さて、新潟訪問の続きです。
前回記事
わずか2時間余の滞在時間で、2年前にバスで通過しただけだった古町を訪れました。
今は亡きかつてはBRTと称された萬代橋ラインにて、古町へ向かいましたが、雨と寒さでテンションが低くなっている中、お目当ての連接バスも来ず、そして知ってはいたけれど、均一料金が210円から260円にアップしており(新潟駅ー万代間を除く)、全線に乗るんだったらともかく、たった5分ちょっとの乗車でとがっかり感。そもそも快速便なのに5人程度しか乗っておらず、万代から多少は乗ってきましたが、平日の昼間とはいえ確かに連接バスにする必要もない乗車状況。仙台市地下鉄の昼間10分間隔もがっかりですが、新潟市の幹線系統と位置付けられている街の中心に向かう基幹系統バスで10分間隔、そしてガラガラという状況を目の当たりにすると、何ともいえない気分。
かつての古町の中心
古町モールを横目に見ながら、まずは新潟三越跡とNEXT21、新潟大和跡の再開発ビルである「古町ルフル」が集まる西堀交差点に。
交差点を取り囲む建物からは街の中心地という賑やかさを感じます。
その3つの核的な施設を結んでいた、地下街西堀ローサにまずは潜りました。前回震災前に来た時でも、結構厳しい状況ながらも、それなりに店は並び、そのご大規模なリニューアルでテコ入れされたと記憶していました。
まるで地下鉄に入るような不思議な感覚で地下に潜ると、こんなレトロな地下街が。
訪問したのは冬でしたが、暖房もバッチリで通路としては使い勝手が良いと思いながらも、地下街の店舗は正直厳しい。
結構な長さがありますが、半分以上の店舗名がテープで覆われているように、結構な歯抜け状態。
端から端まで10分くらいかけて歩いてみましたが、ため息しか出ませんでした。
この地下街の店舗がかつては全て埋まっており、新潟の最先端のストリートとして人でごった返していたという情報からすると、なんとも言えない。地上の賑わっていたアーケードがシャッター街になった状態は見慣れていますが、それでも人が住んでいたりでここまで寂しい雰囲気にはならない。入居しているのはチャレンジショップ的なもの、飲食店、そして消費生活相談所のようなもので、正直まともに商売になっているところはあるのだろうかと思わせる位の状況。
この地下街も全店舗を撤退させて運営会社が2025年で解散するとの発表がありましたが、地下駐車場や周辺施設との連絡機能もあることから、通路自体の閉鎖はしないようですが、どのような未来が待っているのでしょうか。
そのような西堀ローサからの薄暗い連絡通路が、NEXT21に繋がっていました。
ファッションビルからお役所ビルへ(NEXT21)
地下1階からセブンイレブンが、1階を含め、クリニックや薬局などで埋められています。
1階から上空に広がるアトリウムについては実質無料休憩所で、外で買った弁当を広げる市民が多し。
建物の2〜5階は、新潟市中央市役所として活用されていましたが、正直仙台のアエルのようなガラス張りの吹き抜けもある高層ビルが区役所として活用されていることについては、石巻市役所の旧さくらの百貨店の建物は閉じられた建物で「これもありかな」と思わせたのに対し、更に役所らしくなさを感じました。
中心市街地活性化として、行政機能の街中移転という施策はよく使われますが、大和、三越という百貨店2店舗、そしてラフォーレというそもそも買物する場所がなくなった古町。飲食などは期待できるのでしょうが、人を集めさえすれば良いという訳でもないよなとも。でもやらないよりはマシとも。
なお、このNEXT21は、かつて移転した新潟市役所跡地の再開発と聞いて、頭が痛くなりました。役所跡を再開発したけれどうまくいかず、結局役所機能を戻すという例を聞くのは初めて。。。
そもそも郊外の新光町の現地に移転した県庁跡地に、かつて玉突き的に新潟市役所が移転したとか。県のしりぬぐいをさせられて、結果的に中心部が衰退し、二重の意味で労力を掛けざるをえなかったということには気の毒な面も。
