2024年12月26日 (木)

九州旅行編(その4)課題満載の公共交通  政令市熊本

夏の旅行記事で積み残していた、政令市熊本編の続きです。


前回記事

前編では、街中の商業集積と賑わいの凄さについて記事にしたところですが、都心部に集まる人達の足となる都市圏内の公共交通網について。

 

賑わう都心部への集客手段

 都心部が賑わっている都市の特徴として、やはり軌道系交通機関が発達し、大量の都心部への来訪者を短時間で運ぶことができること。

 東京大阪名古屋そして福岡のような、JR・大手私鉄のみならず地下鉄が発達しているような都市は、都心部の中心駅は数十万人規模以上の乗降客数を数えており、就業者、買い物客など多くの輸送需要をまかなっています。

 札幌や仙台は、大手私鉄は存在しませんが、JRと地下鉄で都心部にダイレクトに短時間でアクセスできる路線網で、複数路線が乗り入れる札幌駅(8方面)、仙台駅+あおば通駅(10方面)は地下鉄とJRを合わせた乗降客数がコロナ前で30万人以上、大通駅(地下鉄6方面+市電)などは、乗降客20万人弱と、都心部の賑わいを生み出す人の流れも納得できるところです。

 一方、熊本市は、都心部の軌道系交通機関は市電と街外れにターミナルを持つ熊本電鉄のみ。広島市と同様、JRの中心駅と都心部が離れており、15分程度で路面電車で結ばれているのは共通ですが、新幹線の通るJR中心駅の利用者数として、熊本駅は新幹線を含めても乗降客数で約3万人、広島駅の約15万人と比較しても1/5。

 その熊本市電は全線で利用者数3万人/日、熊本電鉄はターミナルの藤崎宮前駅の利用者数は2,000人台/日とローカル線並と、鉄道は存在していても輸送力が貧弱な故に、路面電車で運びきれないor路面電車沿線外との需要が多いのか、5社がひしめく路線バスは広島と共通する面があるかもしれませんが、利用者数もそれほど多くない。

 なので、公共交通機関を利用せずに済む近隣の住民が一定数いるとはいえ、都心部に公共交通機関で流入する人数が1桁少ないのにも関わらず、この都心部の賑わいを維持していることが不思議でたまりません。クルマでの流入が多いとしたら、郊外の大規模SCとの競争の中で街中も選ばれているということに。

 

サクラマチクマモトバスターミナル

 前回記事でも取り上げた複合施設サクラマチクマモト内の巨大バスターミナル。路線バスは熊本駅からこのターミナルを経由し、各方面に向かっている便が多い印象。

 高速バスで存在感が大きいのは、やはり福岡とを約2時間で結ぶ高速バス「ひのくに号」。大きなライバルとなった九州新幹線の開業後に高速バスの利用者が増えたというのは驚き。

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 博多駅・天神までの約2時間強の直行便は概ね平日毎時2~4本、休日は毎時3~6本。

 それとは別に、途中インター経由便と、福岡空港行きがほぼ毎時各1本と、両都市の都心部直行というメリット。

 片道2700円、そしてスマホ4枚回数券だと最安片道2000円と、新幹線料金の半分で気軽に行ける運賃です。

 高速バスは、九州道のインターまで多くのバス停を経由する反面、乗り換えなしのメリットが。

 新幹線は博多駅ー熊本間最短35分とはいえ、熊本駅までのアクセス、そして天神までの移動を考えると、発着地によってはバスもそれほど変わらないことで、新幹線開業前と比較すると全体のパイが拡大しているとか。そうはいっても、コロナや御多分に漏れず乗務員不足でピーク時と比較するとこれでもバス本数は減少傾向。 


 東北地方では仙台ー山形線が約 1時間強で80往復程度運行しており、本数の多い路線の代名詞となっていますが、在来線が不便で本数が少ない故。

 福岡ー熊本線は、2時間超の所要時間で新幹線も毎時3〜4本運行しているのに、その仙台ー山形線を超える本数というのは正直すごい。新幹線が平行する同じような関係だと、仙台ー福島は、新幹線が毎時2〜3本でもバスは毎時1本程度まで少なくなっており、仙台ー盛岡線も同程度。


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 人口規模は倍以上違うとはいえ、両政令市間の旺盛な移動需要を垣間見ることができました。これだけ福岡の吸引力が強くても、賑わいを見せる熊本市。本当に良い意味で理解し難い。

 それ以外で本数が多いのは、熊本空港リムジンバスで、都心部から空港行は15~20分間隔で運行しています。その他は本数が少ないながらも由布院方面への九州横断バス、天草方面への特急バス、長崎、鹿児島方面へのバスが発着しています。

輸送力不足に苦しむ熊本市電

 熊本市中心部の賑わいを産んでいるのは、この市電という分かり易い軌道系交通機関が残っていることも大きいでしょう。

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 熊本駅方面から、中心部を通り豊肥本線新水前寺駅を経由し、健軍町までの1号線と、中心部手前で分岐しJR上熊本駅を結ぶ2号線が残っており、比較的高頻度で運行されています。一乗車で180円均一と、長崎よりは高いにせよ十分使いやすい運賃。バスは距離制で健軍方面の遠距離で市電が競争力を持つなど、常に混雑しています。

