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2012年10月17日 (水)

仙石線の東北線乗り入れ(2)

みんながあっと驚いた昨日のニュースでしたが、県とJRの協議が大詰めとのことで、明日の18日共同での記者会見があるようです。

JR側も、これまで散々何度も提案を受けたりしながらも、「電化方式が」「車両が」「金が」などで渋り続け、地元自治体側も費用負担まではできずに、実現は無理とされていたこの事業。

震災が契機とはいえ、良く決断してくれたと思います。ただ県もかかわっているとのことで、用地買収に協力するなど、支援を行うようです。ただ、既に線路はほぼ平行しているところだし、立体交差にしない限りは用地買収って必要なの?って気がしますが、合流ポイントなので信号場を造らなければいけないとかで土地が必要なのでしょうか。20億というのも単に線路をつなげるだけとしてはかかり過ぎの感あり。何か+αがあるのでしょうか。

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実現の背景

 まぁ、震災で鉄路が分断されているこの現状がベースになるからこその、この事業化なのでしょう。というのも、鉄道路線沿いの流動は無視できないので、例えば多賀城駅や本塩釜駅の近くに住んでいる人が石巻に通う、また逆も然りですが、そのような流動が現時点で途中分断されているからこそ、不通区間復旧と同時に思い切った手を打てるという面もあります。現在つながっている系統を、急には変更できないでしょうから。

 

 また、現時点では、高速バスがメインの交通機関になっており、三陸道の4車線化も進んでおりさらなるスピードアップも見込まれる中、仙石線が全通しても片道1時間以上もかかっていたら、一度移ったバスへの需要を取り戻すことは厳しいというJR側の危機感も感じられます。下手したら仙山線状態になってしまうと。

 そこで、最短50分程度で仙台と石巻が直通となれば、バスは仙台側の渋滞は残るので、鉄道の優位性を保てると考えたとしても不思議ではない。

気になる点はいろいろ。

昨日の記事と重複するところもありますが

(1)運行体系と本数

 現在の高城町駅以南の仙石線沿線と石巻方面の流動も馬鹿にならないので、完全に系統を分断することはできませんし、昨日の報道でも”一部列車の乗り入れ”とのことなので、速達性を優先する快速のみディーゼル化して本線に乗り入れ(毎時1本)、各駅停車は従来の仙石線電車をあおば通まで(毎時1本)ということが予想されます。車両費を浮かすため、高城町以北を完全にディーゼル化するところまではやれない。

A)仙石線高城町以南

 そうすると、従来の仙石線高城町以南では、従来の快速の分を東塩釜以南の各駅停車に置き換えて運行することが現実的。両線の合流駅となる高城町駅の設備が貧弱すぎて、折り返し電車を設定するのは不可能でしょう。ホームは2面ありますが高城町駅の前後は全て単線ですし、ダイヤが乱れた時のことを考えると。

<メリット>

  全てが各駅停車となるが、現在快速が走る昼間の時間帯に生じている快速通過駅の30分待ち(宮城野原や小鶴新田など)がなくなり、仙台近郊の輸送が改善されればいいですね。昼間もきれいに15分おきであれば体感的にかなり便利になります。

<デメリット>

  沿線南部から石巻方面へ行く電車が1時間1本となり、また各駅停車となることから、石巻方面と榴ヶ岡―松島海岸間相互の利用者にとっては不便となります。

B)東北本線(松島付近―仙台)

 JRは極力列車の総本数は増やさないポリシーなので、考えられるのは現在松島止まり(毎時1本程度)を石巻直通快速に置き換えて、仙台ー松島付近は昼間の毎時3本を維持し、朝夕ラッシュ時だけは従来から増発の形をとるという予想。特に夕方ラッシュ時は利府行を除くと元々30分に1本程度しかないので、増発せざるを得ない。

