が双方向に行き交い、どの電車もかなりの混雑。入口付近はもちろんのこと、七隈線と異なりドアとドアの間もそれなりの混雑であることが感じられました。また、当然ながら、空港線なので福岡空港に向かう大きなスーツケースを持った乗客も目立ち、ラッシュ時に乗り込もうとすると結構辛そうでした。

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 特にJR筑肥線直通のJR車両の混雑が激しいことは、一見して分かりました。

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 糸島市や西区からの郊外電車の役割を担いながら、学生街でもある副都心西新、赤坂から天神までのビジネス街、繁華街中州、新幹線では西日本随一の大ターミナル博多駅、便利過ぎる福岡空港を貫通する効率の良い路線ということを実感。さらに、箱崎線にも昼間に15分毎に分岐する直通が走るなど、空港線については、50年前にこのような路線網と輸送体系を計画した福岡市は流石としか。ただ、西鉄との関係や、貝塚線との直通が実現せずに、結果的に箱崎線を持て余している反面、七隈線の低輸送力など、苦労しているところもありますね。


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 これは、訪問時の福岡空港駅の時刻表ですが、朝の8時台だけはJRからの博多駅乗換客対応かやたらと多く16本/h と仙台の南北線と同じ本数ですが、その他の時間帯は概ね7~9分間隔。夕方もそれほど多い訳ではない。空港発ということを考えると6両編成なので十分な本数と輸送量ですが、当然2駅先の博多駅ベースで考えると同じ本数でもやや少なく感じました。2年前の七隈線博多駅延伸で、天神方面へは七隈線利用という選択肢も出来たとはいえ実質別の駅であり、JRからの乗り換えを考えると空港線乗換よりプラス2~3分多くかかるので、空港線ホームで次の電車を待った方が早いという状況。

 空港線は、博多駅から2駅先(天神の1駅手前)の中洲川端で箱崎線から天神方面へ乗り入れる電車が昼間で15分おきにあるため、パターンがバラバラになっているという理由もあります。


 注)訪問時に抱いた感想に対し、今年の3月から地下鉄空港線で一気に19往復の増便が行われ、朝の7~9時台や夕方の17~19時台も毎時数往復ずつ増発されました。

地下鉄空港・箱崎線のダイヤ改正を実施します!

仙台市地下鉄は、平日昼間及び土日終日の減便で該当時間帯は10分間隔と、正直悲しくなります。

過去記事


 相互乗入がない仙台の地下鉄と比較すると、JR筑肥線及び箱崎線2路線からの乗り入れがあり複雑に感じます。

 筑肥線は地下鉄開業時に単線非電化で地上を走り踏切だらけの並行部分(姪浜~博多)を廃止したということで、実質地下鉄空港線が旧筑肥線の連続立体交差化のような複雑な経緯を持つとはいえ。

 仙台で例えると、仙山線の北仙台~仙台を廃止し、南北線に乗り入れているようなイメージか。その筑肥線を過去に廃止したエリアに地下鉄七隈線を整備したとか、都市の発展に合わせて苦労したところがあるように感じました。


存在感が薄い箱崎線

 大動脈の空港線から中洲川端駅で分岐する4.7㎞の枝線的な箱崎線。終点の貝塚駅で西鉄貝塚線に乗り換えができます。

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 福岡市地下鉄の最初の開通区間は、室見ー天神という中途半端な区間で、博多駅乗入れも仮駅を設置して段階的に実施したというように、いろいろ苦労してきたようです。意外だったのは、博多駅までの開通より前に、天神から分岐駅の中州川端駅を経由して箱崎線の呉服町駅までが第二期延伸区間だったこと。現在は大動脈である空港線に対し存在感が薄い箱崎線ですが、中洲川端駅で2層でホームが設置され、建設時から2路線が一体的に整備されていたんですね。