 ただし、昔ながらの単車が中心で輸送力の高い連接車の導入はごく一部と、JRからの乗換需要があり(熊本駅、新水前寺駅、上熊本駅)積み残しも生じているのに、運転手不足で減便を強いられるなど、この残った路面電車を活用しきっているとはいえない状況。それにいかんせんバスよりも遅く、遅れも多いというデメリット。

 訪問の際はほぼ半日しか時間がなく、バスのフリー切符があったこと、翌朝市電に乗ろうと思ったら大雨でおっくうになり結果的に市電の乗車は断念しましたが、熊本駅と都心部の間はバスの方が本数が多く地元民は使い分けている印象がありました。

 市の運行ということで、採算性にある程度目をつぶって連節車両のさらなる導入や電停の改修などを政策的に進め、利用者を増やす取組を図れないものかと思いましたが、公営企業ということで、多額の赤字を出せないことから縮小均衡に陥っているといのは、仙台市バスも同じ。

 特に、熊本は市電もバスも運転手不足に陥っているようですが、原因としてTSMC進出での都市圏全体での賃金アップ圧力の影響もあるのでは。特にバスは工場と駅とのシャトルバス運転手需要も高そうだし、そもそも新規採用で集めるにしても他業種と比較して賃金が見劣りしてしまう。

 都市圏としての発展が続いている反面、全国有数の渋滞都市という汚名返上のために、切羽詰まって公共交通機関の利用促進に県と熊本市が協力して取り組んでいる方向性を示していながらも、課題が大き過ぎて、どの方面も中途半端な取組となっている印象を持ちました。

 そして、道路整備は続き、交通量の増加といたちごっことなるので、せっかくの軌道系既存インフラを活用する方向が望ましいのでしょうが。

個性的な熊本電鉄

 都心部の上通商店街の先には、いろいろ複雑な経緯があったようですが、かつて市電に譲渡した路線が廃止されたことで接続が切られ孤立した、熊本電鉄藤崎線(本線)都心側ターミナルの藤崎宮前駅。この都心部の手前にターミナルが残されているという中途半端さは、金沢市の北陸鉄道石川線野町駅ともイメージが被る。

 非常に中途半端な場所にありながらも、上通と並木通りで繁華街に徒歩10分程度で繋がっていることもあり、ギリギリ及第点の立地条件。ただし、建設から30年もたっていない駅ビルの奥に駅が位置していながら、11階建てのビル自体が廃墟化しており、外来者にとっては非常に場所が分かり辛い。

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 ターミナル駅で1日の乗降客が2000人台というのは正直厳しいながらも、朝夕は15分間隔、基本的に30分間隔で23時台まで運行されるなど、地方都市の鉄道としては十分頑張っています。

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 人口が増加傾向で渋滞が激しい合志市方面との足でもあり、有効活用が期待されながら、御代志駅から藤崎線と分岐する北熊本駅を経由し上熊本駅を結ぶ菊池線と一体での運用となると、都心部側の行き先が2つに分かれるのは本数上も不利。検討されたバス転換も棚上げ状態で、利便性向上のため事業者側から都心部延伸LRT化や市電への再接続なども提案しながらも、熊本市側が乗り気ではなく実現は困難に。

 なお、熊本駅方面には上熊本駅経由でJRで行けるというのも、上述の北陸鉄道と被る不思議な共通点(西金沢駅でIRいしかわ鉄道乗換で金沢駅に行ける)。経営が厳しいながらもバス転換も厳しい規模というのも。
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 改札もホームもローカル感満載ながら、LCDでの案内が設置されています。

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熊本の副都心?JR熊本駅前

 熊本市の都心部の強さは、かつてはJR熊本駅周辺の集積の弱さ故というところがありましたが、2011年3月の九州新幹線全通により、博多駅を越えて山陽新幹線方面(小倉、広島、岡山、新大阪)までの直通が実現し、都市間の交通拠点としての位置付けが一気に高まりました。新幹線の開業に遅れながらも熊本駅の前後では在来線も高架化が実現し、その在来線の高架化で生み出された広大な駅前広場の再整備、そして博多駅に次ぐ巨大な駅ビルアミュプラザの開業と、都心部に対抗する副都心的な位置付けとして、生まれ変わったようです。

 横長で黒基調、存在感が半端ない新熊本駅舎。駅前広場とバスターミナルも広々しています。 

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 駅前広場の北側には、ビックカメラが低層階に入居するJRのオフィスビルが。

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そして、駅前広場の南側には、巨大駅ビルのアミュプラザくまもとが。駅前広場には2階レベルで歩行者デッキが整備されています。

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 このデッキは、市電乗り場や、駅真正面に整備された「くまもと森都心ビル」に接続しています。

 この高層ビルは、行政中心で建設されたよくある再開発ビルですが、駅直結ではないので、マンションやサービス機能が中心と控えめな機能。でも存在感は大きいです。

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 JR九州肝入りの「アミュプラザくまもと」。入り口付近の開放的な吹き抜けに滝が流れているのには度肝を抜かれました。

 イオンモールのようなファミリー向けに振った意匠ではなく、百貨店にあってもおかしくない高級感のある雰囲気づくり、そしてテナント群に驚愕。少なくとも、仙台の駅ビルエスパルの1.5倍を超える規模、入居テナントの質共に陵駕されています。熊本駅前はこのアミュプラザしかないとはいえ、

