常磐線特急 仙台―東京直通復活へ
今年度末というか,来年春に予定されている常磐線全線復旧。それに向けて,仙台駅発着の在来線特急の復活が言われており,
〇仙台駅2階改札横にみどりの窓口復活
〇途中駅(新地駅)での10両編成列車交換用対応工事
など,いろいろと伏線がありましたが,今日JR東日本から,正式に仙台と東京(品川?)を結ぶ特急(おそらく「ひたち」)の復活が発表されました。
震災前は,仙台発着が4往復で,概ね3時間毎(7時,10時,15時,18時台)の運行(仙台発は4本とも上野行,仙台着はいわき発1本を除き上野発),上野仙台間は約4時間20分と新幹線の倍以上の所要時間でした。基本はスーパーひたちの付属編成の4両で,「少しでも安く」と,若いころは何度も帰省の際に乗ったことはありますが,上野発の時点で結構混みあい自由席だと座るのがギリギリだったり,水戸までは立ち客がいっぱいだったり4両編成の部分は混雑していた記憶があります。もちろんメインの7両編成の方はいわきまでなので,そっちの方が若干すいている感がありました。
何と10両編成!
車両は,さすがにスーパーひたち時代の車両は常磐線から引退し,現在はE657という,10両編成の車両がいわきと品川間を往復しており,また,スワローサービス(使ったことがないのでイメージが湧きませんが 仙台~盛岡間の全車指定席のはやぶさで,空席があれば指定をとってなくても座れるのと似たようなもの?) とやらのサービス対応で,10両編成のまま仙台に来るようです。
そのために,10両編成を2編成増備するとか。東電の原発への出張者などは減っているにせよ,廃炉関係者の需要もあるんでしょうが,いかんせん住民が激減している双葉郡及び南相馬市への需要は,確実に半分以下になっているでしょうから,10両編成だといつでも座れることになるでしょうが,輸送力としては当然過大であり,大盤振る舞いの印象です。
もちろん,震災と原発事故からの浜通りの復興のためには,東京オリンピックを前に,東京から双葉郡・相馬地方の相双地域に直通特急を走らせることが,一番のアピールにもなるし,震災前に一度特急のいわき分断が決定したのを覆すことになったんでしょう。
JR東日本は,震災で被害を受けた気仙沼線と大船渡線の一部の鉄道での復旧を拒否しBRT化したり,山田線の一部を三陸鉄道に譲渡するなど,三陸のローカル線の復旧には非常に冷淡でしたが,一応常磐線は幹線扱いとはいえ沿線の輸送密度は完全にローカル線レベルなのに,沿線駅舎の橋上駅舎化への費用負担やJビレッジ駅の新設など,採算度外視で協力している感があります。
それに,今回の東京直行特急復活と,10両編成での運行というのは,先日記事にしたように,仙台近郊を運行する電車が軒並み減車され,新型電車の追加投入も渋り気味なのに対し,アンバランスさを感じますが, この部分はある意味聖域なんでしょうね。
もちろん,このニュースは嬉しく思っています。
ターゲット
特急の仙台までの復活とはいっても,メインの需要は「原ノ町ー東京都内」及び「水戸・日立―仙台」。いわきー仙台は,常磐道経由で所要時間3時間弱の高速バスが1日7往復で片道約3千円なので,もはや勝負にならないレベル。もちろん特急だと2時間強で結ばれるので時間短縮効果はあるけど,そもそも復活する普通列車も3時間程度で2590円(現在:消費税UPで多少上がる程度),そもそも常磐道が全通したので,車で直接仙台まで向かうことも簡単になっているし複数人であれば高速料金を出しても安くて速かったり。
メインの需要だけであれば,震災前の4両編成でも持て余す程度になると思われます。
おそらく,通常料金だと仙台―東京間が9000円位になるのに所要時間は4時間20分,1時間半で着くはやぶさのモバイルスイカ割引の約1万円とほとんど変わらないことから,通常の料金設定だと,最初は物珍しさで乗る客がいてもいずれガラガラ空気輸送になることが予想されるので,様々な割引切符を出して誘客に努めることになるのかな。東京―仙台の需要を喚起することも考えているからこその10両編成なんでしょう。 通常運賃+特急料金1000円程度のえきねっとトクだ値とか,往路新幹線,復路ひたちで1万5千円の切符を出すとか。またグリーン車もあるので,グリーン車で4時間を快適に過ごすというニーズを掘り起こすのもありかな。
時刻予想
震災後のダイヤ改正でも,以前のスーパーひたちの発着時間に被らないように,その時間帯は空けています。
また,2016年末に浜吉田~相馬間が復旧した常磐線も,基本的にはほぼ震災前と同じ時間帯,同じ本数で普通列車の運行をしています。
そのため,特に7時台,10時台,18時台は,それぞれ15分発の特急が入れ込めるようになっています。いずれも直前はアクセス線なので,仙台駅を5,6分前に発車すれば名取まで逃げ切れる。なので,基本的に震災前とほぼ変わらない時刻で運行可能。
【7/6夜 追記・修正】
なお,いわき以北の特急は全て仙台まで来ていた訳ではなく,原ノ町発着の2往復がありました。
原ノ町始発が5時台のスーパーひたちは,仙台始発よりも2時間も早く,上野に9時半頃に到着するので,これは復活が必要でしょうし,最終の19時上野発で原ノ町駅着22時20分頃(22時35分発仙台行の普通列車で仙台まではその日のうちに到着可能)も,相双地区からの東京滞在時間を延ばすために,これも同様に復活と思っています(東京滞在9時間程度は確保)。
ただし,上野10時発で13時過ぎに原ノ町駅に到着,15時過ぎに原ノ町発だった1往復については,復活は難しいと思っています。
