仙台百貨店戦争?
仙台の都心部では、長年、仙台商人の殿様商売&排他的な姿勢により、新たな大型店が進出出来ませんでした。
意外かもしれませんが、75年に現フォーラス(旧ジャスコ仙台店)が進出して以来、外部資本の大型店の新規立地は何と殆んど皆無でした。仙台駅ビルのエスパルがあった位?
78年のams西武は、近隣にあった旧緑屋を再開発で継承したもの。87年の141、98年のアエルは地元中心の再開発ビルであり、外部資本の専門店も入居していますが、ビル自体は地元資本で運営されているものです。
VIVIRE⇒さくら野は地元資本、ロフトはamsの後継テナントであり、新規の出店は本当になかったのです(ただし、東口に限っては、家電量販店の新規立地はありました)。
仙台都心部は、バブル期まではライバルは皆無の状態で、大店法による調整を用いて外部からの進出をことごとく潰してきました。
昔、東口へそごうの出店の噂があり、また西口正面の現円達パーキング付近に進出を目論んでいた西武百貨店が、大店法で店舗面積を削られ(当時最大の藤崎店舗面積を超えないように)、出店調整が長期化しているうちにバブルが崩壊し、西武百自体も余裕がなくなり、四半世紀もの間駅前の一等地が駐車場としての利用に甘んじるという結果になっていました。
ところが、99年に大店法が改悪され、郊外に無秩序な大型店の出店が可能になった超ザル法「大店立地法」のため、今頃になって、利府、富谷へ巨大ジャスコの出店により、都心空洞化が叫ばれ、2年後の名取ダイヤモンドシティの出店を控え、今頃になって”都心部に人を集めよう”とあたふたしているのは滑稽に感じます。
最近、自慢のアーケードは、外部資本のブランドショップ、カフェ、ドラッグストアに一等地を譲り、老舗自体は2階に引っ込んで不動産業で食べている所も多いところを見ると、本当に結局自己保身だけだったのかと呆れてしまいます。
その外部資本の専門店の出店により、仙台都心部の商業が若者の街として競争力を保っているのは皮肉ですが。
そして都心部が危機感を抱き、外部資本の出店やむなしの姿勢に転じても、
バブル崩壊後の仙台の成長停滞、大手百貨店のリストラ優先により、仙台へ出店をしようとする企業は現れなかったのも当然です。さらに、ams西武は駅正面の好立地にも関わらず、中途半端な規模が災いして業績が伸び悩み、リストラで閉店となってしまいました。
本来であれば、仙台・札幌のような100万都市の都心部はジャスコなどの郊外店とは住み分けがなされ、競合しないと言われていましたが、他都市とは違い仙台は都心部が安閑として量的魅力拡大に及び腰になっていたせいで、「利府(富谷)のジャスコで用事がすむから、まちには殆んど行かない」なんていっているファミリーが多くなってしまっています。
仙台商人よ!情けないく思わないか? あんな、昔は梨しかなかった利府に負けそうになるなんて!(利府の人失礼)
こんな状況が長く続いている中、2007年の駅前再開発ビルへパルコ出店情報に続き、同じく調整が続いている、駅前再開発事業地区(円達・Ebeans地区)への大手百貨店出店に向けての情報がマスコミに流れました。この話は、地元誌「仙台経済界」では継続的に流れていた情報ですが。
百貨店「群雄割拠」へ 仙台駅西口
JR仙台駅西口の再開発地区に、大手百貨店の大丸、そごう、丸井が相次いで出店を計画していることが16日わかった。
地権者らは複合商業施設を建設し、二つの百貨店を入居させる方向で検討中。07~08年ごろの開店とみられ、店舗面積はともに4万平方メートル級。既存の藤崎やさくら野百貨店を上回る地域最大規模の大型商業施設になる。07年秋にはパルコも出 店する計画で、仙台駅西口は百貨店の一大激戦地になりそうだ。
再開発が計画されているのは、仙台市青葉区中央3、4丁目の約1万6500平方メートル。現在はビデオレンタルのTSUTAYA仙台駅前店やファッション専門店のイービーンズ、東北電力仙台営業所、駐車場などがある。
地権者は西武や大成建設、日本通運、東北電力など7社で、99年9月に「中央南地区まちづくり協議会」を設立した。建設する 商業施設には、二つの百貨店を核に、専門店や複合映画館などが入居する方向で検討されているという。