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 熊本駅前からは市電が街中方面に運行されていますが、徐々に連節車両が導入され初めているとはいえ、基本単行で輸送能力は大きくはないのがもったいないところ。それを十二分にカバーしているのが、ひっきりなしに発着する路線バス。充実した情報量のデジタルサイネージで直近の行き先と時刻、系統のほか、従来型の時刻表と、経由地マップを一目で確認することができ、デジタルとアナログ的な情報の両方から確認することができ、利用するに当たり安心することができました。

 市電と路線バスの輸送力を総動員して需要に対応していることを感じました。ただ、運賃が市電が均一なのに対し、バスが距離制で市電と同一の区間でも異なることの分かりにくさもあるようです。まぁ、市電は観光客など、外部からの利用者には分かりやすいため、混雑を招きやすい一方、バスが比較的余裕がある利用状況だったり、広島で進められているような路面電車とバスの共通運賃制度も導入の余地はありそう。

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半導体特需に沸く豊肥本線沿線

 熊本周辺のJRは、複線電化の幹線である鹿児島本線が福岡方面からから八代までを結ぶほか、熊本と大分を結ぶ横軸である豊肥本線、そして盲腸線の三角線と、それほど充実している訳ではなく、中心駅の熊本駅が都心部から南東方向に寄っており、これまでは街外れというような見方をされていたこともあり、上述のとおり乗降客数は3万人前後と、同じ新興政令市の新潟、岡山、静岡と比較しても少ない状況。

 そのうち、南北に走る幹線の鹿児島本線は、特急が新幹線に移行し線路容量に余裕ができたとはいえ、朝晩は毎時4本程度ながらも昼間になると毎時2本程度、それに短編成の2両編成などと、正直設備を持て余しているのは、仙台近郊の東北本線下り(松島・小牛田方面)とも共通するような状況。

 一方、同じ熊本駅から内陸に伸びる豊肥本線沿いは、熊本市に隣接する菊陽町に台湾半導体大手のTSMCが第二工場までの進出を決め、全国的にも有名な半導体バブルに沸いているエリアで、不動産価格の高騰や通勤ラッシュの激化、人手不足など、住民の生活にとっては痛し痒しの面もあります。

 全国の政令市の中でも交通渋滞が激しく自動車交通の分担率の高い熊本都市圏で、自動車専用道路をはじめとした道路新設を図っており、熊本空港まで都心部から20分というキャッチフレーズで建設を進めようとしていたり、工業団地周辺道路の拡充を図っていますが、そうはいっても交通需要の増加に対して焼石に水。近くを走る豊肥本線の増発などの強化を図ろうとしていますが、そういう路線に限って「単線で設備が貧弱」で抜本的な改善が難しいという点は、仙台でも仙山線が思い浮かびます。

 仮に鹿児島本線筋であれば、特急が新幹線へ移行し持て余している複線設備を活かした増発も容易なところ、そのような本線筋はある程度開発が進んでいて、企業誘致に適したような土地が少なかったりという面もあったりします。なかなかうまくいかないもので。

 また、JR九州にとっても、福岡都市圏でも減便や短編成化などコストカットを進めているのに、都市圏規模の小さい熊本に自前では積極的な投資をするつもりはなく、行政の補助金次第で協力するかという状況なのか。大雨被害で寸断された肥薩線も行政の補助金で復活を決めたところだし。まぁ、活用できる路線があるだけ良かった。


 9月末に突然の破談が報じられた、宮城大衡のPSMC計画。正直あんな危なっかしい計画がそのまま進まなくて良かったと今では感じています。工場の用地や工業用水など従来型の工場を誘致できる基盤はあれども、熊本のTSMCのように既存の核となる街は20km離れた泉中央しかなく、工業団地近辺には鉄道も走っていない。

 仮にその計画がうまく行ったとしても、トヨタの時のように、大和町、富谷市エリアのニュータウンに人口が広く薄く張り付き、数十年後には高齢化が進んだお荷物住宅地化の可能性が高いとしか。

 熊本のように、空港から近いわけでもなく、母都市の仙台との交通アクセスも車と、一日10往復の大衡村役場行きの高速バスのみ。以前から提案している大衡ICにバス停を設置し県北方面への高速バスを停車させるなどでの仙台や古川・栗原・登米方面との公共交通の足交通確保など、既存の資源を有効活用した改善策もなし。通常の2次産業の従業員とは異なり、専門的な知識を持つ技術者集めにも苦しむでしょうし、ここが永続的に上手くいくイメージがどうしても沸いてこなかった。

 進出発表時の記事に書いた通り、仮に候補地が名取の館腰駅・杜せきのした駅近辺であれば、既存の鉄道沿いで4号線や東部道路も南北に走り、仙台空港も近くという事なし。土地も広大な農地が広がっています。杜せきのした駅近辺のイオンモール南側かつ名取中央SIC周辺で広大な区画整理事業を前提に市街化区域編入が行われますが、この50ヘクタール規模の開発地を半導体工場用地として活用するようなイメージであれば、まちづくりにも好影響で大賛成。(ただ、半導体工場に求められる水や地盤の強固さなどがクリアできるかという問題も)



 

