宮城交通 泉中央発深夜バス廃止の影響
18日に、東西線開業に絡む宮城交通のダイヤ改正内容が発表されましたが、
なんといっても、一番注目というか、影響が大きいのは、twitterでも発信して反響が大きかったこのニュース。
②各路線の運行経路・便数見直し
ご利用状況等に応じて、運行経路の変更や、運行便数の見直しを行います。その一環として、平日夜に運行している深夜バス4本を削減します。
(削減する深夜バス)
・県庁市役所前23:51発 南ニュータウン行
・仙台駅前24:02発(泉中央駅24:32発)富谷営業所行
・泉中央駅24:20発 泉パークタウン車庫行
・泉中央駅24:20発 イオン富谷店行
東西線と間接的に関係する山田・南ニュータウン行き1路線の他、の泉中央駅を発着する宮交深夜バス3路線が、東西線開業のダイヤ改正のタイミングで、どさくさに紛れて一気に廃止されます。
JR4方面や地下鉄2方面は24時頃に仙台駅から終電が出ますが、それ以外のバス便に頼る地区は、概ね22時台が最終バスというところが多い。
昔は、地下鉄駅乗り継ぎ接続のバス路線も、終電に接続するのは、市バス時代の泉パークタウン線しかなく、鶴ケ谷方面も終電接続ではないにしても、ある程度遅くまでの運行で、バスにしては破格のサービスでした。
それが、泉パークタウン線が市バスから宮交に委譲されたタイミングかどうかわかりませんが、その後宮交が泉方面のほとんどの路線を担うようになり、人口の伸びが著しい富谷方面(明石台、新富谷ガーデンシティ)をはじめ、泉中央駅のバスターミナルの賑わいの半分は富谷町民のおかげといっても過言ではない状態。
宮交自体も、全体の赤字を仙台圏の輸送と高速バスでなんとかカバーしている状態で、特に利用者の減少傾向の太白区方面と異なり、泉区方面は市バスからの路線委譲の効果もあり、泉区方面の輸送力増強には積極的でした。
そのような状況から、積極的に地下鉄終電接続の深夜バスを増便したのかな。
泉中央駅のバスターミナルは、いつ行っても、ここは仙台?と思うような、首都圏の郊外ターミナル駅のような行列と、駅前の魅力的な大型店(アリオ・セルバ)の組み合わせ。
ここ発着の路線は宮交にとって生命線のような存在なだけに、今回の深夜バス3路線廃止はびっくり。
地下鉄乗り継ぎバスの成功
地下鉄接続のバスへの移行が軒並み失敗した南北線開業時。
北仙台乗り継ぎがことごとく失敗し、都心部直通に戻ったことをはじめ(市バスでさえ)、南部は西多賀、山田方面は宮交の抵抗もあり、現時点では都心直通と長町南駅接続が半々に。
一方、当時の八乙女・92年に延伸した泉中央駅発着のバスは、乗り継ぎへの誘導が成功しました。
というのも、当時の県道仙台泉線は朝ラッシュ時を中心にパンク状態で、バスが本当に数珠つなぎの状態だったようです。輸送力が限界に達して地下鉄を必要としたという健全な理由。
今回の東西線のような、バスで十分足りている中、既成市街地の再整備が目的という状況とは異なる。
また、地下鉄以前からあった団地(市内だと加茂・長命が丘、泉PT、泉が丘、松陵方面。富谷だと富が丘、サニータウン、あけの平)からの所要時間が一気に短縮されたこと、それがさらに遠方の富谷方面を中心とした住宅地開発の活発化につながりました。
ターミナルである泉中央駅前の副都心開発の成功もあり、一時期は「家を買う=泉or富谷」が当たり前で、仙台市民にとってあこがれの存在でした。
それがさらなる人口増を誘引し、昭和47年の市制施行時には約4万人だったのが、昭和63年の仙台市編入時には12万人、現在は21万人と仙台市の人口増の大部分を泉区が受け止めてきたことがわかります。
泉中央駅の乗降客は現在一日5万人に迫る勢いで、仙台では当然仙台駅に次ぐ存在です。
そのような状況なので、24時以降に発車する、地下鉄終電に接続する深夜バスは、宮交としても深夜帯の輸送改善を図り、沿線の利便性強化を図る明確な目的があった、また余裕があった時代だったのでしょう。
深夜バスの安心感
地下鉄終電にバスが接続するという安心感は、残業や飲み会帰りの日常利用はもちろん、東京からの最終新幹線からも間に合うということで、活動時間が広がり、有形無形の安心感があります。
それは、地下鉄やJR沿線も同様。それが今回地下鉄東西線の開業により、JR4方面が仙台駅24時2分発、地下鉄4方面が23時59分発と、ほぼ仙台駅24時まで滞在できるようになり、市内の多くのエリアをカバーするようになります。