西武の持ち株会社ミレニアムリテイリングによると、昨年11月、そごうで出店する意向を協議会に伝えたという。ミレニアムは、 05年9月に開店予定のそごう心斎橋店(大阪市)の運営手法を、仙台でも生かしたい考えだ。
関係者によると、大丸は昨年12月に出店を打診した。関西を地盤とする同社は今年4月に発表した中期経営計画で、全国の主要 都市で4万平方メートル規模の都心型百貨店を展開すると表明。東京以東では昨年3月、札幌に出店したが、東北には店舗がない。仙台で開店すれば11店目の直営店になる。
丸井も出店の意向を協議会に伝えているが、具体的な計画については「現時点で詳細は決まっていない」(同社広報)としている。 (12/17 朝日新聞宮城県版)
個人的には、丸井で決まりだと思っていましたが、大人気のようです。
現時点での丸井の出店戦略では、仙台駅前は外せない土地であり、
あそこの社長は、ココだ!と狙った土地にはものすごい執着を示し、競合してでも絶対に出店するという熱意を見せているからです。東京では、TX(つくばエクスプレス)が来年開業し、ターミナル性が格段に上がる北千住駅再開発ビルへの出店を果たしています。
しかし、仙台では最後と思われる地下鉄東西線事業がH27年開業を目指し事業が始まりました。この再開発地は、現南北線と東西線が交差し仙台駅が設置される将来的にも一等地と考えられる場所で、丸井のほかにも、大丸とミレニアムグループが名乗りを挙げ、また、現地権者である専門店ビルE-beansも、新ビルでの営業継続をアピールしています。
贅沢な悩みのようですが、とにかく早くオープンできるように、協議を急いで欲しいと思っています。
以下は、今回の報道に対しての、個人的な感想です。
1.大丸のアピールの目的
途中から割り込んで、そごうの出店を主張してきたミレニアムグループへのけん制の意でしょう。大丸としては、今後の人口減少社会に向けて、従来の大都市圏での店舗展開への限界を感じ、成功した札幌に続いて、仙台や広島レベルの街への基幹店出店で、経営基盤の確立を図ることが目的なのでしょう。 そこに、地権者であるミレニアムが割り込んできたことから、マスコミを使って市民へ大丸をアピールしたいということで、意図的なリーク情報を流したと思っています。
2.これが最後のチャンス
仙台には、従来は大手百貨店は三越のみでした。しかし、地元一番店の藤崎は伊勢丹グループで、経営再建中のさくら野は、今年高島屋ハイランドグループ入りしたことから、提携を破棄してまで伊勢丹・高島屋が出店する可能性はほぼ皆無だと思っています。 ですので、残る可能性は、今回名前が挙がっている大丸、ミレニアム、丸井で打ち止めになります。松坂屋はリストラ&名古屋集中を打ち出しているのでまずないでしょうし。 このような状況で、好立地の再開発事業へ、複数の大手百貨店が競合している構図になります。
3.開業時期は2007年?
2007~8年の開業を想定とのことですが、これは無理でしょう。大丸側の意気込みを示したいための意図的なものだと思います。 また、2007年は駅前パルコ、名取ダイヤモンドシティの開業が続くことから、話題性もありその時期に間に合わせたいという希望的要素もありかな。 最近決まったパルコを中心とする第一ビル再開発も、ビルテナントの扱いが解決し、来年からの着工で2007年開業とのことですが、 円達再開発は、E-beansのテナントの扱いなどはまだ決まっていないようです。 これから設計を行うとしても、2010年にも間に合うかは疑問だと思います。 仙台経済界では、円達再開発は2014年完成か?と報じていましたし。 可能性があるとすれば、E-beansは残し、日通P,円達P用地のみを用いての先行開業というところでしょうか。これであれば2007年は不可能ではないと思いますが、 都心部再開発地最大の約1.6haのスケールメリットを生かすためには、部分的ではなく、総合的なプランニングとオープンが求められるのではと思います。
4.そもそもそこは好立地なのか?