大丈夫?熊本空港アクセス鉄道

 この豊肥本線絡みのプロジェクトでは、県が進めている熊本空港アクセス鉄道計画があります。


リンク

 熊本空港は、大部分を羽田との利用者が占めながら年間300万人台の利用者と、仙台空港に匹敵する利用者があります。

 熊本空港は、このTSMCが立地する菊陽町に隣接する益城町に位置し、熊本市からは約20kmと、仙台駅と仙台空港との位置関係とはそれほど変わらないながらも、都心部からはリムジンバスで45〜60分という所要時間というのは、アクセス鉄道が開業する前の仙台空港よりも時間がかかっている状態。

 熊本空港アクセス鉄道は、JR九州が協力可能とした肥後大津駅ルートでも熊本駅から44分と、多少は短縮されますが、そもそも乗り入れる豊肥本線のルートが熊本駅からS字を描くような遠回りルートなので、時間短縮効果は限定的。また、全線乗り入れ先の豊肥本線と新たに建設するアクセス鉄道は全て単線であり、少しの遅れが交換待ちを招き、雪だるま式に遅れが積み重なることが想定され、定時性や信頼性にも疑問。 


 末端部分のアクセス鉄道を三セクで建設し、JR路線に乗り入れさせて乗り入れ先路線も利便性UPを目論むのは仙台と一緒ですが、そもそも乗り入れ先の豊肥本線が線路容量が限られ、現在の設備ではこれ以上の増発が難しいところは、複線電化の東北本線に乗り入れることで空港行が純粋に44往復の増発となったた仙台との違い。そのように条件は良くないですが、「アクセス鉄道の整備のためには、乗り入れ先の豊肥本線の改善を図ることが必要」という論理で両者をセットで進めているのでしょうね。

 仙台空港は、東部道路経由のリムジンバスで仙台駅から40分だったのが、鉄道開通で各駅停車25分(記録用の快速で17分)に改善され、時間短縮と渋滞での遅れがないという安心感は大きいもので、今となれば、仙台空港にはなくてはならない公共交通機関としてみなされていますが、現在でも課題満載です。

 市営リムジンバス時代の仙台駅発15分間隔、空港発は到着便に合わせた運行から、鉄道では双方向20〜30分間隔と、昼間は改善されましたが運行頻度では必ずしも便利になったとは言えず、空港に早めに行かざるを得ないことや、到着後は空港での電車待ちを強いられるなど、特に30分間隔となる朝晩は不便さを感じます。

 1日の利用者は開業時の目標である1万人を超えましたが、仙台空港駅の利用者は半数強で、なとりりんくうタウン内の2駅の利用者増が寄与しているところ。それでも震災の被害やコロナ禍でのダメージと紆余曲折が続き、設備の公有化により運営との上限分離を図ったり、累積赤字の増大により運営会社の大幅減資を決定した上で、2030年頃の運賃値上げが最近アナウンスされるなど、持続的な運営のために、四苦八苦しています。


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 それに、熊本では、熊本駅よりも都心部への需要の方が大きい状況から、仙台のように基本的にリムジンバスを廃止して、鉄道に需要を一本化する形ことは困難と思われます。


  • 目的地の利用者が分散(熊本駅と都心部)
  • 既存バス経路上の利用者への利便性確保。
  • 将来的にはライバルとなる高速道路の整備構想あり(都心部まで20分)

 というのもアクセス鉄道から途中駅のJR新水前寺駅から輸送力の低く遅い市電乗り換えは、時間短縮効果が打ち消され、3社(アクセス鉄道、JR、市電)の初乗り運賃の支払いと割高感を感じること、荷物の多い旅行者ということを考えると、乗り換え前提は到底無理。それに、現在のリムジンバス沿線の県庁前などからの需要も残る。

 しかし、利用者を一本化できないと、鉄道利用者も確保できない。並行して構想されている空港までの自動車専用道路が開通したら、都心部まで20分と、時間的な優位性もなく根こそぎ利用者を奪われる可能性が高い。

 さらに、仙台のように沿線開発での利用者確保が見込まれず、空港利用者のみということであれば、空港自体の利用者数が仙台と変わらないことから、無謀としか思えない計画に思えます。

 そもそも熊本駅からであれば、九州新幹線経由で博多まで最短で35分。博多駅で地下鉄に乗り換えて同程度の時間帯で便数も段違いに多くLCCも多数就航している福岡空港利用も可能と、四面楚歌のような悪条件ながら、これを事業化しようとしている熊本県の執念は凄い。もちろん、根元路線であるJR豊肥本線の輸送力増強と一体で進めるための手段としての役割も期待されているのでしょうが、それであればアクセス鉄道に投資する500億規模のうち豊肥本線の強化に回すだけでも、かなりの効果が見込めるのでは。アクセス線への膨大な投資を行なった他に豊肥本線の輸送力強化まで金が足りるのか?

 この成功が困難に思われる新規事業に数百億を投資するのであれば、補助制度など予算の出所の違いがあるのは承知ながらも、需要があるのに応えきれない市電と、潜在需要はあるのに活用しきれていない熊本電鉄の有効活用に少しでも回せないのかなとも思いました。 

 

バブル状態

 イケイケドンドンバブル状態に見える熊本都市圏で進む様々な構想で、このような地方都市は中々ないので、仙台から見ると羨ましいところもあります。せっかくの機会を生かして、交通環境の改善を進めることは賛成ですが、市営の路面電車の強化という市内交通の地道なところがおろそかになり、県が採算性が厳しい空港アクセス鉄道に注力しているところは噛み合わなさと危なっかしさを感じますが、このご時世で景気の良い話が飛び交う地方都市圏は少ないので、宇都宮と並んで引き続き興味深く追っていきたいところです。

 


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2024年12月25日 (水)

ようやく仙石線新型車両投入!