 本線内の停車駅は昼間は全駅に停車なのでしょうが、夜は快速で塩釜のみ停車という可能性はありえます。従来の快速の代替という役割と考えると、塩釜や国府多賀城付近への需要もあるし、ノンストップは基本的に設定できないでしょうね。石巻側の人口も減っていることから、ノンストップよりは途中駅でこまめに客を拾うことが得策。

C)仙石線(高城町―石巻)

 混雑するであろう快速がディーゼルの2ドア、ガラガラであろう各停が4ドアの従来型ということだと、乗車位置も異なったり、混乱が生じそう。現在の直通快速は途中無停車でそんなに混んでないからディーゼルの2ドアでも問題がないけど。

 一応快速・各停併せて1時間に2本体制が維持できれば文句は言えまい。

気になるのは、仙台駅側で、石巻行が地上本線ホームと地下の仙石線ホームに分散することで、混乱しそうなこと。特に観光客とか。

(2)運賃制度

 石巻・高城町方面から仙台方面は、仙石線と本線のどちらを利用しても安い方で統一という選択乗車制度を適用でしょう。Suicaも普及しているし、実際の乗車ルートをいちいち把握することは不可能なので。

単純に距離数を足し合わせると、

 仙石線(石巻―仙台):49.7km

 仙石線(石巻―高城町)+本線(松島―仙台)=24.7km+23.4km=48.1km

おそらく、本線経由だと接続部分を含め49km程度になり多少短くなりますが、運賃が大きく変わるということはなさそう。仙台からだと石巻まで820円、高城町まで400円というのは変わらず。ただし、あおば通―石巻は50kmを切るので現在の950円から820円に値下げになりますが、各停で仙石線を乗りとおす人以外は意味がないでしょう。

 

(3)乗り換え

 石巻から松島以南の本線に行くのは直通になり便利になるけど、本線鹿島台方面と石巻方面の乗り換えが可能になりながらも、やはり塩釜駅経由となるのか?それであれば、運賃面でも時間面でもかなり不利で、松島駅から高城町へ徒歩で歩いたほうが早いということになりそう。

 また、鹿島台・小牛田方面から仙石線本塩釜方面へは、乗り換えは従来通り無理そうで高城町へ徒歩連絡となることも改善して欲しかったですが。

 よって、直通が可能となる以外は、改善されるとは言い難いようです。

せっかくであれば、合わせて松島海岸駅に本線の駅を併設させ、双方向の乗り換えができるようにすれば直通がなくてもかなり改善が図られるのに、以前積極的だった松島町があきらめモードなので、これはすぐには難しい。それか高城町駅を松島駅付近に移転・統合した方がとも思うけど、駅がなくなることでの周辺住民の反対は大きいだろうから、そう簡単にはいくまい。

  乗り入れのニュース自体はJR側の大英断だなぁと思いながらも、良く考えるとアラも見えてくる。こういう事業は期待すると後からがっかりすることも多いので、あんまり期待せずに、明日の発表を楽しみにすることとします。

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コメント

仙石線が松島で本線乗り入れ・・・・石巻からの直通は1時間に数本だから
出来れば石巻の方の利便性ももちろんだけど、松島の観光・周辺住民のJRの利便性をもっと考慮して、東北本線の松島駅で、本線と仙石線が乗り換えが出来ればいいのに・・・・と。思います
本線の駅が、少し仙台よりに移動するとか、専用歩道をつくるとか。。。。。何とかならないのかな~
皆さんどう思いますか?

投稿: てつ | 2012年10月25日 (木) 23時29分

てつ さん
全く同意です。今回の乗り入れ事業化発表は英断ながらも、ベストの案ではなく、次善の策。
そもそも松島駅か松島海岸駅で仙石線ー本線が相互乗り換え出来ればその必要性は低いし、乗入線路整備にかかると言われる20億あれば、乗換駅の整備は可能なのですが(仙台近郊の近年の請願駅はだいたい10億円程度)。
駅の移動は既得権とかがあり難しいでしょうね。

投稿: S-Watcher! | 2012年10月26日 (金) 20時12分

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