仙台市最後の郊外NT開発?
震災後は鈍化していた人口が、津波被災地や福島からの被災者転入、震災復興事業に伴う労働人口の流入を原因として急激に伸びましたが、震災前程度の年間数千人ペースでの流入に戻りつつあります。
仙台市内の郊外NT開発
そのような中、仙台市内の、鉄道沿線ではない郊外ニュータウン開発は、新規の開発は止まっている状況でした。
南部は、昭和30年代からの八木山に続き、昭和40年ころから開発され、モノレール構想頼りだった太白団地、ひより台、南NT等がありましたが、モノレールの見直し、八木山とを結ぶ都市計画道路川内旗立線の整備遅れ(ようやく今年開通予定)で、その一帯での新たな開発が行われていません。
名取市では、昭和50年代以降は名取川の南岸の高舘3団地と呼ばれる「ゆりが丘、那智が丘、相互台」+みどり台の開発などはありましたが。
南部については、、地下鉄の開業やJR東北本線沿いの利便性向上で、駅周辺の小規模開発が中心でした。高校の学区制(旧北学区の人気)もあり、泉エリアのニュータウンのイメージが良かったこと、南部にはNTに適した造成しやすい丘が少なかったこともあり、大手デベもあまり手を出さなかったという面があります。
北部は、富谷や大和町、利府方面では新規のニュータウン開発がコンスタントにありましたが、仙台市内では、比較的街中に近いエリアが開発尽くされてしまったことから、明石南、紫山を最後に、大規模な郊外型NT開発の新規着手は10年以上ありませんでした(鉄道沿線の区画整理事業は除いて)
土地が余っている東北道から西側は、みやぎ台、泉ビレジ(館)、住吉台などがありますが、お世辞にも人気のあるNTとはいえず、まだまだ空地が見られ、周辺に新たなNT開発を行える状況ではありません。
人口規模が大きい住吉台こそはヤマザワがあるものの、館は八百ふじが撤退し団地内からスーパーがなくなり、東急不動産が分譲した一時期の高級イメージが失われています。
仙台駅からの直行バスを前提としたNTでは、やはり北環~東北道までが限界。バスで40分を超えると、さすがに遠いイメージになってしまう。住吉台は泉中央からさらに30分以上。さらにきつい。
以前のように、仙台市全体で年間1万人ペースで人口が増えていた時代の再来はありえず、近年は知り合いでも、あまり北の方の郊外型NTに家を建てたという話は聞かなくなり(紫山位?)、郊外NTでも錦が丘とか美田園、JR駅近くの小規模分譲地とか、通勤時間優先で、一応鉄道沿線が選ばれることが多くなったように感じます。あとマンションも結構多い。
泉パークタウン
そのような状況の中、駅から離れた郊外型住宅地の中では、唯一抜群のブランドイメージを持っている「泉パークタウン」。
現在は紫山を分譲中ですが、泉中央駅からバスで25分という、不動産表示だけを考えたらちょっとありえない立地ながらも、三菱地所のこれまで40年にわたるブランディング戦略と、環境整備、寺岡のセンター地区へのホテル、大型商業施設(タピオ、プレミアムアウトレット)の整備などで、高級住宅地のイメージを保持し続けており、土地建物で4000万円以上の分譲価格で売れ続けています。高森寺岡などの中古の住宅も値崩れがしづらいと言われており、仙台の高級住宅地の代名詞。
それは、他のNTのような、売りっぱなしではないデベの姿勢への安心感が評価されているところもあり、他のNTでは見習いたくても見習えない凄さでもあります。
とはいえ、紫山はほとんど大和町に接する奥まった行き止まりのエリア。商業施設は南側の寺岡に面したところに限られ、閑静な住宅街ではありながらも、こういう立地は結構将来厳しいのではと思っていました。それでも、大部分が分譲の目途がたち、地所の力の凄さを感じます。
引き続き、紫山の5期に続いて,泉パークタウンの最終期となる第6期の造成が開始されるとのことで、ほとんど根白石の集落に隣接する場所に2020年度までに宅地が整備されます。
2300戸で9400人の計画人口を見込んでいるとのこと。
さすがにこの第6期の予定地は、事業化が難しいのではと思っていました。アセスは終了済でしたが、計画変更によるアセスの見直しの申請が行われています。
紫山は行き止まりのNTでも、寺岡に整備されたパークタウンの中心地区に隣接し、宮城県図書館や宮城大、白百合学園もあり、今度台原の社会保険病院が移転すると言われており、地区内に何もなくとも、近隣でそれなりに用が足りるような条件にあります。それが一つの都市をつくるというパークタウンのコンセプトでもあり。
しかし、この第6期開発。西側の奥地で、商業機能などは当分の間寺岡に依存することに。それに、ほとんど根白石。住吉台とそれほど立地条件が変わらないという場所。
住吉台では1区画5~600万前後とかで土地が売られていますが(一時期は400万)、おそらくPTの第6期の区画は1000万円は下らない価格帯となり、土地付きで3500万円程度が標準になるかと思います。
バスもラッシュ時だと泉中央へ30分程度が見込まれ、中心部には1時間圏。パークタウンのブランドイメージがどこまで通用するかというところ。
まぁ、パークタウンに住みたがる方々は、通勤も車が中心で、あまりバスを使っていない印象はあります。自分が知っている方々に限ればなので、サンプル数は少ないですが。
北山トンネルの開通で、時間帯をずらせば30分ちょっとで街中に行ける立地ではあります。
学校の確保は?
