« 2012年5月 | トップページ | 2012年7月 »

2012年6月24日 (日)

鉄道の内陸移設(3)

最後に、常磐線の移設について、忘れないうちに。

宮城県内については、現在は津波被害がなかった亘理以北の運行にとどまり、うち浜吉田―駒ヶ嶺は数年後の開通を見込んで1kmほど山側に移設となり、ルートも決まり用地買収が始まった段階と思われます。

 仙石線も同様ですが、震災当初は最短2年程度での開通との話だったので、自分も将来世代のことを考えると移設に賛成でした。

山元町の特殊性

 特に移設に熱心な山元町は、従来の集落が山側の国道6号沿いにありながら、過去に鉄道を忌み嫌い海側の何もないところに通させたという、どこにでもあるような話があり、そのせいで、全く顔のない、何もない町に。小規模なスーパーとホームセンターが1件ずつある以外は、まともな買い物できる場所が町内に皆無で、相馬や亘理へ依存していました。

 あるのは温暖な気候と、仙台への通勤通学圏であるというメリットを生かし、昭和50~60年代には、仙台通勤者及びリタイヤ組をターゲットとした小規模建売住宅が浜吉田駅、山下駅周辺に結構建てられていましたが、近年の地価下落と都心回帰により、新規に移り住む方々も激減し、通勤者もリタイヤして高齢化が急速に進行し、隣の亘理町と好対照で厳しい行政運営を強いられていました。

 それでも、平成17年には、亘理町との間で進んでいた合併・市政施行の話も、亘理町の当時の町長がほぼ拮抗していた住民アンケートの結果を強引に解釈し、合併をご破算にしました。山元町の高齢化率の高さと国保税の高さなどで、市になるというメリットとデメリットを天秤にかけての判断だったのだろうと思いますが、引き続き山元町側からは亘理町へのラブコールを掲げる町長が続いていましたが、この震災でそんな雰囲気は完全に吹き飛んでいます。

 仮に合併していたら、2町で市制施行した東松島状態だったんだろうなと。人口の多い旧矢本と少ない旧鳴瀬。旧鳴瀬の方が壊滅的被害を受けながらも、人口の多い旧矢本重視になっている状況をみると。

 よって、単独で存続したからこそ、ワンマンと言われながらも、強いリーダーシップにより、鉄道の内陸移設と新駅周辺への復興住宅や集団移転先の集積を進め、顔のある町を作ろうとしています。

 ただし、当然ながら、元の駅周辺の住民にとっては駅が遠くなるわけで、簡単に許せるわけもなく、反対運動も起きながらも、リタイヤ組でめったに電車も使わなさそうな方々が活動しているような印象でした。気持ちはわかりますが。。。あれだけひどい被害を受けたところに鉄道や駅を復旧させても、特に若い世代は住みたくないだろうし、町としてもじり貧になることが分かり切っているので、津波被害が少ない山側に新市街地をというのもわかる。

移設完了までは遠い。。。

 なので、この理念には、自分は賛成ですが、ただし早くて平成27年度と言われる移設完了まで、山元町民だけでなく、南側の新地・相馬・南相馬の住民が仙台への直通鉄道を奪われる状態になり、特に山元町はもともと高校生も仙台方面への通学者が多かったのに、代行バスの不便さもあり、震災後町に見切りをつけて、町内の賃貸物件不足もありせっかくだからと岩沼以北に引っ越している方が多く、町の人口は震災前1万6,7千人でしたが、震災後数か月で約3千人も一気に減ったようです。

 同じ被災自治体でもこんなに率として一気に減少したところはないのでは。女川などは死者行方不明者の率でいうと一番ながらも、実際に他市町へ借り上げ仮設等で引っ越しながらも、住民票は女川においている人が多いという話。元々の町への愛着が強いようですが、山元町の住民は住民票も移してしまい、戻る気持ちが弱い方々の割合が高いとか。

 だから、仮に数年後にやっと鉄道の移設が完了しても、この人口減少社会で、わざわざ仙台通勤者が山元町に住居を求める方は少ないでしょうし、一度出て行った方が戻ってくるかというと厳しいかも。山元町にとっては、進んでも引いても地獄という厳しい状況で、本当に気の毒だなぁと思います。

