陸羽東線と快速ゆけむり号
昨日の記事の続編です。
JR東日本 ローカル線の行方(8/13)
当日は,小さな旅フリー切符を利用し,東北本線福島駅経由で,山形線米沢,山形駅などを経由し,新庄から陸羽東線に乗車しました。
立派過ぎる新庄駅
ガラス張りで,交流スペースや観光案内機能も含めた複合的な巨大な駅。とても人口4万人弱の地方都市の駅とは思えない。
人口が倍以上多い県南部置賜の拠点米沢駅のレトロさと比べると,いくら始発駅とはいえ雲泥の差。
山形新幹線の新庄延長時には,何をトチ狂ったことしているんだ?と思いましたが,沿線には天童市,東根市,村山市,尾花沢市,新庄市と,概ね5万人以下の規模の小都市がバランスよく並び,これらの都市から1~2時間に1本東京直通の新幹線に乗れるという状況を目の当たりにすると,県としては一応成功なのだろうな。
新庄駅は,山形新幹線(山形線),奥羽本線(秋田方面),陸羽東線,陸羽西線と,鉄道のジャンクション機能を持ちながらも,山形・東京方面以外の3路線は,輸送密度が200人前後の路線で,陸羽西線は並行する高規格道路の工事のため2年間休止バス代行と前代未聞の対応。新庄まで山形新幹線で来ても,在来線に乗り換えてという方はかなり少ないのかと。そもそもコロナ禍で山形新幹線を含めても,新庄駅の一日利用者は千人未満にまで落ち込んでいる(約20年前の山形新幹線新庄延伸時は約2000人/日)とのことで,この利用者数で9往復/日 の7両編成のミニ新幹線を維持できるものかと新幹線の方も心配になりました。
奥羽本線の秋田方面は切りにくいでしょうが輸送密度は,陸羽東線・西線と変わらない。貨物輸送もない。どの路線も存続が厳しいことには変わらず。
新幹線用に,自動改札がある他,全路線に電光掲示板と豪華仕様。
奥羽本線としてのこの駅を跨いだ直通は,軌間が異なることから不可能であり,そのため,奥側のホームとを平面で移動できるようにしています。
ある意味バリアフリーな対応。
快速ゆけむり号
通常車両と思っていたら,外観はラッピングされ,観光列車っぽいデザインになっており,気分が一瞬上がりました。
この新庄からの区間は,以前も2回ほど乗ったことがありますが,前回リゾートみのりで新庄から仙台まで乗りとおした際は,半分程度の乗車率で,それなりに賑わっていた記憶があります。
車内の質感も良く,これに指定席料金をプラスするだけで乗車できるというのは,非常にお得感がありました。
観光列車で,アテンダントも乗車しており,記念品がもらえたり,車内販売もあったりで,華やかは雰囲気は,流石東北新幹線と山形新幹線を結ぶ役割を持つ観光路線ならではと思ったり。なので,それほど古びている感はなかったにせよ,引退となり残念な思いが。
そのリゾートみのりの後継車両として,キハ110の改造車両というのは,格落ち感があり,これまではそれほど魅力を感じませんでしたが,新庄から仙台までリクライニングシートでビールを飲みながら乗り換えなしで帰れるという魅力から,指定席をえきねっとで確保しようとしたところ,前日で席選び放題。。。2両1編成で15席程度しか埋まっておらず,当日は結局空席のままの席もあり,新庄発車時点で10人程度。鳴子温泉での途中乗車客2名を含めても,15人にも行かない乗り具合でした。
車内は指定席だけあって,リクライニングシートで,当然乗り心地は良かったです。ただし,質感は以前乗車したリゾートみのりと比べると雲泥の差。でも文句は言えまい。
意外だったのは,アテンダントが乗車し,今どき新幹線でも廃止された車販がまだ残っていたとは!
車販がある訳ない思いこみ,新庄駅のNEWDAYSで食料とビールを買い乗車したのですが,もし車販の存在を知っていたらコンビニで買わなかったのに。。。と思える位,10人少々の乗客に対しての車内販売が売れる訳ない。自分も事前購入していたので,申し訳ないと思いながら利用せず。車両は変わったけれど,観光列車としての最低限のサービスは残していたようでした。
乗車した際には,乗車記念の切符のようなものや,子供向けの工作?を配っていました。途中駅から乗車した人にも配付してたり。
当日は,32度を超える暑い日で,ビールをのみながら,2時間40分のちょうど良い時間を楽しみました。
乗客の気配もほとんど感じず,手持無沙汰なアテンダントの方がやけに気になってしまったり。
途中で,紅葉シーズンには絶景であろう鳴子峡を通過する際に徐行する旨のアナウンスがありました。
以前乗車した際は,運行の区切りでもあり,沿線の中心観光地である鳴子温泉駅で10人近く乗車してきたものでしたが,今回は2人のみで寂しいもの。朝の仙台からの便に乗れば,5時間以上は鳴子温泉街を楽しめるなど,全線乗り通さずとも日帰り利用にも適した観光列車であるものの,コロナの影響も大きいことを感じました。
古川駅で新幹線乗り継ぎと思われる降車が多少あり。
最後は,松島付近の海を眺めながら,うとうとしながら,仙台駅へ到着。
陸羽東線のおかれている状況
今回JR東日本から発表された,県内を通る利用の少ない路線の中で,観光面及び通学に大きな役割を果たしており,地元大崎市が存続に熱意を持っている陸羽東線。
しかし,鳴子温泉ー最上という県境の流動が少ない区間は,列車本数も少なく1日7本。朝晩は1~2時間おきながらも,昼間は3時間おき(週末の臨時列車を除く)という状況。
コロナ前の2017年度でもこの区間の通過は100人/日 程度,2020年度はコロナによりさらに減少し,何と41人/日!
