震災による小学校の統廃合 他雑感
今朝の河北で、仙台市内で被災したエリアの3小学校のうち、宮城野区蒲生地区にあった中野小学校の閉校が決まったとの記事がありました。
被災の中野小が閉校へ 震災影響、初のケース 仙台市教委
仙台市教委は20日、東日本大震災の津波で校舎と学区が甚大な被害を受けた宮城野区の中野小(児童68人)について、2016年3月で閉校することを決めた。震災の影響で閉校となる学校は、同市で初めて。
市教委によると、同校の児童数は震災前に比べて半減した。学区は災害危険区域に指定されており、児童数の減少に歯止めをかけるのは難しいと判断。12月初旬に開いた保護者説明会では、「今後の子どもたちの学習環境を考えれば、閉校はやむを得ない」との意見が大勢を占めたという。
児童は現在、同区の中野栄小で授業を続けている。児童減少に伴う学校集約化は近隣校と統合するのが一般的。しかし、仮設住宅で暮らす中野小の児童の家庭の移転先が将来、多数の学区に分散することが予想されるため、特定の統合先は設定しないことにした。
市内で津波被害を受けた中野小以外の学校は、若林区の荒浜小(37人)と東六郷小(26人)。市教委は近隣校との統合や閉校を視野に、本年度内にも地域住民や保護者と協議を進める。(12/21河北)
中野小学校は、震災時に近隣での火災に巻き込まれる可能性もありながらも、間一髪地域住民の避難場所となり多くの命を救った場所です。
もともと、仙台港南側の蒲生地区は、掘込港として建設された仙台港の開発時に、周辺住民の移転地として区画整理が行われたり、流通・工業団地が形成された場所。
津波被害をまともに受け、地区東側(蒲生干潟側)の住宅地は、災害危険区域として、原則人が住めないエリアとなり、区画整理事業にて業務用地の拡張用地として転用されるようです。
そうすると、住人はほぼいなくなるわけで、小学校としても存続することはできず、集団移転先もバラバラなので、閉校が決定したとのこと。児童数60人ほどでは一学年10人程度で、再建したとしても将来的にじり貧なので、地域の賛成もあり、この判断は妥当なのでしょう。
仙台市内の小中学校の統廃合については、過去にも記事にしたことがあります。
中野小に続いて、今後閉校の検討が進む予定の荒浜小、東六郷小についても、条件はもっと厳しく、震災前の時点で1学年1クラスの状態。東六郷小は1学年10人前後と、過疎地の小学校並みでした。
仙台市で進められていた統廃合計画に、この3校は近隣校との距離を理由に対象外となったところでしたが、結果的に震災による影響で統廃合対象となってしまったのは気の毒なところ。
地区のコミュニティの中心としての役割があるとはいえ、各学区内が災害危険区域に指定され、住人がいなくなる。かつ、集団移転や災害公営住宅の建設先には、別の小学校もすでにあることを考えると、荒浜、東六郷の閉校と近隣校への統合は止むを得ないのかなと思います。
一方、山元町では
この話で思い出したのは、同じように、小学校自体及び学区の殆どが被災した、山元町の山下第二小のこと。山元町山下地区の海側を学区とし、山下駅を学区に含むことから、仙台のベッドタウンの小学校としての性格もありましたが、学区の大半である海側が災害危険区域に指定されることとも関連し、山元町長のリーダーシップにより、山下駅自体が内陸へ移設予定で、常磐線の移設完了はまだ先の話ながらも、今春に災害公営住宅の県内第一号が完成するなどその駅前に新しい街をつくりはじめています。
山下二小、16年再開へ 新駅周辺に移転整備 山元町教委
宮城県山元町教委は、東日本大震災の津波で校舎が損壊し移転、再建が決まっている山下二小(児童105人)を2016年4月に再開する方針を固めた。移転予定地は、町が集団移転先などとして同町浅生原に整備を進めている新山下駅周辺地区の新市街地の北東部約1万6500平方メートル。整備計画では、2013年度末にも基本設計に入り、15年度に1年間かけて敷地の造成と校舎、体育館、プールの建設を行う。
新校舎は、保育所や子育て支援センターなどが入る児童福祉施設と公園が隣接。新市街地での子どもの健全育成の拠点としての役割を担う。全域が山下小の学区内にある新市街地は、移転を機に山下二小の学区に変更する。用地取得・造成費は約3億円と見込み、ほぼ全額を国の補助で賄う。町議会12月定例会で関連議案の承認を得られれば事業をスタートする。
同町の沿岸部にあった山下二小は、震災の津波で鉄筋2階の校舎が全壊し、昨年解体。児童は震災直後から、内陸の山下小で一緒に学んでいる。計画通りに事業が進めば、併設を5年間で解消できる。
森憲一教育長は「子どもの元気な声が地域ににぎわいを生む。学校を核に安心して子育てができる新市街地の環境を整えたい」と語る。(11/29河北)
その新しい街に、被災した山下二小を移転させるとのことですが、その場所はもともとの山下小学区で、さらにその山下小から1kmも離れていない場所。
現在の二小の児童数が100名程度とのことで、将来的に新市街地に人が張り付いてきた場合でも、山下小で十分収容できるはず。(そもそも現在の二小の仮住まい先は、山下小学校)。
山下小も、現在は各学年ほぼ1クラスしかいない児童数約200名の小学校。少子化による児童減少が進んでいました。将来的に近接した2校も維持できるとは思えない状況ですが、記事中にもあるように、”用地取得・造成費は約3億円と見込み、ほぼ全額を国の補助で賄う。”とのことで、自らの懐が痛まないからやるのかと。これは用地費だけで、校舎建設費も別に補助で出してもらうのでしょうし、こういうのはどうなのかなと疑問を感じます。
もちろん、子供たちの立場から考えても、1学年1クラスのクラス替えもできない小学校を近くに2つ並立させるよりは、1学年2クラスの小学校1つにした方が、友達の数も増えるし、教育環境を考えても良いのではと。全校児童計300人であれば、各学年2クラスは可能。
なお、同じ山元町では、南部の坂元地区にあった沿岸部の中浜小を内陸部の坂元小へ統合させています。同じ考え方で対応すれば良いのではと思った次第。
山元町長は、先週議会から問責決議案を突き付けられ、その強いリーダーシップが独善的とみられている面もあるようで、町として混乱しているようですが。
このようなことをやっていると、全国的に問題になった震災復旧事業費の目的外流用を批判できないのではと感じました。特に被災地では、工事業者の不足と資材高騰で、入札の不調も多いですし、民間も含めた工事費高騰に悩まされている面もあります。
復興の名のもとに進んでいるさまざまな事業の中で、優先順位をつけて、必ずしも必要ではない事業をあきらめることが、資源の選択と集中という面で必要ではないかと思います。
県が進めている、20億かかるという浦戸諸島の無人島の護岸工事にしても、気仙沼(唐桑、内湾地区)その他の巨大防潮堤工事などが典型的な例ですが、地元が望まないものを杓子定規に進めることはどうなのでしょう。カネが下りるからやらねば損というのは、税金の無駄使いの観点からすると、同じような話に思えたりしました。誰のためにやっているのかというと、建設業者のためにやっている訳ではないでしょうが、いろいろ違和感を覚えます。
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