上階はフィットネスクラブ、オフィス、レストラン街ですが、レストラン街はほとんど営業していません。仙台のSS30やアエル、アジュール仙台(現大樹生命仙台本町ビル)もですが、地方都市の超高層ビルの飲食店街は長続きしない印象。
NEXT21は震災前にまだファッションビル「ラフォーレ原宿新潟」が入居していた時にを見に来たことがありましたが、その時は、仙台駅前のEーBeansのようなレディースファッションの集積地という華やかさを感じたものでしたが、ハコは一緒とはいえ全く雰囲気が変わっており驚きました。
屋上の展望スペースも雨ながら眺めは良かったのですが、そこの無料休憩スペースには区役所やオフィスに勤務されていると思われるかなりの方々の昼食スペースに変身していました。皆、弁当やサンドウィッチを慌ただしげに食べており、居心地の悪い視線を感じ全く落ち着くことができず、さっさと退散せざるを得ない状況に。
前回新潟を訪問した際に寄った、新潟日報メディアシップでも感じましたが、1階の一等地が休憩スペースに解放されており、あらゆる年齢の方々が長時間滞在しコンビニやパン屋で買った物を食べていること。これが仙台であれば、ちょっとした待ち合わせに短時間使用するような使われ方をしていたり、うまくお金を落とすためのカフェなどが設置されている印象ですが、一等地の使い方として勿体無いというか、違和感を感じる場所が多かったと感じました。
過去記事
百貨店からお役所ビルへ(古町ルフル)
そして、また西堀ローサに戻り、向かい側の再開発ビルの古町ルフルへ向かいました。綺麗な連絡口が整備されています。
エスカレータと立派な階段が整備されており、地下街の現状との落差にびっくりしました。
ガラス張りで今風の再開発ビルです。
NEXT21展望台から。
低層部は商業施設、上層部はオフィスと思ったら、3階から6階までが何と新潟市役所ふるまち庁舎とか。その上も公共系(金融・産業関係)の団体が入居しているなど、公共施設ビルになっているではないですか。
低層部もドラッグストアとコンビニエンスストア、そして金融機関。正直百貨店跡地に再開発ビルとしてわざわざ作る必要があったものかは疑問に思いました。まぁ、リーシングがうまくいかずに、後戻りできなかったパターンと思われます。
入り口部分のオブジェというか見事な意匠です。
建物の前面とバス停との間には、北国での冬の寒さを避けるためにイベント広場として使えるスペースが整備されていました。
新潟駅方面へのバス停が目の前なのは良いですね。
キッチンカーが出店し、ここにも無料休憩スペースがありましたが、お金をかけずに休憩する場所がここまで整備されている都市は中々見ない。ある意味周辺の専門学校の学生などにとっては居心地がいいのかもしれない。一方、カフェが見たかぎりドトール1店舗のみでしたが、スタバもNEXT21から撤退しているなど、大手チェーン店の出店対象から外れてきている危機的な状況。マックも無くなったのでしょうか。個人の喫茶店は点在しているのが救いですが、気軽に入ることができるチェーン店もあると良いのに。
先日行った、長崎市の浜町アーケードは、長崎駅から市電やバスで10分以上かかる場所にあるどちらかというと地元民向けの商店街なのに、ドトール、マック、コメダ、サンマルクなどチェーン店のカフェがこれでもかと出店しており驚いたもの。
そういう意味で、この一体は、NSGグループが経営する専門学校を集積させ、街中に若者を集めるという施策を長年とっており、これまでは比較的評価されていたという印象でしたが、高齢化が進み新潟島の人口が減少し、街の中心が新潟駅や万代へ移っている中で、外から集めているのがその購買力の小さい学生だけでは、街を維持するのは難しい。大和と三越の閉店で、百貨店の客層である高齢者も万代の伊勢丹に移ってしまったのか。
