広島のアイデンティティ
今回は、広島編の最後です。
仙台は、50年ぶりの新球団楽天の誕生で沸いていますが、広島には50年以上前に誕生したカープがあります。
カープの本拠地、市民球場
先日広島に行ったとき、一番見たかったのは市民球場でした。もちろんオフシーズンであり、球場内部には入れませんでしたが、スタンドの間から内部を見ることができました。
仙台で言ったら勾当台公園内にあるような、立地条件抜群のこの球場。
宮城球場よりは多少新しいものの、1957年完成のこの球場は、度重なる修復などで外観はそれほど古さを見せないものの、内部は雨漏りがひどく、また観客席はベンチシートが多く、アメニティ度は低いようです。
それに、12球団一狭い球場で、特にセンターは他球場よりも6mも狭く(116m)、それをホームアドバンテージに、ホームランバッターを量産してきました。
都心のど真ん中に位置する抜群の立地条件はすばらしいものの、旧宮城球場のように老朽化で他球団の選手からも嫌がられ、昨年の一リーグ騒動の際には、球場の古さやマーケットの狭さから、消滅球団の候補にも挙げられるほどでした。
数年前から広島では、市民球場の移転建て替えの動きがあり、一時は別の場所へ屋外型天然芝スタジアムの建設が決まりましたが、コンペに参加した外資の会社の撤退で、建て替え計画は白紙に戻り、今は市民球場現位置建て替えを目指し、ニュースで有名になった樽募金が街のいたるところで行われていました。
カープの存在感
このカープ。昨年の観客数が12球団最小です(確かに少ないようですが、カープは水増しをしない球団として有名です。逆に支払う球場使用料が入場者数で上下することから、意図的に「水減らし」をしているとも噂されるほど。ですから、実際には水増しの醜いオリックスがダントツで最下位だと言われています)。
広島人は、地元に球団があることが当たり前すぎて、球場に行かないのかと思っていました。それに、ホームゲームはもちろん、ビジターのゲームでも殆んどの試合が地元局で生中継されているため、家で見るのが当たり前というところもあるのかなと。
しかし、それもありますが、単純な理由ではないようです。
学生時代の友達と広島の街中に飲みに行き、連れられていった店が野球鳥でした。
http://olive.zero.ad.jp/tanuki/info/map/yakyudori/index.html:title
ここは、焼き鳥の店でしたが、メニューを見てなんだこりゃ!?
メニューの種類ごとにカープの選手の名前がつけてある。。。
一番高級なのは佐々岡(合鴨)1000円、ちなみに楽天に移籍した玉木は白ネギ。。。微妙な存在。
また、ビールは「カーブ」、日本酒は「シュート」など、とことん野球及びカープにこだわった店で、シーズン中には店内のプロジェクターで中継が見れたり、スコアボードが設置してあったりとすごい店でした。
この店は、広島人であれば知らないものはいないという店のようで、オフシーズンにもかかわらず、にぎわっていました。
その後にのみに行ったバーで、地元のおっちゃんや、バーの奥さんとも話になり、「カープは人生そのもの」と、熱く語っていました。子供の頃から親や回りの影響、テレビ等でカープは身近で空気のような存在であり、広島人にとっては”ブーム”とは無縁で、かけがえのないものと。
シーズン中の朝のあいさつは、もちろんカープの試合内容。結果だけでなく、勝因・敗因、監督の采配、隠れた好プレーなど、皆が評論家のようになるらしい。
試合を見に行く、行かないは関係なく、老若男女皆カープのことを自分の身内のように気にかけているようです。
カープが経営危機で昔樽募金をしたり、球団創設25年目での苦節の初優勝、80~90年代の黄金期、ドラフト逆指名導入後の低迷期 という歴史を皆が共有し、ちょっと成績が低迷した時でも、チームがあることの喜びを味わい、見捨てることはありえないとの姿勢を感じました。
それは、今回の市民球場建て替え樽募金に精神が受け継がれています。
サンフレッチェ
これは、Jリーグのサンフレッチェにもあてはまることのようです。確かにサンフはまだ10年ちょいの歴史であり、J初年度にリーグ優勝したものの、後は振るわず、H15年には一度J2落ちを経験しました。しかし、ここで広島人の地元愛精神に火がつき、観客動員はそれほど減らずにサポートし、無事一年でJ1復帰した昨年は、観客動員が以前J1にいた時に比べても激増したようです。
だから、地元の人はサンフレにもやさしい愛情を注いでいるようです。
野球か?サッカーか?