というのも、仙台では、鉄道移動が都市圏の交通に占める割合は低い都市です。 地下鉄は頑張っていますが運賃の高さが敬遠され、またJRが利用者不在の”運んでやる”ダイヤの為に、仙台駅のどの隣駅でも昼間で3~40分空くような、大都市交通機関としては”あってはならない”時間帯が存在するほどです。 また、東西線が開業すると、南北線と合わせて、10数万人もの乗降客が集まってくるような皮算用がなされているようですが、 現時点でも地下鉄南北線仙台駅とJR仙石線あおば通駅がクロスしている地点があり、そこには計11万人(南北線7万人、仙石線4万人)もの乗降客が発生していますが、クロス地点のさくら野や十字屋へ好影響が生じているようにはとても思えません。これは店舗自体の魅力というのもありかもしれませんが。 また、東西線沿線からは、全てが仙台駅で降りる訳ではありません。目の前に一番町駅の設置が予定されている藤崎への利便性も高まることになります。 だから、ちょいとバラ色過ぎる予測なのではという気がします。 とにかく、その現実に気づく前にさっさと出店して欲しい。。。
5.他の土地の可能性は?
現時点では、2つの枠に百貨店2社と、丸井、Eーbeansの4社が入り込もうとしているようです。ただ、ここ以外にも開発予定の大型土地が2箇所あるので、今回の円達再開発へ参入できなくても、他に有力候補地があり問題はないのでは。ただ、その2箇所は現在暫定商業施設での活用中であり、すぐ使えるわけではありませんが。 その場所は、「仙台駅東口駅舎&駅ビル」、「ヨドバシの建て替え」です。 仙台駅の東口駅舎計画は、5年前に延期が発表され、01年よりZEPP仙台とゲーセンで10年間の暫定利用の予定なので、本格施設への建て替えはまだ先ですが、ヨドバシは97年オープンで約10年が暫定利用の目安であることから、そろそろ計画が動きはじめています。 近隣の旧農協会館の買収も仮店舗としての活用と目されていますし、劇団四季を中心とするミュージカルの誘致を目指す「劇場建設構想」もヨドバシと絡んでいます。 以前のヨドバシは、他のテナントを入れない店舗純化主義でしたが、最近は、大阪梅田の新店舗は複合店舗で開発しているし、横浜上大岡店は京急百貨店の最上階のテナント、川崎店は丸井が入居する駅前再開発ビルのルフロンへの西武百貨店の後継テナントとして入居など、複合店舗であることに対するアレルギーは消えています。 なので、ヨドバシだけでなく、百貨店1つ分が入れるような床面積は十分に確保できるので、ここも考えられるのではと思います。 それに、楽天誕生で注目されている仙台駅東口であり、近隣に地下鉄東西線新寺駅も開業予定であるなど、将来性が見込まれるエリアです。
とにかく、ここから実現までが長いのが、仙台でよくあることです。
企業の気分は移り気です。早く決めないと逃げられますよ。
仮に、今考えられている企業が全て進出した場合は、過当競争が避けられませんが、
この競争の過程で、都心部の体質や競争力が強化され、対郊外との戦いを優位に進めることができると思います。
また、東北各県からの集客が高まることで、仙台都心全体のパイを広げる役目を果たすものと考えています。仙台はこれまでの怠慢のためか、東北の中心というポテンシャルを生かしきれていない部分がありました。その分、低成長社会で人口増が見込めない時代ですが、まだ成長できる余地はあります。
ひさしぶりの都心部大型プロジェクトであり、失敗は許されないし、期待してます。
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