理由として,14時過ぎ仙台駅着,15時台仙台駅発と往復とも1~2時間の差しかなく,昼間のこの時間帯に10両編成の特急2本を原ノ町まで連続して運行することは流石に輸送力過剰なので,仙台発を15時15分頃⇒14時15分頃に移して,実質原ノ町発着を代替させてしまう可能性が高いと思いました。
また,ランダムダイヤが大好きな仙台支社のことだから,発車時刻の統一はないだろうけど,便宜上仙台駅15分発に統一して,現在のいわき以南の時刻表と合わせて想定してみました。
そうすると,仙台着は震災前と変わらず。仙台発は若干変更で,7時台,10時台,14時台,18時台と,10時以降は4時間間隔と予想します。
品川発 | 上野発 | いわき発 | 原ノ町発 | 仙台着 | 仙台発 | 原ノ町発 | いわき発 | 上野着 | 品川着 | |
(前日) | ⇒ | 6:00 | 7:03 | 9:31 | 9:49 | |||||
(前日) | ⇒ | 7:15 | 8:15 | 9:20 | 11:35 | 11:51 | ||||
7:30 | 8:35 | 9:35 | ⇒ | 10:15 | 11:15 | 12:18 | 14:35 | 14:51 | ||
8:00 | 10:25 | 11:30 | 12:30 | ⇒ | 14:15 | 15:15 | 16:15 | 18:37 | 18:51 | |
12:45 | 13:00 | 15:15 | 16:20 | 17:20 | ⇒ | 18:15 | 19:15 | 20:15 | 22:37 | 22:53 |
15:45 | 16:00 | 18:15 | 19:15 | 20:15 | ⇒ | (翌朝) | ||||
18:45 | 19:00 | 21:20 | 22:20 | ⇒ | (翌朝) |
※原ノ町22:20終着の特急は,原ノ町23:35分発仙台着23:55の普通列車に接続
停車駅は?
基本的に,以前の停車駅を踏襲するんでしょうし,県内だと震災前は岩沼と亘理に2往復が止まっていました。ただし,今回は亘理はそのままにしても,需要喚起のため,岩沼に加えて空港線連絡のため名取駅に停車する可能性は高いのかなと。場合によっては,その分岩沼駅の停車がなくなるかも。
本数と料金は追って発表とのことで,浜通りの復興のために,この特急の復活は楽しみですね。
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コメント
いつもお世話になっております。
JRからのプレス当日に詳細に論述いただき、大変参考になりました。
記載内容について数点記載させていただきます。
〇仙台駅2Fのみどりの窓口開設は、単なる3F窓口の混雑対策と思っていました。
新地駅の工事は初めて知りました。ここで特急どうし交換するのでしょうか?
〇いわき・仙台間の需要考えれば3または4両のE657を作り、水戸・いわき間のどこかで
併合・分割すれば良いように考えていましたが、
トータルコストで「10両そのまま直通が有利」とJRが判断したのでしょうか。
ローカル列車との編成長の差が大きく、ちょっと気になります。
〇記述の通り、列車本数についてはローカール列車と同様に、同本数での復活が
予測されますね。
スジについては
・駒ヶ嶺~浜吉田間被災移設による営業キロ増加および信号設備変更
・富岡・浪江間の原発被災復旧区間での速度制限(?)
から、震災以前より少し余計に時間がかかるかもしれません。
増加時間は最小限としていただきたいものです。
〇停車駅について、確かに名取は外せないでしょうね。
ただこれまでこの駅は優等が止まっていませんでしたが、ホームの有効長は
大丈夫だったでしょうか?
いずれにしても復活はうれしいニュースです。
相双地区の方と話をすると、東京までの特急復活を強く希望しているようですしね。
開始したら久しぶりに東京までの移動にも使ってみたいです。
それでは、失礼いたします。
投稿: sikeno | 2019年7月 6日 (土) 10時29分
>sikenoさん
いつもありがとうございます。
ネット予約の進展で,窓口を増やす流れにはなりづらい昨今にわざわざ設置したという理由として,特急の復活というのが明らかになっていましたよ。新地では,確か震災前に特急が普通列車を追い抜く駅として使われていた覚えがあります。ただ,2面3線から2面2線に簡素化されたので,昔と同じようにできるかは分かりません。
仙台発着の本数が4往復というのは最低限のサービス水準だと思いますが,昼間にあった原ノ町駅発着分の復活は難しいかもと思っており,その代替として,15時台から14時台に移すことも可能性としてはあるのかなと。そうすると,7時台の次は,10時,14時,18時と4時間間隔になるので,それも可能性があるかなとも。常磐線の普通列車が昔の14時15分頃から前後の間隔調整のため35分発に移した理由もそれかなと,後から思いました。
名取駅は,12年前まで9両編成が普通に止まれたので,10両は大丈夫だと思います。ただ,ご指摘の通り,移設・復旧に伴う距離増加や設備の簡素化,速度制限?などで,所要時間が増える要素が多いことから,双葉郡を中心に停車駅を多少絞る方向になるのかなとも。あくまでも予想なので,与太話と思っていてください。
投稿: SENDAI Watcher! | 2019年7月 6日 (土) 22時21分
さすがに利用する人は少ないでしょう。普通列車でも復興のシンボルになったはずです。特急用車両は高価なことを考えるとなおさらです。
投稿: Piichan | 2019年7月 6日 (土) 23時30分