広島では、カープか?サンフか?という不毛な選択を求める空気はありませんでした。
まず、カープが一番。しかし、サンフももちろん応援するって感じ。
それは、広島で頑張っているチームなのだから、当たり前。
両チームとも経営に苦しみながら、うまく両立しています。
ブームとは程遠い、地元に本当に根付いている様子がわかりました。
一方、他の野球、サッカーを持つ先輩都市では、概ね野球が優勢で、サッカーは影が薄いようです。阪神がある関西、ダイエーがある福岡、中日がある名古屋では、完全に野球チームの方が圧倒しています。
札幌では、一大ブームを巻き起こし、Jの地域密着の優等生と呼ばれたコンサドーレがありますが、J2降格後の資金難による低迷と同時に、日ハムが移転し、新庄効果とプレーオフ進出争いで、移転一年目で形勢が一気に逆転してしまいました。コンサもJ2にしては上位の、平均約1万人という観客動員を記録していますが、2001年の最盛期と比べたら半分以下に落ちています。
強ければ客は集まり、弱ければ客は減るのは、プロスポーツであれば当たり前ですが、ここまで急に増えたり減ったりするのは、やはりブームの要素が大きいです。
もちろん、札幌は他都市と比べてチームの歴史が短いですが、本来の地元密着型プロスポーツの意義からすると、まだ成熟していないと感じます。
一方仙台のベガルタは、『札幌化』におびえているところがあります。
つまり、札幌のコンサが歩んだ道を一年遅れでたどっていると。
札幌は、2000年J1昇格、2002年J2降格、2003年J1復帰失敗、2004年日ハム進出とJ2最下位転落
仙台は、2001年J1昇格、2003年J2降格、2004年J1復帰失敗、2005年楽天進出と・・・
シーズン前の時点では、マスコミの報道と市民の期待については、楽天に大きく差をつけられていますが、今年のベガルタの戦力は昨年に比べたら間違いなくアップしており、十分昇格争いに食い込む力を持っているのは幸いです。
ただ、何度も言うが、不毛に「ベガルタはもうだめだ」とか「ブームは終わった」と言って悦に入っているアホはいる。
逆に楽天に対しても期待感は大きいが、未だ「ライブドアが。。。」なんてグジグジ言っている方々(流石に最近減ってきましたが、年末まではけっこういました)。「楽天の運営方針が気に食わない」と揚げ足取りばかりしている方もいる。
また、両方に無関心な方々も多いです。
ブームがあるのは、最初は仕方ない。
とはいえ、ベガルタは終わったブームを振り返り、将来の市民の支持につなげるか。
楽天はこれから来るであろうブームを、ブームで終わらせないためにどうするかをを考え、両チームとも仙台市民にとってかけがえのない存在にならなくては、もったいないと思います。
原爆と広島の気質の関係
広島では、もちろん原爆ドームと平和記念館に行ってきました。
これは、爆心地に近い広大な平和公園内に位置しています。
原爆ドームももちろん初めてでしたが、やはり目の前で立ち尽くしてしまいました。
コンクリートと鉄骨むき出しの迫力と、ものすごい存在感。
中心部に通う広島人は、毎日”アレ”を見ているわけです。
これが広島人のココロに影響を与えない訳がない!
それに、記念館を見学して、かなりの衝撃を受けました。これは筆舌に尽くし難い。
原爆で祖父母が亡くなったり、後遺症に苦しんだ方は身近にたくさんいるはずで、やはりその重みが”ヒロシマ”という都市の気質を形作っていると感じました。
その原爆投下から今年で60年。当時は放射能の影響で「75年は草木も生えない」とも言われた広島が、100万人以上の立派な大都市として復興し、存在しています。
その復興のシンボルとして創設された「カープ」と「市民球場」。
広島は、地道に這い上がってきました。
確かにこの街は、表面的な華やかな部分はあまり見えません。
逆に言うと、「中身がある街」。
別に、東京を追って、無理に大都市になろうとしている訳ではない。
着実に階段を上ってきた印象があります。
福岡のように、背伸びしてシャカリキに開発に夢中になっているようなところはない。
路面電車が残っているのも、「便利で市民に密着しているものだから、活用していこう」という精神がなければ、他都市のように簡単に廃止されているはず。
カープにしてもそう。弱くても見捨てない。
ドン臭いところはあるけれど、他の大都市とは一線を画していて、妙に落ち着きを感じました。
仙台が学ぶところ
仙台は、急激に都市化してきた都市です。
高度成長期以降の急激な人口流入で、一気に郊外化が進み、都心の人口は激減しました。それにともない、仙台の街が持つ、伊達政宗以降の歴史的な遺産がだんだんと失われつつあると思います。また、歴史的な背景を持つ都心に住む住民が減ったことで、都心は単に働く場、遊ぶ場となり、市民の意識からも遠くなりつつあります。
もちろん、仙台は背伸びして来た都市で、まだまだ都市機能として足りないものは多く、それは着実に整えていかなければならない。
とはいえ、仙台独自のアイデンティティを失ってはいけない。
単にミニ東京を目指すのでは、人は集まってこない。仙台の独自性を残しながら、いろんな足りないものを整備していくべきでしょう。
昨日取り上げた「セントラルパーク構想」にしても、歴史的なエリアを再認識し、市民のいこいの場にしていこうというものですし、そういう都市の背景を市民一人一人が理解しながら生活すれば、仙台という街がもっと奥行きのある魅力的な街になる可能性があります。
最後に、東西線とケヤキ並木について
地下鉄東西線は、仙台のシンボル、青葉通のケヤキの伐採などの問題があります。
これは、青葉通を避け全て南町通経由にすれば、ケヤキの伐採は避けられると
思っており、疑問に感じていました。しかし、排ガスにさらされ過酷な環境に
おかれているケヤキは、いずれ植え替えが必要なことを考えると、
地下鉄建設に伴うケヤキの植え替えは良い機会なのかもしれません(と思うしかない)。
東西線については、ここが自分的に最も気になる点です
(全面的に賛成な訳ではないが、ここで計画をストップすることの悪影響が大きいので、
建設するべきなのかな・・・)。
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