札仙広福の人口密度比較 その1 福岡都心部編
以前、twitterにて、にゃんこそば氏(@shinagawajp )が
5656map - ごろごろしながら地図を楽しむ @shinagawajp
の中で、
を公開しており、非常に興味深く見させてもらっていました。
全国各地の人口密度分布が視覚的に分かりやすく、また他都市と比較しやすく、時間があったらまとめたいと思っていたところでした。
なお、2015年時点のデータを用いているので、仙台では東西線開業年度であり、その住居選択への影響がまだ小さい時期です。
仙台とよく比較される「札仙広福」と呼ばれる、各地方のブロック中枢都市について、最初に都心部を。同一縮尺でスクショしています。
仙台市都心部の人口密度
他都市との比較は最後にしたいと思いますが、まず特徴としては都心部でも市役所北西側、宮町、45号線沿いに比較的高密度な16,000人/㎢ 以上の市街地が分布していますが、大部分は8,000人/㎢以上。都心部以外の地下鉄沿線で高密度な赤色は河原町と長町駅西口位でそれほど過密感がないほか、都心部に隣接する文教地区である青葉山・川内地区がほぼ無人地帯になっているのが目立ちます。
都心部の西側と南側は広瀬川で遮られ、北側は仙山線、東側は東北本線と高架化がなされていない鉄道路線で分断。
都心部エリアが比較的狭いことで、地価高騰を招き、郊外化が進んだという負の一面もあります。
近年高層マンションが都心部に林立することで、人口密度も高まっているかもしれませんが、都心部の居住人口はまだ増える余地はありそうです。
別格の高密度都市福岡
比較先として、まずは札仙広福の枠組みから一歩抜きん出ている福岡市ですが、都心の天神駅や博多駅周辺はビジネス街及び商業集積地区に隣接する、天神駅の南側(薬院駅周辺)西側(大濠公園を挟んで西新付近まで)、博多駅南側に赤色(1.6万/㎢以上)のエリアがが広範囲に広がっている他、より高密度の紫色(2.4万人/㎢以上)のエリアも目立ちます。
都心部の他、鹿児島本線の吉塚駅、箱崎駅、西鉄の大橋駅などの拠点性の高い都心近郊の駅周辺も、飛び地で赤色のエリアがあります。
仙台と比較するのが申し訳ない位の都心部人口集積度の差です。
基本的に、都心部を東西に貫く地下鉄空港線沿線(天神~姪浜)及び西鉄天神大牟田線(西鉄福岡~高宮)沿いに面的に赤色のエリアが分布している他、2005年に開業し先日博多駅まで延伸した地下鉄七隈線の都心部区間(天神南~六本松)も七隈線開業から約10年の時点とはいえ赤色の高密度エリアが広がっているのが意外でした。
このエリアは天神からほど近いエリアであり、廃止された旧西鉄路面電車の城南線、その後西鉄バスが高頻度で運行しているなど、七隈線の開業前から高密度の市街地が広がっていたようです。
七隈線博多延伸の効果
3月26日の七隈線延伸開業(天神南~博多)により、この六本松付近から西鉄との乗換駅の薬院までの朝ラッシュ時の混雑率が140%を超えるようになったと、福岡のメディアでは嬉々と取り上げていましたが、そもそもこのような高密度エリアながらも博多駅まで空港線天神駅までの天神地下街を経由した徒歩連絡、もしくは薬院駅からの西鉄バス乗換を強いられるのであれば、頻発する西鉄バスで乗り換えなしで博多駅まで行った方が便利なエリアでした。
まぁ、2005年の天神南駅以西の暫定開業時には、西鉄バスは地下鉄に対し真っ向勝負に出て、そのためにせっかく2,600億円(220億円弱/km)かけて整備した地下鉄に乗客が転移せず、需要予測11万人の4割という惨憺たる輸送実績を強いられました。
都心部から片方向12㎞という路線。ラッシュと反対側の福岡大学学生輸送はあれども輸送効率は決して良くない。特に末端の福大前以西は。仙台の東西線のように都心部を貫通する路線は、都心駅に向けての両方向のラッシュが生じるのと比較するとなおさら。