それに加えて公共系の就労者を集めて飲食店などのある程度の下支えにはなるでしょうが、それにしても隣接する古町モールの衰退ぶりには驚きました。商店街の方がバス通りからの入り口でさえ、空き店舗が目立っている状況で、古町ルフルの1階部分の店舗も正直魅力的な店舗を入れられていない。
NSGグループの奮闘ぶりは非常に感じました。
厳しいふるまちモール
震災前に新潟訪問した際には、三越、ラフォーレ、大和とまだ大型商業施設が健在の頃で、とにかくふるまちモールの元気さと長さとには驚きました。バス通りに近い部分は全蓋式、離れたところは一番町4丁目のような片側アーケードがどこまでも伸び、チェーン店から、地元の味がある店舗や飲食店などに徐々に移り変わっていく様子が非常に新鮮でした。
5年位前には、カミフル(上古町)と呼ばれる白山神社寄りの商店街を見学する機会があり、商店街の端っこで苦しんでいるアーケードの維持、テナントリーシングや運営の工夫について話を聞くことができ、ほとんど空き店舗がないということでした。
この長いモールが結果的に機能分担して頑張っていることについては、仙台のアーケードのように地価や賃料が高すぎて、ほとんどがチェーン店の集まりとなってしまい、通行量が多いけれど面白みのない街並みになってしまっていることの良い意味でのアンチテーゼとも。
仙台市役所が中心となって、東北芸術工科大学の馬場教授に協力を得て「リノベーションまちづくり」として、肴町、立町など、アーケードから程近くながら、古い建物が生かされていないエリアに家賃の安い面白いビジネスを生み出すプロジェクトをここ10年進めていますが、地価が高すぎる仙台では中々進まない弱点が。地価が安く実験的な店舗を若者の多いエリアに出しやすくなっているというのは大きなメリット。
今回、カミフルまでは時間がなく、天気も悪く回ることができませんでしたが、平日の昼過ぎとはいえ、古町の厳しい状況を十分に感じました。本当に歩いている人がほとんどいない。雨かつ、専門学校が休みに入り、オフィスワーカーが働いている時間帯と言ってもここまでになってしまうのか?
今回は雨で諦めましたが、並行してふらっと本町にも庶民的なアーケード街が伸びており、今度閉店しロピアが入居することになったイトーヨーカ堂丸大新潟店が位置しているなど、古町といえばアーケードと商店街というイメージがあっただけに、核となる大型店舗がほぼ失われると、街中の買い物は万代シテイ、そして、今後は新潟駅ビル、そもそも、郊外のショッピングモールや郊外型専門店で十分となってしまっているのか。買回り品のふるまちモールよりは、イトーヨーカドー丸大がある食料品などのふらっと本町の方が人通りが多いという印象でした。
確かに、新潟市中心部は、前回記事で取り上げた新潟駅新駅ビル、そして衰退気味とはいえ誰もが認める街の中心である万代シテイに専門店が集積し、古町の立ち位置が厳しくなっていますが、やはり街の軸として打ち出して投資を促すには、バスでは不十分で効果を発揮しないということを改めて認識。
新潟市の前に訪問した宇都宮市、そして今回九州で訪問した長崎市、熊本市という政令市、中核市を見ても、街中の路面電車のシンボル性、沿線の市街地形成における信頼性は圧倒的です。
白山駅から古町、万代、そして高架化された新潟駅を貫通させ、駅南のビッグスワン方面といったような、中心地と郊外をバランスよく結ぶLRTは新潟にはピッタリと考えられており、政令市化に向けた21世紀初頭は「政令市でJR以外の軌道系交通機関がないのは新潟市だけ」という現状から、行政も地元団体も積極的にLRT導入に向けた提案をしており、宇都宮市よりも新潟市での導入可能性が高いと思われていましたが、2015年に開業した実験的なBRTもK産党や地元マスコミの餌食となり骨抜きされ、LRTまで昇華させることはおろかただのバスになってしまいました。
もはや、手遅れ状態に。