道路計画を見ると、西側に接する根白石の集落に直接行ける道路は作らないようで、既存集落とあえて隔離を図る意味なのか。
でも、学校などはどうするのでしょう。計画人口通りに埋まれば、小中学校は成り立つ人口ながらも、現在は順調に分譲が進んでいる第5期の紫山内にさえ学校はなく、寺岡の既存校に通っています。
寺岡側が初期の開発でオールドタウン化していることから、うまくバランスがとれていますが、第6期開発では、場所的に根白石の小中学校に通わせた方が近くながらも、地所側はそれを避けたいという意図的なものを感じます。
なお、仙台市としても、現在の少子化が進んでいる中、あまり急激に人口が伸びる新興住宅地には、学校を新設したがらない傾向があります。そのうち錦が丘が例外で、一時期は団地内に作らず、団地の入口部分に愛子小学校を新設したのに、早急にパンクしてしまったためですが、泉では前述の紫山、将監殿などが団地内の学校新設が見送られています(寺岡、将監の既存校に通学)。
市の方針との整合性
仙台市としても、東西線沿線などに人口を集めていきたいという施策を打っている中、伸び悩んでいる人口の増加分を取り合う形になるので、あまりこのような場所への新規開発は本音では望ましいとは思っていないのでしょう。
とはいえ、計画としては当初の40年前からあるもので、さらに市街化区域への編入済であり、これまで協力関係を保ってきた三菱地所の事業を止めることはできない。
まぁ、仮に仙台市として、この住宅開発をストップさせたとしても、富谷、利府、大和、名取などの周辺自治体に流出してしまう。
仙台市が進めているコンパクトシティ構想、アクセス30分構想というのは、広域都市計画区域として5市4町1村で構成している「仙塩広域都市計画区域」で取り組まないと、実効性が確保できないもの。限界があります。
住宅開発もそうですが、商業の方はなおさら。仙台市で厳しいアセスのため、延床5万平米以上の開発が事実上かなり制限されている中、名取のイオンモールは延床10万平米規模、利府が進めている新イオンモール計画はそれ以上の規模の開発で、それをやられてしまったら、周辺自治体の思うつぼ。
周辺自治体の生き残りのためには、仙台市と同じことをやっていてもダメなので、そういう商業施設誘致に走ることはやむを得ないにしても、それが全体最適化を生んでいるかというところが、現在の土地利用制限、地方自治の法制度の限界を感じます。
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コメント
河北新報などによると、今回の造成決定に合わせたかのように、高森地区にホライゾン学園(横浜市)が2016年4月に小学校を開校するとのこと。
インターナショナルスクールのような100%外国語(英語)の各種学校はなく、イマージョン方式での小学校ですし、スクールバスも運行されるようなので、小学校を新設せずとも小学生の増加分は吸収できるかも。
投稿: Tom | 2015年2月13日 (金) 13時22分
>>Tomさん
記事見ましたよ。
1学年50人規模×6学年で300人弱で、定員を満たせば、高森の小学校並みの規模になりますね。
開発地の学区は根白石小で現時点でも全学年で100人もいないので、当初はスクールバスで根白石小に通わせることになりそうですが、学区を嫌って私立にというのは多少あるかも。
ただ、ローン負担を考えると、大部分が公立小学校を希望するでしょうね。
なお、寺岡は紫山を学区にしてる関係で大規模校になっており、新街区からの受け入れ余地はないようです。
投稿: S-Watcher! | 2015年2月14日 (土) 00時55分