七隈線は、ようやく開業後15年経過したコロナ前の2019年度で乗客が倍増(4.3万→9.3万/日)しながら、ほぼ同じ13.9㎞の距離であれだけガラガラと言われていた仙台の東西線の開業後4年目の時点と比較すると、利用者の差が1万人程度とほぼ変わらずでした。
それが、コロナで7万人/日 程度に落ち、4両編成のミニ地下鉄(空港線の通常規格で6両編成の5割程度の定員)でも持て余すような利用状況だったのに、今回の博多延伸を機に西鉄バスが乗務員不足から白旗を上げ、待ってましたと約2割の本数を減便。
ただでさえ七隈線の博多駅直結で利用者が増加したところに、バス利用客もごっそり定員が少ない4両編成のミニ地下鉄(仙台の東西線と同じ)に移れば、その区間は混雑が増すのが当たり前。せめて以前から西鉄が協調路線をとり、延伸前から七隈線への転移が進んでいれば、博多延伸時に6両化も図れたかもしれません。東京の大江戸線は8両編成とのように、リニア地下鉄は詰め込みが効かないので車両を増やすしかない。
ただ、そのたった1.4㎞の延伸区間に陥没事故の影響もあり587億円(約420億/km)と、東京都心部顔負けでリニア地下鉄にしては破格の延伸費用をかけ、既存の天神南西側の区間は混雑率が急上昇しながらも、天神南でごっそり下車した後のその延伸区間は空港線と並行しラッシュ時でも余裕がある混雑率。開業1か月の4月末では取り上げられた140%以上の混雑率ですが、5/12の実績では最混雑区間も六本松から薬院までの3区間、混雑時間帯も30分間に短くなり、時差出勤・通学や、空港線やバスへの回帰を含め、バランス良い状況に落ち着きつつあるのでしょうか。
リニア式地下鉄の雑感
仙台の東西線もですが、ミニ地下鉄はまず座席数が少なく、例えば南北線が45~48人程度/両 に対し、東西線はたった24人/両 で約半分、ちょっと乗客が増えただけで立ち客が増え混んでいる印象となりますが、その立ち客を収容するスペースが少なく、ロングシートに挟まれた通路ではつり革の2列に皆が掴まった状況だとかなりの圧迫感で(南北線規格だと2列でも余裕あり)で、ドア付近に固まらざるを得ない傾向があり、詰め込みが効かないことから、乗車率140%と言っても通常規格の地下鉄やJR車両と比較しても体感的な混雑感は高いでしょうね。
そこそこ乗っているように見えるこの東西線の写真でも、車両で30人×4両=120人でこれでも定員388人の約30%の乗車率でしかない。
100%の混雑率でこの3倍以上の乗客、140%でこの4.5倍の乗客を収容できるのか想像がつきません。
一方、通常規格で空港線と一体で建設された箱崎線は6両編成ながらも、JR鹿児島本線と並行しているためか空港線と比較すると格段に利用率が低く、その利用者増に寄与すると思われた終点の貝塚駅で接続する、香椎副都心(千早)方面を結ぶ西鉄貝塚線との相互乗り入れ計画も採算性からご破算になり、一方その貝塚駅近接地にJR貝塚新駅が計画されているなどチグハグ感が否めません。
西鉄の影響力の強さ故に、他の交通事業者との連携がうまく行っていない印象で、ライバル意識が強いためかJR鹿児島本線との交点での乗換駅も建設されず。バス&ライドではなく、都市高速経由の西鉄バスで都心部に送り込む主義など、ある意味独特ではありますが、それが市民にとって便利な状態と言えるのでしょうか。空港の近さと並びバス王国という福岡の独特さを売りにしている面はありますが。
このような交通機関同士の連携が図られていないということは、需要の高さ故に各交通機関の競争が激しいという面もあったのでしょうが、バスの物量作戦で地下鉄が劣勢だったというのはせっかくのインフラが活かされず、もったいない状況だったのに対し、バスから鉄道への転移により、七隈線の一部区間でも混雑が取り上げられるのは、都市交通のバランスとしても正常な状態への移行途上と言えるかもしれません。
このシリーズは続けていきます。
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