 地図をみると、中洲川端駅から東にまっすぐ進む箱崎線がメインで空港線が南に分岐するようにも見えます。というのも、西鉄が運営していた路面電車では、姪浜から九大箱崎キャンパス付近までがメイン路線だったようで、その代替として箱崎線計画されたこともあるのかと納得。

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 沿線には、箱崎に県庁や九大のキャンパスなどの目的地となる施設も点在していましたが、平行してJR鹿児島本線も走っており、県庁と九大病院はJR吉塚駅、箱崎キャンパスはJR箱崎駅からも徒歩圏。さらに、地下鉄・西鉄の貝塚駅近くに、JR新駅の設置が決定しており、更に競合が激しくなります。

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 それに、九大は、医学部のキャンパスと大学病院は残っているものの、箱崎キャンパスは六本松キャンパスと合わせて伊都キャンパスへ移転したため跡地となってしまい、利用者である学生・教職員はごそっといなくなってしまいました。


ただ、跡地の約28haについては、住友商事を中心とするグループが落札し、再開発が始まります。

 規模とすると、東北大学農学部(雨宮キャンパス)跡地が9.3haなので、約3倍の面積に、居住、商業、医療機能が整備されるということなので、内容も雨宮キャンパスの拡大版というイメージですね。9.3haの雨宮キャンパスでも15年以上かけて今秋のイオンモールオープンでようやく完成となることを考えると、10年以上かけて徐々に整備していくことになりそうですね。住居も2000戸とあすと長町の高層マンション群に匹敵する戸数が徐々に整備されるとなると、利用者も徐々に増えていくことが見込まれます。

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 天神方面へはこの箱崎線各駅から一部直通(毎時3~4本)で行けますが、博多駅方面は中洲川端駅で乗り換えが必要。

 よって、博多駅などJR鹿児島本線沿線は、JR箱崎駅から2駅5分で博多駅と、利用者はJRと地下鉄に分散しています。利用者目線では地下鉄もJRも(そして西鉄バスも)使えて便利ですが、 福岡市交通局としては、地下鉄開業後に国鉄からJRになり本数が激増し、また駅高架化により駅が使いやすくなるなど競合路線の利便性が高まったため、利用者が伸び悩んだことは誤算でしょう。朝ラッシュ時も昼間も変わらず毎時7~8本の運行というのは、空港線優先ダイヤとなっていることと、JRと並行していることで、この本数でも十分に運べるということか。

 とはいえ、上述のJR貝塚新駅は、キャンパス跡地の利便性を高めることになるでしょうし、箱崎線にとっても、最大60円の乗継割引はあるとはいえ、これまで、乗換駅の千早と貝塚で「JR⇔西鉄⇔地下鉄」と乗り換えるのは3社を経由して割高なため利用を敬遠していた天神方面との利用客が、JRから直接この貝塚新駅で地下鉄に乗り換えることも想定され(混雑する博多駅乗換からのシフト)、多少は箱崎線の活性化にも多少寄与することに。

 また、西鉄貝塚線と地下鉄箱崎線の乗換駅である他、物流系の事業所や公営住宅が点在するエリアとしての位置付けで、駅前には空き地と自転車置き場が目立つような貝塚駅周辺ですが、箱崎キャンパス跡地開発のエリアにも含まれ、JR新駅との間も整備され、新駅開業後は大きく印象が変わることになりそうです。

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 写真は西鉄貝塚線と乗換できる箱崎線貝塚駅改札です。

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 地下鉄ですが地上駅で、振り返ると西鉄の改札が。平面で1分程度で乗り換えが可能です。

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(おまけ)地下鉄直通構想頓挫&輸送力不足 貝塚線

 朝夕でも概ね10分間隔、昼間や休日は約15分間隔です。概ね地下鉄が昼間7.5分間隔なので、接続する地下鉄は2本に1本の空港線直通に合わせているようです。

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 2両編成のレトロな電車で、最近置き換えのニュースがでたようですが、昼間では6両編成の地下鉄からの乗換者でさらっと埋まる程度。