 しばらく仙台関連のあまり良いニュースがなく、来春のJRダイヤ改正でも仙台エリアの在来線にほぼ動きがないなど、特にネタがなく更新が途絶えていましたが、久々に朗報です。

 故障続きで現在の205系の限界が囁かれるどころか声高に叫ばれている状況の中、車両置き換えについては首都圏からの車両改造転用説や都市郊外線区用のE131系の導入など様々な噂や情報が出ており、最終的に、E131系14編成の導入に落ち着き、ようやくJR東日本から昨日公式に発表されました。

  


プレスリリース

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 この車両は、4ドアで2〜4両単位が基本で、房総地区を皮切りに近年日光線、宇都宮線(宇都宮ー黒磯)、相模線、南武線支線などに様々なアレンジが行われながらも導入が続いてきました。

 仙石線導入にあたっては、

  • 従来どおりの4両固定 or 2両編成×2 (末端での2両編成運転を可能とするため)にするか
  • 従来の205系と比較しての拡幅車体が入線できるか
  • 4両×14編成と噂された編成数で運用が可能か

 など、待望の新車導入の方向性への期待の反面不確定要素があり、他線区でも導入時には短編成化や車両の削減からの減便、ワンマン化対応などのコストダウンの取り組みが含まれていることから不安もありました。結果的に現在と同じ4両固定ながらも編成数が減る形となります。

 ほぼ1年後の2025年冬からの置き換え開始とのことで、全編成置き換えの後はワンマン運用が行われるのは省力化の流れです。

 仙台市地下鉄南北線の車両置き換えは2024年度は1編成のみで、5年位のスパンで全編成置き換えとなることと比べると、JR東日本の資本力と自前の車両製造工場の製造能力の違いを感じます。

 

編成数の減少の影響

 上述の仙台市地下鉄南北線は同じく4両編成で21編成の置き換えを予定しているのに対し、仙石線は2/3の14編成。現在の編成数16→14と、既報通り2編成も減少となります。

 運行時間も、南北線の全線28分と対比すると、高頻度の複線区間(東塩釜ーあおば通)の所要時間が約30分で対応しますが、さらに東塩釜以北の石巻までの区間で少なくとも毎時1往復することを考えると、実質的に、南北線の半分程度の頻度で運行している現在の本数を確保するのが精一杯。一定の予備編成を確保することになるので、朝ラッシュ時の減便がセットになることは確実かと。

  南北線 仙石線(複線区間)
朝ラッシュ 3〜4分毎 6〜9分毎
昼間 8〜10分毎 10〜20分毎
夕ラッシュ 5〜6分毎 約10分毎
夜間 8〜12分毎 15〜20分毎

 正直、沿線人口および駅利用者数を考慮すると南北線の2/3程度の本数が適正なのでしょうが、沿線人口の高齢化が進み、新規の開発余地も小さくなっています。沿線の中では新しい街と思われている小鶴新田駅エリアで駅前に久々に大規模マンションが分譲されましたが、新駅開業から20年も経過している現実。ここ10年で、高齢化に加え、仙石東北ラインの開業による沿線通過人員の減少の影響もあるのでしょう。

 朝ラッシュの仙石線(多賀城以西)はかつて東北本線(仙台ー岩沼)と同様に5分間隔ダイヤを実施した時期がありましたが、現在は南部方面はアクセス線分で名取以北は更に最短4分間隔と増便になってる一方、仙石線は6〜9分間隔と徐々に減便傾向となっていることも、多少南側に並行して運行する東西線と比較して、運行の安定性、駅や車両の古さ、本数の少なさ故、比較して新たな転入者が仙石線を選ばなくなってきていることの影響が生じていますね。

 新型車両の導入で、少なくとも故障運休の多発を含む車両への不満は改善されるのに、編成数の減少から減便が確実視されるのは残念な限り。せめて、多賀城以西の本数は維持して欲しいもの。

 そして昼間の松島海岸まで20分毎のダイヤも、仙台近郊の利用者にとっては非常に使いづらい状態が続いていますが、増発は期待薄。


過去記事


 新型車両への置き換えとはいえ、仙石線は石巻側が仙石東北ラインのハイブリッド車両も乗り入れていること、利用者減から本数が整理される可能性もあることから、それを踏まえての新型車両の2編成減なのかも。仙石線全体で仙石東北ラインと合わせた適正な車両運用を模索していくことになるのでしょう。

JR東日本 運賃値上げについて

 先日、令和8年からのJR東日本の運賃値上げが発表されました。

 ドル箱区間、特に東京都心の電車特定区間の廃止による幹線料金への統合による大幅値上げがニュースになった反面、それ以外の地域の値上げ幅については、妥当な範囲に感じました。

 仙台近郊の主要区間は概ね切符購入で10〜20円アップ、ICカードで概ね10円未満のアップととなり、ICカードの方が必ず安くなるように改正されます。


  •  150円→160円[IC155円](あおば通↔︎宮城野原)
  •  190円→200円[IC199円](仙台↔︎長町・北仙台・小鶴新田・東仙台)
  •  200円→210円[IC209円](仙台→南仙台・国見・中野栄・岩切)
  •  240円→260円[IC253円](仙台↔︎名取・陸前落合・多賀城・塩釜)