過去記事
三越跡地の再開発計画
新潟三越は、同じグループの伊勢丹が万代に百貨店を構えており、新潟での2店舗は維持できなかったのか、実質的に伊勢丹新潟店に統合されました。この跡地は37階建てのオフィス、マンションを含む東京建物による再開発が行われるとのことで、街中に居住者を集める流れからも、再開発が成功して欲しいと思いますが、商業機能は古町ルフルの二の舞になりかねない。写真は、店舗跡。
閉店すると、当然寂しげな光景になりますが、前向きな閉店であることをアピールするような掲示物がありました。
「みーつ」とは、meetsと三越を掛けているのでしょうか。
仙台でも、耐震工事やリニューアルの必要性を見極めるために一旦閉店したフォーラス前にもこのようなメッセージがありますね。
新潟市と熊本市
このような古くからの繁華街の古町は厳しい状況ですが、そうはいっても新潟市全体が衰退しているわけではなく、前回取り上げた新潟駅周辺や都市型大型商業施設が集積する万代シテイに商業機能が移ってしまったという面が大きく、街の新陳代謝の一環と言えるかもしれません。
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今回の記事を書くにあたり、3月の新潟市訪問時よりも更にネガティブなトーンになった理由としては、同日に訪問した宇都宮市のライトラインを目の当たりにしてということもありましたが、同じく新興政令市である熊本市に先日訪問した際に感じた賑わいの度合いの違いからです。
新潟市は人口77万人。熊本市は73万人とほぼ人口規模としては同規模。もちろん合併前の人口が約50万人都市だった新潟市と、もともと周辺市町村合併前も65万あり市域も比較的コンパクトだった熊本市ではおかれている条件に違いはありますが、九州新幹線開業後のJR熊本駅周辺開発と、熊本城至近の従来の中心市街地の賑わいを両立させていることに、驚きを感じたものでした。
賑やかなアーケード。幅の広さにもビックリ。
バスターミナルやホール、ホテルなどの超大規模複合開発の「サクラマチくまもと」
熊本は、近年近郊自治体である菊陽町への台湾半導体企業のTSMCが進出することで、盛り上がっていますが、そもそも渋滞が激しく、バイパスを作って一旦解消しても、クルマが増えいずれ元通りに元通りになってしまうことの繰り返しであること、公共交通機関は、以前からの市電を生かし街中の求心力を保っていますが、JRや私鉄(熊本電鉄)などの軌道系が弱く、JR熊本駅の乗降客が3万に留まっており(新潟駅は乗降客で6万人を超え熊本市の倍以上)、複数社運行する路線バスの存在感が大きいですが、公共交通機関の分担率は実は熊本市よりも新潟市の方が高いということに驚きました。
このような状況の中、熊本県と熊本市が協力して、渋滞解消と公共交通の改善に向けたメッセージを発しています。
やはり、クルマ社会の限界を感じないと動かないというのは、宇都宮市もインターパークなど商業の郊外化でオリオン通りなど都心部の空洞化が進行し、また鬼怒川以東の工業団地への渋滞解消策が限界に達したこと。LRTの導入が発表された那覇市も同じでしょう。
その点、新潟市は高規格バイパス網の整備が進み、さらに都心部に向かう栗の木バイパスの立体化も進むなど道路交通網に恵まれ、公共交通機関への理解が集まらない状況というのが、持続的な都市構造を作り上げるためにはあだになってしまった印象。やっぱり、「バイパスサイコー」というメンタリティが市民、県民、そして行政にしみ込んでしまったか。
しかし、この政令市ワーストの公共交通分担率の中、街中に驚愕に賑わいを保っている熊本市。仙台も負けてしまうのではないかと思わせるものがありました。
次回記事は、この点について深めて行きたいと考えています。
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