JRに移行した1987年時点でも輸送密度は500人を割っており,その時点からの比較では91%減と凄まじい減少率です。
2020年度は,JR東日本の営業区域の中でもワースト営業係数である22149円(支出に占める収入は何と0.5%)で,収入は年間200万円なので,一日たった5~6千円ということに。
国鉄民営化時に廃止された路線群の中でも北海道の美幸線などは営業係数が3000円程度で全国ワーストとなっていましたが,さすがにこの営業係数には驚きました。そして,国有企業由来とはいえ,株式上場をしている民間企業が負担すべきものなのか,これまでの新幹線や首都圏での莫大な黒字を上げていればこそで,コロナ後であっても会社全体の収益性は戻ることはない中,情緒的に存続すべきとは軽々しくも言えない重みをもつ数値を突きつけられました。
この区間は定期利用も僅少でしょうが,観光や日常の移動で通常運賃利用者が10人もいれば達成してしまうような金額。
もちろん,この区間のみの利用ということではなく,観光などでの通過の利用者が多いのでしょうが,そういう利用者はフリー切符や区間外の駅発着の切符を購入して乗車するのでしょうから,この5千円/日 という収入自体,それらの通過利用者分の運賃収入がどの程度カウントされているかは懐疑的ながらも,通過人員は正確でしょうから,仮にこの区間の420円の片道運賃に41人を掛けたとしても,せいぜい1万7千円で焼け石に水の収入金額。せめて,週末運行のゆけむり号のような指定席料金(片道530円)の収入は多少でもカウントされていると思いたいが。
年間赤字額がこの区間だけで5億円,そして陸羽東線のうち乗客が少ない古川ー新庄の区間で22億超円の赤字。。。
一応,東北新幹線古川駅と山形新幹線新庄駅の両駅を結ぶ新幹線フィーダー路線で,観光の周遊ルートを構築するための利用価値があるはずの路線とはいえ,これだけの負担をJR東日本が続けるのは厳しい。この区間の唯一の存在意義ともいえる観光列車でさえ惨憺たる乗車率で,後継の専用車両を新造してということは絶望的だろうなぁと。
途中の瀬見温泉などの温泉最寄駅であっても観光列車での鉄道アクセスの利用はわずかでしょうし,利用最閑散区間の最上駅ー鳴子温泉駅は,県境で学生利用も見込めず,フリー切符などで乗りとおす通過客のみであれば収支改善の見通しは立ちようがないと。
もちろん,地元が負担を負えるかというと,実質的には,県と大崎市がメインになるでしょうし,第三セクターでの存続も山形と宮城にまたがることから厳しい(三セクで存続する場合でも県境で運営会社を分けるケースがほとんどで,2県で運営する事例は阿武隈急行位)
仮に,宮城県側の鳴子温泉以東を三セクで存続させる場合でも,通学定期も値上げ,そして新幹線経由での鳴子温泉への観光客は新幹線との通し運賃あってこそであり,古川ー鳴子温泉で現在の680円の1.5倍になれば片道千円を超えることから,陸羽東線部分を別途支払うことを考えると負担感が大きく,鉄道離れがさらに進んでしまう。そうすると,上下分離で鉄道施設部分を自治体に譲渡し,メンテナンスや修繕費用を地元負担とし,運行はJRにということが地元として受け入れられるギリギリになるのかと。さすがに大崎市として古川駅から在来線をなくす選択肢は取れないだろうし。
それを地元が支えるという意識から,市役所職員の通勤利用の促進などをしっかりとやるにしても,並行する国道47号が整備されている故に,
明るい未来は思い浮かびませんでした。鉄道のみで行ける温泉地として鳴子温泉郷は貴重な存在ですが,それだけでは存続できないという現実に悲しい気持ちになりました。今後,各路線とも地元との協議が順次始まるでしょうが,県の姿勢からはあまり期待できないでしょうから,最悪の事態も想定しながら,見守らざるを得ないという気持ちです。
最近のコメント