仮に家の最寄バス停まで接続するバスがなくとも、最寄駅からタクシーで帰れば負担も小さくなるしというメリットもあり。
廃止理由の考察
その一方、東西線開業に関係ない泉中央駅発着の深夜バス3路線が一気に廃止になるということについて、考えられるのは以下の理由
個別の理由としては
1)深夜帯の運転手手配が困難
2)運転手の深夜割増手当を考えると、採算が合わない
3)泉周辺ニュータウンエリアの高齢化と利用者の伸び悩み
宮交全体的な理由としては
4)東西線開業に伴う、南部を中心とする減収を、経費節減によりカバーする必要。
5)イクスカの導入に伴う、高額な機器導入費用、システム維持費用の補てん。
があるのかなと思っています。
あと、泉中央からの3路線は、泉中央駅24時20分(富谷営業所行きは24時32分発)でしたが、泉PT方面は、23時45分発と35分繰り上げ、イオン富谷行(ガーデンシティ)は23時35分発と45分の繰り上げ、富谷営業所行きは、23時35分発と、ほぼ1時間の繰り上げとなります。
なお、仙台駅発泉PT(宮城大学)行きとしては、23時35分発があり、ロイパ・アウトレット近辺限定ですが直行需要に応えています。
あと他に終バスが遅かった、向陽台団地は23時30分発で変更ありませんが、地味に松陵・鶴が丘NT行きが23時45分→22時20分と約1時間半の繰り上げと、影響が大きいところも。
こういう終バスの繰り上げが、ちょうど忘年会シーズンに突入する書き入れ時の時期に実施するというところが、宮交としても苦渋の決断だったのかなと察しますが、
仙台の深夜バスの不思議
でも、他都市では24時以降(都市によっては23時半以降)発のバスは、深夜バスとして運賃倍額をとっています。定期利用者からも、差額分を徴収など(210円区間→420円とか)。
宮交の4方面の深夜バスは、運賃倍額を採用しなかったことから、良心的だなぁと思っていましたが、採算性他の面で厳しいとなった時にいきなり廃止というのは、利用者のことを考えていない(そのような余裕がない)という気もします。
例えば、BRT導入で大混乱の新潟市ですが、新潟交通が24時10分発のこのような深夜バスを導入しています。
http://www.niigata-kotsu.co.jp/noriai/shinya.pdf
新潟では始発駅23時半発以降のバスを深夜バスとして適用しているよう。この路線は、JRの越後線に平行する路線で、電車の終電よりも遅い時間帯に走っています。
他の都市でも、深夜帯の運賃倍額っていうのは、「タクシーに乗るよりは安い」というメリットもあり、普通に受け入れられています。
事業者にとっても上記の1)2)の理由の解決の一助になるし、完全廃止の前に、ワンクッションおいても良かったのかなと思っています。
まぁ、仙台市交通局とも足並みを揃えないとという調整が面倒なところもあるのかな。泉中央からは競合する路線はないから、独自に実施できそうだけど、同時に廃止される県庁市役所23時51分発の南ニュータウン行きは、市バスとの重複部分もあり。
また市バスで最も遅い旭ヶ丘23時52分発の鶴ケ谷方面行は通常運賃での運行なので、せっかくであれば市交通局と調整の上、深夜バスの考え方を導入した方が、他の路線の深夜帯の充実も見込めるし、より前向きな改正につながったのかなという意味でちょっと残念。
イクスカの導入で、料金システムの変更が面倒になるから、せっかくであれば、このタイミングで深夜倍額の料金制度を導入した方が良かったのになぁ。
12月7日以降の、泉中央駅の混乱、またはタクシー需給状況の変化に注目ですが、復活の声が上がれば、運賃倍額の深夜バスとして復活させる目もあればと思います。
宮交以外の事業者の参入という可能性もあるし、ここはまだひと波乱があるかな。
富谷町との関係
今回の深夜バス廃止のうち、特に富谷町の2路線が対象になりました。できもしないLRT構想をぶち上げた富谷町の新町長。町民バスの泉中央駅乗り入れの件で、宮交との関係が微妙との情報もありました。もしかしたらだけど、今回の深夜バスの廃止にも影響したというのは勘ぐりすぎでしょうか。
富谷町方面は、必要であれば、町が予算化して、亘理町が実施しているような自治体の境をまたぐ深夜バスを運行するという可能性はありますが、上記のように宮交との関係が悪化しているのであれば、基本的に宮交の許可が下りないと実施できない。また当然仙台市の許可も必要。