 と、初乗り210円、次の区間250円の地下鉄と比較しても、十分安いレベルは保たれます。

 競合区間の仙台↔︎長町・北仙台では、運賃差が約60円→約50円に縮まるとはいえ、JR200円、地下鉄250円と大きく変化はありません。

 さらに通学定期は据え置きと、かなり影響が小さくなるよう配慮した運賃値上げだったように感じます。

 JRの運賃が安い水準に保たれているのは有難い限りですが、正直この運賃では首都圏はともかく、地方部では利益が出るはずはない水準です。

 JR東日本の職員の給与水準は基本的にエリア内でほぼ変わらないでしょうから、コストは相対的に地方部が高くなるのに対し、運賃が市地下鉄よりも安くては、残念ながらも運行水準が低くなるのは当然なのでしょう。


 JR九州における福岡、JR北海道における札幌は、各会社のお膝元であり、ここで儲けなければということになり、運行水準は快速の運行、新駅の積極的な設置と、本州会社のエリアの仙台や広島と比べ力を入れていながらも、それでも大幅な利益が出ていたわけでもなく、駅ビルなどの不動産業を積極的に展開しており、それでも厳しい分は2025年4月から民営化後実質2回目の大幅運賃値上げを強いられます。JR北海道は初乗り210円、JR九州は200円と、それ以上の距離帯も市営地下鉄と同水準まで値上げするとか。


 

 利益確保に必死な3島会社でこのような状況であり、JR東日本エリアの地方路線は、首都圏や新幹線の利益で成り立っているのは変わらず、コストを回収するために地方部で公営地下鉄レベルへの大幅な運賃値上げを図ってもその分利用者が減ってしまい、運行本数の増加、新駅の設置、設備改善などを図ってもらうほどの利益が出るわけではない。 なかなかうまく行かない未来になってしまう。

 そうすると、行政側の支援でサービス水準の底上げを行う手段もありますが、JRは県を超える広域エリアを運行しており、仮に仙台市だけで車両購入や運行費の支援するのも難しい。そうすると、新駅設置や高架化・橋上化など駅設備の更新などのインフラ整備位ですが、運行本数の増までには至らず、路線として劇的な利便性アップには至らない。仙台市も予算に限りがあり、以前は岩切駅の橋上化、現在は福田町駅の移転、南仙台駅の西側新改札開設に向けた調整で精一杯で、仙山線の高架化などは優先順位が後回しと、できることからやって行くしかなく、利用者の大幅増を図れるような切り札はそもそもない。

 仙台近郊での行政の投資が有効だった実例は、県を中心とした第三セクターを設立して建設した、仙台空港アクセス鉄道。名取↔︎仙台 が東北本線への乗り入れ前提だったため、アクセス線の40往復以上が純粋に増発され、東北本線部分の利便性は大幅に高まりました。運行本数増を図るにはこのような方法しかないかと。仙台市は、自前の交通局でJRと競合する路線を運行・維持するのに精一杯で、なかなかJRへの直接的な支援も行いづらい状況にあったりします。


 富山県では、北陸新幹線開業で三セク化されたあいの風とやま鉄道を核に、飛地で残るJR城端線、氷見線の運営を受け入れ、利便性アップを図ろうとしています。富山市では、旧JR富山港線の運営移管とLRT化(現在は富山地鉄市内電車と一体化)の実績があり、引き続き市域で完結するJR高山本線の運営移管の動きもあります。

 これは、JR西日本としてもエリアの端っこの運行効率の悪い赤字ローカル路線の運営移管というメリットがあり、WINーWINの関係になるでしょうが、仙台は新幹線を含めて東北エリアの路線網の中心でJR東日本が東北本部を置いているなど、関連事業運営を含め重要拠点であり、県内でJRが名指ししている陸羽東線や気仙沼線、石巻線の行く末が不明な中、阿武隈急行に対しても非常に冷淡な知事が大荷物を背負う選択を積極的に進めるわけもなく。


路線バスの値上げも

 仙台市営バスと宮城交通グループの運賃も平均15%程度の値上げを計画しているとのニュースが出ています。

 先にニュースになっていた市営バスが2026年10月からの値上げ計画であるのに対し、宮交バスは2025年3月からとすぐに値上げされることに。ついこの前値上げしたばかりのような気がしますが、値上げ後も減便と終バスの繰り上げが続き、泉区のパークタウン、富谷方面、南では山田方面以外の宮交バス沿線では、21時頃に終バスと大幅前倒しになっており、正直通勤で使うには厳しい状況になっています。知り合いで終バスの大幅前倒しで「まともに残業できない。毎晩駅からタクシー」と、宮交沿線からJR沿線へ引っ越した人を知っています。そのように住宅地の価値も落とし続けることになるでしょう。

 今回発表された情報からすると、初乗りが200円と大幅値上げとなり、ほぼ確実にJR線や地下鉄よりも高くなり、客離れが進む一方でしょうね。

 市営バスの値上げが行われる26年10月までの1年半は、並行路線でも著しい運賃差が生じることとなり、特に、市主導で運行間隔の調整を行い実施にこぎつけた「八木山ライン」は、極端に宮交を避ける動きが起こり、せっかくの取り組みが無駄になってしまうことが予想されます。