福島県側への影響

 なお、南側の相馬市はとばっちりを受ける形になっており、仙石線が寸断されている石巻市が、一応本線・石巻線経由が生きているのと違い、ここは完全に鉄道としては陸の孤島になってしまっています。一応、JR代行バスのほか、相馬・新地から仙台までの高速バスが救済措置で走っており、6月からは増便とJR定期運賃で乗れるような補助措置が講じられていますが、たまに仙台市内で見かけるバスを見ても、数人しか乗っていないようで、相馬からも通勤通学の不便さを嫌って仙台近郊へ引っ越した方が多いのか。福島市や郡山市よりは低いとはいえ、原発からの距離の近さから放射能を避けてというのもありそうですが。

続きを読む "鉄道の内陸移設(3)"

| | コメント (2)

2012年6月13日 (水)

良いニュースと悪いニュース(あすと長町)

良いニュースから。

「とうとう」、と言っても良いだろうな。あすと長町の鉄道・運輸機構(旧国鉄清算事業事業団)が保有する、長町駅前の一等地3区画が50億円以上の価格で落札されました。

あすと長町の一画 初めて落札

 「あすと長町」で、景気の低迷などから、これまで応募者がゼロだった土地が、初めて落札されたことが分かりました。
 大規模商業施設が建設される見込みとなっています。
 落札されたのは、仙台市の大規模再開発地域「あすと長町」のうち、JR長町駅東側の3区画合わせて3.9ヘクタールです。
 12日埼玉県内で入札が行われ、50億円以上の価格で落札されたことが分かりました。
 落札業者は公表されていませんが、大規模スーパーなどの商業施設が建設される見込みです。
 この土地を巡っては、景気の低迷などから入札が不調に終わり、これまで応募者がゼロとなっていました。
 落札の理由について仙台市では「震災であすと長町は被害がなく、価値が見直されたため」と分析し「街づくりが加速する」と期待を寄せています。 (TBCより引用)

 位置関係

 50億円ちょいが、設定されている最低落札価格の3区画分の合計なので、複数企業で競合の上なのか、ほぼ単独で最低価格で落札されたのかはわかりません。

 売却案内のページ

 確か、最初は、今回の最低落札価格の1.5倍以上の価格が設定されていたと記憶しています。数度にわたり価格を下げ続け、ようやく落札されました。旧国鉄清算事業団がらみの土地については、原則売却なので、URのような定借という手法はとれませんでした。そのため、長町駅前のこの開発の目玉的な一等地が街びらきから5年も更地のままであり続け、現在はお花畑や野鳥の王国的な、ある意味自然にあふれたオアシス的な状況が続いていました。

 URと運輸機構の土地処分がお互いにバッティングしたり、URからの保留地購入でほぼ固まっていた現スポーツパークの土地が、運輸機構の入札不調に影響されて、「高すぎる」と購入から定借に変更されたりと、お互いに誤算が続いていたところもありましたが、一応杜の広場を囲むUR保留地は今年の10月のゼビオアリーナを最後に施設立地が完了、そして運輸機構の保有地も駅前の3区画がようやく売れて、残りは現仮設住宅の38街区のみになります。

 何で売れたかというと、

・当然、度重なる値下げでの値ごろ感

・震災後の復興拠点としての仙台への注目

・目の前の長町八木山線の工事が進み、間もなく4号バイパス付近と286号が結ばれること。

・市立病院の着工と、スポーツパークの完成で街の将来像が見えてきたこと。

というあたりなんでしょう。

何ができる?

 過去記事ではこんな感じに予想してました(3/30記事)。

ニュースでは、「大規模スーパーなどの商業施設」とありますが、そもそもこの3区画それそれ単独では、大規模スーパーは難しい規模。ヨーク隣の16街区は1.8haとトラストシティの土地を上回る大規模な土地なので、そこは可能性大ながらも、長町駅東口駅前広場に隣接する13,14街区についてはもしかしたら、間の片側1車線道路上空を連絡通路でつないで一体的な活用という可能性はあり、土地の合計は2ha程度ですから、それなりに勝負できる規模にはなりそう。

本命はイオン?

 そもそも、3区画が単一の業者に買われたのか、バラバラなのかが分かりませんが、仮に「大規模スーパー」といえば、あのイオンが思い浮かび、かつてはモールに対抗するために現スポーツパークの土地にご執心でしたが、今回の駅前3区画では、イオンが得意とするモール形式の店舗の建設は難しいと思われる。13,14街区であれば、昔のジャスコタイプの店舗には最適の条件なんだけど。

かつて山形の鶴岡駅前にあったマリカ(多層階ジャスコ棟と専門店棟を道路上空の連絡通路で接続)を思い浮かべてしまったけど、いまさらそんな時代遅れの形態では勝負してこないだろうな。

 イオンが、モールと勝負するのであれば、そもそも現スポーツパークの土地が3haもあって最適だったと思うし、あえてスポーツパークを見送って駅前の使いづらい土地を購入というのも考えづらいなー。

 もしもイオンであれば、14街区と16街区の間を走る40m道路の上空をデッキで結んで接続というのもあるかも。逆にそこまでの覚悟がなければこの土地には手を出してこないだろうね。賑わい軸の考え方からすると、そこには歩行者デッキの整備が前提となっているので、そのような計画も面白いんだけど。

対抗は?