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 朝夕は、千早駅近辺の再開発地に林立するマンションからの利用者でかなりの混雑になっているようですが、そもそも2両編成かつ朝夕でも単線約10分間隔という輸送力不足が理由。せっかく20年以上前に香椎副都心土地区画整理事業のJR線と合わせて西鉄香椎以西が高架化された際に、地下鉄直通にも対応できるような設備にはなっているようですが、2007年の末端区間の一部廃止(西鉄新宮ー津屋崎駅)、交換設備の撤去などで朝晩の本数が減っています。

 以前は、博多駅近くの千鳥橋まで乗り入れしていた西鉄宮地岳線の貝塚以西が西鉄市内電車に組み込まれ、結果的に廃止→箱崎線代替となってしまったことで、中途半端な位置づけとなってしまった現西鉄貝塚線。地下鉄箱崎線が開通した1980年代から、アイランドシティへの鉄道乗り入れ構想に組み入れられるなど長年検討が進められていた、地下鉄箱崎線との直通計画についても、基本的に西鉄側が消極的だったこと、貝塚駅を挟んで輸送力に差があることから、直通方法や乗り入れ区間、両数など市を中心に様々な検討が行われてきましたが、B/Cの低さから事業化に踏み切れず、結局霧散してしまったようです。

 西鉄としても、貝塚駅まで200円程度しか収入が得られないのであれば、都市高速経由で天神まで送り込んで4~500円程度の客単価の路線バスを走らせた方が得策というのも分からないではないですが、ここも七隈線と共通するような、連携の悪さを感じさせるエピソードだったりします。

競争による高い利便性の確保

 まぁ、このように地下鉄と西鉄、そしてJRが緩い協調状態を保ちながらも、競争で乗客を獲得してきた結果、都市への人口集中と相まって、高いレベルでの複数の交通サービスが提供されているので、福岡という都市にとっては結果オーライではありますが、今後さらにバス運転手不足が進んだ時に、西鉄バスの高い利便性がどれだけ維持されるかというところは気になります。JR九州も値上げが進み、初乗り200円と地下鉄に近い水準となっている他、福岡近郊でも減便が行われており、限られた交通サービスの資源を協調して効率的に維持して良く必要があるでしょうね。

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2025年6月 9日 (月)

仙台と福岡(その2)地下鉄直結!福岡空港

 


仙台と福岡(その1)究極のコンパクトシティ福岡 からの続編です。


最高のアクセス!福岡空港

 まずは今回初めて利用した福岡空港の感想から。

 過去2回の九州上陸の際は鉄道を利用したので、飛行機で入るのは初めて。

 よって、福岡空港利用も初めてで、都心部からの地下鉄直結でのアクセスの良さは耳にタコができるほど聞いていながらも、実際どんなものかと楽しみにしていました。

 仙台からの約2時間10分のフライトで、北側のアイランドシティ方面からの着陸でしたが、港と街と空港が狭い範囲に集まっており、集合住宅が広い範囲に立ち並ぶ市街地に囲まれた空港の立地条件を実感しました。

 行きは荷物は特に預けなかったので、すぐに到着ゲートを通過できました。

 到着ゲート前には高速バスの案内もあり、コロナで路線が減っているようでしたが、久留米や熊本、日田には1時間毎、その他佐賀方面にも路線があるようでした。これは国内線ターミナル経由の高速バスですが、その他に国際線ターミナル経由は長崎や湯布院など、多くの路線があります。国内線ターミナルから国際線ターミナルへは滑走路を挟んだ位置関係なので、無料バスでの連絡です。

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地下鉄への案内に沿って、吹き抜けのエスカレーターを降りた先には。。。

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地下鉄の改札が現れました!ターミナルビル直下なので、確実に仙台空港と空港駅の距離よりも近い。新千歳空港とも同じようなイメージですね。

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博多駅まで5分、天神駅まで11分。ともに260円と早くて安い!