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 運転手不足を理由としていますが、前回値上げしてからもひどくなる一方。政令市の民営バス会社でこんなひどい状況のところはないのでは。地元紙もこれに関しては事実を淡々と報じるのみ。 市バスには、住民の感情的な意見をぶつけるのに。

 正直宮交バスは、公共交通機関としての役割を放棄しつつあるように感じます。値上げをしても、とても状況が改善するように思えない。県外名古屋系の名鉄資本に任せ続けるのではなく、栃木、福島や岩手のバス会社を買収しているみちのりHDの傘下になった方が、よっぽど永続的な運行につながるように思える。

 一方、市バスは、責任を持って夜間帯の運行本数を確保してきましたが、減便はやむを得ない状況にはなっています。それでも公営交通としての責任感からなるべく22時頃までは終バスを確保すべく努力しています。市バスについては、住民や市議会の反対から大規模な路線見直しが難しい状況であり、特に東西線のフィーダー路線など、ほとんど1〜2人しか乗っていないような路線を廃止するなど、悪平等となる平均的な減便は避け、鶴ヶ谷、桜ヶ丘などの主要路線への資源集中を図る方向性の方が望ましいと思っています。

 市バスの値上げは、おそらく地元紙が反対意見を煽って、予定通りにはならないでしょうが、消費税を除いた実質的な値上げは25年ぶりとなり、これはやむを得ないのではと考えます。

 公共交通全体として、特に乗合バスは厳しい状況が続きますが、仙石線の新型車両導入という、クリスマスプレゼントのようなニュースのほか、ちょっと前に東西線の利用者が順調に増え、R5年度はコロナ前を超えて過去最高を記録したというニュースもあり、人口が頭打ちになる中で基幹系交通機関としての鉄道の優位性が増していく流れになっているのは、悪い話ではないように思えます。

 

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2024年9月18日 (水)

身の丈再開発『みなてらす河原町』

 先日の新聞記事にて知った、地下鉄南北線河原町駅近くで行われていた小規模な再開発事業(優良建築物等整備事業 )のうち、第一期部分が竣工したというニュース。

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 地下鉄河原町駅は駅上をかなり交通量が多い昭和市電通り(旧4号)が通っていますが、一歩入ると細い道が多く、そのコントラストに驚きます。

 仙台駅から3駅5分と至便な距離で、街中と自転車でも余裕で行き来できること、学院大五橋キャンパスも近いこと、古い物件も多く家賃の手ごろさから、学生をはじめとした若者の一人暮らしも多いエリア。以前はコンスタントにあった小規模分譲マンションの供給が近年止まっているので、ファミリー世帯というよりは、夫婦のみのディンクス世帯の住居としても選ばれている印象。

 小規模ながら河原町商店街が組織されイベントも行われているし、10年近く前に商店街入口に竣工した小規模再開発がありましたが、今回の再開発はその並びで程近い場所になります。似たような再開発だなぁと思ったら、地権者兼事業者は同じようです。

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 以下は、地元紙の記事です。


仙台・若林の河原町商店街に、複合施設「みなてらす」が8月4日誕生 地域輝く、にぎわい拠点に

 仙台市若林区の河原町商店街通りに8月4日、新たなにぎわい拠点がオープンする。スーパーや病院、多目的スペースなどで構成される複合施設「みなてらす河原町」。整備に携わった商店街関係者は「住民が集う地域の顔となり、交流人口の増加を促す役割も果たしてほしい」と期待する。

「みなてらす河原町」(中央右)とマンションの完成イメージ

 みなてらす河原町は市地下鉄河原町駅から徒歩2分、商店街通りの中心に立地する(地図)。鉄骨3階建てで、延べ床面積は計2091平方メートル。内外装は白を基調とし、明るく開放感のある空間を演出した。

 隣のビルで営業する地元スーパー「ワコー」が1階に移転する。2、3階にはクリニックや調剤薬局が入る予定。3階のレンタルの多目的室では、地域の会議やサークル活動での利用を想定する。

 2階の一部には屋外テラス(192平方メートル)を設けた。いすやテーブルを置き、買い物や通勤通学で気軽に立ち寄れるゾーンにする。キッチンスタジオも併設し、料理教室や飲食イベントを開催できる。備蓄倉庫もあり、災害時に一時避難所となる機能を持たせた。

 事業主体は商店街の店主らで組織する南仙台振興ビル(若林区)。総工費は約16億円で、国土交通省の「優良建築物等整備事業」の助成を受けた。

 南仙台振興ビルはみなてらす河原町に隣接する自社ビルを今冬までに解体し、1階にテナントが入る鉄骨6階建てマンションの建設に着手する。敷地内にはマルシェやフリーマーケットができるイベント広場や駐車場を配置し、一体開発は2026年春にも完了する見通し。

 南仙台振興ビル取締役の高橋理武さん(42)は「『地域のみんなを照らす』という思いを込めた施設が地元を盛り上げる起爆剤になるとうれしい。ここを起点に人の交流が生まれていくことを願っている」と話す(7/18 河北より引用)。