 ヨーカドーは、子会社のベニマルのスーパーがすぐ南に立地している土地にあえて出店する理由はない。イオンに対抗して開発したSC形態の”アリオ”はいまいち魅力なく、酷評されており、これもないかな。

 近隣のザ・モールを運営する西友は当然ないし、そうすると、流通系ではなく、商社系やデベ系がまとめて購入し、住宅(マンション)も含めての複合開発という可能性もある。

 単独であればタワーマンションなどはあまりにもリスクが大きいけど、複合開発で商業施設とのコラボであれば、可能性はある。スーパーはテナントとして入居させ、ほかに、家電店の空白地帯ということからコジマを子会社化したビックカメラあたりが入ったりね。コジマは一時期長町駅付近への出店を検討していた時期もあったと聞いたこともあるし。スーパーに加えララガーデンやセルバ的な専門店の集積であれば、無理にモール・ララ連合に対抗せずにすみ分けはできる。

 なお、過去記事でも書いているとおり、IKEAは無理かなぁ。来てほしい気持ちはあるけど、いかんせん1区画あたりの土地面積が足りない。

 この予想が当たるか外れるか?発表が楽しみですね。

(6/15追記)

ヨーク北側の16街区は、何とIKEAのようです。有力ながらもIKEA標準面積の半分(1.8ha)以下しかないので、厳しいと思っていましたが、公式発表されたようで、ビックリ。それにうれしいですが、恐ろしい渋滞が起こるでしょうね。うちからは歩いて行けるからいいけど。

  やはり、以前予想したように店舗形態は多層階で上に積むしかないでしょうが、敷地の小ささに合わせて店舗面積を縮小する可能性もありますが、残りの駅前の13,14街区の発表も楽しみですね。

過去記事

 IKEA 仙台進出発表(3/9)

 ゼビオあすと長町店4/20オープン(3/31)

今後の動き

 以前にも記事にした、12街区(スーパースポーツゼビオの交差点向かい)の国土交通省仙台河川国道事務所の新築工事が開始されました。なぜここにとやはり呆れますが、12街区の残りの1.5haの保留地は、残り少ない大規模画地として希少価値が出てきました。

 あすと長町の南側は、太子堂駅を中心に、長町駅周辺とは全く逆で小・中規模な土地しかないことから、いい意味でヒューマンスケールの住みやすそうなエリアになっています。太子堂の駅前は飲食店やクリニックなどがあつまりちょっとした商店街的な感じになっているし、大通り線沿道も金融機関やカーディーラーもなど、それなりに建ち並んできています。

 残りは、ヨークベニマル向かい側や南側の土地で、確かあそこは大規模画地に見えて権利関係は細分化されているので、まとまった土地活用は難しいかもしれないが、北と南から開発の波が押し寄せており、空き地も少なくなってきているので、そろそろ動き始めるでしょう。

続きを読む "良いニュースと悪いニュース(あすと長町)"

| | コメント (2)

2012年6月 9日 (土)

水族館構想

県内で水族館といえば、当然松島水族館。日本三景松島の玄関口に位置し、アクセスもJR仙石線の松島海岸駅の目の前。また遊覧船乗り場にも近く、絶好のロケーションでしたが、老朽化及びさまざまな規制で拡張もできず、近隣の県有地(駐車場)への移転も出来ずに、数年前仙台港背後地への移転が発表されました。

 仙台市も応分の負担と支援を行うこととなり、市は10億円の出資を予定し、運営会社は11億円出資のための資金調達を行うはずが、あてにしていた土地が売れないとの理由で事業が立ち往生し、仙台市の出資も取りやめになったのは2年ちょっと前。その時点では事業は白紙となったと思ってました。

 その後、昨年の大震災で松島水族館は津波浸水と地震被害を受け、何とか復活はしていますが、老朽化はさらに進んだわけで、やはり手を打たなければということで、仙台港背後地への移転案が再浮上してきたようです。予定地は現在仙台港ICが建設中のすぐとなりの高砂中央公園計画地。ICすぐ横であり、一応高砂駅からは徒歩15分程度。同じ背後地の三井アウトレット仙台港からも徒歩10~15分(車では数分)の距離であり、連携も見込める立地です。