(亘理の例は、岩沼駅から亘理方面への宮交バスはとっくに廃止になっているから、岩沼市への許可だけで済むといっても、いかんせん、岩沼市も議会で乗り入れ反対論が出て、実施が数か月遅れたということもありました。おそらく地元タクシー会社からの反対でしょうが。)
太白団地・南ニュータウン方面
泉ばっかりだと気の毒なので、こっちも。
これは、県庁市役所、23時51分発、仙台駅23時58分発であることから、地下鉄終電とほぼ同じ時間帯の運行で、さらに、長町南駅で地下鉄終電からの接続を受ける役割を担い、西多賀・鈎取・ひより台・太白・南NT方面にとって大きな存在でした。
せめて、長町南駅~南NT区間だけでも残してくれればと思いながらも、もっと需要が大きい泉中央駅発着深夜バスが軒並み切られた状況からすると、やむを得ない。
今回の地下鉄開業とひより台大橋の開業による影響変化が大きいところ。
とくに、太白団地付近の上記団地群は、便利になると思うと、意外な落とし穴が。上述の深夜バス廃止もだけど、
仙台駅方面の交通が
・旧286経由仙台駅方面
・動物公園駅経由仙台駅方面
・動物公園駅行→【東西線】
・旧286経由長町南・長町駅行→【南北線】or【JR】
とバスの系統が4つになり、自分の目的地によってどの行先を選べばよいかが、良く考えないと分かりづらい。料金も異なるし。
行きはまだ良いけど、仙台駅からの帰りは、
○南北線に乗れば良いか、
○東西線に乗れば良いか、
○バスプールに行けば良いのか(286経由と動物公園経由でバス停も違う)
良くわからない。通勤に使う場合は、基本的に経路を指定しなければいけないけど、これではおちおち定期も買えない。イクスカにチャージして臨機応変に経路を選択するしかないな。
当然、地下鉄にのっても、接続バスがあるかどうかは時の運。特に、土日の動物公園駅からの本数は、泣きたくなる位。
市バス・地下鉄で完結するエリアであれば、市交通局HPで乗り継ぎ案内 があるから、薬師堂乗り継ぎエリアなどでは重宝すると思うけど、宮交エリアだと地下鉄とまたがった案内をしてくれないから、本当に、自前で接続が良い地下鉄の時間を調べておかないとヤバいよね。
結果的に各系統毎時1~2本になってしまい、中途半端に本数が分散して使いづらくなりました。
この南西部団地群(太白・ひより台・南NTなど)は、動物公園駅のパークアンドライドが1日400円で使えるので、バスを利用するよりはベストな選択枝になってしまうのではないかと危惧しています。仙台市もこのP&Rビルは、八木山エリア内よりは南西部団地群がターゲットでしょうし、このような施策をやられると、宮交にとっても辛いよなぁ。
東西線の利用者確保のためには、市としてバスだけに頼ってはいられない状況ながらも、これでは、12月6日以降が、BRT導入で大混乱の新潟市を笑えない状況になってはほしくないですが。。。
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コメント
ただ宮交の今回のバス削減はそれだけではなくて土曜ダイヤの休日ダイヤ化(学校便除く)もあるんですよね。
深夜バスの問題だけならば他都市でみられるような料金倍額という手段でもいけそうですが土曜ダイヤの休日ダイヤ化もやっているところからしてバス運転士そのものが確保が困難な状態なのでは?
(後者は交通局も南北線で実施するが南北線の場合は鉄道ということもあって本数、輸送力ともにバスとは比較にならないほど大きいから余り問題にならない。)
後宮交と交通局(仙台市)、宮交と富谷町とで微妙な空気なのは否めないかと。
ちなみに富谷町民バスの泉中央乗り入れに関する仙台市の許可そのものは泉区は幸か不幸か一部を除いて交通局の縄張りではないから割と通りそうだけど…。
投稿: hts | 2015年11月22日 (日) 08時10分
>>htsさん
今回の宮交ダイヤ改正では、地味に土曜ダイヤと休日ダイヤの統合という実質減便の合理化も行われますね。バス運転手の確保が大変だという話は数年前から聞いていますが、5月末には仙石線の再開で代行バスの運行が終了しましたし、代行バスに運転手がとられているというのもだいぶ緩和されているので、このタイミングでというのは何かほかの理由があるのでしょうか。
やはり、東西線開業のどさくさに紛れてというような気がしました。
富谷町民バスの泉中央乗り入れは、そんなに簡単なものではなさそうです。
投稿: S-Watcher! | 2015年11月27日 (金) 23時47分