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第一期の核店舗はスーパー「ワコー」

  河原町の商店街には、七十七銀行河原町支店、スーパーワコー、そして約10年前に完成したイガストゲートを中心に、八百屋、魚屋、和菓子屋と小規模な個店が点在しています。駅利用者もまぁまぁ多く周辺人口は少なくないのに、買い物機能はそれほど充実していなのも、それほど多くない若いファミリー世帯も、ヨークのあすと長町店や若林店、遠見塚店など周辺のクルマでまとめ買いできる郊外型スーパーに流出しているのでは。古城方面の大規模マンション住人も然り。


 4号バイパスへ向かうところの(若林区)若林地区は長町一丁目の駅勢圏で、さらに毎時4本通る沖野方面への市バスの利用者も多く、南側を広瀬川が遮っている河原町駅の駅勢圏はそれほど広くないことも。河原町駅は都心部210円均一区間内で、北四番丁駅や国際センター駅まで210円で利用できる恵まれたエリアに入っているのにもったいない。


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 よって、クルマを持っていない一人暮らしの若者、高齢者を中心に、地下鉄駅を降りてちょっと足りないものを補充という最低限の需要で成り立っている商店街のため、このような機能の維持を図り、さらに選択肢を増やして行ければという印象を受けました。

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 一昔前のコミュニティロードとして、歩きやすい街に整備され、クルマの一時駐車スペースも設置されていますが、いかんせん地下鉄の出入口が交差点向かいになり、足が向きづらい印象で、人通りはそれほど多くないながら、休日夕方でも駅への行き来や商店街目的でコンスタントに通行人はあり。

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 仙台市や地元の商店街組合が関わる事業主体も、この再開発を通じて、既存の老朽化したスーパーワコーの引き留めと支援を図ったような構図。ワコーはもはやこの河原町の1店舗しかなく、もともとは破綻したファルの後に入居して早20年。お互いの利害が一致した印象が。

 近隣にまとまった土地がない河原町だけに、このような地道な小規模再開発の効果が大きいと。

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 テナント入居は途上のようですが、核店舗のワコーは買い物にちょうど良いサイズのスーパー。価格帯も総菜は安め。そして魚の鮮度が良さそうでした。22時と遅くまで開いており、近隣住民にとっては助かりますね。店内の買い物客も、比較的若い女性の比率が高く、そして高齢者が少々。ターゲットが明確に分かります。

 2階は、テラスとコミュニティスペースも。

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イベントなどで活用が見込まれます。ビアガーデンとか良さそう。

このコミュニティスペースは昼間の時間帯自由に入れるようです。

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隣接地に元々入居していたスーパーワコーを先に移転させ。玉突き的に第二期の再開発として、既存ビルが解体されています。。

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賃貸マンションと広場が整備されるようで、再開発はこの2棟のセットで一区切りのようです。

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 このような小規模再開発は、なぜか河原町のみ。他の地下鉄駅前でも(例えば連坊や薬師堂など)応用できるような仕組みに感じますが、河原町は音頭を取る商店街組織(振興組合)の存在が大きいのかも。

地下鉄駅近くの商業環境

 東西線開業を経て、以前に比べると多少は改善はされてきました。駅近に郊外型のスーパーやドラッグストアが立地しているところもあり、都市型ではイオンエクスプレスのような小型店でカバーされているところも。そうはいっても、店舗の老朽化や駅から離れた郊外型店舗との競争は激しく、見た限りでも、スーパーなどがない地下鉄駅前はそれなりにある。東西線の西側は経緯やもともとの地域の性格から、やむを得ない面もあるけど。南北線でも愛宕橋、台原(やや南に行くと生協あり)などが駅前の買い物機能が弱い。愛宕橋はやや北に最近学院大の門前町として復活気味の荒町商店街がありますが。

 地下鉄が開業した時代から一気に郊外化が進み、駅周辺の地価高騰もあり、新たなスーパー立地が難しかった印象があります。

 これまでたまに記事にしていた時の状況とあまり変わっていないなぁと。


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順調に工事中の新宮沢橋

 宮沢橋の上流側に新たな橋がだいぶ姿を現してきました。この宮沢橋の架け替えで、国道286号の西多賀方面から昨年開通した旧国道(昭和市電通り)以北の区間を経て、仙台駅東口、そして国道45号の小田原付近まで一直線で結ばれることになります。

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 穀町周辺の旧奥州街道は昭和市電通り以北に開通済の宮沢根白石線に交通量が移行し一時的に車の交通量が減ってきていますが、この区間の全通によりこのエリア一帯の交通量の増加、生活環境の悪化が予想されます。店舗やサービス施設の立地に関しては、開通済の宮沢根白石線の用地買収に伴い、中途半端な空き地が沿道に見られるのでそのような土地の有効活用、沿道の老朽化建物の建替えによる新規立地は考えられるかもしれません。

 都市計画道路の開通が、古くからの商店街に好影響を与えるとはなかなか言い難いですが、河原町商店街付近では、駅前の古い建物の建替えも徐々に進んでおり、吉野家のあたりに美容室やバイク店など、どちらかというと若者向けの小規模な店が増えている印象です。

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この道路に3方を囲まれた区画にも動きがあります。

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交差点に面し、30年以上前からあった居酒屋ごん太が取り壊され、建て替えの動きが。再出店するのかどうか(Googleでは臨時休業扱い)。

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クルマを持たな住民が増えているのを逆手に取って、歩いて面白い街を目指して少しずつ機能更新が進み、面白い店が増えればよいなぁと思います。そういえば、この付近には有名な地ビールの「穀町エール」もありますね。

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