 仙台市としては再度協力するようで、実現すれば、「西の動物公園」、「東の水族館」と市街地を挟んで東西の端に学習系レジャーの両輪が立地することになります。

 動物園の方は、いろいろと賛否両論起こっていますが、「パンダ」導入が本決まりで、あとは時期がいつかということと、アクセスの確保を含めて様々な課題があります。まぁジャニーズが獣舎の整備費と5年分のエサ代を出してくれるということなので、様々な波及効果を考えると少なくとも仙台市としてはマイナスにはならないだろうし、好意に甘えていいと、個人的には思います。別にこれをやるからといって、被災者にしわよせが行くわけではないし。感情論での反対意見も多いようですが。

 ただし、一部反対派が言ってるように中国に対しては、策略に引っかからないように、ある程度慎重さは必要ですね。新潟みたいに、市中心部の一等地を中国に買われそうになっているのは論外にしても、最近の中国大使館員のスパイ行為のように油断はならない。

 まぁ、市にとっては、地下鉄東西線の収支改善にとっても非常に大きなプレゼントであり、あえて急いで実現させずとも、わざと地下鉄開業のH27年までゆっくり準備するということでいいと思うな。開業前にパンダが来てしまえば、駐車場や周辺道路がパンクするのは確定だし、逃げ道がないから恐ろしいことになる。「地下鉄を使って」と呼びかければ、渋滞対策の費用も追加ではあまりかからない。

 東西線については、東の荒井(被災者の移転先)にしても、西の動物公園(パンダ)にしても、震災で新たな役割を果たすことができ、需要も高まりそうで、仙台市当局はほっとしていることでしょう。災い転じて福となすというか。

続きを読む "水族館構想"

| | コメント (6)

2012年6月 3日 (日)

鉄道の内陸移設(2)

全通は遠い仙石線

 東松島市鳴瀬付近の2駅移設が決まり、4月に市とJRの間で協定が結ばれ、復旧に向けての土地買収が始まっています。

 とはいえ、用地買収に1年半、工事に最短2年とのことで、全通するのは2015年度中に実現するかといったところ。地下鉄東西線とどっちが早いかっていう感じで、震災から4~5年かかってしまうとは、昨年の時点では思ってなかっただろうに。2年位で開通という触れ込みだったのに。

 移設候補地については、住宅の集団移転用地にもなっており、値上がりが見込まれることから、土地も簡単に安く売ってくれるとは思えない。非常に協力的な人もいれば、エゴ丸出しの人もいる。震災直後の復興に向けての一体感はどこに?という状況は悲しく思えますが、これは被災地だけの話ではなく、がれきに対しての拒否反応など、全国的に感じられるものですが。

石巻・東松島の復旧・復興のためには、やはり少しでも早く鉄道の復旧は必要であって、当初の2年程度という話であれば、自分は将来のことを考えて内陸移設は賛成派でした。ただ、常磐線もそうですが、結局移設完了まで早くて4,5年かかってしまうようでは、住民はどんどん逃げ出してしまう。特に子どもがいる世帯では、高校通学にあたって鉄道の復旧が遅れているのは致命傷。

 また、震災被害からの単なる復旧ではなく、復興につなげるためには、何か+αが必要。仙石線は駅数が多く、震災前でも仙台まで石巻まで快速でも1時間程度かかっているのは、同じ県内の主要都市でも新幹線で仙台から13分の古川と比較するとあまりにも不便すぎる。

 これをきっかけに別にディーゼル化してもいいから、東北線の活用による仙石線への乗り入れを組み合わせて時間短縮を図ることと、これまで宮城県の七不思議的な、「東北線と仙石線の乗り換え駅がない」ことの解消を図るなど。。。ということもありませんでした。

 震災当時は地元の安住外務大臣が複線化で復旧などと言っていて、「そりゃありえないでしょうよ」と思ってました。複線化は不要ですが、長年の課題を合わせて解決するやり方もあるでしょうに。

 小牛田経由の東北線⇔石巻線直通快速の所要時間が最短1時間強ということを考えると、松島駅付近で連絡線を設置すれば50分位でも運行可能になるんじゃない?

続きを読む "鉄道の内陸移設(2)"

| | コメント (1)

« 2012年5月 | トップページ | 2012年7月 »