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 それに、地下鉄空港線は、概ね地下鉄線内折り返しとJR筑肥線直通が交互に発着するパターン。

 空港線の終点姪浜より先はJR筑肥線に乗り入れ、昼間は大部分が途中駅の筑前前原駅までですが、唐津方面まで直行できる電車もあります。

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 本当に、着陸して10分後には地下鉄に乗っているというのもあながち大げさではない利便性です。

 今回は、平戸方面が最初の目的地だったので、10時9分発の貴重な快速西唐津行を待って乗車しました。

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地味な福岡市交通局の車両と異なり、JR九州の電車はデザインが独特で目立ちます。

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 車内も、ビビッドな赤色ドアに対し、落ち着いた緑色の座席。1席ずつモケットが分かれているのが定員着席を促せて良いですね。

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 空港発では、6両編成の先頭だったためガラガラでしたが、博多駅で立ち客が出る位乗ってきて、天神で入れ替わりながらも、それなりに埋まった状態で姪浜でようやく地上にでました。その後筑肥線に入ってからは、徐々に降車していき、大部分の電車が3両編成の区間電車に系統分離されている筑前前原駅以西は車両で5~6人という状況。朝晩はともかく、昼間は6両編成での唐津までの直通は無駄が大きいため、徐々に減らされているのでしょう。

 筑前前原の直前の九大学研都市駅。九大が箱崎と六本松キャンパスからの移転先で、大学名を称した駅からさらにバスに乗らなければならないという、アクセス面ではいろいろ言われていますが、それでもこの博多駅から30分という乗車時間の新駅前にこれだけマンションが林立していることに驚きました。福岡市の西端にあたる場所のJR沿線ですが、地下鉄直通で沿線からはみ出た住宅需要を受け止めているのでしょうし。
 また九大の教授や職員向けの住居需要もあるのでしょうが、中心駅から30分圏のJR西条駅からバスで10分圏という同じような遠隔地に移転している広島大学と比較してしまいます。都市の勢いと大学の成り立ちの差があるとはいえ。イオンのそこそこの規模のSCも立地し、利便性の高い駅となっています。

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 唐津までの車窓は、見事な快晴のなか綺麗な海を眺めながら、遠くに来たという旅情を感じていました。自宅を出発して4~5時間後に味わうこの日常とのギャップはいつもたまらない。

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(おまけ)お土産探しの失敗

 5年前の北海道旅行の時は、札幌駅で概ねお土産を購入し、あとは新千歳空港で買い足してという感じだったので、博多駅でいろいろとお土産を探したのですが、ほとんど福岡・博多のお土産かつ、苦手なめんたいこ・たらこ攻撃に一気に意気消沈。長崎や熊本のお土産は極わずか。荷物になるからと現地では買わなかったんですよね。

 せめて福岡空港に行けば何かあるかなと思い、地下鉄で空港へ移動しましたが、結局博多駅と同じような感じで各県のお土産は2割程度と唖然としました。

 北海道を代表する空港である新千歳空港とは異なり、各県ごとに空港があるので、ターミナルビルで扱うお土産も基本”県ごと”ということを実感。

 ということで、結局博多駅に地下鉄で戻って、駅ビルで買い残しのお土産を購入し、また空港に戻りました。

 こんなことが普通にできるのも、この福岡空港の立地条件故!思い立って10分後には博多駅に戻れたのですから。地下鉄の博多駅もJR駅の真下なので、改札抜けてすぐに駅ビルやJR改札の近くに出ることができるのもすごいと思ったところ。

 それに、地下鉄なので安定した運行で、いざというときには路線バスやタクシーで行けるという安心感も大きいですね。

 仙台空港アクセス線は、地上を走るJR線区間(南仙台付近や仙台駅付近)での踏切事故などで、月数回はストップしており、離陸ギリギリの時間の利用は怖くてしょうがないという状況なので。


仙台と福岡(その3)福岡市地下鉄各路線についてに続きます。


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«仙台と福岡(その1)究極のコンパクトシティ福岡